【夏の文芸エクラ大賞】社会学者・古市憲寿さんの「今だから読んでおきたい本」

おすすめの本を各スペシャリストにリモート取材!テレビ番組での切れ味鋭いコメントで知られる古市憲寿さんからは、社会学者だけに今の日本の特徴を浮き彫りにした本が。しかもエッセイ、ノンフィクション、漫画など多彩なジャンルの話題の本がずらり。手にとりやすく、興味津々のラインナップはあなたの心をくすぐりそう!
社会学者・古市憲寿さん

社会学者・古市憲寿さん

ふるいち のりとし●’85年、東京都生まれ。社会学者、作家。著書に『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』、小説に『平成くん、さようなら』『百の夜は跳ねて』など。

日本社会の「ここがヘン!?」に気づく本

『介護のうしろから「がん」が来た!』

『介護のうしろから「がん」が来た!』

篠田節子
集英社 ¥1,300

「介護は家族(特に女性)がするものと考えている人はまだまだ多い。チャーミングな書きぶりだが内容は深刻で、誰にとっても他人事とは思えないエッセイ」。人気作家による乳がん闘病記であり認知症の母の介護記。

『女帝 小池百合子』 石井妙子 文藝春秋 ¥1,500

『女帝 小池百合子』

石井妙子
文藝春秋 ¥1,500

女性初の都知事の半生を描いたノンフィクション。「小池さんに批判的なジャーナリストが書いた本だが、彼女が男性だった場合これほどまでのバッシングにあっただろうか。個人的な読後感は『島耕作』シリーズと似ていた」。

『サヨナラ、学校化社会』 上野千鶴子 ちくま文庫 ¥680

『サヨナラ、学校化社会』

上野千鶴子

ちくま文庫 ¥680

「国が新しい生活様式を提案したり自粛に従わない人が糾弾されたり。日本社会の仕組みは学校に似ていると看破した好著」。社会学者が学校の弊害を指摘。知恵がある人間の底力を説く。

『ミステリと言う勿れ』 1~6巻 田村由美 小学館 ¥429~454

『ミステリと言う勿れ』

1~6巻

田村由美

小学館 ¥429~454

一見ぼんやりしている男子大学生が冷静な観察眼で謎を解く漫画。「主人公の考え方がとにかくフラット。今の社会がいかに“おじさん”中心につくられてきたかをさりげなく指摘しています」。

『2020年6月30日に またここで会おう』 瀧本哲史 星海社 ¥980

『2020年6月30日にまたここで会おう』

瀧本哲史

星海社 ¥980

「一瞬だけの怒りは決して社会を変えない。必要なのは具体的な交渉と行動です。これからを生きるヒントにあふれた本」。去年夭折した投資家にして大学客員准教授の、伝説の講義が書籍に。

 

古市さんに聞いてみました!

Q.この時代の「読書」の意味って?

動画メディアが盛んな時代ですが、今でも読書の効率には負けると思うんです。2時間の動画を見ても、実際の情報量はさほど多くないばかりか、わかった気になるだけのことも多い。一方の本は、とにかくよくできた情報伝達媒体だと思います。神話や文学を伝えるために文字が使われるようになってから約3000年ですが、その間にたくさんの新しいメディアが発明されてきました。だけど本は生き残ってきたわけです。それはなにより効率性によるところが大きいと思います。

Q.外出自粛中に読んだ本は?

東京に春の雪が降った3月終わりの週末にマーセル・セローの『極北』を読み直していました。世界はどうなってしまうのかという不安に人々が包まれていたころです。「まわりのすべてが崩壊してしまったとき、人をまっすぐ立たせておいてくれるのは、決まった習慣だ」という一節があるのですが、非日常のときほど「習慣」が大事だという主人公の独白です。その意味で、この特集を読む人にとっては、読書こそが心の安定剤になるのかもしれません。ただし『極北』の主人公はその後、大変な事件に巻き込まれますが。

古市さんの最新刊!

『奈落』 古市憲寿 新潮社 ¥1,400

『奈落』
古市憲寿

新潮社 ¥1,400
人気絶頂のミュージシャン・香織がステージから転落。人生が激変するが…。家族とわかりあえず、孤独な魂を抱えた女性の人生を壮絶に描いた小説。

 

Follow Us

What's New

  • 【市川團十郎インタビュー】市川團十郎47歳。今、絶対見ておくべき理由

    團十郎の舞台が今、すごいことになっている。「5月の弁慶を見て自然に涙が出た」「今このときに向かってすべてを調整してきたと思わせる素晴らしい完成度」。歌舞伎座の内外ではもちろん、SNSでも最近こんな感想によく出会う。市川團十郎、47歳。キレッキレの鋭い印象はいつのまにか「頼もしさ」に、そして見たものを燃やし尽くすかのような勢いある目力にはいつしか温かさが宿っている。今や目じりのしわまでが優しげだ。かと思えば舞台から放たれるオーラは常に別格。にらまれたらそれだけでもうエネルギーがわいてくる。私たちにはマチュアな進化を遂げつつある團十郎さんの歌舞伎が必要だ!歌舞伎界の真ん中を生きる團十郎さんが、歌舞伎への思いを真摯に語ってくれた。

    カルチャー

    2025年7月1日

  • 【雨宮塔子 大人を刺激するパリの今】洗練された甘さを味わえるアフタヌーンティーへ

    雨宮塔子さんによる連載「大人を刺激するパリの今」。14回目のテーマは「洗練された甘さ」。仕事仲間に推薦されたアフタヌーンティーのお店をご紹介!

    カルチャー

    2025年6月30日

  • おいしく食べて飲んで元気に!健康や食がテーマのおすすめ本4選

    何をするにも元気な体があってこそ。そのためには体づくりやきちんとした食生活が大事。そこで今回は、「食や健康」がテーマのおすすめ本をご紹介。毎月お届けしている連載「今月のおすすめ本」でこれまで紹介してきた本の中から、4冊をお届けします。

    カルチャー

    2025年6月30日

  • 雨と晴天の話をするーParler de la pluie et du beau temps.【フランスの美しい言葉 vol.22】

    読むだけで心が軽くなったり、気分がアガったり、ハッとさせられたり。そんな美しいフランスの言葉を毎週月曜日にお届けします。ページ下の音声ボタンをクリックして、ぜひ一緒にフランス語を声に出してみて。

    カルチャー

    2025年6月30日

  • 【吉沢亮インタビュー】芝居が好きです。役づくりが大変なほど逆に燃えるんです

    女形という難役を、見事に演じきった。話題の映画『国宝』で吉沢亮さんが演じるのは、極道の一門に生まれながら、ゆえあって歌舞伎の世界に飛び込み、女形役者として波乱の生涯を生きぬく男・喜久雄だ。

    カルチャー

    2025年6月29日

Feature
Ranking
Follow Us