「当時、女性が“自分の城”をもてる職業のひとつが美容師だったの。ところが、ある日家に遊びにきた友人たちにお料理を振る舞ったら、『おいしい!私たちだけで食べるのはもったいないわね』とほめられて。それでお店を開こうと思ったんです」。そして25歳のときに青山の“キラー通り”に『中華風家庭料理 ふーみん』をオープン。
「でも、これが素人料理でね(笑)。ありがたいことに、お店の近くにはアパレル会社やデザイン事務所がたくさんあって、クリエイターのかたがたがお店に来てくださったの。その中には和田誠さんもいらして、ねぎそばをお出ししたときに、『おいしいね。これをワンタンでやってみたら?』とアドバイスをくださって。それが人気メニューのひとつにもなりました。クリエイターの皆さんは、夜遅くに来店することが多くて、なすのにんにく炒めや干し大根入りの卵焼きなど、素朴な家庭料理を好まれましたね。また、『今日はこんなものが食べたい』などのリクエストも多かった。思えば、私の料理はお客さまに育てていただいたようなものね。今は、感謝しかありません」