【Jマダムを刺激する、センスあふれるパリの今】雨宮塔子、ヴェルサイユ宮殿で異次元ステイを

パリや周辺で気になるコト・モノ・場所を雨宮塔子さんがご紹介。今回は、パリからヴェルサイユへショートトリップ。とびきりに贅沢な空間で知的好奇⼼が刺激される『Le Grand Contrôle(ル・グラン・コントロール)』。宮殿ホテルでのプチヴァカンスをご紹介。
パリ1
ヴェルサイユ宮殿の敷地内にある超⾼級ホテル『ル・グラン・コントロール』を代表するスイートルーム「Necker(ネッケール)」。120㎡、天井の⾼さは4m以上。窓からはヴェルサイユ宮殿の庭が望める

パリに住む人が今、一番行きたい場所

王侯貴族の空間と時間にタイムスリップするヴァカンス

ヴァカンスの過ごし⽅は⼈さまざま。私の場合は⻑めの週末でロンドンに⾏ったり、友⼈の別荘に滞在したりするプチヴァカンスだけでも⼗分にリフレッシュ。その意味で、このホテルは本当に特別。パリから1時間もあれば余裕で来られる近さですが、別世界を⽣きているような気分になります。

「ようこそ、マダム・アメミヤ。私があなたのマジャードム(執事)のニコラです。ご滞在がすばらしいものになりますよう、努めさせていただきます」。ヴェルサイユの『ル・グラン・コントロール』での時間はそんなふうに始まりました。案内されたのはスイートルーム。柔らかな光が⾼い天井にまで満ちています。ヴェルサイユ宮殿の敷地にある館がホテルになることはかなり前から評判になっていました。センスのいい親しい友⼈は’21年のオープン早々に体験。滞在客だけの宮殿プライベート⾒学を含め、⼤満⾜だったことを話してくれました。仕事で何度か宮殿の特別訪問を経験している私にとって、このホテルの⼤きな魅⼒は、むしろ館での滞在そのものにあります。宮殿や美術館で鑑賞するマリー=アントワネットの時代の家具などが、ここではじかに触れて使えるものとして存在しています。スタッフのユニフォームにもその時代へのオマージュが込められていて。館全体が、フランスが誇る伝統の技やセンスを凝縮した、まるでタイムスリップしたような空間なのです。

宮廷の財務⻑官の私室だったというスイートルームは、「ここから⼀歩も出なくてもいい」と感じるほど。サロン、ベッドサイド、バスルームと室内を移動するだけで、さまざまなシーンが展開し、別のストーリーが流れ出します。椅⼦に座る、お茶をいただく。ひとつひとつの時間を慈しむ気持ちが⾃然に⽴ち居振る舞いにも表れて、背すじが伸びる感覚があります。いつもなら⾜を組んで楽にするところだけれど、膝に緊張感をもって座っていたり、窓や鏡に映った⾃分がその場に合っているかどうかに意識が向く。ここでは⾃分⾃⾝が主役です。この感じをたとえるなら、花嫁の気分。ドレスを着て祝福されている⾃分、さらにいうと、究極に素敵な⾃分を⽬ざして、準備の過程までも楽しむあの感じです。

今回の滞在が決まると、私は部屋の雰囲気に合うスタイルを考えました。パンツが多い私ですが、硬い感じは違うし、⿊も違う。ファブリックが柄ものなので無地がいい。楽だけれど、カジュアルすぎず、リュクスな気分でいられるようなものを……。そうして選んだ上質なシルクのスリップドレスは、カシミヤのセーターを重ねてもいいし、ヒールのサンダルを履けばそのままディナーのテーブルにも似合うはずです。とっても気に⼊っているのに、なかなか出番のないドレスを持っているなら、それを着て⾃分を主役にする休⽇を計画してみてはどうでしょう? たとえ⼀泊でも⼗分に気分が上がるヴァカンスとして成⽴すると思うのです。スマホやパソコンは忘れ、歴史⼩説でも携えてある種の緊張感を楽しみつつ王侯の暮らしに思いを馳せる。知的好奇⼼を⼤いに刺激してくれる特別な時間です。

パリ2
スイートルームで⾬宮さんを静かに待っていたのは、ウエルカムカードとたくさんのマカロン
タッセル
タッセルの細⼯ひとつひとつも芸術品。窓の外は⾒事に⼿⼊れされた宮殿の庭の美景
パリ3
ルームサービスの朝⾷が到着。宮廷時代を彷彿とさせる⾐装に⾝を包んだスタッフの動きも絵のよう
パリ4
レストランだけでなく朝⾷メニューもアラン・デュカス⽒の監修
パリ5
焼きたての⾹り⾼いヴィエノワズリー、繊細なフルーツサラダ、ドライフルーツ、フレッシュジュース。パンもバターも器やカトラリーのディテールまでが、超⼀流の優雅さに⼼躍るとびきりの朝
パリ6
⾬宮さんが選んだのは「THE ROW」のシルクドレス。シンプルかつ計算しつくされたデザインゆえ、上質なリラックス感とさりげないドレスアップの両⽅がかなう
パリ7
1階のサロンでのアフタヌーンティー。ビロードのスツール⾵の家具に銀のトレイ。サレ(塩味のきいた⾷べ物)とシュクレ(⽢い物)のいずれも満⾜感たっぷり
パリ8
宮殿の庭に⾯した2つの⼤きな窓がある空間で、猫⾜のバスタブに花びらとともに⾝をゆだねるという極上のひと時。これで気分が上がらない⼥性はいないはず
パリ9
ヴェルサイユ宮殿の広⼤な庭をゴルフカートで散策するのも宿泊客の特権。地下のプールやフィットネスルームなどアクティブにも過ごせるのがうれしい
パリ10
――究極に素敵な⾃分がそこにいる。それを⽬ざして準備する過程までも楽しむ。
パリ11
ひっそりと夜の帳(とばり)が下り、世界的な観光地とはまた別の顔を⾒せるヴェルサイユをひとりじめ

Data

Le Grand Contrôle
12 rue de l’Indépendance Américaine 78000 Versailles, France+33(0)1 85 36 05 50
https://airelles.com/en/destination/chateau-de-versailles-hotel
1室1泊(2名)€2,000から(朝⾷、アフタヌーンティー、宮殿⾒学、庭園散策等のアクティビティを含む)。「スイート・ネッケール」は€15,000から。

€1=¥156.85(12/12現在)

雨宮塔子

雨宮塔子

Toko Amemiya●フリーアナウンサー・エッセイスト。6年間のアナウンサー生活を経てTBSを退社。フランス・パリに渡り、フランス語、西洋美術史を学ぶ。’16年から3年間『NEWS23』のキャスターを務める。その後拠点をパリに戻し、執筆活動のほか、美術番組への出演や現地の情報をメディアに発信している。YouTubeチャンネル『A l’aube by Toko and Maho』も更新中。

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