【黒木華さんインタビュー】30歳を超えて「あまり無理しない」を目標に生きております(笑)

不思議な人だ。どんな時代のどんなキャラクターを演じても、“うんうん、いるよね、こういう人”と思わせる。そんな彼女が映画『アイミタガイ』で、今ここにいるかのような女性・梓を演じた。仕事に一生懸命、交際相手はいるけど、結婚願望はない。とはいえ“この先どうしよう?”と悩むことも多くて、親友の叶海(かなみ)はよき相談相手。その叶海が突然いなくなり、梓は心の支えを失って途方に暮れる。
黒木 華
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「悩んだときに、日記に書いたりするじゃないですか。でも日記は自分に相談しているだけで、やっぱり誰か話を聞いてくれる人が欲しい。聞いてくれる親友がいなくなって、どうしようもなくて梓は叶海のスマホにメッセージを送り続けるんです」

そのメッセージが叶海の両親の目にとまり、さらには仕事場での出会いや恋人の澄人が梓を思う気持ちが重なって、いつのまにか人と人とがつながっていく。まるでミステリーみたいに、ちょっとした思いやりや縁が、梓の過去や未来への不安を、ときほぐしていく。  

ちなみにアイミタガイとは、相身互い。他人への思いはめぐりめぐって自分に戻ってくる。優しさや思いやりが世の中を動かしている、的な。

いい人ばかりが登場する、善意の物語。だけで終わらせないのは、黒木さんのフツウとリアル。かすかな表情や言葉のニュアンスで、心の動きがせつないほど伝わってくる。だから物語が嘘じゃなくなる。「共演のかたたちのおかげです。私の芝居をきちんと受け止めて、返してくださる素敵な俳優さんばかり。普通に台詞をやりとりするだけで感情が動くし、がんばらなくても、梓でいられるんです」

つまりはこの映画そのものが、アイミタガイ。監督と俳優が作り出した作品に、観客である私たちの感動が重なって、小さな奇跡のように、物語は大団円を迎える。

そして黒木さん、次々に話題作、意欲作に出演してきたけれど、憑依型の俳優ではない、らしく。

「役を引きずる、とかはないですね。ひとつの作品を撮ったあとは、〝終わった、次!〟って感じです」

料理好きなので基本は自炊。体力維持のトレーニングも。

「決めて何かやるのが苦手なので、疲れたときはやりません。気が向いたときに、やる。30歳を超えて、あまり無理しない、を目標に生きております(笑)」

そんな彼女に、聞いてみた。時間もお金も自由自在、となったら、何をします?

「この人いいな、好きだな、と思う役者さんたちを集めて、舞台でお芝居をしてみたいです! 素敵な劇場で、すばらしい演出家に最高なお芝居を作ってもらう。チケットも安くして、皆さまに観にきていただけたらうれしいです」

やっぱりこの人、芝居の虫。

黒木 華

黒木 華

くろき はる●’90年、大阪府生まれ。’10年、NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。『小さいおうち』(’14年)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞を日本人最年少で受賞。近年の出演作に映画『せかいのおきく』(’23年)、『青春18×2 君へと続く道』(’24年)、ドラマ『下剋上球児』(TBS/’23年)、NHK大河ドラマ『光る君へ』(’24年)など。

『アイミタガイ』

『アイミタガイ』

中條ていの同題の連作短編(幻冬舎)が原作。ウェディングプランナー・梓(黒木華)は、親友・叶海(藤間爽子)の突然の死を受け止めきれず、悩みや思いをメッセージで送り続けていた。やがて交際相手の澄人(中村蒼)や身近な人たちのありようが、思わぬ形でつながっていき……。安藤玉恵、西田尚美、田口トモロヲ、風吹ジュン、草笛光子ほか。全国公開中

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