戸籍は?期間は?手続きは?「里親制度」についてわかりやすく解説

さまざまな理由があって実の親と暮らすことができない子供を、預かり育てる「里親制度」。親元で暮らしたくても暮らせない事情がある子供たちを、家庭的な環境で預かり、愛情をもって見守る──。そんな社会貢献が、今の日本でも求められている。「里親になるのに必要な条件や手続きは?」「希望はどこまで通る?」など疑問は多いはず。知っているようで知らない「制度」のこと。まずは全体を把握することから始めてみよう。
教えてくれた人
日本財団 高橋恵里子さん

日本財団 高橋恵里子さん

’97年より日本財団で海外の障害者支援や国内助成事業に携わり、’13年「ハッピーゆりかごプロジェクト」を設立。実親と生活することがむずかしい子供たちに家庭での暮らしを届けたいと、特別養子縁組や、里親制度を啓発する活動を続ける。

子供たちが家庭的な環境で温かく育つための制度

里親制度は、実親の病気や離婚、経済状況など、さまざまな理由から、親元で育つことがむずかしい子供たちに、家庭的な環境下での生活を提供する公的支援のひとつで、第一に「子供たちのため」の制度。

長年、里親制度の普及活動にかかわる日本財団の高橋恵里子さんは、「日本では里親制度の認知度がまだ低く、必要な子供たちの利用が十分ではないのが現状」と懸念する。

「親元を離れざるをえなくて傷ついた子供たちも、里親家庭で愛情を受けることで、自己肯定感や信頼感を取り戻せます。将来の家庭を築く基盤がつくられるのです」

虐待を受け親元にいられなくなる子供も。彼らはまず児童相談所にある「一時保護所」に保護される。一時、とあるが「ここに2カ月以上滞在する子供も。また、一時保護所から施設に移るケースが多い」と高橋さん。

「海外に比べて日本は小さな子供も乳児院などの施設にいることが多い。やはり里親など家庭的で温かな場に移れることが、子供には理想です」

里親制度

養子縁組制度とは何が違うの?

里親制度は医療費や教育費も支給される

里親になると経済的負担がどれくらいなのか、不安を感じる人もいるかもしれない。「養子縁組」をすると、親権が育ての親に移るため国からの援助は出ないが、「養育里親」として子供を預かる場合は、1人当たり毎月9万円の「里親手当」と、5〜6万円の養育費(食費や衣服代などにあてる)が国から支給され、教育費や医療費は公費負担で無料。被虐待児や、障害がある子供など、専門的ケアが必要な子を預かる専門里親の場合は養育費支給が月約14万円になる。「手当があることを知らず、興味があっても里親になることを断念する人もいます。これは残念なこと。ぜひ手当や相談支援などがあることを知ってほしい」と高橋さん。養育費を使えば実負担はそれほど多くないと理解しておこう。

里親制度
特別養子縁組
普通養子縁組

参考/日本財団公式ホームページ

里親にはどんな種類があるの?

養育里親

社会的養護が必要な子供を一定期間、家庭で養育する。通常、里親とは養育里親をさす。期間は数カ月から1〜2年の「短期」と、自立するまで預かる「長期」がある。原則は子供が18歳になるまでだが、状況により延長するケースも。一方、実親の希望で途中で親元に戻ることも。

養子縁組里親(養子縁組を希望する里親)

養子縁組(基本的には特別養子縁組)を希望する里親が、準備段階として、養子縁組の必要な子供を養育する。期間は養子縁組が成立するまで。

専門里親

被虐待児童や、身体障害や知的障害があり専門的ケアを必要とする子供を養育する。別途要件があり、事前に専門的な研修を受けることが必要とされる。

親族里親

実親が死亡したり、行方不明になるなどの事情で子供が養育を受けられなくなった際に、祖父母などの親族が親権をもち、子供を養育する。

▼自治体によってはこんな取り組みも行っています

季節里親・週末里親(東京都の「フレンドホーム」、神奈川県の「3日里親」など)

各自治体が実施する制度で、夏休みや年末年始だけ、または週末だけ、児童養護施設などで暮らす子供たちを家庭で預かる仕組み。取り組み内容や制度の名称は、各自治体によって異なる。

ショートステイ里親(福岡市など)

保護者が、病気や育児疲れなどの理由で、一時的に育てられない子供を短期間だけ預かる制度。原則7日間以内。福岡市で始まった制度だが、最近は民間団体などでも実施している。

各自治体でさまざまな里親制度が

近年は、「ショートステイ里親」や「季節里親」「週末里親」など、各自治体がさまざまな名称で、短期間の預かりを行う里親制度をつくっている。預かり期間、条件等は各自治体によって異なるので、確認を。多くの場合は、児童養護施設などで暮らす子供たちに、家庭的な環境を体験してもらうための制度。実親や、長期の里親の「レスパイト(休息をとるための援助)」として利用されることも。

里親制度

里親になりたいと思ったら、まずは研修を受けてみよう

里親に興味はあるけれど、本当に自分にできるかどうか、不安に感じる人もいるかもしれない。でも、興味をもったらまずは説明会に参加してみてほしいと高橋さんはいう。

「里親になるために資格は特に必要ありません。心身ともに健康で、子供を育てる意思があり、経済的に困っていないことなど基本的な条件が合えば、どなたでも受け入れ可能です」

預かる子供の年齢や性別、およその預かり期間の希望を、あらかじめ伝えることもできる。自治体によって短期預かりを募集するところもあるので、そこから始めても。

「いろいろな預かり方があるので、まずは地域の児童相談所や民間団体に相談してみてください。近年は預かったあとの相談先や里親同士の勉強会なども増えてきました。子供たちのためにも前向きに里親を検討してくれる人が増えることを願っています」

里親になるまでのステップは?

1.児童相談所に相談

里親になることを希望・検討する場合、まずは地域を管轄する児童相談所へ電話連絡をして、面接予約を。検討中でも質問は受けつけてくれる。近年は民間団体を通すケースも増えている。

2.面接

児童相談所の職員と面接し、里親制度の説明を受ける。子供の預かりについての疑問点などを質問したり、里親登録の条件などを確認したりする。この時点では、里親になることに迷いがあってもOK。

3.研修

座学2日間、実習2日間、全4日間の認定前研修を受ける。夫婦そろっての受講が必要(または同居して養育を補助できる大人と)。里親制度の社会的背景や、子供を預かるために必要な知識を学ぶ。

4.申請

研修を受講し、里親になる意思が固まったら、管轄の児童相談所に申請書類を提出する。「里親になりたい理由」「養育環境や育て方」などを夫婦それぞれが記入。同居する家族や親族の同意も必要。

5.家庭訪問を受ける

児童相談所または里親支援機関の職員が、家族全員が集まる日に家庭訪問を行う。住居環境や家族関係等について里親の要件を満たしているかを確認し、家族全員から聞き取りを行う(2 〜3時間)。

6.審査・登録

申請書類や家庭訪問時の状況を踏まえ、里親の適否について里親認定部会の有識者による審査が行われる(2カ月に1回)。里親として認められれば、自治体により認定・登録される。

まずは児童相談所に問い合わせを

里親になることを夫婦で検討した際は、各自治体にある児童相談所に電話で相談を。問い合わせ時点で、里親になる意思が固まっていなくてもかまわない。近年は相談会が各地域で行われており、実際の里親の体験談が聞けるので参加してみるのもおすすめ。

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