<私も逆流性食道炎?vol.1>胸やけ、ムカムカ、胃痛の正体は逆流性食道炎!?専門医が教える典型的な症状と原因とは?【小田ユイコのいつもどこかが調子悪い#2】

50歳になったころから夜ベッドに横になったとき、口の中に酸っぱいものがこみ上げてきて慌てて飲み込むことが。そんな話を友人にすると「それって逆流性食道炎なんじゃない?」と。聞けば、仕事仲間にも逆流性食道炎を心配している人が思いのほか多い様子。逆流性食道炎って、いったい何?専門の医師、関 洋介先生にお話をうかがってきました。
関 洋介先生

関 洋介先生

四谷メディカルキューブきずの小さな手術センター外科(胃食道、減量・糖尿病外科)、臨床研究管理部部長。大阪大学医学部卒業後、同大学附属病院ならびに関連病院を経て、豪州フリンダーズ大学消化器外科、米国ミネソタ大学外科、2009年より現職。胃食道逆流症の外科治療で、屈指の執刀経験を有する。日本外科学会認定医・専門医・指導医。日本内視鏡外科学会外科学会技術認定医・評議員。著書に『胸やけ、ムカムカ、吐き気、胃痛、げっぷ…… それ全部、逆流性食道炎です。』(アスコム)など。
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。

胸のムカムカだけじゃない!止まらない咳、喉の詰まり感も逆流性食道炎の可能性あり

最近、家族や友人、仕事仲間のあいだでたびたび話題に上がる”逆流性食道炎”。今まであまり気にしていませんでしたが、多くの人がり患している可能性があると聞きつけ、ふと「私もそうなの?」と。

というのも50歳になったころから、ベッドに横になったとき口の中が苦いような酸っぱいようなものがこみ上げてくることが。また脂っこいものを食べると、胸のムカムカが起こるようになりました。これって年齢のせいで仕方がないと思っていましたが……。

「口の中にこみ上げてきたものや胸のムカムカの原因は『胃酸』の可能性があります。胃にあるべき胃酸が、食道のほうに上がってきてしまっているのです。すぐに症状がよくなったのでしたら問題ないかもしれないのですが、逆流性食道炎になっている可能性はあります。以下に挙げるような症状が頻繁に起こったり、つらい症状が続くようなら、一度消化器内科を受診することをおすすめします」と関 洋介先生。

あなたはいくつ当てはまる?注意が必要な自覚症状をチェック

●食事のあと、胸やけがひどく、吐き気がすることもある。
●寝ようと思って横になると、胃酸がこみ上げてくる。
●たくさん食べると、ひどい胃もたれでつらい。
●普段から酸っぱいものがこみ上げてくる。
●喉に圧迫感があって、息がなんとなく苦しい。
●胸がチリチリと痛むことがある。
●咳がなかなか止まらない。
●歯がもろくなる。

胸やけや胃もたれはわかりますが、胸の痛みや咳を引き起こすことがあるのですね。
「そうなんです、胸やけや胃もたれなら消化器内科を受診するので逆流性食道炎も見つかりやすいのですが、胸の痛みの場合、心臓の病気を疑って受診しても、心臓は大丈夫ですと診断され逆流性食道炎に気づかず放置されてしまうことも。また咳の場合、呼吸器科に行って咳喘息と診断され、アレルギー疾患の薬を処方されてしまい、なかなか治らないというケースもあります」。(関先生、以下同)

逆流性食道炎について知っているかどうかで、ずいぶん心構えが変わりますね。
「はい。食道に炎症を伴う逆流性食道炎を含む、胃食道逆流症は多くの方がり患する可能性のある病気。きちんと知っておくことが早めの治療、予防につながります」。
逆流性食道炎の症状に苦しむ女性
おなかが張る、食事をしたあとも胃がもたれる、食べたあと気持ちが悪くなる、食事の途中で満腹になってしまう、なども逆流性食道炎の症状。

脂っこい食事、お酒好き、ストレス、前かがみの姿勢。日本人の3~4人にひとりは逆流性食道炎

そもそも、食後に起こりやすい逆流性食道炎。いったい、食道で何が起こっているのでしょう。
「食事をすると、食べ物を消化するために胃から胃酸が分泌されます。胃酸はpH1で、塩酸と同じ強い酸性です。胃酸が逆流して食道に流入すれば、当然なんらかの悪影響を及ぼします。胃酸が食道に流入してしまう原因は、いくつか考えられます」。
①胃酸の分泌がすごく増える
「ひとつには、胃酸の分泌量がすごく増えてしまうこと。お酒やコーヒー、香辛料など刺激の強いものが胃に入ると胃酸が増えます。また精神的にストレスを感じたときも胃酸が増えます。コロナ禍を経て生活が変わり、ストレスの種が増えたことは、最近、逆流性食道炎の患者さんが増えたことと関係しているかもしれません」。
②胃と食道の“つなぎ目”がゆるむ
「胃と食道のつなぎ目の『噴門(ふんもん)』がゆるくなってしまうことも、胃酸が食道に流入してしまう原因。噴門は肛門と同じように括約筋(かつやくきん)が存在し、胃の内容物が食道に流れ込まないよう、食べ物が通るとき以外はギュッと引き締まっています。ところが、脂っこい食事を好む人は、この噴門がゆるくなり、胃からの逆流が起こりやすいのです。
また、『腹圧』がかかっても噴門は開いてしまいます。PC作業やスマホを見る際の前かがみの姿勢が多い人や、高齢で腰が曲がった人、肥満で胃が圧迫されている人は腹圧がかかりやすいので要注意です」。
そのほか、意外な原因も。
「ピロリ菌を除菌した人も逆流性食道炎は起こりがちです。ピロリ菌を除菌することは胃がん予防のために有用ですが、ピロリ菌に感染した胃は胃酸分泌がグッと減っています。除菌により胃酸分泌が戻るのはよいことなのですが、逆流性食道炎の可能性はかえって増えてしまいます」。

脂っこい食事、精神的ストレス、前かがみの姿勢、すべてが自分に当てはまりまくってコワイ(笑)。逆流性食道炎になる要素がいっぱいってことですね。

「小田さんだけでなく、多くの人に当てはまります。今や逆流性食道炎にり患している人は、日本人の4分の1から3分の1ともいわれ、現代病の代表格となりつつあるのです。女性は男性に比べると逆流性食道炎のり患率は低めなのですが、加齢とともにかかりやすくなる傾向に。50歳を超えたら、なんらかの症状があったとき逆流性食道炎を疑ってみてください」

逆流性食道炎は、放置すれば食道がんのリスクも

逆流性食道炎を放っておくとどうなるのでしょうか。
「治療をせず、逆流性食道炎の症状を抱えながらの日常は、著しく生活の質が低下します。たとえて言えば、狭心症や十二指腸潰瘍ぐらいのレベルです。食べるとすぐにおなかがいっぱいになってしまったり、食後に胸やけや胃酸がこみ上げてくる呑酸(どんさん)などの症状が現れると、毎日の楽しみが目減りしますよね。また、逆流性食道炎を長期に放置すれば、胃酸で歯がもろくなったり、食道粘膜の炎症により食道がんの発症リスクが上がってしまいます。

まずは、消化器内科に相談し、投薬で炎症を抑えることから始めましょう。また、日々の食べ物や、姿勢、肥満、ストレスフルな生活を見直し、逆流性食道炎を予防する意識が大事です」。

第2回目では、逆流性食道炎の治療と、具体的な予防法を関先生に教えていただきます。小田と同様、「私も逆流性食道炎かも?」と思った方、ぜひご一読ください!

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