【韓国文学の“今”を読み解く】大都市・ソウルの永遠のテーマ!シビアな「不動産問題」を描いた2冊

エクラ編集部が今おすすめの韓国文学を厳選! 今回は韓国エンタメの背景にもよく出てくる「不動産問題」に注目。韓国で企画・翻訳オフィスを運営するライター、翻訳者の伊東順子さんにお話しを聞いた。

大都市・ソウルの永久不滅のテーマ【不動産問題】

小説にかぎらず、韓国のエンタメの背景によく出てくるのが、マンションなどの集合住宅や不動産の問題。

独自の賃貸システム“チョンセ”や“半チョンセ”は資産形成の方法ともつながり、うまくいくと暮らしをランクアップできるので、誰もがシビアに考えている。

「独裁政権時代、都市開発の情報は大統領周辺の人たちが独占していたのですが、民主化によって情報の公開が進みました。それによって一般の人々が不動産投資に参加するようになり、競争が加熱しました。韓国は“不動産階級社会”といわれますが、家が階層を表すことで、貧富の差が明確となり、それが教育や就職にまで影響することに。社会に光と影を与えている問題ともいえます」(伊東さん)

『ソヨンドン物語』 『こびとが打ち上げた小さなボール』

『ソヨンドン物語』

チョ・ナムジュ 古川綾子/訳
筑摩書房 ¥1,870
不動産売買で成功した親とその恩恵を受けた子、憧れのマンションを手に入れたのに悩む夫婦など、不動産をめぐる悲喜こもごもを描いた連作短編集。

『こびとが打ち上げた小さなボール』

チョ・セヒ 斎藤真理子/訳
河出文庫 ¥1,430
舞台は’70年代のソウル。「こびと」一家は都市開発のため住まいを追われ、経済成長下の社会の底辺で生きのびていく。’78年刊行で今も売れ続けている小説。

ライター、翻訳者 伊東順子
いとう じゅんこ●愛知県生まれ。’90年に渡韓。ソウルで企画・翻訳オフィスを運営。’17年同人雑誌『中くらいの友だち―― 韓くに手帖』(皓星社)を創刊。著書に『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』『続・韓国カルチャー 描かれた「歴史」と社会の変化』(ともに集英社新書)など多数。

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