青山『ふーみん』を70歳で勇退。斉風瑞さんが開いた一日1組のダイニング『斉』

ヘルシーで野菜たっぷり。“ふーみんママ”の中華風家庭料理は「たくさん食べても罪悪感なし」と青山のお店時代からファン多数。3年前にオープンした一日1組のダイニング『斉』は、予約がとれないほどの人気ぶりだ。

“自分らしい料理”でおもてなし。『斉』は多くの笑顔に出会える場所

斉風瑞さん
「お客さまをダイニングにお通しするとね、皆さん、窓の外の森を見て、『緑に囲まれて素敵ね。リラックスするわね』っておっしゃるんです。私も、『さあ、おいしいものを作らなきゃ』とワクワクするんですよ」と満面の笑みを見せるのは、“ふーみんママ”こと斉風瑞さん。東京・青山の人気店『中華風家庭料理 ふーみん』で45年間オーナーシェフとして多くのゲストを迎え、そのおなかと心を満たしてきた。

店の知名度が一気に上がったのは’80年代のこと。斉さんが作る“野菜たっぷりで優しい味わいのヘルシーな中華風家庭料理”は、イラストレーターの和田誠氏、山口はるみ氏、建築家の宮脇檀氏といった時代を彩ったクリエイターたちに愛され、彼らの発信によって広く知られるように。

その後、70歳を機に店の全権を甥に預けて勇退。新たに、’21年の春、神奈川県川崎市「フィオーレの森」内に『斉』をオープン。現在は毎週金・土・日曜のみ、プライベートサロンのスタイルで一日1組のゲストを迎えている。
斉風瑞さんの料理
今、この『斉』が“伝説のふーみんママの料理が楽しめる店”として、注目を集めている。それも、来年の春先まで予約困難なほど“超”人気。「ここは、サロンのように、友人の家でくつろげるような感覚でお料理を楽しんでいただける場所にしたかったんです」と斉さん。

供されるのは多彩なコース料理で、前菜、野菜料理、肉料理(斉さんのスペシャリテのねぎワンタン)、魚料理、ひと口ラーメンなど『ふーみん』時代からの人気のひと品や、ここで新しく生まれた斉さんならではの“どこかひと味違う”料理の数々。

驚くのは、どれもが一見シンプルでありながらも、その味わいが繊細で奥深いこと。例えば「エリンギ唐揚げ」はきのこのうま味が凝縮され、シャキシャキとした食感が心地よい。「これはね、前日の夜にエリンギを割いて、干しておくだけなの。この“ひと手間”が大切なんですね」とにっこり。

また、素材の組み合わせの妙味も斉さんの料理の大きな魅力。「酢うなぎ、柿と大根のなます」は、「うなぎにこんな食べ方があったなんて!」と感動するほどのおいしさで、なますとの組み合わせも、まさに絶妙。聞けば、うなぎ好きのゲストが涙を浮かべて喜んだひと皿だという。

「お客さまが、おいしそうに料理を召し上がるのを見るのが好きなのね。『おいしかった~。また会いにきますね』っていわれると、それだけで幸せな気持ちになるんです」
斉風瑞さん

“ここはお店というより友だちの家みたいなものね。”

斉風瑞

斉風瑞

さい ふうみ●東京・表参道の『中華風家庭料理 ふーみん』オーナーシェフとして45年間厨房に立つ。70歳をきっかけに勇退し、出張料理人などを経て’21年に一日1組のダイニング『斉』をオープン。近著に『ふーみんさんの台湾50年レシピ』(小学館)。
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