【私が好きな一冊】作家・川内有緒が衝撃を受けた「開高健」の作品

亡くなって30年がたった今、改めて読みたい「開高健」の作品。今回は、作家・川内有緒さんにお気に入りの一冊「オーパ!」をご紹介いただきました。
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かわうち ありお●’72年、東京都生まれ。パリの国連教育科学文化機関などに勤務したのちノンフィクション作家に。’18年『空をゆく巨人』で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。

川内有緒さんが好きな作品

『オーパ!』(集英社文庫 ¥960)

巨大魚を釣るためアマゾン川をさかのぼる。60日間、1万6000キロにおよぶ旅は「OPA!」(ポルトガル語で驚き・感嘆)の連続だ。その後、アラスカ、コスタリカ、モンゴル、中国などの秘境にも釣行し、シリーズは全4巻に。
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「冒険に憧れている私にとって、いつか行ってみたいという思いを募らせ続けている土地がアマゾン。24歳で『オーパ!』を初めて読んだとき、行くだけでも大変な秘境で長期間、ただひたすら釣りをするなんて、なんて自由で贅沢なんだ!と驚愕しました。さらに、その旅路や風景、そこに生きる人たちの暮らしや歴史、食べ物、音楽、文化、会話のディテールまでが渾然一体となって読者に迫ってくる、圧倒的な表現力。紀行文学の金字塔だと思います。

そんな作家の名を冠した開高健ノンフィクション賞は、ほかの賞と異なり、冒険や旅を描いた作品が多数受賞していて、旅好きの私には大きな憧れでした。受賞の知らせを受けたとき、開高さんが牽引してきた冒険文学の末席に名を連ねることに、うれしさと同時に動揺が走りました。

開高さんが活躍した時代と比べ今の日本は閉塞感が強く、40、50代になると、長い旅をしたり人生を楽しむことをためらうかたも多いでしょう。でも『オーパ!』シリーズを読めば、こんなふうに自由に生きていいんだと勇気をもらえるはずです」

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