【富岡佳子×森下洋子 スペシャル対談3】73歳で現役バレリーナを続けられる原動力とは?

長年にわたり日本バレエ界を牽引してきた森下洋子さん。 エクラ世代も気になる年齢による体や心の変化に、森下さんはどう対処してきたのか? 同じく長年モデルとして活躍してきた富岡佳子さんが聞きました。

ポジティブ思考の源は幼少期の思い出に

森下 私も体力的には、40代に入ってから、いつもできていたことができなくなったことがあって。でも「まあ、年をとればこんなこともあるよね。これができないなら、こっちをやればいいか」という感覚で、全然落ち込まなくて。

富岡 変化を受け止めるのは大切ですね。

森下 今思えば、私は小さいころからすごく不器用で、徒競走なんていつもびりっかすで。「森下、お前本当にバレエやってるのか!」なんていわれて。でも、人よりずっと遅れてはいるんだけど、長いスパンでやると、あるとき、“あ、できた!”ってなるの。その感覚が、子供のころから脳にインプットされちゃっているのね。だからできなくても焦らない。

富岡 バレエは向いていらしたんですね。

森下 バレエって時間がかかりますからね。そこがすばらしいんです。続けていくうちにできるようになる。今でもそうですよ。夏ごろから、11月の『くるみ割り人形』公演の稽古に入ったんですけど、「くるみ」は昨年12月以来だから、最初は体が忘れているんです。それが少しずつ稽古していくうちに昨日より今日のほうができるようになるのね。

トゥシューズ
トゥシューズは、ロンドンの「フリード」を長年愛用。年間に300足は履きつぶす。底には「MORISHITA」の刻印が。足のサイズは24.5㎝。
ショール
16年前、デザイナーの森英恵さんから贈られたシルクシフォンのショールを常に持ち歩いている。香水は30年以上、ジャンパトゥの「ジョイ」を愛用。舞台に上がるときは必ずつけている

「被爆した祖母が“生きていることが幸せ”といっていた言葉の強さを、40代から実感するようになりました」森下洋子

富岡 エクラ世代って、体だけじゃなくて、心が揺らぐ人も多いですが、先生はご経験なかったですか。

森下 とても影響を受けた祖母が、私が32歳のときに亡くなったんですが、40代になってから祖母の言葉を実感できるようになり、心の支えになったんですね。祖母は広島で被爆した人なのですが、左半身を全部やけどして、それはそれはつらかったと思うんです。でも、お風呂屋さんには平気で行くし、「お経まであげてもらったのに生きているのよ」って笑いながらいえる人で、とにかくポジティブ。「こっちの指は使えないけど、この親指なら使える」なんていうのよ。恨み言なんかもひと言もなくて。「生きてられるってことは幸せね。感謝しなくてはね」が口癖で。生きていることへの感謝の思い、イコール平和への祈りの強さだったと思います。その思いを私も自然に受け継いでいる。だからかな、40~50代や、ちょっと迷いのある世代の団員には「大丈夫よ、大丈夫よ」って声をかけるんです。

富岡 先生にそういわれたら「大丈夫」って思える!

森下 私もね、毎日、稽古場に行くでしょ。みんなの一番後ろでお稽古するんだけど、最後までレッスンに出るんですよ。バーレッスンはもちろん、ジャンプもする。それが、みんなにとってはいいことなんじゃないかなって。

富岡 そう思います。先生が毎日お稽古している姿を見たら、絶対に愚痴なんていえないですもの!

【富岡佳子×森下洋子 スペシャル対談4】に続く
 

エクラ2020年12月号には富岡佳子さんと森下洋子さんのスペシャル対談を掲載。ぜひ手に取ってみてください。

【INFORMATION】
松山バレエ団 ’20年Xmas 公演『くるみ割り人形』

松山バレエ団では初演から39年目を迎える『くるみ割り人形』を森下洋子を中心に全幕公演。11/14、15 東京文化会館、11/28 さいたま市文化センター、12/6 府中の森芸術劇場、12/13 世田谷区民会館、12/19 神奈川県民ホールにて開催予定。詳しくは松山バレエ団ホームページを。チケットの申し込みは、☎03・3408・7939、またはticket@matsuyama-ballet.comへ。

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