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【恩田陸さんインタビュー】50代からの「読書の楽しみ方」を指南!忙しい日常と本との向き合い方
ミステリーや青春小説など幅広い作風で知られる作家・恩田陸さんは、同時に幅広いジャンルの読み手でもある。忙しい日常でいい本をみつけ、読書時間を見つける極意を伺った。
【恩田陸さんインタビュー】小説家としてチャレンジすることとは?
作家・恩田陸
Q.本読みの達人である恩田さんですが、物語を“書く”側、小説家としての新しいチャレンジについて教えてください。
「小説内に別の小説が登場する“作中作”を断片的にではなくまるごとやってみたかった。それを実現させたのがミステリー『鈍色幻視行(にびいろげんしこう)』とその中で語られる正体不明の作者が書いた小説『夜果つるところ』なんです」と恩田さん。
『鈍色幻視行』の舞台は豪華客船。主人公の作家・梢が夫の雅春に誘われてそこに乗り込んだのは、不慮の事故で映像化が3度も挫折した『夜果つるところ』の関係者――映画監督、編集者などが乗船すると知り、取材したいと考えたから。彼らはみんなこの小説が呪われた理由や姿を消した作者について持論を抱く人たちで……というのが物語の発端だ。「『鈍色幻視行』は“船旅に行きたい”と思ったのが執筆のきっかけ。アガサ・クリスティー作品みたいなゆったりした船旅ものを書きたいという思いもあって、この小説と同じコースで2週間旅をしました。私が小説を書く前にその場所に行ってみるのは、インスパイアされるものが大きいから。今回はほぼ海の上でしたが、客船は大きな密室であり、舞台っぽい非日常的な空間だと感じた。そこから“日常を離れて謎について語りあう話”を思いついたんです」
一方“呪われた小説”『夜果つるところ』の執筆は、恩田さんにとっておもしろい体験だったのだとか。「この小説の作者は1作だけで消えた正体不明の人物。その人になりきって書いたので、私ではない文体だし、私だったらやらないような展開。でもわりとすらすら書けたのが不思議で、“なりすましってこういう感じなのかな”と思いました(笑)」
2作合わせて執筆期間は15年。最初に設計図を考えるタイプではなく、「進めながら考えるタイプ」という恩田さんだが、長きにわたって書くうちに『鈍色幻視行』には自分では予想していなかった面がいくつか出てきたという。
「クルーズ旅行に参加した関係者のほとんどは、小説や映画といった創作にかかわる人。彼らの発言が謎への見解だけでなく、それぞれの創作への思いにつながっていったのは意外でした。多分その理由は私が“みんなどうやって創作しているんだろう”と思っているから。作家になってずいぶんたちますが、いまだにそういう興味があるんです」
もうひとつの予想していなかった面は、雅春の前妻の存在の大きさ。梢と雅春は再婚同士だが、雅春の前妻は『夜果つるところ』の脚本化を手がけた人物。なのにふたりは彼女のことに触れようとしなくて……。「雅春と梢にも謎があるわけですが、“いくつもの謎の真相を追う話”を書きながら考えたのは、“人はあいまいさを引き受けて生きていくものなのでは”ということ。誰もがいろいろな問題を抱えていると思いますが、世の中にきれいな解決策はないし、グレーゾーンを排して物事に白黒つけようとすると人は不寛容になる。想像力が低下して思考が停止するんです。だからどんな問題であれ、あいまいな部分があっても自分が納得できる材料が見つかればその後の人生は変わるのでは。たくさんの人の複雑な感情がからみ合う『鈍色幻視行』は、そんな私の気持ちも反映されたミステリー。これからも自分が読みたい小説を書いていきたいですね」
『鈍色幻視行』
恩田陸 集英社 ¥2,420
『夜果つるところ』
恩田陸 集英社 ¥1,980
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