「実はいくつかお声をかけていただいていたんです。マリインスキー(バレエ団)やパリ・オペラ座(バレエ団)からも。タイミングが合わなかったということはありますね。あのときに行っていたら今ごろ私どうなっていたかな、と思うことは正直あります。惜しかったかなとか(笑)。一般的に海外バレエ団に所属して帰国すると手放しで称賛される傾向がありますよね。だから評価で悔しい思いをしたこともありますよ」
でも上野さんの脳裏には尊敬する森下洋子さんの姿があった。
「森下さんのように日本で踊り続けたい、日本の皆さんにこそ私のバレエを見ていただきたい。気がついたらその思いを貫いていました。技術のレベルは国際的にも負けないものを、心の部分では日本人であることを大事に、ほかのダンサーにはないオンリーワンになることを目ざして」