日本とフランス。アジアとヨーロッパ。プロセスは違っても、健やかな美は誰もが求めるもの。異なる文化に触れ、さまざまな立場でキャリアを積んだラ・プレリージャパン株式会社 代表取締役社長 池田かおりさん。周囲の声に耳を澄まし、変化へ踏み出すことを彼女は恐れない。勇気をもって歩いたあとに、必ず道ができる、そう信じて。
ラ・プレリージャパン株式会社 代表取締役社長 池田かおりさん
GINZA SIXにある「ラ・プレリー ブティック」で。ラグジュアリーな空間にはトリートメントルームも併設されている
profile
’99 フランス国立高等科学物理学院卒業。その後、プロダクトマネージャーとしてロレアルに入社、東京およびパリ本社に勤務。
’08 LPGシステムズに転職。アジア・エクスポート・マネージャーとしてアンチエイジング関連機器の市場開発に携わる。
’11 グループSEBに入社。フランスと日本でマーケティング、ブランドイノベーション戦略を担当。
’20 同関連会社FeeligreenのCEO(最高経営責任者)に就任。化粧品と連動する美容機器の開発を主導する。
’24~ 現職。
勇気を出して最初のひとりになって
「ヨーロッパと日本を行き来していると、日本を訪れるたびに変化を感じるんです。『女性が強くなってきたんだな』と。自分で事業を興したり、トップに立ったりする女性の姿が日本でもビジブル(目に見える)になってきた気がします」
日本に生まれ、フランス、インドネシア、韓国で国際経験を積んだ池田かおりさん。大学で化学を専攻していたこともあり、医学的知見を背景に1世紀近くにわたって美と肌への探求を重ねてきたラ・プレリーのスキンケアシステムには、以前から信頼と憧れを寄せていたという。
「サイエンスの裏づけがありつつ、高級ブランドでもある。当時いたフランスからスイス本社にアプローチして、入社がかなったときは、とても感動しました」
オファーされたポストは、意外にも日本法人のトップ。日本の組織をインターナショナルチームに変える考え方と働き方のマネジメントを、という要請を受けたのは、2度目だった。
かつてフランスの美容機器を扱うメーカーの研究所に勤務していた池田さんは、開発部門と販売部門の意思疎通を期待され、マーケティング職に方向転換。さらに日本支社へと派遣され、本社との間をつないでセールスでも組織運営の面でも成果を上げた。
「日本とヨーロッパの両方で暮らしたことがあり、本社でも支社でも仕事をしてきた。異なる文化と組織を経験している私に、ということだったのでしょう。
日本で行った変革は、試行錯誤へのエンパワメント。日本人はなんでもパーフェクトにやらなくてはという思いが強く、失敗を恐れて前に進めないところがあります。でも、時には『Out of Box(枠にはまらない独創的なやり方)』で、居心地のいいゾーンから少しはみ出して冒険的なことを、まずはやってみましょうと。もし失敗しても、そこから学んで次に生かせばいいのだと働きかけました」
背中を押せば、人は動く。ラグジュアリーブランドにしては型破りなポップアップストアを展開すると、美容知識が豊富で顧客に対して真摯に向き合う販売スタッフの表情がいっそう輝き、多くの新規顧客の獲得をなしとげた。
「もうひとつの役割は、ボトムアップを実現することです。そのためには、とにかく人の話を聞く。ハーモニーを重視する日本では、思っていても声を上げにくい雰囲気がありますが、まずは私に聞かせてほしいと。
そうして、日本のお客さまのスキンケアのルーティン、スタッフが現場で考えていることなどを、データを交えながら本社に訴え、サポートを引き出す。小さなことでも今までできなかったことが実現すると、変わるんだ!と皆が喜んでくれるんです。トップダウンに従うのではなく、本社を強力な味方にする、その柱になれたらと思って」
人を、組織を前に進める、その原動力はいつでも「勇気」だと池田さん。この国の大人の女性たちに、もう一歩ずつの前進があれば、きっと変化は加速する。
「勇気を出して最初のひとりになれば、後から誰かがついてくるし、ほかの人も巻き込める。どんどん現れてほしいですね」
パソコンを入れている麻の葉紋様の紬のバッグは、日本で出会ったフランス人の親友からの贈りもの。「彼女はもう日本にいませんが、思い出として毎日使っています」
ウサギの柄がお気に入りのお守り袋も、常に身近に
ボトムアップの組織づくりは、キャリアの中で自身が体験し、学んだもの。「私の強みを引き出してくれた上司たちを見ていて、自分もこういう人間になりたいと思ったんです」
motto
いつも、どこにいても、美しい人生を。「違う国に行って、いろんなことを学んで、新しい自分になる。それが、プライベートでの目標。行きたい国が、まだたくさんあります」。
photography:Tomoko Meguro hair & make-up:Miho Kanesawa text:Michiko Otani ※エクラ2026年7・8月合併号掲載
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