<私も逆流性食道炎?vol.2>逆流性食道炎はどう治す?専門医に聞いた治療と予防法とは【小田ユイコのいつもどこかが調子悪い#2】

仕事などが立て込んでストレスがたまってくると、お酒の量が増え、脂っこいつまみばかり食べるようになる小田。vol.1で逆流性食道炎になりやすい火種を多く抱えていることがわかり、ときおり起こる長引く咳や胸の痛みも逆流性食道炎なのかも、と思い始めました。逆流性食道炎かどうかの診断はどのように? 逆流性食道炎だった場合の治療法は?引き続き専門の医師、関 洋介先生に教えていただきました。

まずは「消化器内科」を受診。胃カメラで詳しくチェックを

vol.1を読んで、「私も逆流性食道炎かも?」と思った方は多いはず。治すにはどうしたらいいのでしょうか。
「まずは消化器内科など『消化器』を標榜している科を受診してください。医師は一種の職人で、専門の科でないと逆流性食道炎を見つけられない可能性があります。

消化器内科では胃カメラで食道粘膜に炎症があるかどうかを調べます。炎症があれば、逆流性食道炎です。ただし、胸やけなどの症状があっても食道粘膜に炎症が見られないことも少なくありません。この場合、『非びらん性胃食道逆流症(NERD)』である可能性があります」。

私は大丈夫なのですが、胃カメラが苦手で受けたくないという人もいますよね。
「逆流性食道炎の診断に、胃カメラは欠かせない検査です。今の胃カメラは小型で性能が向上していますし、苦痛を感じる人には鎮静剤を使いますので安心して検査を受けることができます。食道がん、胃がん、十二指腸がんなど、ほかの病気の確認もできますので、ぜひ勇気を出して受けてください」。
逆流性食道炎の症状に苦しむ女性
逆流性食道炎を侮ることなかれ。長期間にわたる投薬を避けたければ、食事などの生活改善が必須!

まずは生活習慣の改善。場合によって投薬も

では実際に、逆流性食道炎と診断されたら、どのような治療を行いますか?
「症状や改善の状況に合わせて、最適な治療方法を検討していきます」。

●生活習慣の改善

「症状が軽い人、たまにしか症状が起きない人には、まず生活習慣の改善から始めてもらいます。具体的には、ダイエットをしたり、腹部を圧迫しない服を選んだり、姿勢を正すこと。寝るときは上体を高くしてもらいます。また、脂肪分の多いものや刺激になるようなたばこ、お酒、香辛料の効いた料理、コーヒーなどをなるべく避け、食後はすぐに横にならないようにします」。

わ~、揚げ物やお酒を制限するとなると、私としてはだいぶキツイです(笑)。
「逆流性食道炎はご本人の嗜好品が招いているケースが多いので、改善しきれず、なかなかよくならないことも。その場合は投薬を行います」。

●投薬

「もっともよく使われるのが胃酸分泌抑制剤。PPI(プロトンポンプ阻害剤)とH2ブロッカーの2種類の薬がありますが、このうちよく使われるのはPPIです。ドラッグストアで購入できる胃酸分泌抑制剤は、ガスター10など一部のH2ブロッカーのみ。PPIとその他のH2ブロッカーは処方箋がないと入手できません」。
これらの薬は、ずっと飲み続けて大丈夫なのですか? 副作用が心配……。
「必ず副作用が出るわけではありませんが、長期の使用などで副作用が報告されるケースも。医師の指導をよく守って、安全性を確保することが大事です。

そのほか、胃腸をよく刺激して動かしてあげる消化管運動機能改善薬、傷ついた食道粘膜を保護する粘膜保護薬、漢方薬を出すことがあります。漢方薬は『六君子湯(りっくんしとう)』をよく処方しますね。
いずれの投薬も、症状を抑えることはできても、再発のリスクはあります。やはり、生活改善を努力するほうが功を奏することが多いです」。

薬でよくならないときは、手術で治すという手もあり

「胃酸分泌抑制剤は、通常は1日に1回、毎日飲む薬。薬をずっと飲み続けることに抵抗がある人には手術をおすすめすることも。

胃の一部を少しだけ折りたたんで、胃と食道のつなぎ目、噴門(ふんもん)に胃酸が逆流しないよう堤防のようなものを作る手術です。腹腔鏡を使って小さい穴から行い、所要時間1時間半くらいで体に負担が少ないのが特長。症状の改善率はおよそ90%で、薬で症状が改善しない人におすすめです」。

手術を検討する場合は、この手術をたくさん行っている病院を探してほしいと関先生。インターネットで「逆流性食道炎」「胃食道逆流症」「腹腔鏡下手術」などのキーワードで検索すると情報が得られます。また、以上ご紹介した投薬や手術はいずれも健康保険が適用。手術は一時的に高額になりますが、健康保険の高額療養費制度を利用すれば、多くの場合10万円以下で受けられます。

逆流性食道炎は他人事ではない、身近な病気

逆流性食道炎は、現代に暮らす私たちにとっていつ起こってもおかしくない身近な病気であることが、今回わかりました。人生100年時代を健康に生き抜くには、胃腸の健康が不可欠。逆流性食道炎が今の食生活や生活習慣に警鐘を鳴らしてくれていると思って、しっかり改善していきたいです。

逆流性食道炎について、もっと詳しく知りたい!という人は、関先生が理事長を務める一般社団法人『GERD・LPRD診療ネットワーク』のホームページをぜひ参考に。逆流性食道炎を含む胃食道逆流症についての専門知識を、医療従事者や患者さんにお知らせしています。

まずは揚げ物とお酒を控えめにして、間もなく受ける健康診断の胃カメラ検査で、逆流性食道炎になっていないかしっかりチェックしたいと思います!
関 洋介先生

関 洋介先生

四谷メディカルキューブきずの小さな手術センター外科(胃食道、減量・糖尿病外科)、臨床研究管理部部長。大阪大学医学部卒業後、同大学附属病院ならびに関連病院を経て、豪州フリンダーズ大学消化器外科、米国ミネソタ大学外科、2009年より現職。胃食道逆流症の外科治療で、屈指の執刀経験を有する。日本外科学会認定医・専門医・指導医。日本内視鏡外科学会外科学会技術認定医・評議員。著書に『胸やけ、ムカムカ、吐き気、胃痛、げっぷ…… それ全部、逆流性食道炎です。』(アスコム)など。
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
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