更年期世代に突入すると、これまでは感じなかった"体の不調”を感じやすくなるもの。連載「変わりゆくカラダ学」では、アラフィーからのカラダのお悩みに専門家が回答! 今回は、「骨盤臓器脱」とその対策について。
骨盤臓器脱
【読者のお悩み】
腟の奥に何かが下がってくるような違和感を覚えるのですが……
――57歳・会社員
更年期以降になると、このかたのような症状のほか、「お風呂でしゃがんでいるときに腟に何かが触れる感じがする」「夕方になると腟に何かがはさまっている感じがする」といった症状が現れることがあります。
これは、子宮が本来の位置から下がってしまう「子宮下垂」や腟から脱出してしまう「子宮脱」の可能性が。子宮脱は「骨盤臓器脱」という病気の一種。骨盤内には、子宮、膀胱、直腸などの臓器があり、これを下から支えているのが筋肉と靭帯などからなる骨盤底です。
骨盤臓器脱は、この骨盤底がゆるんで臓器が腟に下垂・脱出してくる状態の総称。膀胱や直腸が腟側に押し出されてくる「膀胱瘤(ぼうこうりゅう)」や「直腸瘤(ちょくちょうりゅう)」があり、これらが複数重なる場合も。
主な原因は、出産時のダメージと加齢です。大きな赤ちゃんを産んだかたや、難産・鉗子(かんし)分娩だったかたなどは骨盤底に負担がかかっています。
ただ、それですぐに発症するわけではなく、更年期や閉経後にエストロゲンが減少し、骨盤底の弾力や靭帯の柔軟性が失われることで症状が出るケースが多いです。そのほか、肥満や慢性的な便秘、重い荷物を持つといった腹圧がかかる習慣もリスク要因に。
痛みが出ることはあまりなく、「何かはさまっている感じ」といった違和感が主な症状です。横になると臓器がもとの位置に戻るため、起床直後の朝は気にならないことが多く、長時間立ったり歩いたりした夕方に悪化するのが特徴です。
進行すると腟口にピンポン玉のようなものが触れるようになり、さらにすすむと臓器が腟外に出てくることもあります。また、膀胱が下がると、尿もれや頻尿、直腸が下がると、便秘や残便感などを伴うことが多いです。
進行するほど改善しにくくなるので、違和感を感じたら早めに婦人科へ。婦人科では骨盤底筋体操の指導や、ペッサリーリングを腟内に入れて臓器の脱出を抑えるなどの方法で治療をします。また、座るだけで骨盤底を電磁刺激で鍛えられる「エムセラ」などの機器を導入しているクリニックも。週1回ほど受けると骨盤底に力を入れる感覚が身につき、自宅トレーニングも続けやすくなります。
進行して完全に臓器が出てしまったら手術が検討されます。メッシュ(網目状の膜)を埋め込み臓器を支える手術など方法は複数あります。
骨盤底はいわゆる「腟トレ」と呼ばれる方法で自分で鍛えられ、続ければ軽度の骨盤内臓器下垂であれば改善することも。方法は、肛門から腟、尿道までをおなかのほうに引き上げるイメージで締めて5〜10秒キープ。これをこまめに行って。ピラティスも骨盤底を意識して使う運動としておすすめ。腟トレは尿もれ予防にもなるので、症状がない人も今から習慣にしておくと安心です。
【お話をしてくれたかた】
ふくやま ちよこ●日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。MET BEAUTY CLINIC医師。女性のライフステージに寄り添い、婦人科と美容医療の両面から治療法を提案。雑誌などのメディアでも活躍。
【お悩み募集中!】
この違和感は何? この不調は私だけ? 気になる体のお悩みがありましたら、編集部(mail : info.eclat@ms.shueisha.co.jp)まで声をお寄せください。
text:Miho Wada illustration:Ogasawara ※エクラ2026年7・8月合併号掲載