灰皿までも麗しき時代。

灰皿までも麗しき時代。_1_1
「おタバコは?」と訊かれて「すいません、吸います」と返すオジンな冗談ともども、遭遇の機会がめっきり減ってしまった灰皿。

すっかり煙たがられる存在になりましたが、かつては社交の場にたえうる高級調度品としての顔がありました。その分、気合いの入ったものもあるわけで、作品として十分な魅力を有する濱田庄司、河井寛次郎、北大路魯山人らの灰落としは、別用に使ってみたくなるほど。

しかし今や工芸作家の個展で新作に出会うことは稀ですし、飲食店で目にするのも簡便なものばかりになりました。近代に一気に隆盛を極め、急激に規模縮小した存在という点では、蒸気機関車に重なります。そういえば、電子タバコとして「電化」が進んでいるところも似ているかもしれません。

これまで目にした中で最も美しい灰皿は、アルジー・ルソーによるパート・ド・ヴェール製。登場したのは、「狂騒の1920年代」のようです。こういうものに吸い殻をぐじぐじしてた時代って何なん? と、平民非喫煙者は異次元の100年前に思いを馳せました。
(編集B)

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