【今月のおすすめ本】死に向き合って生きてきた作家のエッセー&ルポ『夜明けを待つ』ほか4冊

エクラ世代におすすめしたい書籍を厳選! 生と死を見つめてきた作家の原点をたどる『夜明けを待つ』や、墓の必要性を考えるきっかけとなる『墓じまいラプソディ』など4冊を紹介。

死と向き合う作家から、生を楽しむための贈り物

死と向き合う作家から、生を楽しむための贈り物

『夜明けを待つ』

佐々涼子

集英社インターナショナル ¥1,980

長年書きためたエッセーとルポからなる本書を、著者は病床でまとめた。’22年11月に悪性脳腫瘍と告知され、手術を繰り返しながら。子育てに追われた専業主婦時代の葛藤、39歳でライターズスクールに通いはじめたころの焦燥……自身の体験も交えた文章は、鋭く深く温かい。〈あと数か月で認知機能などがおとろえ、意識が喪失し、あの世へ行くらしい〉と現状を記すあとがきの結びの言葉は〈ああ、楽しかった〉。そう言い切れる日々を積み重ねてきたことがわかる作品集。

平安末期の女性たちの悲しみがまざまざと

平安末期の女性たちの悲しみがまざまざと

『平家物語』

林真理子

小学館  ¥1,870

軍記物の最高傑作とされる古典『平家物語』から名場面を選り抜き、再構築。平家・源氏・皇室それぞれの立場で懊(おうのう)する人々の心情にスポットを当て、9つの物語に仕上げた。権力を握る道具とされ、悲しい定めに翻弄されながら誇り高くあろうとする女性たちの姿が、胸を打つ。

笑って身につまされ覚悟が決まる、墓と家族の物語

笑って身につまされ覚悟が決まる、墓と家族の物語

『墓じまいラプソディ』

垣谷美雨

朝日新聞出版 ¥1,760

夫(舅・姑)と同じお墓に入りたくない。田舎のお墓を誰が継ぐ? 墓じまいしようとしたら費用が莫大……。コミカル&リアルに描かれる2組の家族の右往左往を通して、日本社会のひずみまでがあらわに。何を大切に生きたいか、この小説をヒントに人生の優先順位を決めておこう。

77の単語から広がるウクライナの非日常

77の単語から広がるウクライナの非日常

『戦争語彙集』

オスタップ・スリヴィンスキー ロバート キャンベル/訳著

岩波書店 ¥2,200

爆撃を逃れてきた住民たちの語りを、ウクライナの詩人が語彙集としてまとめた。バス、おばあちゃん、結婚式、キノコ……ありふれた単語が、戦火の国ではがらりと様相を変える。後半は、翻訳者によるウクライナ滞在記。そこに追記されたエピソードにも心を鷲づかみにされる。

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