50代が泣ける!大人を震わす、感動必至の韓ドラ3選!

今、韓国ドラマには、御曹司も出てこない、交通事故も起こらない、“ごく普通の人”が織りなす大人向けの人間ドラマが増えている。脚本家&演出家に注目し、アラフィーにこそ見てほしい韓ドラを、韓国エンタメ担当の編集K野がおすすめ!
編集K野

編集K野

「冬ソナ」で韓国ドラマにはまって以来、エンタメ、食、言語など韓国文化全般に興味をもつ。’16年、40代で韓国に1年間語学留学。現在はエクラで韓国エンタメを担当。

“胸キュン”より“胸ブル”!韓国のヒューマン系ドラマに注目

思えば20年前(ぎゃっ!もうそんなに前…)、『冬ソナ』でヨン様のカッコよさに打ちひしがれて以来、韓国ドラマはいつだって、トキメキを忘れた私の心を蘇生してくれる救命装置のような存在なんですが、ここ数年、心の蘇生のされかたが、ちょっと変わってきたというか…。もちろん胸キュンもいいんですが、アラフィーの心の傷を癒してくれる(歳を取ればハガネの心臓になると思ってたのに決してそんなことはなく…)、心震わす人間ドラマを求めるようになってきたんですよね…。そう、“胸キュン”より“胸ブル”。大人だって、ちょっとした一言に傷つくし、理不尽なことには頭もくるし、仕事も家事もいつだって余裕なんてないのだ!という荒れ気味な心をそっと癒し、今私が欲しがっている一言をみごとに突き刺してくれる、そんなドラマを。

というのも、ここ数年、韓国ドラマには上質なヒューマン系ドラマが増えていて、大人のり欲求にみごとに応えてくれる作品が数多くあるんです。中でも個人的に注目しているのが、脚本家パク・ヘヨンと、演出家キム・ウォンソクの作品。

パク・ヘヨンは’72年生まれのまさにアラフィー女性。ある雑誌のインタビューで彼女は「(自分の人生は)不幸である理由が何もないのに、幸せでない理由はなんなのか」と述べていて、ドラマにありがちな陰謀、裏切り、誤解、病などの事件や事故がない一見平穏な人生にも心の渇きがある、と言っているのです。一方、キム・ウォンソクは’78年生まれの男性で、韓国では有名なヒットメーカー。現在、’23年下半期か’24年上半期に放映予定の新ドラマを制作中で、その名も「人生」(仮題)なんだとか。

ドラマではキラキラな俳優や女優が演じているけれど、作り手はアラフィー世代。そこには人生の半分を生きてきてなお、答えの出ない、人間の欲とは、正義とは、そして人生とは、という問いに対峙する、大人の姿勢が垣間見えて、共感せずにはいられないのです。 ということで、編集K野の、まずは観てほしい、3大“胸ブル”ドラマを勝手にご紹介いたします!

『私の解放日誌』(2022)

 ‘22年の激オシ!アラフィー世代に響きまくるセリフの数々は小説のよう

脚本:パク・ヘヨン 演出:キム・ソギュン

左から長男ヨム・チャンヒ(イ・ミンギ)、長女ヨム・ギジョン(イエル)、次女ヨム・ミジョン(キム・ジウォン)の3きょうだい。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
左から長男ヨム・チャンヒ(イ・ミンギ)、長女ヨム・ギジョン(イエル)、次女ヨム・ミジョン(キム・ジウォン)の3きょうだい。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中

近年見た韓国ドラマの中で、個人的に断トツに刺さった作品。前述のパク・ヘヨンの言葉は、このドラマの制作動機を聞かれたときのもの。ソウルから電車で1時間半の郊外サンポ市に暮らす、ヨム家の3きょうだい(長女、長男、次女)の、傍から見ればごくごく平凡な日常の中に積もる鬱屈した思いを描く。

私の解放日誌2/主人公のヨム・ミジョンと、謎の男“ク氏”(ソン・ソック)。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
主人公のヨム・ミジョンと、謎の男“ク氏”(ソン・ソック)。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
主人公の次女ヨン・ミジョンは、元カレの借金の肩代わり、1時間半もかかる通勤時間、上司のパワハラなどで、閉塞した自らの人生を「満たされたことがない」といい、父親の仕事を手伝う本名も素性もわからない寡黙なク氏に「私をあがめて」「うぬぼれるほど自信を持たせてよ」という。そこから2人の解放への物語が始まるのだけど、長女や長男、ミジョンの会社の人たちなど、さまざまな人の生き方を通して、おのずと自分の抑圧していた気持ちにも気づくことができる。
ヨム・ミジョンが会社の同僚と結成した「解放クラブ」の面々。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
ヨム・ミジョンが会社の同僚と結成した「解放クラブ」の面々。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
そして、なによりセリフが詩的で哲学的で、それはもう、一時停止してメモしたくなるほど。その名言の数々については、あの、作詞家の巨匠、松本隆もツイートをしていたくらいだから、昭和生まれのアラフィーには絶対に刺さるはず。さらに、映像や言葉に“余韻”や“余白”が多く、観る人に解釈をゆだねてくれるのも大人好み。まさに観る人をも“あがめて”くれる素晴らしい脚本力に拍手を送りたくなる作品です。
“ク氏”役で’22年韓国で大ブレークした俳優ソン・ソック。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
“ク氏”役で’22年韓国で大ブレークした俳優ソン・ソック。Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中
ちなみにこのドラマの演出家キム・ソクユンの『まぶしくて -私たちの輝く時間-』(2019)も秀逸な人間ドラマなので、お時間があればぜひ。

■Netflixシリーズ「私の解放日誌」独占配信中

『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(2018)

号泣必至!大人だからわかる共感の嵐

脚本:パク・ヘヨン 演出:キム・ウォンソク

マイ・ディア・ミスター1/主人公のジアン(イ・ジウン。歌手IUとして有名)とその上司ドンフン(イ・ソンギュン)。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
主人公のジアン(イ・ジウン。歌手IUとして有名)とその上司ドンフン(イ・ソンギュン)。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION

こちらも脚本家パク・ヘヨンの作品。過酷な人生を歩んできた若い派遣社員のジアンと、彼女の上司であり大手建設会社の部長ドンフンが、あることをきっかけに次第に心を通わせ、互いに助け合っていくようになるという話なんですが(ざっくりすぎ……)、心を癒されたいと思う人は、とにかくいいから一度観てみて!大号泣とともにきれいさっぱり心の汚れ、落ちますから!

イ・ジウンの演技力でも注目を浴びた作品。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
イ・ジウンの演技力でも注目を浴びた作品。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
エリートでありながら出世コースから外れたドンフン、定職につかないドンフンの兄や弟(いずれもおじさん)、それぞれに事情を抱える地元の友人たちなど、登場人物の多くがアラフィー。それなりの人生経験を積んできたら、どんな立場になっていようとも、人間には尊い価値があると思わせてくれるんですよねえ。幸せって?思いやりって?優しさって?を、みごとなせりふの連続で問いかける神ドラマ。コロナ禍で人付き合いが減ってしまったけれど、やっぱり人の縁や温かさっていいな、と心から思えます。そして、冬が舞台のドラマなので、ぜひこの時期に観てほしい!
悲哀に満ちたドンフン役を演じたイ・ソンギュン。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
悲哀に満ちたドンフン役を演じたイ・ソンギュン。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
演出は、韓国で社会現象にもなったドラマ『シグナル』や、次に紹介する『ミセン-未生-』を手がけたキム・ウォンソク。主演のイ・ソンギュン(映画『パラサイト』など)は彼からのオファーと聞いて、脚本を読まずに出演を決めたほど。また、余談ですが、是枝裕和監督は、このドラマでジアン役のイ・ジウンの演技に感銘を受けて、自身の最新作『ベイビー・ブローカー』にキャスティングしたそう。
冬にこそ見てほしい号泣必至ドラマ。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
冬にこそ見てほしい号泣必至ドラマ。U-NEXTにて配信中 ©STUDIO DRAGON CORPORATION
■U-NEXTにて配信中

『ミセン─未生─』(2014)

一生、オ課長についていってもいいですか?
脚本:チョン・ユンジョン 演出:キム・ウォンソク

放映当時、韓国では一大「ミセン」ブームに。ウェブ原作ドラマの先駆けでもある。新入社員役のイム・シワン、カン・ソラ、カン・ハヌル、ピョン・ヨハンの4人はこの作品で役者として飛躍。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
放映当時、韓国では一大「ミセン」ブームに。ウェブ原作ドラマの先駆けでもある。新入社員役のイム・シワン、カン・ソラ、カン・ハヌル、ピョン・ヨハンの4人はこの作品で役者として飛躍。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved

ウェブ漫画原作で、韓ドラファンなら知らない人はいない名作ですが、やっぱり今でも心に残っていて(気がつけばこのドラマももう8年前なんですね~)、気分が落ちたときには観たくなるドラマです。

主人公チャン・グレ役のイム・シワンはアイドル出身俳優の代表格。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
主人公チャン・グレ役のイム・シワンはアイドル出身俳優の代表格。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
かつて棋士を目指していた主人公チャン・グレが夢をあきらめ、母親のコネでインターン入社した大手商社で奮闘する物語。
会社の屋上が本音を語る場に。この場所で名言が続出。オ課長(イ・ソンミン)とグレ。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
会社の屋上が本音を語る場に。この場所で名言が続出。オ課長(イ・ソンミン)とグレ。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
学歴も社会経験もないために落ちこぼれ的な存在になるものの、囲碁で培った洞察力で営業マンとして徐々に力を発揮していくのですが、アラフィーになると、どうしても彼の上司であるオ課長の、中間管理職ならではの苦悩や切なさのほうがビシビシと伝わってきてしまうわけで。大きな組織の中での正義や良心と向き合う姿、また、部下を守り抜こうとする姿に、胸が熱くなること必至です。
職場の先輩キム・ドンシク(キム・デミョン)とグレ。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
職場の先輩キム・ドンシク(キム・デミョン)とグレ。U-NEXTにて配信中 © CJ E&M Corporation, all rights reserved
■U-NEXTにて配信中
ここに挙げた3作品の登場人物は、本当に“普通の人”たちばかり。韓国ドラマは16~20話と長く、細かいディティールまで描けるから物語として成り立つという側面はあるものの、やはりそこには作り手の人間観察力や社会に対するメッセージを色濃く反映しているもの。アラフィーの作り手だからこそ、伝わってくるものがあると思うのです。この機会にぜひ、心の大掃除、いかがでしょうか?

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