【短期連載】雨宮塔子が見つけた“パリ”おしゃれの感性 vol.4「ドレスコードの妙味」

パリに長く住み、日々現地のおしゃれに刺激を受けているという雨宮塔子さん。4回に分けて、パリで出会ったおしゃれの発見を雨宮さんの書き下ろしエッセーとともにお伝え。第4回目は、パリの“フェット”での、新しい出会いを紹介します。
雨宮塔子

雨宮塔子

Toko Amemiya●フリーアナウンサー・エッセイスト。6年間のアナウンサー生活を経てTBSを退社。フランス・パリに渡り、フランス語、西洋美術史を学ぶ。2016年から3年間『NEWS23』のキャスターを務める。その後拠点をパリに戻し、執筆活動のほか、番組出演等で活躍。『ヨーロッパ街角中継 4Kで旅する パリ きらめく花の都へ』6月17日(土)18:00~ NHK BSプレミアムほかにて放送。
パリの風景
パリの屋根、復興工事中のノートルダム大聖堂、そしてエッフェル塔を一望するまるで絵のようなシチュエーションは正真正銘、合成なしの風景。マレ地区の南、サンルイ島と向かいあうセーヌ川沿いにそびえるモニュメンタルな建物が、コロナ禍の間に新しくホテル「SO/PARIS」として生まれ変わった。今回の撮影はその最上階に位置するパリの最旬スポット『BONNIE』が舞台

大人ならではのウイットがかいま見られるパリの“フェット(集まり)”

――文・雨宮塔子

BONNIEでの雨宮塔子さん
パリでまとまった人数で集まる、というと最新のアドレスでのパーティや旬なクラブでの集まりなど、華やかなイメージをもたれるかもしれません。もちろんそういう機会もありますが、とにかく会って話すことが大事、もっと気楽に集(つど)うことの方が断然多いです。

それはいわゆる“女子会”だったり、カップルでの集まりだったりしますが、あなどれないのがそうした会によく“テーマ”があること。

在住日本人の近しい友人たちとの会でよく出されるテーマは“色”。例えば「白」というお題が出されたら、みんな白い洋服をクローゼットから探すことから始まるわけです。40歳や50歳といった節目の誕生会では、その会のホストでもある、誕生日を迎える主役がかなりひねったテーマを出すのが通例で、今までも「レッドカーペット」「クレイジー」「昭和歌謡」など、思わず遠い目をしてしまうテーマの数々を突きつけられてきました。

というのは、無難にまとめたり、ただただ“きれい”を目ざすのでは許されない空気があり、どこかに笑えたり、機知に富んでいないとだめなのです。だからグループLINEにテーマが告げられると、みんなそれぞれ仕事を抱えて忙しいながらも、Saint-Denis(サン・ドニ)というヘアサロンの卸問屋街でカツラやウィッグを探したり、デギゼ(仮装)専門店、古着屋さんなどに足を向け、けっこうなエネルギーをかけてテーマに合う衣装を探します。

パリジャンの出すテーマはさらに複雑です。先日は、田舎に別荘をもつ50代のマダムがその邸宅にかなりの人数の友人を招いたのですが、出されたお題が「シック&ショック」。シックといえばパリジャンの十八番(おはこ)ですが、「ショック」って……。シックとショックってほとんど対義語では⁉ 頭を抱えたところに、グループLINEに一件のメッセージが。

「これって、ガーデンパーティよね? とってもシックな水着を着ていこうかな。でも私の体型がショック‼」

招待客のひとりのこの女性には会ったことがありませんが、かなり友達になれると思いました(笑)。

私も昔はストレートにハゲのカツラを被ったりもしましたが(汗)、そういうことではないんですよね。パリジャンのユーモアやウイットがどういうもので、それがどんなに大人っぽいか、実はこうしたテーマがある会で学んできたところが多いような気がします。
BONNIE受付

ファッションもレストランも、ワクワクするような高揚感を大切に

フェットや女子会の会場はお料理のおいしさ、サービスの心地よさはもちろんだが、ワクワクするような特別感があることが大事。市内中心に位置していて、しかも視界360度パリの風景を高みから見下ろすような『BONNIE』は、パリを熟知している人にとっても高揚感満点。総ガラス張り、天井はテラスまで鏡張りという新しくてスペシャルな空間
BONNIEの食事1
BONNIEの食事2
ⓒRomain Ricard
BONNIEの食事3
ⓒRomain Ricard
BONNIEの内観

『BONNIE』

ホテル「SO/PARIS」15階にある『BONNIE』は、ゆったりとしたレストランとバーから成っている。さらに16階には水曜〜土曜の夜にオープンする『Club』も。都会的でラグジュアリーな時間を満喫できるとっておきの場所。

Data Restaurant BONNIE

10 Rue Agrippa d’Aubigné 75004 Paris, France ☎+33(0)1 78 90 74 74

https://bonnie-restaurant.com/

パリをバックにする雨宮塔子さん
ドレスコードはもちろんのこと、お店の内装や雰囲気にどう映えるかも意識するポイントのひとつ。この日は、色はシックに、大胆なスリーブのブラウスでシルエットで遊んで
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