「白内障」は老化現象のひとつ。早めに受診をして予防を

老眼など、エクラ世代に押し寄せてくるさまざまな目の不調、目の病気。高齢者の目のトラブルとしてよく知られる「白内障」の症状や予防について、眼科医の梶原一人先生に聞いた。

教えてくれたのは…

眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長 梶原一人先生

眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック院長 梶原一人先生

慶應義塾大学医学部卒業後、臨床眼科学を学び眼科医に。’90年に渡米し研究を重ねたのち、現在のクリニックを開設。著書に『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』。YouTube『100年生きる! 眼科チャンネル』も好評。

避けられない水晶体の老化。進行したら、手術での対応を【白内障】

白内障は白髪と同じで老化現象のひとつ

老眼と並んで、高齢者の目のトラブルとしてよく知られるのは「白内障」だろう。近年の統計によると、50代で約40%、60代で約70%、70歳以上になると約90%が発症していて、高齢化社会では誰もが罹(かか)る可能性がある病気だといえる。

「目のレンズである水晶体がにごって見えにくくなるのが『白内障』です。水晶体のタンパク質の構造が変化するのが理由で、透明な生卵の白身に熱を加えると白くなって固まるようなもの、といえばわかりやすいでしょうか。初期のうちはそれほど見え方が変わりませんが、進行するにつれて、視界が全体的にかすむ、視力が低下する、光をまぶしく感じる、薄暗いところではよく見えない、といった症状が現れるようになります」

ただし、加齢が原因の白内障は決して怖い病気ではないという。
「治療のタイミングを自分で決めることもできます」と、梶原先生。

「アトピー性皮膚炎や糖尿病などが原因の白内障を除くと、ほとんどが加齢によって起こり、いってみれば白髪と同じで老化現象のひとつです。点眼薬で進行を遅らせることもありますが、治療の基本は手術。にごった水晶体を超音波でたたき砕いて吸い出し、かわりに人工の眼内レンズを入れてクリアな視界を取り戻します。最近はレンズの開発が進んで、単焦点眼内レンズ(ひとつの距離にピントを合わせるレンズ)と多焦点眼内レンズ(複数の距離にゆるやかにピントを合わせられるレンズ)から、本人の希望で選べるようになりました」

多焦点レンズは、一枚で遠近のどちらも見ることができて便利だが、そのぶん、単焦点レンズより価格が高めであり、自由診療扱いとなるものが多い。一方の単焦点レンズは、メガネとの併用が必要になるものの、より視界はクリア。どちらのレンズにも長所・短所があるので、医師とよく相談してから選びたい。

「『手術はいつすればよいですか?』と患者さんによく聞かれますが、合併症を併発しないかぎり、白内障で視力を失うことはありません。仕事で目を使う、車の運転を頻繁にするなど、視力が落ちると困る人は早めに手術を。現在の見え方で不自由がなければ、仕事やライフイベントなどが一段落したタイミングで手術を受けてもよいでしょう」

ただし、視界が白っぽいのを白内障だと自己判断して、治療を先送りしたまま放置するのは危険だという。

「高血圧の人は血管にかかる圧力が高く、眼底にある動静脈が硬くなったりくびれたりして出血すると、血管からしみ出した成分によって網膜にむくみが生じ、白くにごって見えることがあります。また、糖尿病の場合も同様で、血液中の過剰な糖分が網膜の血管に内側からダメージを与えてむくみが起きると、視界が白くにごって見えます。緑内障も視野が欠けるというよりかすむことが多いので、視界が白っぽく見える=白内障とは決めつけず、見え方に違和感があれば、必ず眼科を受診してください」

水晶体の白濁によって光が散乱してしまう

水晶体の白濁によって光が散乱してしまう

白内障は、組織の老化によって水晶体がにごり、入ってきた光が散乱して収束しにくい状態。「かすむ」「まぶしく見える」などといった症状になる。

老眼の場合

老眼の場合

近くを見るときは毛様体筋の収縮により水晶体を厚くしてピントを合わせるが、加齢により水晶体がしなやかでなくなるとピント調節がうまくいかない。

《白内障は、手術によって治療できる!》

❶角膜を切開し、白くにごった水晶体の前嚢(水晶体を包む薄い膜の前部分)を切り取る。

❶角膜を切開し、白くにごった水晶体の前嚢(水晶体を包む薄い膜の前部分)を切り取る。

❷水晶体の核と皮質を超音波で細かく砕き、 吸引して取り出す。

❷水晶体の核と皮質を超音波で細かく砕き、吸引して取り出す。

❸残した後嚢の中に眼内レンズを挿入する。短時間で終わる日帰り手術が中心で、術後の翌日から疲れない程度に目を使える。

❸残した後嚢の中に眼内レンズを挿入する。短時間で終わる日帰り手術が中心で、術後の翌日から疲れない程度に目を使える。

眼内レンズには多焦点と単焦点がある。単焦点レンズはピントが合う距離が一カ所で、"遠方"を選んだ場合、近いものを見るときはメガネが必要になる。多焦点レンズはゆるやかなピントで全域見えるが価格が高く、保険適用手術になりにくい。

眼内レンズには多焦点と単焦点がある。単焦点レンズはピントが合う距離が一カ所で、“遠方”を選んだ場合、近いものを見るときはメガネが必要になる。多焦点レンズはゆるやかなピントで全域見えるが価格が高く、保険適用手術になりにくい。

主な治療法は?

水晶体を眼内レンズに交換する手術
白濁した水晶体をもとに戻すことはできないが、水晶体をレーザーで砕いて取り出し、人工のレンズと交換することで見え方を改善することが可能になる。手術の翌日からよく見えるようになる。

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