シャネル傘下のメゾンダール「メゾン ミッシェル」究極の帽子づくりのアトリエへ

1936年にオーギュスト・ミッシェルがパリで創業した、帽子のアトリエ「メゾン ミッシェル」。’06年からは、オリジナルのプレタポルテ・ラインもスタートした。メディアに出ることはまれなアーティスティック・ディレクターのプリシラ・ロワイエが、メゾンの過去・現在・未来を語る。
Priscilla Royer

Priscilla Royer

パリのストゥディオ・ベルソーでファッションを学ぶ。ロンドンで経験を積んだのち、姉、友人とともにアートとつながりの深いブランド「ピエス・ダナルシーヴ」を立ち上げる。ブランドをクローズした1年後の’15年より、メゾン ミッシェルのアーティスティック・ディレクターを務める。
写真:©Donata Wenders

素材の開発、技術の伝達、進化するメゾン ミッシェル

「最初にここを訪ねたときは、帽子作りにおける計り知れない可能性に本当に驚きました。その日以降常に、学ぶことはたくさんあります。このメゾンのユニークさは、“不可能なことはない”という概念に基づいていますから」。プリシラ・ロワイエは、こう断言する。メゾン ミッシェルでは、木型作りから装飾の縫い付けまでが、90年近く前の創業時から伝わる昔ながらの器具工具、工程で進行中だ。

 毎シーズンの試みのひとつは、フォーミエ(木製帽子型製作職人)と協力して新しい形を作ること。木型はキャロットと呼ばれる頭の部分と縁が別々なので、かぎりない組み合わせで新作を構想するのも楽しい。シャネルの定番である「キャノティエ」は、縁のボリュームを変えるとまったく違う表情に。また時代の流れによるニーズや美意識に合わせて開発した素材を取り入れれば、定番もモダンに生まれ変わる。「ライフスタイルを考慮した素材を適用しました。例えば丸めてラゲージに入れられるストローハット。フェルト帽なら形状記憶やウォータープルーフに」

 プリシラのインスピレーションは、あらゆるところから。行く先々で人々を観察し、彼らの習慣を理解し、彼女たちの身になって何が必要かを考える。機能性や天気も大事な要素。また、ほかのメゾンダールとの交流も刺激的だ。花細工や羽根細工を加える際はルマリエと、刺繡がかかわってくればアトリエ モンテックス、レザーの要素があれば、マサロと。ヘッドピースでは、パロマに協力を求めることもある。「le 19Mとして他分野の職人たちとひとつ屋根にいられると、コーディネーションがスムーズで、相乗効果が生まれますね」。彼女は密なコラボレーションを通じて、手仕事の大切さをますます認識するようになった。
「私たちにとってサヴォアフェールは何にも増して大切です。アイデアがあっても、それを現実化してくれる職人がいなかったら、宝の持ち腐れ。逆に技術はクリエイションがあってこそ生きるものであって、単独ではストーリーを語れない。つまり持ちつ持たれつの関係ですね。メゾン ミッシェルではここ数年の間に数人の職人が定年退職するので、次世代に技術を確実に伝えることに私も積極的にかかわっています。私がどう貢献しているか? 答えはシンプル。メゾン ミッシェルの可能性を信じて、ここでの仕事を続けることなのです」。彼女にとってサヴォアフェールの未来は、日々観察し、学び、考え、そして職人たちと二人三脚で新しい提案を実現させることにある。

最も歴史を感じさせるのが、シャプリエのアトリエ。ここでは常時蒸し器のアラームやハンマーの音が鳴り響く。

メゾン ミッシェルのアトリエは、4つの部門に分かれている。手順としては、まず木型を彫るフォーミエ、フェルトとストロー、両方の素材を形にするシャプリエ、装飾を含めた一連の縫製と仕上げを一手に受けるのが、モディスト。そしてこれらとは別に、ストローを縫いながら形にしていくのが"パイユ・クジュ"。いずれの部門でも、一人の職人が全工程をこなすことができる。

モディストの仕事の中でも、形にな ったフェルトにレースやツイードをはる作業は最もむずかしく、熟練を要する

モディストの仕事の中でも、形になったフェルトにレースやツイードをはる作業は最もむずかしく、熟練を要する

メゾン が誇る伝統的な技術のひとつが、この"パイユ・クジュ"。麦わらを、らせん状に専用の ミシンで縫い付けていく

メゾンが誇る伝統的な技術のひとつが、この"パイユ・クジュ"。麦わらを、らせん状に専用のミシンで縫い付けていく

フォルム、つまり型を作る職人フォーミエは、20以上のノミ やナイフを使い分けての"彫刻" で木型を作る。素材は、熱に強い菩提樹の木。以前は外 注だったところ、数年前に統合された 

フォルム、つまり型を作る職人フォーミエは、20以上のノミやナイフを使い分けての"彫刻" で木型を作る。素材は、熱に強い菩提樹の木。以前は外注だったところ、数年前に統合された

カットされたフェルトが届いたらはけで水分を 塗り、蒸し器に入れて柔らかくする

カットされたフェルトが届いたらはけで水分を塗り、蒸し器に入れて柔らかくする 

蒸し器から出したフェルトを、木型に被せる前に 手で伸ばして形にする

蒸し器から出したフェルトを、木型に被せる前に手で伸ばして形にする

メゾン ミッシェルの定番フェルト帽が、この「ヴィルジニー」。 その特徴、コンマの形を模した頭頂部の窪み部分には、リング状に湾曲させた木製パーツ をはめ込み、ヘラでしっかりと形を整える

メゾン ミッシェルの定番フェルト帽が、この「ヴィルジニー」。その特徴、コンマの形を模した頭頂部の窪み部分には、リング状に湾曲させた木製パーツをはめ込み、ヘラでしっかりと形を整える

シャプリエの作業机には、完成間近の「ヴ ィルジニー」が。あとは縁をカットするだけ

シャプリエの作業机には、完成間近の「ヴィルジニー」が。あとは縁をカットするだけ

シャプリエでの最終段階は、形にしたフ ェルト帽を木型に載せたまま乾燥器にかけること

シャプリエでの最終段階は、形にしたフェルト帽を木型に載せたまま乾燥器にかけること

Information

『la Galerie du 19M Tokyo』展は六本木ヒルズ森タワー52階にて、9月30日〜10月20日まで開催
©CHANEL

『la Galerie du 19M Tokyo』展は六本木ヒルズ森タワー52階にて、9月30日〜10月20日まで開催。入場無料。会期中には刺繡とチャーム作りのワークショップ(事前予約制)、トーク、子供も参加できるミニアトリエなどイベントも開催。書籍やオブジェの売店も。プログラムと予約は公式サイトにて。

https://www.chanel.com/jp/fashion/event/opening-gallery-19m-tokyo-2025/

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