美しい55歳・富岡佳子さんスペシャルインタビュー「変わらない私、変わっていく私」

この春、55歳になる富岡佳子さん。よりシンプルに、ナチュラルになっていくという理想の年の重ね方。一方で、さらに進化し、新しいことにも挑戦し努力を続ける姿。その姿に同年代の私たちは、「希望」を抱くのかもしれない。éclatのカバーモデルとして8年という年月を重ね、今の心模様や変わったこと、変わらないこととは? 取材をした場所は、3月に麻布台ヒルズで開業する『ジャヌ東京』。東京の一番新しい場所で、一番新しい“富岡佳子”の今を見つめた。

“かけがえのない経験を重ねたからこそ、今、毎日がとても新鮮で楽しい”

富岡佳子
ドレス¥394,900/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ) 片耳イヤカフ(PG×ダイヤ)¥176,000・片耳ピアス(PG×ダイヤ)¥452,100・ブレスレット(PG×ダイヤ)¥471,900/レポシ日本橋三越本店(レポシ)

富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー 「シンプルに、軽やかに、“自分色”の輪郭を描いて」

内面はどんどんラクにシンプルになっていく

今月55歳になります。éclatという雑誌も、読者のかたがたも、55歳になる私を受け入れてくださる。アラフィーを超えて、新たな扉を開いてくださったことが、素直にとてもうれしいです。カバーモデルをやらせていただくようになって8年。こんなに長く表紙を飾らせていただけていることに、ただただ感謝しています。

撮影のある日は、朝起きて、家を出るまでの時間がどんどん長くなっています。スッとまっすぐに立つために、まずはストレッチやヨガのポーズで体をほぐし、顔や頭をマッサージしてと、やらなければいけないことも年々変化してきています。


でも不思議なことに内面はどんどんラクになっていくんですよね。55歳の今はさらにラクになりました。女性の一生は「30代は強く、40代は賢く、50代は豊かに……」といわれますが、振り返ると本当にそうだなと思います。

30代は子育てや仕事に無我夢中。とにかく毎日大変だったけれど、自分のキャパを超えてがんばったお陰でとても強くなれました。40代は、30代で得たたくさんのものを取捨選択し、自分にとっているものを見極め、いらないものは手放す。その作業をひたすら繰り返しました。今思えば、それが私にとっての「賢く」ということだったのかなと思います。40代で取捨選択したお陰で、50代がとても身軽になりました。どんどんシンプルになって、今はとてもラクに。人ってシンプルになればなるほど、輪郭が濃く浮かび上がってくる。それが楽しいなと思います。


ファッションもそう。さらにミニマルになりました。自分の好きなもの、よく着るものが明確になり、それ以外のものは持たないように。デザインが好きでも着心地が苦手な素材ならあきらめます。でも、新しいファッションアイテムを取り入れてワクワクときめく気持ちはずっと持ち続けていたい。前向きなマインドにもつながると思いますから。ファッションだけでなく、新しいものを知りたい、チャレンジしたい、何かを変えたいという欲をもつことは大切だなと思うのです。

家族のかたちが変化し今楽しいのは自分の時間

人生100年時代。折り返しを過ぎ、今感じるのは家族や親、体のことなど、私と、私のまわりを取り囲むいろいろなことが変わってきたなということです。一番変わったのは家族のかたち、そして私自身の気持ちです。

昨年から娘がひとり暮らしを始め、とうとう夫婦ふたりの生活になりました。最初の数カ月は、娘がかなりホームシックだったようで、電話で何時間も話を聞く日々。私自身も東京に出てきたころ、同じような気持ちだったのを思い出し、とにかく気のすむまで、ひたすら聞くことに徹しました。今では連絡してくることもすっかり減り、ひとり暮らしを満喫しているようです。

娘が独立して一番感じるのは時間が自由になったこと。「今までいったい何に縛られていたんだろう?」と思うくらい、自由になったのを実感します。「朝起きてから24時間、すべて自分のために使える!」という感覚がうれしくて。

20代の独身時代に再び戻ったかのよう。時間に縛られずに、撮影後にお茶をしたり、ごはんにも行けるなんて。朝から、晩ごはんのことばかりを考えていた日々を思うと夢のようです。ひとりでさっと美術館に出向いたり、映画を見たりすることも増えました。心に余裕ができたからか、手のこんだ料理に挑戦してみたり。今はひとりの時間がとにかく楽しいです。

最初はぎこちなかった夫とのふたり暮らしにも、少しずつ慣れてきました。「平日に仕事が空いたから温泉に行く?」とか「お鮨屋さんめぐりでもしてみようか?」とふたりの身軽さも楽しめるようになってきています。

真のラグジュアリーに触れる旅が新たな楽しみ

時間が自由になり、昨年は久しぶりに旅に、それも今まであまり行かなかった島旅に、幾度となく出かけました。初めて父とのふたり旅も経験したんです。昨年母を亡くしたこともあって、父がアクティブに動けるうちに一緒にと、夫にも協力してもらって計画しました。ほかにも、父や娘と一緒の旅もしましたし、友人たちとも。島旅の魅力は、船から見る景色のすばらしさや、港に着岸するときのワクワク感に始まり、手つかずの豊かな自然に触れられることです。印象的だったのは小豆島と隠岐島の海士町。大きくパラダイムシフトしている今の時代だからこそ、よりアナログでナチュラルなものを大切にしたいなと思います。景色もですが、日の出や日の入りを見たり。それこそが真のラグジュアリーだと思うので。これからも自然や遺跡に触れる旅にフットワーク軽く、出かけていきたいと思っています。

人の心の機微をくみ取れるように

もうひとつの私自身の変化は、相手の気持ちを、より深くくみ取れるようになってきたのかなということ。私は今、この瞬間とても楽しいけれど、一緒にいる相手はどうだろう?といつも考えるようになりました。昔よりも、人の気持ちをより深く見られるように。若いころ見た映画をもう一度見ると、当時とは違う気づきがあったり、感じ方が変わったり、登場人物の深い気持ちを理解できることがありますよね。経験を重ねたことで見えてくるもの、感じるものが深くなってきたのかなと思います。人付き合いでも、相手の感情を知ろう、知りたいとより強く思うようになりました。他人の感情が、時に人生観を教示してくれることもあります。自分の知らない価値観や哲学、考え方を知るためにも、本や新聞を読むことは大切だなと改めて思う日々。ネットだとどうしても情報が偏ってしまいますから。本や新聞を読み、心に響く、気になる言葉や記事があったら、ノートにメモしたりクリッピングする。以前から続けているこの作業は、これからもずっと継続していきたいです。日ごろから「何でだろう?」と考えていたことの点と点が、パッとつながる瞬間がうれしいし、気づけば言葉の引き出しの訓練にもなっています。

シンプルになればなるほど   輪郭が浮かび上がってくる

シンプルになればなるほど輪郭が浮かび上がってくる

ドレス¥394,900・靴¥242,000/ザ・ロウ・ジャパン(ザ・ロウ) 片耳ピアス(PG×ダイヤ)¥452,100/レポシ日本橋三越本店(レポシ) ソックス/スタイリスト私物
富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー シンプルに、軽やかに、“自分色”の輪郭を描いて

ずっと変わらないのはモデルとしての使命感と誇り

変わらないのは、モデルとしての矜持です。デザイナーさんやブランドが一生懸命に作った洋服を、リスペクトの気持ちをこめ、最大限きれいに見せる。洋服を一番いい状態でお見せすること。それがモデル歴36年目の変わらぬ矜持です。そして、それを見てくださったかたが手にとり、喜んでくださること。結果的に購買数が上がり、作り手のかたにも喜んでいただける。その好循環を感じられた瞬間が、モデルとしてなによりもうれしいのです。洋服をきれいに見せるためには、当然、スタイルをキープし、きれいな肌でいなければなりません。50歳のインタビューのときにも「この仕事は白鳥のよう。優雅に見せながら水面下では必死に足を動かしている」といいましたが、その気持ちも変わりません。今は週に3〜4回ジムに、加圧トレーニングには週1回通っています。スマホを見ているときでも読書中でも、首にしわが寄らないよう姿勢に気をつけたり。正直、365日24時間、気が休まることはないけれど、ここに立たせてもらっているのだからあたりまえ。洋服をきれいに見せるために、今も必死に水面下でもがき続けています。
 
改めて思うのは奇をてらわず、普通であることの大切さです。そして、変わらない自分を継続して見せていくことが、大切だなと思います。私自身、カバーモデルとしての気持ちも、やっていることもずっと変わりません。あたりまえのことを愚直にていねいに、積み重ねていきたいと思うのです。
富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー ずっと変わらないのはモデルとしての使命感と誇り
SNS時代では、見栄えることや、刺激的なことに目がとまりがちです。無料で簡単に、情報が手に入る時代だからこそ、逆に普遍的なことを雑誌というアナログな手段で伝えていく意味があるのではないでしょうか。時間をかけて、ていねいに作られる誌面から得られるものは、一過性の情報とは違うはず。真摯に取り組み、継続して積み上げてきたものがつまっています。同じようにエクラ世代のかたがたにも、子育てや仕事を継続してきたことによって得られた、かけがえのない経験や知識が山のように積み上がっているはず。だから、そのままで十分豊かだし、とても輝いている。そう思うのです。
富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー 変わらず続けることが「希望」になれば

変わらず続けることが「希望」になれば

最近、「富岡さんは希望です」といってくださる同年代のかたが多いんです。昔は誌面を見て「憧れです」とか「かわいい」といっていただくことが多かったのですが。今は「希望」とか「癒し」とか。私自身が変わらず、継続していくことが、同じ時代を生きるエクラ世代の「希望」になれば。ありのままでいいということを、私自身が身をもって体現していけたらと思っています。これからもナチュラルな富岡佳子を皆さまに見せていきたい。そのためにも、朝起きておいしい空気を吸うといった、日々のあたりまえのことを大切に。懲りずに何かに挑みながら、楽しんでいたいと思うのです。
富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー 積み上げてきたものを信じて、変わらずにナチュラルな私を見せていく

積み上げてきたものを信じて、変わらずにナチュラルな私を見せていく

富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー シンプルに、軽やかに、“自分色”の輪郭を描いて
シャツ¥121,000(シャルベ×ブラミンク)・パンツ¥88,000(ブラミンク)・靴¥137,500(ジェイエムウエストン)/以上ブラミンク

「希望」と思っていただけるかぎり道があるなら挑戦しつづけたい

富岡佳子55歳 スペシャルインタビュー「希望」と思っていただけるかぎり道があるなら挑戦しつづけたい
イネックセーター¥327,800・スカート¥577,500・ピアス¥67,100/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシーアンド ルーク・メイヤー)

変わらない&変わっていく“私をつくるもの”

読書も、新聞を読むのも変わらない習慣。気になった言葉や記事、思いついたことをノートに書きとめることもずっと続けているという。最近、増えた楽しみは島への旅。昨年は友人や家族を誘い、国内のいろいろな島を訪れたとか。島で空と海だけのシンプルな景色や朝日、夕日を眺め、"無"になる時間がとてもパワーチャージになると語る。

「心に残る“ことば”の記憶」

以前、本を出版したときに、ライターさんが過去の私のインタビュー記事すべてに目を通してくださって。「毎回ブレずに同じことをいっているね」と。それならばと、インタビューの言葉をノートにまとめてみたのがきっかけです。以来、疑問に思ったことや、新聞や本を読んで気になる文や言葉を書きとめたり、クリッピングしたり。特に朝日新聞のコラム、哲学者の鷲田清一さんの「折々のことば」は必ず読み、よくメモしています。新聞を読むとファッションが時事と連動しているのも感じます。
富岡佳子55歳  変わらない&変わっていく“私”をつくるもの

知らない世界に触れる“読書”の楽しみ

乱読ですが、手にとるのは心が“無”になれる本が多いです。時代背景や文化が、現実とは違えば違うほど、没入感があって夢中になれ、“無”になれます。一方で、哲学書を読むのも好きで、人生観が変わるような文章や言葉に出会えることも。本屋さんに並ぶ、芥川賞や直木賞、本屋大賞などを受賞した作品もチェックしますが、あえて友人や仕事仲間のおすすめを教えてもらい、読むようにもしています。ふだん、自分では手にとらない本に出会え、発見、感動があるので。
富岡佳子55歳  変わらない&変わっていく“私”をつくるもの

自分だけの景色に出会う“旅

名所や遺跡を見るのも好きですが、海と空だけのような、もっとプリミティブな景色に惹かれます。頭を空っぽにして海や空を眺める、“無”になる時間を大切に。それこそが旅で得られる真のラグジュアリー体験だなと最近思います。自分自身がナチュラルでいるためにも、ナチュラルなものを吸収したいんです。
富岡佳子55歳  変わらない&変わっていく“私”をつくるもの
写真提供/富岡佳子
八丈島に向かう船の上から見た空と海。八丈島ブルーと呼ばれるとか
富岡佳子55歳  変わらない&変わっていく“私”をつくるもの
写真提供/富岡佳子
小豆島の朝焼け。
富岡佳子55歳 変わらない&変わっていく“私”をつくるもの出雲、稲佐の浜の夕日
写真提供/富岡佳子
出雲、稲佐の浜の夕日
富岡佳子

富岡佳子

1969年3月28日、大阪府生まれ。19歳でモデルとなり、2016年10月号からéclatのカバーモデルに。昨年、娘が独立し、現在は夫とふたり暮らし。InstagramやWEBサイト「Letters from YoshikoTomioka」でライフスタイルやファッションについて幅広く発信中。Web éclat内にブログも。
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