第4回「文芸エクラ大賞」大賞発表!女性が女性のために選ぶ“今年の本”は?

「読書の魅力を発信し、本を手にとる機会を増やしたい」との思いから始まった文芸エクラ大賞も今年で4回目。エクラの誌面で本について執筆している文芸評論家とライター、そして書店員が選考に参加。アラフィー世代に響く“今年の本”は?

文芸エクラ大賞とは?

私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。


選考基準は、’20年6月~’21年5月の一年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班&書店員がイチ押しする作品の中からエクラ書評班が厳選した絶対に読んでほしい「大賞」、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書「特別賞」、さらに「斎藤美奈子賞」「書店員賞」などの各賞を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!

▼4人の選者

文芸評論家

斎藤美奈子

本や新聞、雑誌など多くの媒体で活躍。本や世の中への切れ味鋭い批評が、熱い支持を集めている。

書評ライター

山本圭子

出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。

書評ライター

細貝さやか

本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。

書評担当編集

K野

これまで担当したすべての女性誌で書評欄担当を経験。女性誌ならではの本の企画を常に模索中。

「文芸エクラ大賞」大賞発表!

『にぎやかな落日』

朝倉かすみ 光文社 ¥1,760

北海道在住のおもちさん(83歳)はひとり暮らし。近くにいる息子の嫁や東京在住の娘が気にかけてくれるが、好きなものばかり食べたりして持病が悪化。生活のすべてを人に決められるようになるが、カラオケや文通など楽しみはいろいろあって……。老女の内面の揺れを、たくましく生きてきた記憶とともに描いた小説。

『にぎやかな落日』

老いの心境が身につまされる“新・玄冬小説”。エクラ読者なら“母親あるある”の嵐!
━━文芸評論家 斎藤美奈子

主人公の北海道弁がチャーミング! 今後の自分をリアルに考えるきっかけに

━━書評ライター 細貝さやか

ひとりでは生活できないせつなさと、それでも消えない希望が胸に迫ります

━━書評ライター 山本圭子

作家・朝倉かすみさんより、受賞コメントをいただきました!

この小説のヒロイン・おもちさんのモデルはわたしの母です。お手紙を書くのが大好きで、ごはんがおいしかったこと、お友だちが優しくしてくれたこと、そしてピンクのレースのブラウスや可愛いシール、赤い口紅を買ってください、と元気いっぱい書いてきます。わたしはそれを読むと安心し、同時に、かなしくて、かなしくて、たまらなくなります。ちっともうまく言えませんが、そんなきもちで書きました。ありがとうございます。
 

“今年おもしろかった本”を持ち寄った、選考会を実況!

K野 文芸エクラ大賞も今年で4回目になりましたが、今回は初のリモート選考会。コロナの流行が続いていますが、“ステイホーム”が影響したのか、家族をテーマにした秀作が目立ちましたね。

斎藤 なかでも高齢者を主人公にした小説がよかった。青春小説とは逆の意味の“玄冬小説”には、かつては悲惨な現実を書いたものが多かったけれど、最近は違いますね。

山本 私の推しは朝倉かすみさんが83歳のおもちさんの目線で書いた『にぎやかな落日』と、藤野千夜さんが89歳の新平を主人公にした『じい散歩』。タイプは違いますが、ふたりとも愛すべき人物で。

細貝 『にぎやかな落日』は、おもちさんの北海道弁や娘との会話が聞こえてくるようでした。

K野 老々介護を経て夫は特養へ行き、おもちさんもひとり暮らしが困難に。親を思い出すかたが多いと思いますが、登場人物が深刻になりすぎないところに救われました。

細貝 おもちさんの娘の気持ちがわかるだけでなく、これからの自分のこととしても読める。“あきらめたりごまかしたりしながら老後を生きる”というのもアリなんですね(笑)。


斎藤 『じい散歩』は新平の3人の息子が全員独身のダメ男で、妻は認知症?という感じ。でも彼らのことを新平は「いいや、これはこれで」と受け止めている。「家族や幸せのかたちも変わるんだな」と思いましたね。

山本 老々介護中の夫婦とその娘たちを描いた桜木紫乃さんの『家族じまい』も、家族のかたちが変わろうとする話。老人を描くと、その人の人生と背後にある歴史も振り返ることになるから、物語に厚みが出ますね。

細貝 宇佐美まことさんの『羊は安らかに草を食はみ』にも歴史が関係しています。仲よし老女3人組が主人公ですが、その中のひとりが戦後に体験した悲惨な出来事に決着をつけるべくみんなで旅に出る。ミステリータッチで一気に読まされました。


K野 林真理子さんや篠田節子さんといったベテランは、現代らしい問題を小説に生かしていましたね。


山本 林さんの『小説8050』は、いじめから引きこもりになった息子を父親が再生させようとする話。「他人事じゃない」と思わされます。

斎藤 10年ほど前の『下流の宴』もそうでしたが、林さんは社会問題をすくい上げるのがうまいですね。


細貝 篠田さんが地方の現実などを背景に、人生の悲喜こもごもを描いたのが『田舎のポルシェ』。軽妙な筆致はさすがです。

山本 一方で、今までにない個性の作家も活躍しましたね。河﨑秋子さんの『鳩護』は、人間と鳩をめぐる不思議な話。現実のような妄想のような味わいが新鮮でクセになりそう。

K野 お仕事小説としてもおもしろくて、主人公に仕事を押しつけてくる先輩女性がリアルでした(笑)。

細貝 新鮮さでいえば、人間そっくりの宇宙人を難民認定するパリュスあや子さんの『隣人X』もユニーク。


斎藤 格差という目に見えない分断について考えさせられましたね。


山本 松田青子さんのジェンダー感覚が生きた短編には毎回新鮮味を感じますが、そろそろ長編を希望!


K野 書店員アンケートでは、外国文学の『赤いモレスキンの女』、エッセイの『フランスの小さくて温かな暮らし365日』が人気でした。


細貝 外国文学では異色のSF『バグダードのフランケンシュタイン』、エッセイでは笑えて泣ける『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』もおすすめです。


斎藤 さて今年の文芸大賞ですが、「まるでウチの話!」とみんなで盛り上がった『にぎやかな落日』かな。


K野 満場一致で決定ですね。今年も充実した顔ぶれになりました!

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