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【KYOTOGRAPHIEで世界の「今」を見る】大人が見るべき5人のアーティスト、5つの視点
写真のアートフェスティバルKYOTOGRAPHIEが、4月13日から京都で開催される。参加している写真家たちは、それぞれの思想、哲学をもち写真を使って表現するアーティスト。写真にできることは何か? という問いを抱えながら、それぞれのテーマに挑んでいる。写真を通して世界の“今”を感じてみよう。
春、京都へ行くもうひとつの楽しみ【KYOTOGRAPHIEで世界の「今」を見る】
KYOTOGRAPHIEとは?
京都で毎年開かれている国際写真祭。ルシール・レイボーズと仲西祐介が2012年に創設し、共同ディレクターとして発展させてきた。今年のテーマは「SOURCE」。国内外の作家による13の展覧会を12の会場で展開する。日本で知られていない海外作家の紹介にも力を入れ、写真を通して建築や歴史などさまざまな分野にも造詣を深められるような取り組みを行っている。
KYOTOGRAPHIEの特色のひとつは京都ならではの建築物を展示空間として使うこと。今年は大正時代に建てられた京町家(江戸時代からの老舗“帯匠”誉田屋源兵衛の社屋)、徳川家康が将軍上洛の際の宿泊所としてつくらせた二条城(二の丸御殿 台所・御清所)などが使われる。日本的な建築物にモダンな写真をどう展示するのかという課題に、展示空間デザインを手がけるセノグラファーが写真家とともに挑む。写真は昨年の展示風景から
高木由利子 『PARALLEL WORLD』
Presented by DIOR
二条城 二の丸御殿 台所・御清所
マベル・ポブレット『WHERE OCEANS MEET』
Presented by CHANEL NEXUS HALL
京都文化博物館 別館
ココ・カピタン 『Ookini』
With the support of LOEWE FOUNDATION
東福寺塔頭 光明院
information
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024
会期:4/13~5/12
会場:京都文化博物館 別館、誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)竹院の間・黒蔵、京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡)、二条城 二の丸御殿 台所・御清所、京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階、ASPHODEL、出町桝形商店街、京都芸術センター、嶋臺(しまだい)ギャラリーほか。
公式サイト:https://www.kyotographie.jp/
川内倫子スペシャルインタビュー「流れ続ける時間を止め、“瞬間”に向き合う」
川内倫子
@京都市京セラ美術館 本館 南回廊2階
Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
『as it is』より。自身の出産、子育ての経験をもとに、産むこと、育てること、そして、子供が育っていくことを見つめた作品。この世界にやってきた赤ん坊が自然と触れあい、世界に目覚めていく姿が繊細に描かれている。写真集はtorch pressより発売中。
写真に向き合うことで大切な瞬間を考える
あふれる光の中で、両手を広げて走りだしているように見える幼児。その横顔にはどんな表情が浮かんでいるのだろう――。
川内倫子さんは、KYOTOGRAPHIEで潮田登久子さんとの2人展を京都市京セラ美術館で開く。1940年生まれの潮田さんとの年齢差は32歳。世代が違う女性写真家ふたりが、共同で展示空間をつくるという企画で、ケリングが推進する文化・芸術分野における男女平等への取り組み「ウーマン・イン・モーション」の支援を受けている。
「今回、一緒に展示させていただく潮田登久子さんには、『マイハズバンド』や『冷蔵庫/ICEBOX』を拝見してシンパシーを感じていました。特に『マイハズバンド』は登久子さんが夫と娘を撮った作品で、私も娘を撮っていたり、家族をずっと撮ってきたりしたので、自分の作品と共通点があるなと思っていました」
川内さんが展示するのは、娘の出産からの約3年間を描いた近作の『as it is』と、滋賀の祖父母の家を中心に家族で過ごした時間を写した初期作品『Cui Cui』。どちらも写真集になっているが、展示では本とはまた違った経験を観客にしてもらいたいという。
「これまでも展覧会では写真プリントに加え、映像作品も展示してきました。今回は写真を紙にプリントするだけでなくライトボックスを使用したり、空間全体を作品として体感できるようにするつもりです。とはいえ、写真と一対一で向き合うような、親密さも味わっていただけるように考えています」
映像の表現技術が発達し、個人レベルでも映像でコミュニケーションをとることができる時代。写真の魅力をどんなところに感じているのだろうか。
「写真も映像も過去を写すことはできますが、流れ続ける時間を止めることができるのは写真です。日々忙しい中で瞬間に向き合うことはなかなかできないと思うので、展覧会で写真に向き合うことで、瞬間を積み重ねることについて考えてもらえたらうれしいですね。自分にとっても、展示を見にきてくださったかたと写真を前に同じ時間を過ごせるのがとても楽しみです」
展覧会は展示空間の中に体ごと入り、作品を「体験」すること。それは京都のあちこちでユニークな展示空間をつくり出すKYOTOGRAPHIEという写真祭全体にもいえることだ。
「KYOTOGRAPHIEは今年で12年目だそうですが、あれだけの規模の展示をいくつも展開してイベントも開催するエネルギーがすごい。打ち合わせで感じたのは女性スタッフが中心で、皆さんはつらつとしていること。一緒に仕事をしていて楽しいですね」
学生時代から祖父母の家で写真を撮りはじめ『Cui Cui』という作品にまとめるなど、家族や共同体への関心をもち続けてきた川内さん。結婚し、子供を産むというライフイベントを経て、50代になった今、自分の中に変化が訪れたという。
「30代から40代はなだらかに続いていて、50歳になってリアルに自分の実年齢と向かい合ったというか(笑)。体力的に以前ほどの仕事量をこなせなくなったというマイナス面はありますが、精神的には楽になった部分もありますね。できることをやればいい、やりたいことをやればいいんだって。女友達たちとも、以前よりも楽になってきたね、と話しています。これまで大変だったんだから、もっと人生を楽しんでいいんじゃない?って」
一方で、写真家、アーティストとしては、以前とは違った目で世界を見るようになったという。
「母になり、子育てをしているからか、未来にどんな世界を残せるかを考えるようになりました。環境や社会の問題をリアリティをもって感じられるようになったんです。自分が社会に対してできることや役割に対して責任を感じます」
親と子、家族という関係は世界共通。今回のKYOTOGRAPHIEEのテーマ「SOURCE」に照らせば、自分自身の源だともいえる。鑑賞者それぞれが家族について思いを馳せる展覧会になりそうだ。
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