小田:なぜ肩の可動域が制限されてしまうのですか? 肩回りの筋肉がカチコチに固まっているから? 肩こりとどう違うのでしょうか。
守重先生:肩こりは筋肉の問題ですが、五十肩は関節のそのものの問題、もっと詳しくいうと「関節包(かんせつほう)」の問題です。
小田:関節包? 初めて聞きました!
守重先生:肩関節にある筒状の膜で、肩甲骨と上腕骨てっぺんの球状部分(骨頭)との接合部をぐるりと包み込むようにつないでいます。
関節包は伸縮性があり、内部にはゆとりがあるのですが、なんらかの原因で炎症が起こるとそれをきっかけに硬くなります。伸縮性が失われて硬くなり、筒内部にゆとりがなくなって、肩関節の動きが悪くなってしまうのです。
また、関節包の内側は滑膜(かつまく)という膜があり、関節の動きをよくする役割を果たしています。この滑膜は炎症を起こしやすい部位。関節鏡で見ると、五十肩の患者さんの滑膜は真っ赤に充血していますよ。
つまり五十肩は、関節包が炎症を起こす疾患。小田さんが重い荷物を運んだあと五十肩になったのは、関節包が強い力で引っ張られ傷がつき、関節包や滑膜に炎症が起こってしまったのでしょう。
小田:そうだったんですね! 五十肩は肩こりのひどいもので、筋肉が凝って肩が動かなくなっているとばかり思っていました。どうりで肩をマッサージしたり、ストレッチしたりしても、一向によくならないわけだ。
守重先生:そこ、勘違いしやすいところです。無縁ではないのですが、首肩の筋肉痛が関節包に直接影響を与えることはありません。肩こりと思い込んで、五十肩になったばかりの炎症期にストレッチをするなど無理に動かそうとすると、炎症が進んで症状が悪化することも多いのです。
小田:五十肩のとき、寝ているあいだもズキズキして痛かったのですが、あれはどうしてですか?
守重先生:夜痛むのは、五十肩の特徴でもあります。この痛みには諸説ありますが、起きているとき、肩は背中よりやや前にありますが、あおむけで寝ると、重力で肩が背中側に落っこちた状態に。すると炎症を起こしている関節包に負担がかかって痛むのです。
あおむけがキツイからと、うっかり痛いほうの肩を下にして横向きになろうものなら、さらに負担がかかって飛び起きるほどの痛みを感じることに。