更年期が原因!?産婦人科医・高尾美穂さんが「50代の心と体のお悩み」を解消するヒントを伝授

女性なら誰もが訪れる「更年期」のアップダウンと上手に付き合うヒントを医師・高尾美穂さんが伝授。心や体の不調に悩むアラフィー女性に救いの手をさしのべる。

 

お悩みに答えてくれたのは
産婦人科医 高尾美穂さん

産婦人科医 高尾美穂さん

たかお みほ●医学博士。日本産科婦人科学会専門医。婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。’03年にヨガと出会い指導者の資格を取得。ライフステージに合った治療を提示する。

Q1.以前よりまわりに気を使えなくなりました。

顔見知りのかたにあいさつするのを忘れてしまうとか、親切にされてることに気づかないとか……。あとで、そんな自分の態度にびっくりします。(51歳・主婦)

Answer
ここに気づいて、反省したり恥ずかしいと感じるのだから、正常な感覚をお持ちの人格者ですよ。まだ大丈夫。「忘れる」「気づかない」は、あなたが鈍感になったわけではありません。50歳を過ぎると女性ホルモンだけでなく、男性ホルモンであるテストステロンも減るので、認知機能や記憶力が低下し、物忘れも起こりやすくなります

高尾先生

だから、しかたがないことと割り切って、これからは忘れることを前提にとにかくメモる。デジタルよりアナログ、手書きがいいんです。「〇〇さんにあいさつ」「牛乳買う」など、気をつけたいことを手帳に書き、携帯やパソコンにはふせんを貼りつけて今日やるべきことを管理。私も実践しています。

Q2.冷え性が年々ひどくなります。

氷のように足が冷えて、冬はなかなか眠れません。(53歳・主婦)

Answer
熱を生む唯一の臓器が筋肉。熱を発生しやすい体を育てるために、まずは筋肉量を増やす意識をもつこと。大きな筋肉であるおしりや太ももを鍛えると効率よく増やせるでしょう。

そして、体温のもとになるのは血液。体の中心に集まっている血液を、全身、特に末端である手足までめぐらせるには、運動して筋肉を動かすことが不可欠。日中は筋肉をしっかり使って、寝る前はストレッチ程度でも。

そのほか、過度なストレスで自律神経の交感神経が優位になると血管が細くなり温かい血液を末端に運びにくく手足の冷えを引き起こします。夕方以降は緊張や不安、イライラを鎮め、リラックスして。安眠のためには足裏と手のひらから体温を放出させたいので、靴下よりも足裏を開放するレッグウォーマーを。

また、冷えの解消に役立つのが、寝る前に体の末端を温める、手浴、足浴です。実は足より手のほうが血管の数が多く、放熱効果が高いというデータも。手の色が赤くなるまでお湯につける手浴、ぜひお試しください。

Q3.新しい分野にチャレンジするエネルギーがなくなりました。

持病が悪化し、バリバリ働く第一線から仕事を引退。後半の人生にハリをもたらすような、じっくり取り組める何かを見つけたいと、日々探し物をしているような感覚です。(50歳・主婦)

Answer
50歳は更年期ど真ん中。やる気が起きない、体調不良、そして将来への不安などは、誰もが感じるものです。心が上向きにならないと新しいチャレンジはむずかしいですよね。

エネルギー不足なときは準備期間と考えて無理に動かず、今のうちに、元気になったらやりたいことを思い描いておきましょう。推し活でも習い事でもアウトドアスポーツでも。できれば、身のまわりで楽しめる身近なことと、ちょっとハードルの高いこと、の2パターンをイメージ。

心が元気になったら日常的なことからアクションを起こしてみて。やりたいと思えることをできたら、それが自信になるはずだから。

そして持病も心配ですが、これから先は病院に行けばなにかしらの病名をもらう年ごろと、前向きに開き直るのもありです。

高尾先生

「今は準備期間と考え想像力をふくらませて」

Q4.仕事をやめたショックで、人生あきらめモードになってしまいました。

うつ症状が深刻になり、ずっと続けてきた保育士の仕事をやめました。長い間、肉体的・精神的に自分を追い込んできたため、なかなか体調が戻りません。また保育士をやめてしまったことで、今までがんばってつかんできたものが何もなくなってしまったショックに引きずられています。(46歳・主婦)

Answer
コツコツと積み重ねてきたものが、消えてしまうことはありません。やってきたことは確実に自分の中に残っているんです。例えばインスタグラムに日々の記録をアップして、仮にフォロワーが減ったとしても投稿は増えていくものでしょう。

あなたは気づかなくても、がんばってつかんできたスキルはしっかり血肉となって身についているから、自信をもって。

そして今は充電期間でも、保育士というすばらしい職業を長く続けてきた経験は、元気になったときに必ず生きます。人はたいてい、誰かの役に立ちたいという気持ちをもっているもの。そんな気持ちが強くなったときにまた、子供を保育する能力は感謝され、尊敬されるはず。あきらめることは何ひとつありません。

高尾先生

「積み重ねてきた経験を自信に変えましょう!」

Q5.五十肩、体力の低下、物忘れなど、不調のデパート状態です……。

更年期症状と思われる不調があちこちに。改善するための、おすすめのサプリメントや簡単な筋力アップの方法などを知りたいです。(52歳・講師)

Answer
まずサプリメントですが、医薬品になっているビタミンDやEPAなど以外は、あまり期待しないで。例外と思えるのが、大豆イソフラボン由来のエクエル(大塚製薬)です。化学構造式が女性ホルモンのエストロゲンに似ているエクオール含有食品で、私も長く愛飲していますが、科学的根拠があり、信頼できます。

それでも、100困っていることがゼロではなく、60になればいいくらいの気持ちで、全体の底上げとして取り入れてほしいですね。

そして本気で体調を整えたいなら運動が不可欠です。筋肉を鍛えると体はもちろん、心や脳にもよい影響が。有酸素運動と無酸素運動を少しずつでも習慣化することが理想です。

日常的にできる有酸素運動は階段上りや早歩き。無酸素運動のおすすめは、大きな筋肉である太ももや、方法によってはおしりを鍛えられるスクワット。椅子に座る手前で数秒我慢してみるなどいかがでしょうか。私は出退勤時、エレベーターの中で25回のスクワットを日課にしています。

高尾先生

「毎日のスクワットで大きな筋肉を鍛えよう」

Q6.体の不調から精神的にもまいりがちです。

とにかく疲れがとれません。寝ても早く目が覚めてしまうし、やる気も出ない。40代では意識しなかった「死」についても考えるようになりました。(50歳・クリエイター)

Answer
「死」まで考えるとは、メンタル的にかなり落ちていますね。更年期のうつ状態に陥っている可能性があります。一度婦人科で相談し、ホルモン補充療法などを検討してみてもいいかもしれません

あなたにかぎらず、40代を過ぎると睡眠満足度が下がるのは皆同じ。なかなか寝つけない、眠りが浅い、途中で目が覚める……。しっかり眠れていないことへの不安が焦りになり、それが心にもダメージを及ぼす悪循環に。

寝不足で日中に疲れを感じるようなら、20分程度の昼寝がおすすめ。これはパワーナップと呼ばれ、集中力がアップし、仕事のパフォーマンスも上がることが知られています。

あと、早く目覚めてしまっても、それがよくないことと考えないマインドにスイッチしましょう。音楽を聞いたり、本を読んだり、好きなことを楽しむ時間ができた、とプラスにとらえられるといいですね。

今、体調管理に必要なのは、睡眠時間の確保と、日中の活動量を増やすこと。昼間早歩きなどしてたっぷり体を動かして、日が暮れたら疲れて休みたくなるような、昼夜のメリハリを意識してみて。

Q7.ホルモン補充療法をしていますが、症状が緩和している気がしません

気持ちにも波があり、心療内科もあわせて通院しています。無理せず過ごすようにしたら、少しはよくなった気もするのですが、いつまでこの状態が続くのでしょうか。(50歳・会社員)

Answer
ホルモン補充療法は足りなくなったエストロゲンを補う治療なので、ベースでは多少よくなっているはずですが、不調のすべてが改善するわけではありません。

漢方でもホルモン補充療法でも、やめてみたら症状が悪化して、実は効いていたことを実感する、という声をよく聞きます。心療内科のお薬と併用して、様子をみましょう。

更年期は、閉経をはさむ前後5年の約10年間。心身の不調はホルモン分泌のアップダウンが原因で、なかでも自律神経失調の症状が強く出るのは閉経の前後3、4年とされています。アップダウン期を抜けると女性ホルモンはほぼゼロになり、更年期症状は少し緩和されるかもしれませんが、乾燥や疲労感、睡眠障害、骨密度の低下など、低空飛行は続きます。

ですから、ホルモン補充療法で少しでも症状が抑えられているなら、リスクである血栓症と乳がんの検査を健康診断などで受けながら何歳まででも続けることが可能です。

Q8.腰まわりがなかなかやせません。

運動は苦手なので、漢方薬や食で改善できますか。(51歳・看護師)

Answer
運動が苦手なら、とりあえず姿勢を整えるだけでも腰や背中まわりに脂肪がつきにくくなるはずです。コツは、おへそをぐっと背骨側に引き込んでおくこと。この動きで腹横筋が収縮し、その外側にある内腹斜筋も収縮。おなかも引き締まるお得な姿勢トレーニングです。

よく更年期に太るといいますが、更年期を迎えた全員が太っているわけではありませんよね。脂肪がつくのは、消費エネルギー以上に過剰な食事をとることが原因。健康維持の3要素「食べる」「動く」「休む」は正三角形のバランスが理想なので、若いときよりも活動量が減る40~50代は、いっぱい食べたり、たくさん寝たりする必要はないんです

また、活動量の多い昼と、そうでない夜では脂肪の蓄積量が全然違うので食べるタイミングにも気をつけたいですね。

漢方薬を服用するなら、便秘の改善には防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、むくみやすい人は五苓散(ごれいさん)を。根本的な改善とはいえませんが、体重は軽くなり、シルエットはちょっとシュッとするかもしれません。

高尾先生

「おいしいケーキは昼間のうちに食べて!」

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