エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、韓国ドラマファンが待ちに待った、ナム・ジュヒョクの除隊後初作品「トングン ー呪いの宮ー」をご紹介。
朝鮮王朝を舞台にした悪霊ファンタジー時代劇「トングン ー呪いの宮ー」
「トングン ー呪いの宮ー」主演のナム・ジュヒョク Netflixシリーズ「トングン ー呪いの宮ー」独占配信中
ナム・ジュヒョクはやっぱり作品選びが上手いなぁと、この作品を観て改めて確信した次第です。大胆かつダイナミックでありながら、どこまでも緻密に練られたストーリーと、細部にいたるまでこだわり抜いた麗しすぎる映像美、そして、没入感が半端ない俳優陣それぞれの素晴らしき熱演。ナム・ジュヒョクが除隊後初の作品として選んだ時代劇(しかも悪霊ファンタジー!)は、間違いなく彼の新たな代表作となる傑作だと思うのですが、どうでしょう。
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不思議な吸引力。ナム・ジュヒョクの存在感から目が離せない!
身長188cmの恵まれたビジュアルだけでなく、どことなく寂しげで、不幸が似合うような独特のオーラにまとっているナム・ジュヒョク。そのニュアンスある存在感に、つい目が離せなくなってしまう、私的には不思議な吸引力のある俳優さんの一人なのですね。『まぶしくて -私たちの輝く時間-』の、実は主人公の幻影だった青年イ・ジュナだったり、『保険教師アン・ウニョン』の人間充電器という癒しの力を持つホン・インピョだったり、『二十五、二十一』の時代の不運に巻き込まれてしまうペク・イジンだったり、一見すると普通で等身大の青年なのに、どこかが欠けてしまっているような、ちょっと危うげで、なぜだか物憂げで、掴もうとすると陽炎のごとくゆらゆら揺れてしまってその実像を捉えることができない……、そんな印象(あくまで個人的見解です)。
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だからというわけでもないのですが、今回選んだ役もまた、そんな彼のハマり役ともいうべきキャラクターなのですね。時代は、とある朝鮮王朝。彼が演じるのは、王とも関わりのある山寺に住み込んでいるグチョンという身寄りのない青年です。寺にいるのに修行もせず、ぐーぐーと昼寝三昧している一見グータラ男のようなグチョンなのですが、実は彼にはある不思議な力があったのです。
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グチョンは、巫堂(ムーダン/神霊をその身に降ろし、占いや祈祷、厄払いなどを行う韓国のシャーマン)の母が身籠った子供。そのため、仕えていた神の怒りを買った母は、その罪に苦しんだ挙句に幼きグチョンとともに川に身を投げてしまうんですね。ところが、長い時間川の中に沈んでいたのにも関わらず、グチョンは命を落とすことなく救われるのです。一緒に沈んでいた母はもちろん絶命してしまうのですが、その時、彼は不思議な臨死体験をしていて、それ以降、現実の世界ともののけの世界、つまりは現世とあの世を行き来することのできる、人間でももののけでもない存在になってしまったのです。
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しかも、刀でもののけを斬り殺して退治することで、もののけを成仏させることもできる。いうなれば朝鮮王朝版ゴーストバスターとでもいうのでしょうか、ある意味ヒーロー的な要素もあるわけなのですが、もちろんその力は彼が望んだものではなく、どこか運命めいたものがあり、ナム・ジュヒョクが演じると、やっぱりどこかもの悲しさがついてまわっている感じなのですね。
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ということで物語は、朝鮮王朝の王イ・ヨン(チョ・スンウ)がグチョンの住む寺に訪ねてくるところから始まります。宮中では王の息子たちが世子(王位継承者)になった途端に、次々と不審な死を遂げており、そんなある晩、王は世継ぎを皆殺しにするというもののけの声を聞きます。と、その直後に、世子候補である最後に残った幼い息子の英安君が、あろうことかもののけに取り憑かれてしまうのです。
ノ・ユンソ Netflixシリーズ「トングン ー呪いの宮ー」独占配信中
実は30年前にも、世子が次々と不審死を遂げるという同様のことが起きており、どうやら、その頃から王宮の蓮池には王の一族を根絶やしにしたいと呪う、もののけが棲みついているらしい。グチョンの特殊な能力を寺の僧侶から聞いた王は、嫌がる彼を拉致して宮中に連れ帰ります。王はグチョンを表向きは風水師として宮中に置くのだけど、誰のことも信頼できない王(宮中は権力を狙う敵だらけだから)は、センガンという宮女(ノ・ユンソ)を彼の監視役につけるんですね。実はセンガンは王の実の娘。彼女もまた、もののけの声を聞くことができる特殊な能力を持っているのですが、王族がそうした力を持つことは禁忌とされているため、幼い頃に王宮から追放されていたらしい。
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そんな中、英安君の容態が急変。いよいよグチョンがもののけ狩りに出向くことになるのですが、はたして英安君を魔の手から救うことができるのか。そもそも、蓮の池に棲みつくもののけの正体はいったい何なのか。そして、30年前に王宮で何が起こったのか。人間ともののけと。そして、権力争いと欲望と怨念と。麗しくも禍々しい王宮を背景に、それらが複雑怪奇に絡み合いながら、圧倒的なスケールで物語が展開されていきます。
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圧倒的な映像美がみせる世界観と俳優陣の熱演に脱帽!
演出を担当したのは『悪魔判事』『赤い月青い太陽』のチェ・ジョンギュ監督。グチョンがもののけ狩りに行く“あの世”への扉は、どうやら水の中にあるようで、もののけと対峙するためにグチョンは何度も河川や井戸など水の中に入っていくのですが、ご存じのように、水中映像は韓国ドラマの得意とするところ。青々とした現世の美しくも幻想的な水中の映像が、あの世に移った途端にその生を感じさせる色彩は褪せ、血塗られたような赤黒い世界へと変わるのですね。
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そこらへんのゾクゾクするような映像吸引力もすごいのですが、さらにおもしろいのは、あの世がどこにあるのかというところ。現世とは全く別のところにあるのかと思いきや、あの世の世界(もののけがいる世界)は、現世の世界(王宮で人々が生きている世界)と表裏一体というか、パラレルワールドというか、互いに重なり合いながら存在しているという世界観なのです。
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つまり、王たちが暮らす美しく華やかな宮殿とまったく同じ場所に、生きている人には見えない、枯れ木に覆われ荒れ果てた宮殿が存在し、そこでグチョンともののけが壮絶な戦いを繰り広げるという次第。その映像の展開が美しすぎるし、カッコ良すぎるし、しかもめちゃくちゃダイナミックで、引きずり込まれずにはいられないのです。
ノ・ユンソ Netflixシリーズ「トングン ー呪いの宮ー」独占配信中
ナム・ジュヒョクを囲む俳優陣が、これまた素晴らしく。グチョンともののけ退治のバディを組む、センガンを演じるノ・ユンソは『私たちのブルース』で’22年にデビューしたばかりですが、当時から新人の枠を超えた演技力で注目を集めていた実力派。華奢な体型でありながら、地に足のついた強さとぶれない誠実さ、そして好感度の高い品性を備えていて、陽炎印象のナム・ジュヒョクを、もののけの世界から現実へとぎゅ〜っと引き戻す頼もしさがあるのですよね、これが。だからというわけでもないのでしょうが、今回のナム・ジュヒョクは、その陽炎のような存在感の奥に、しっかりとタフな実像まで垣間見えるというか。
チョ・スンウ Netflixシリーズ「トングン ー呪いの宮ー」独占配信中
そして、王イ・ヨンを演じるチョ・スンウです。そう、『秘密の森』の主人公シモクを演じた、ミュージカルのチケットが取れない俳優No.1の、あのチョ・スンウ。イ・ヨンは30年前に世子たちが相次いで呪殺されたために、身分の低い側室の子でありながら王になった男なのですが、この男、腹の奥に何を抱えているのかが最後まで読めないんですよね。心高き名君のようでもあるし、忠臣であっても邪魔になればいつでも切って捨てる非情な王のようでもあるし、そこらへんの演技の組み立て方がまさに絶品。王として背負う宿命と業、そして孤独。悪霊ファンタジーでありながら、チョ・スンウの存在と表現力がミステリーヒューマンドラマとしてのおもしろさをより際立たせているんです。
クァク・ドンヨン Netflixシリーズ「トングン ー呪いの宮ー」独占配信中
ほかにも、大妃役のチャン・ヨンナムとか、亡き世子役のクァク・ドンヨンとか、『伝説のキッチン・ソルジャー』の兵長役で私が見染めたイ・ホンネとか、それぞれにかなりな熱演を見せてくれていますので注目を。私のミュージカルの推しNo.1俳優、チェ・ジェリムさん(彼だけなぜか“さん”づけ)もほんのわずかですが出演しているので、ご興味あればチェックしてみてくださいませ。ということで、この夏の一気見は、暑気払いを兼ねて、この悪霊時代ファンタジーを。見応えたっぷり、間違いありません。
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