【50代、私に心地いい家】リノベマンションのモダンな空間が心地いい、関根千園さん邸

センスのいいあの人のお宅を拝見。今回は「マリーエレーヌ ドゥ タイヤック」のディレクターや「サロン・ド・テ、ラデュレ」、「ドリス ヴァン ノッテン」のPRを務める関根千園さん邸。週末は軽井沢、平日は都心の家で過ごす夫婦の“東京の家”は、アートと融合したリノベーションマンション。

アートと心地よく暮らす家

関根さん邸1

何度も色をチェックして決めたというグレーの床は、夫婦共通のゴールとしていた建築家、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンの作品集が決め手に。そのグレイッシュな空間にマッチする杉本博司さんの作品『海景』はリビングと廊下にひとつずつ。夫の島田さんの希望によって、リビングはその作品と五輪塔を合わせてレイアウトした。以前所持していたピート・ヘイン・イークのテーブルもカラフルだったので、空間に合わせ、グレートーンの同じテーブルに買い替えるなど、色への繊細なこだわりが随所に

計算しつくした最適なレイアウトによってふたりが愛するアートがいきいきと空間に

関根さん邸2

重厚なドアをクリアなドアに変えたいというイメージもヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンの作品集から。クリアにすることで空間に広がりが出て、抜けをつくってくれた。サッシは黒のように見えて、実はブラウンのようなグレーのような曖昧な色みで柔らかな印象。

関根さん邸3

人がよく集まるダイニングは、ピート・へイン・イークのテーブルとピエール・ジャンヌレの椅子。エアコンを隠すために天井を下げてすべて内蔵したのは、建築家の提案。天井が低くなっても、一面の大きな窓によって開放感はキープされている。

関根さん邸4

床のヘリをよく見ると、わずか3㎜、漆喰(しっくい)の壁が浮いている。この繊細な抜け感が日本的な「間」のような存在に。シャルロット・ペリアンのヴィンテージのスツールには、島田さんが集めてきた花器に関根さんが花を生けて。

関根さん邸5

美しいイブ・コフォード・ラーセンのキャビネットには、島田さんのコレクションが並ぶ。3つ並べ、それに合わせてスポットライティング。好きなものを大事にする姿勢が伝わってくる。

関根さん邸6

リビングに溶け込みながら曲線が美しい家具が柔らかな印象をプラスするリビングコーナー。ソファ、ミニテーブルはフィン・ユール。飾られている作品は、ゲルハルト・リヒターの作品『FIRENZE』

何を美しいと感じるのか、復習のような作業の繰り返し

ブランドPRである関根千園さんとファッションディレクターである島田明さんのご夫婦は、それぞれの仕事柄、アートへの造詣が深く高い審美眼をもつ。共通の好きなものもあれば、違いもある。リノベーションはそれを融合させることで、唯一無二の空間に。

「インテリアを考えるとき、私は全体のバランス感や心地よさを重視しますが島田はディテールなどもっと細かい部分にこだわりをもっていて。私からしたらその部分は気にもとめないポイントだったりするので、島田と建築家の黒崎さん(アポロ)が盛り上がっている横でポカンとしている場面も多々ありました(笑)。けれど夫婦そろって好きなベルギーの建築家であるヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンの作品集などしっかりと共通のヴィジョンを軸にもちながら、お互いの意見と建築家の意見を取捨選択していったという感じです。ヴィンセントはベルギー出身なので、そのミニマリズムな雰囲気が東京にマッチするんだと思います。家を探す際に3LDKがもともとの希望だったのですが、やはりそれぞれの部屋があるということもよかったなと感じています。趣味が違う部分があるのはあたりまえのことで、それは各自の部屋で存分に生かして楽しめばいいので」

その言葉どおり、同じサイズの部屋をそれぞれリノベーションして、好きな家具を置き、まったく違う雰囲気の2部屋ができあがっている。

「並んでいる2部屋がまったく違っていて遊びにきた人がおもしろがってくれます。この家を見つけたとき、ここはよくなるという確信がありました。一から建てるとしたら迷いも生じるかもしれませんが、この空間ありきで、どう変えるかというお題に挑むのはおもしろかったです。場所が東京ではなかったらまた違った空間にしていたと思いますが、東京だからこそモダンなミニマリズムに着地した気がします。自分たちが住んでいる姿を何度も想像しながら、建築家と共通言語となる具体的な指針をもつことも重要。それが私たちにとっては一冊の作品集でした。そしてプロである建築家の提案は一度受け入れて考えてみるという柔軟さも必要だと思います。もちろん好みが合い、理解してもらっているという信頼関係あってこそ。島田がライティングにもこだわっていたので、その部分は建築家の推薦するライティングデザイナーが担当に。エアコンを隠すために一段下げた天井など、どれも私たちでは思いつかなかったアイデア。一方で、私が好きなフランスアンティークはやはり東京には少しなじみづらいと感じ、軽井沢の別荘で楽しむことに」

リノベーションは取捨選択の連続。その過程でもう一度自分が何に対して美しいと感じるのか再考を重ねるという機会だったとふたりは話す。愛するアート、この土地のムードなどが重なり、モダンな空間ができあがった。

DATA
延べ床面積:120㎡
築年数(居住年数):15年(5年)
購入したマンションをリノベーション。キッチン、バスルームはそのまま微調整。壁、天井、扉などはすべて取り払い、一度スケルトン状態にしている。

PROFILE
大学在学中から2年間パリへ留学し、帰国後PR会社WAGで仕事をスタート。’04年TFCに入社、’07年フリーランスとして独立。TFCにてドリス ヴァン ノッテンのPRを続け、マリーエレーヌ ドゥ タイヤックのディレクターや、パリ老舗のサロン・ド・テ、ラデュレのPRを務める。

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