より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」

家族や仕事と、人生のステージが変わる50代。暮らし方や住まいを見直す人も多いのでは。せっかくなら、残りの人生にワクワクするような、ポジティブな決断をしたいもの。リノベーション、移住、実家の建て替え…と幸せなシフトチェンジをスタートしたかたの素敵な暮らしを紹介。ぜひヒントにしてみて。

保科和賀子さん邸(W Style 主宰)

■DATA

延べ床面積:約230㎡
築年数(居住年数):約50年(2年)
築約50年の都心のヴィンテージマンション内で引っ越しを重ね、延べ約25年間暮らす。現在の家はメゾネットで、1階をリノベ後’22年12月入居。2階は住みながらリノベをした。

■PROFILE

W Style 主宰 保科和賀子

W Style 主宰 保科和賀子

主宰する「W Style」ではイベントを通し、東日本大震災や就学困難な子供たちを支援するチャリティ活動を行う。アルフレックスジャパン社長の夫と息子3人の5人家族。インテリア、器、アートなどに造詣が深く、おもてなしや料理のセンスも抜群。趣味はゴルフ。

より人も家族も集まる空間へ

結婚後、イギリス在住期間などを除き、長く暮らしてきたヴィンテージマンション。息子たちも留学から戻り、人を招く機会がますます多くなってきたことから、昨年、広い部屋へと住み替えをした。ヴィンテージマンションの個性を生かしつつリノベーションをし、好きなアートで家じゅうを彩り、来客も家族も居心地のいい、とびきりスタイリッシュで、ハートウォーミングな家が完成した。

より人も家族も集まる空間へ

夕景が美しい西側に位置するリビング。正面には空間に合わせて組み換えられるモルテーニの505が。テレビは隠し、アートブックやオブジェをセンスよく並べている。さわやかな色彩の壁のアートは坂井淑恵作。レザー張りのソファはブール、アームチェアはエルザ、コーヒーテーブルはリヴォリ、とすべてアルフレックスの家具。上質なレザーのチェアや大理石のテーブルが並び、大人がつどうのにふさわしい落ち着きとハートウォーミングな温かさを感じる居心地のいいリビングだ。家のそこかしこに置かれた観葉植物はグリーン アートに依頼している

人とつながり、会話を楽しめる、居場所や動線を意識

人とつながり、会話を楽しめる、居場所や動線を意識

吹き抜けになった開放感あふれるエントランスホール。目に飛び込んでくるのが正面の壁に飾られたサイモン・フジワラの毛皮を主題にした作品。ガラステーブルはモルテーニのアークで、脚部は特別仕様。上には中井波花の彫刻作品などが飾られている。床にさりげなく置いたモノクロの作品は吉澤美香作

向かって左がバーコーナー。

向かって左がバーコーナー。ワインキャビネットはカンブサ ワイン グラス、バーテーブルはバンガロウでともにリーヴァのもの。ハイスツールはアルフレックスのクレド。窓辺にはアルフレックスのルイラウンジを置いて会話を楽しめるコーナーに。ペンダントランプは齋藤勝弘(record)、壁に2枚並べたアートはアンジュ・ミケーレ作

「こんなふうに飾ってみるのもおもしろいかなと思って」と窓前に吊るした繊細なアートは和田真由子作。

「こんなふうに飾ってみるのもおもしろいかなと思って」と窓前に吊るした繊細なアートは和田真由子作。リビングにいくつも置かれた、オブジェのような木製スツールは、マリオ・ボッタによるリーヴァのクレッシードラ

ダイニングの壁は窓の外の緑につながるよう、1面だけグリーンに塗った。

ダイニングの壁は窓の外の緑につながるよう、1面だけグリーンに塗った。10人座れるダイニングテーブルは、家具のアートと呼ばれるリーヴァのカウリ コレクション。約48,000年前の地層から掘り出した埋没材を天板に使用。亀裂をレジンで埋めて仕上げている。チェアはアルフレックスのアルカ。ベルリン在住のRyu Itadaniに、窓からの景色を描いてもらった作品を壁に

「大の器好き。来客も多く、器は10〜12枚ずつ購入します」という保科さん。

「大の器好き。来客も多く、器は10〜12枚ずつ購入します」という保科さん。来客時に使う器やグラスを収納しているのが、窓が整然と並ぶ美しいキャビネット、モルテーニのピロスカフォ。照明はルイスポールセンのトルボー ペンダント。奥がキッチン。テーブル上には唐津隆太窯の中里健太の高台皿を

もともとあったキッチンの収納と吊り戸棚の間に、奥行きの浅い棚をカスタムメイドで作り、ふだん使いの食器置き場に。

もともとあったキッチンの収納と吊り戸棚の間に、奥行きの浅い棚をカスタムメイドで作り、ふだん使いの食器置き場に。ずらりと並ぶのは、保科さんお気に入りの作家ものの器たち。夫が毎朝たてる抹茶の道具類も

キッチンで友人や夫と語らうことも。ホッとひと息ついて、お茶する時間が癒しに

キッチンで友人や夫と語らうことも。ホッとひと息ついて、お茶する時間が癒しに

キッチンには作業台として使え、簡単な食事もできるテーブルをカスタムメイドで製作。「日々の料理も、おもてなしの支度も格段にしやすくなりました。このテーブルで朝食を食べたり、時には友人たちと過ごしたり、夫婦でお酒を飲んで語り合うことも。リビングとは別の落ち着く場所になっています」

1階のトイレは壁をダイニングと同じグリーンに

1階のトイレは壁をダイニングと同じグリーンに塗り、アートバーゼルで購入した小作品やチャリティアートイベントで購入した作品などを並べてかけたり、吊るしたり。来客も楽しめる、まるでギャラリーのようなワクワクする空間

会話がはずむように考えて家具を配置し、おもてなし
コロナ禍中に東京と河口湖との2拠点暮らしをスタートした保科和賀子さん。’21年8月号の本誌では、河口湖の素敵なお住まいを披露してくださった。

その後、コロナの収束とともに、東京で過ごす時間も増え、3人の息子さんのうち2人は留学を終えて帰国。東京の住まいが手狭になり、同じマンション内のメゾネットタイプの広い部屋に引っ越しをすることになった。入居にあたり、大きな間取りの変更はせず、築50年というヴィンテージマンションの雰囲気に合わせて壁紙やカーペットを張り替え、収納や造作家具を追加するなどのリノベーションをした。

「この家には、家族だけでなく友人や親戚、仕事関係やご近所のかたなど、さまざまな人がいらしてくださいます。ですので1階はパブリックエリア、2階をプライベートエリアときっちり分けることにしました」と保科さん。

1階の玄関正面には吹き抜けのエントランスホールがあり、すぐ横のリビングに入ると、ハイスツールの置かれたバーコーナーが迎えてくれる。その奥には座り心地のよさそうなラウンジチェアを置いたコーナーがあり、さらに進むとソファが置かれ、と少しずつ椅子の座面が低くなる仕掛け。奥に進むほど、よりリラックスしてくつろげるよう、家具が配置されているのだ。「リビングではいろいろな会話が生まれ、お客さまが思い思いの時間を過ごせるよう、コーナーごとに座面の高さの違う椅子を置き、居場所をつくりました。それぞれの居場所で会話がはずみ、さらにリビング全体でもコミュニケーションがとれるようにと考えて。以前の家ではL字型のソファをテレビに向かって置いていたのですが、この家では2つのソファを向かい合わせに置き、会話がしやすいようにしました。より会話がはずむにはどうすれば?と家具の位置や距離感を変えてみたり。日々、夫と一緒に試行錯誤を繰り返しています」

廊下をはさんで反対の東側には、大人数でつどえるダイニングと、家族でサッと食事ができ「もうひとつの落ち着く場所」というキッチンが。人がつどい、場所を移動しながらコミュニケーションを楽しめる、上質な空間が完成した。

2階は家族が穏やかに心地よく過ごせるプライベートエリア

2階は家族が穏やかに心地よく過ごせるプライベートエリア

洗練されたグレージュトーンでまとめた主寝室。レザー張りのベッドはブレラ、サイドに置いたテーブルはクリップス、窓辺のラウンジエリアに置いたアームチェアはパネトゥーン、テーブルはステロと、すべてアルフレックスの家具。窓前はツペラ ツペラの愛らしい立体作品。就寝前のひと時、ラウンジチェアでくつろぎ、語り合うことも

ベッドの正面にはテレビボードとバーキャビネットが組み込まれたモルテーニの505 UPを設置。

ベッドの正面にはテレビボードとバーキャビネットが組み込まれたモルテーニの505 UPを設置。

ワードローブは、モルテーニのグリスマスターシリーズ。

ワードローブは、モルテーニのグリスマスターシリーズ。スムーズに開閉し、照明効果により衣類やバッグをまるでショップのディスプレイのように美しく整然と収納できる。メイクやちょっとした書きものができるデスクが組み込まれているのもうれしい

階段ホールにはルイスポールセンのVL45ラジオハウス ペンダントを長さを変えて吊るした。

階段ホールにはルイスポールセンのVL45ラジオハウス ペンダントを長さを変えて吊るした。踊り場の壁にかけたアートは閉店してしまった行きつけのそば屋から受け継いだとか。

2階の廊下の正面にはギリシャに拠点を置くアーティスト、大島幸子のペインティング『embrace(抱きしめる)』を。

2階の廊下の正面にはギリシャに拠点を置くアーティスト、大島幸子のペインティング『embrace(抱きしめる)』を。壁紙は築50年のヴィンテージマンションの雰囲気に合わせて、中国色の色見本からニュアンスのある色を選んだ

2階への階段を上がった正面の、ちょっとしたスペースを活用して家族のライブラリーコーナーを。

2階への階段を上がった正面の、ちょっとしたスペースを活用して家族のライブラリーコーナーを。カスタムメイドで棚を作り、旅の本や家族の写真を飾ったり、ウォーターサーバーを置いている。照明はフロスのパレンテッシ

主寝室横の本来はウォークインクロゼット用に設けられた部屋を書斎に。

主寝室横の本来はウォークインクロゼット用に設けられた部屋を書斎に。L字型のデスクや壁の棚をカスタムメイドで製作し、夫婦並んで仕事ができるようにした。保科さんのデスク前には展覧会のハガキなどがまるでアートのようにコラージュしてはってある

アートと家具を心地よいバランスで取り入れる。保科邸の家づくりアドレス

ARFLEX TOKYO《アルフレックス 東京》

創業以来日本のモダン家具業界をリード
心豊かな暮らしに寄り添い、長く安心して使える高品質な家具を提案する人気のアルフレックス。新作がいち早く見られ、展示数も多いこちらの店ではアートやグリーン、照明などトータルで暮らしを豊かにする提案を。アルフレックスの家具に加えリーヴァ、ロダの家具、モルテーニの収納・キッチンも扱う。家具のメンテナンスなどにも対応。

ARFLEX TOKYO《アルフレックス 東京》
ARFLEX TOKYO《アルフレックス 東京》
ARFLEX TOKYO《アルフレックス 東京》

店内ではコーナーごとにリビング、ダイニング、ベッドルーム、キッチンと暮らしのシーンをイメージしたスタイリッシュな展示が見られる。家具だけでなく、アートやグリーン、照明も一緒に展示・販売されているため、イメージがつかみやすいと評判。それ目当てに訪れる人も多い。イベントが開催されたり、気軽に入りやすい雰囲気も魅力だ

DATA
東京都渋谷区広尾1の1の40 恵比寿プライムスクエア1F
☎03・3486・8899
11:00〜18:00
定休日:水曜
https://www.arflex.co.jp

GREEN ART《グリーン アート》

おしゃれなインテリアグリーンがそろう
イベントやショップ、オフィス、個人邸のグリーンのコーディネートから撮影用のリースまで、幅広く手がけるグリーンショップ。個人向けの販売をアルフレックス 東京店内で行っている。樹形の美しいグリーンや、グリーンと鉢カバーや鉢の合わせも洗練され、インテリアに映える。保科邸もグリーンのコーディネートを依頼している。

GREEN ART《グリーン アート》
GREEN ART《グリーン アート》
GREEN ART《グリーン アート》
※画像はアルフレックス 東京店内

店頭ではシェフレラやユーカリ、エバーフレッシュなど(時期によって異なる)人気の大鉢から、中鉢、卓上に置いて楽しめる小鉢などを展示・販売。インテリアに映える、オブジェのように美しい樹形のものが多くそろうと評判だ。家具やアート、照明と一緒に見られるので自宅でのサイズ感や置いたときのイメージがしやすいのもうれしい

DATA
東京都世田谷区宮坂2の25の7
☎03・3439・3091
mail:setagaya@ga-greenart.co.jp
http://www.greenart.jp
※販売はアルフレックス 東京にて。HPからの問い合わせも可能

Parque《パルケ》

手仕事のぬくもりを感じるアイテムが魅力
器好きの保科さんが東京や河口湖の自宅で使う器を購入するという、暮らしまわりの手仕事のものを扱うショップ。月に1〜2回開催される企画展では作家ものの食器、花器、ガラス器、金工などに加え、染めものなどのアパレル系やアクセサリー、お菓子などの販売も行う。常設展もあり、オーナーの洗練されたセンスを感じるセレクトに注目。

Parque《パルケ》
Parque《パルケ》
Parque《パルケ》

店内に並ぶのは、手のぬくもりを感じるもの、自然と調和するものが多い。自然釉を使う陶芸作家も多いという。飲食店を経営する料理人がよく訪れるというのがうなずける、料理を美しくセンスよく見せてくれそうな器がそろう。オンラインショップからの購入も可能

DATA
東京都品川区小山6の21の20
☎03・6883・4617
12:00〜20:00
定休日:月・火曜(展示により不定休あり)
https://parque-tokyo.com

newton《ニュートン》

額縁だけでなくアートの提案も
アート作品の額装および額縁の販売をするショップ。額の種類もバリエーション豊富にそろい、額装したいアートを持ち込むと相談にのってくれ、アドバイスをしてくれる。すぐ近くでnoieというアートギャラリーも運営する。アルフレックスと一緒にLIFE with ART projectを手がけ、アルフレックス店舗内で展覧会やイベントも開催。

newton《ニュートン》
newton《ニュートン》
newton《ニュートン》
newton《ニュートン》

額縁は規格のものからオーダーメイドまで、希望や予算、飾る壁面、インテリアなどに合わせて提案。全工程ハンドメイドで作られるオリジナルの額縁や、サイズオーダーできるモールディングフレームやリーズナブルな規格フレームもそろう

DATA
東京都目黒区八雲1の5の6
☎03・3723・1230
10:00〜19:00
定休日:日曜、祝日
https://newton-frames.com

TENJIN-FACTORY《テンジンファクトリー》

自社で織ったこだわりのリネン生地を使用
保科さんが愛用するリネン生地の店。山梨県富士吉田市に拠点を置き、古くから織物産地として知られるこの地で、新たにシャトル織機を導入し、リネン織物を作りはじめたのがスタート。自社製の生地を用い、オリジナルのキッチンリネン、ベッドリネン、タオル、パジャマ、カーテンなど、リネンのある暮らしを提案する。

TENJIN-FACTORY《テンジンファクトリー》
TENJIN-FACTORY《テンジンファクトリー》

保科さんは柿渋染めのエプロンなどを愛用。藍染めや柿渋染めのベッドリネンもある。テンジンファクトリーのリネンは糸を染めてから織る、先染生地ならではの深みのある美しい色合い、シャトル織機で織ったふんわりとした風合いが魅力だ

TENJIN-FACTORY《テンジンファクトリー》

DATA
山梨県富士吉田市下吉田7の29の2
☎0555・22・1860
10:00〜17:00(来店は要予約)
定休日:日曜、祝日、第2・4土曜
https://www.tenjin-factory.com

早坂香須子邸(メイクアップアーティスト)

■DATA

延べ床面積:119.2㎡
築年数(居住年数):3カ月

犬1匹、猫2匹と暮らす一軒家。アトリエ、リビングルーム、ベッドルーム、パントリー、キッチン、クロゼットスペース、バスルーム、秘密の小部屋が回遊式につくられている。

■PROFILE

メイクアップアーティスト 早坂香須子

メイクアップアーティスト 早坂香須子

メイクアップアーティスト、植物療法士。長野県にある森林との出会いから、森の再生をしながら自然の中で生きることを選ぶ。同時にKAZTERRAMORI名義で作家活動を開始。’24年10月には、文筆家・服部みれい氏と共著である詩画集『わたしの中にも朝焼けはある』(河出書房新社)を上梓。

犬猫と暮らす森の中の家

東京で長く暮らす早坂さんが、森の中にも家を建てた。北アルプスを眺めながら過ごす森での暮らしは、自然素材と長く向き合ってきた彼女にとって理にかなったもの。「“暮らす”ってクリエイティブなことなんだなと体感しています」。その言葉どおり、住まいとともに暮らしにも大きな変化があったそう。光が射し込み、窓の外には森が広がる新しい家は、早坂さんのこだわりがすべてつまった彼女らしい空間に。

犬猫と暮らす森の中の家

幅230㎝あるという美しいダイニングテーブルが主役のリビングルーム。極力物は置かないよう、棚や収納は作らずミニマルな空間に。物を多く持っていた早坂さんが、この家に住んでから掃除と片づけが大好きになったそう

自分がどう暮らしたいかを具体的に想像し話し合いを重ねて細部を決めた住まい

自分がどう暮らしたいかを具体的に想像し話し合いを重ねて細部を決めた住まい

リビングから階段を上がるとキッチンという珍しいつくり。キッチンの食器棚は、森を切り開くときの間伐材を使って作ってもらったそう。持っている器などを考えながら、棚の段ごとのサイズ感などは1㎝単位で相談を

本当によく使うものだけ並べた、光あふれるキッチン。

本当によく使うものだけ並べた、光あふれるキッチン。キッチンまわりの面材も間伐材を使用している。悩んで決めたというガスコンロは、リンナイのDELICIA。暮らしが変わり、調理家電はこのオーブン以外あまり使わなくなったそう

友人の「SHINO TAKEDA」のライトがキッチンの主役。

友人の「SHINO TAKEDA」のライトがキッチンの主役。「ライトを購入してからずっとイメージしてきて、ようやく実現。建築家さんにもライトをお見せして、これを軸にキッチンを考えました」。食器棚の上を柔らかな光が照らす

キッチンや階段から美しい北アルプスの山脈を眺めることができる窓。

キッチンや階段から美しい北アルプスの山脈を眺めることができる窓。「山を見て暮らしたいという希望を伝え、窓を作ってもらいました。まるで絵のよう」。窓の下にはラシャトンのキャットタワー。「木製なのでこの家になじみます」

自分が大切にしていることを改めて体感する暮らし

メイクアップアーティスト・植物療法士であり、画家としても活躍する早坂香須子さん。長野県の森の中にもうひとつの住まいを構えたばかり。森のゆるやかな斜面を生かした2階層の家は、回廊型。犬1匹、猫2匹がのびやかに走りまわる。森とアルプス山脈が望める大きな窓からは光が射し込み、森との境界線を感じない空間に。

「7、8年前から拠点を移したいという気持ちはあったのですが、コロナにかかり家でじっとしているときに、いよいよ動こう!と思ったんです。そんなとき、湖の湖畔に引っ越した友人宅に遊びにいき、見たことがない美しい風景の虜(とりこ)に。その後この土地とご縁があり、森の中を歩いてみると小川が流れていて、ここに住みたいと決めました。山形県で育ったので、原風景としてやはり山が落ち着くんだと思います」

この森に住むことを決め、家づくりが始まると、木を切り倒すことに違和感を覚えるという第一歩が待っていた。

「実際に目にしたとき、土がむき出しになっている状態にショックを受けてしまい、自然の生態に詳しい友人や工務店さんに相談をしました。森のバランスや生態を知り、付き合い方を理解できるように。間伐材をそのまま家の建材として使うことも可能になり、前に進むことができました」

森の家に住みはじめ、早坂さんの暮らし方は自然と変化していく。

「このエリアは山の井戸水をみんなで分け合って飲んでいます。そして浄化槽なので、自分の生活排水が森に戻っていきます。それは湖に流れていくということ。東京では概念として意識していたオーガニックや環境配慮を、暮らしの中で自然と選択し、それが根づいていく。自分が伝えたいことと生活が噛み合って、体現する暮らしとなっていると日々感じてとてもうれしい」

目に入る景色がどれも心地よいのは自分の優先順位を知っているからこそ

ワクワクする気持ちに忠実に、変化を楽しむ

リノベーションという考えはなく、ゼロから建てるほうが自分には向いていると思ったという早坂さん。

「最初は傾斜のある森の中央、次は下に。いろいろな人に相談して、最終的には上に建てることに。ル・コルビュジエが建てた崖の上の家を好きなことも思い出したりもして。好きな家、インテリア、建築家など家にまつわるイメージソースを細かく書き込んだノートを作り、それを建築家・納谷さんに見てもらいイメージを共有しました。そして、ゴールをもちながらも、建設中も通い、ギリギリまで悩み、さまざまな部分を変更したり調整を。決まったレールに乗るのではなく、そのときワクワクすることも大事にしたいという姿勢は、家づくりにかぎらず仕事でも同じです」

イメージブックを見せながら細部まで決めていく過程で、たくさん疑問を投げかけ納谷さんと対話を繰り返した。

「森の中の一軒家ということで、怖いと感じない家というリクエストもしました(笑)。それに対してもきちんとくみ取ってくれて、設計プランを説明してくれました。納谷さんがフレキシブルなかただったからこそ私らしい家ができあがったんだと思います。天窓もリクエストのひとつ。光を感じたくてお願いしたのですが、いざ住んでみると天窓のおかげで光だけでなく雨も好きに。違和感や希望を伝え、話し続けることがとても大切なんだと思います」

リビングルーム唯一の棚と小さなチェストには、絵や友人の作品など好きなものが並ぶ。

リビングルーム唯一の棚と小さなチェストには、絵や友人の作品など好きなものが並ぶ。愛犬スペースは、家づくりの際にリクエスト。キッチンと洗面所のドアにだけ猫用ドアもついており、犬猫、犬、人だけ、の3つのスペースを、ストレスなく区切れるようにしている

「曇りでも晴れでも同じ一瞬はなく、同じ日はない。東京だとそれがわからなくなっていた気がします」。

「曇りでも晴れでも同じ一瞬はなく、同じ日はない。東京だとそれがわからなくなっていた気がします」。窓から射し込む光、空、木や山が、日々それを教えてくれる

ウッドユウライクカンパニーで購入したという、ダイニングテーブル「USU」とダイニングチェア「MOCHI」。

ウッドユウライクカンパニーで購入したという、ダイニングテーブル「USU」とダイニングチェア「MOCHI」。「ずっと座っていられるくらい心地よい。職人さんのすばらしい手仕事に惹かれて決めました。温かみがありながらモダンです」

当初はアトリエにも土間をはさんで垂れ壁とガラス扉がつくはずだったところ、工事途中に通う中で、仕切らずオープンにすることで空間が広がると思い、相談して変更を。

当初はアトリエにも土間をはさんで垂れ壁とガラス扉がつくはずだったところ、工事途中に通う中で、仕切らずオープンにすることで空間が広がると思い、相談して変更を。イサム・ノグチのakariライトがリビングもうっすらと灯してくれる

アトリエの窓もまるで絵画のよう。

アトリエの窓もまるで絵画のよう。テーブル、本棚などにも間伐材を使用。「私はこもって絵を描くタイプではなくオープンな空気感のほうが向いているので、リビングとの仕切りはガラス戸に。気持ちが切り替わるので、物がほとんどないリビングに反してアトリエは物が多くても気になりません」

家の中と外観はまた少し違った雰囲気。

家の中と外観はまた少し違った雰囲気。光が射し込む窓辺に猫が並ぶ。全方位に窓があるが、プライバシーはきちんと保たれている。

リビングルームにあるインテリアデザイナーの福山晶子さんに特注したオリジナルソファ

リビングルームにあるインテリアデザイナーの福山晶子さんに特注したオリジナルソファは、前の家から持ってきたもの。家のサイズに合わせて数を増やしたり、布張りを変えたりと柔軟に変化し、この家にもなじんでいる

早坂さん製作のイメージブック。

早坂さん製作のイメージブック。ル・コルビュジエの自邸など、素敵だと思った家は写真とともにメモを記している。同じゴールをもつには、頭の中を細部まで伝え合うことが重要に

建設現場に通うときに泊まっていた旅館の寝室が和室でよく眠れたことから、急遽相談をして和室をつくることに。

建設現場に通うときに泊まっていた旅館の寝室が和室でよく眠れたことから、急遽相談をして和室をつくることに。「東京では眠りが浅かったのですが、山の家ではぐっすりと眠れるようになりました」

“心地よさ”について改めて自問自答しそこで出た答えに従って選択を重ねる

洗面所のタイルは多治見のTAJIMI CUSTOM TILES。

洗面所のタイルは多治見のTAJIMI CUSTOM TILES。「悩みましたが、毎日目に入る場所を妥協すると後悔しつづけると思い、このリサイクルタイルに。絶妙なグラデーションの美しいタイルを見るたび、決めてよかったと日々感じています」。

「長時間半身浴するので、バスルームは大切な場所。

「長時間半身浴するので、バスルームは大切な場所。ベージュの色みにこだわりました。KALDEWEIのホウロウ浴槽も気に入っています」

建具、建材までこだわりぬくことが心地よい空間を導く。早坂邸の家づくりアドレス

納谷新/360°《ナヤアラタ/サンビャクロクジュウド》

それぞれの心地よさをかたちにしていく
早坂さんがこの地に住むきっかけとなった友人宅が納谷新氏の設計だったことにより、お願いすることに。個人住宅を中心に集合住宅、ショップ、ホテル、公共建築など全国で新築・リノベーション問わず手がけている建築事務所「/360°」。’13年に建築した自邸(写真)が、納谷新氏の自由な発想や自然との向き合い方を表している。

納谷新/360°《ナヤアラタ/サンビャクロクジュウド》
納谷新/360°《ナヤアラタ/サンビャクロクジュウド》

「建築過程にも変えたい部分が出てきた私ですが、どんな疑問や要望にも真摯に向き合ってくれて、まずはやってみる方向で考えてくれた納谷さん。細かい部分まで話し合えることが家づくりの核なんだなと感じました」

DATA
神奈川県川崎市麻生区千代ヶ丘5の9の11 #405
☎044・455・4646
https://360degrees.jp/
Instagram:@360degrees.works

IRON DOG《アイアンドッグ》

最高品質といわれるドイツ製まきストーブ
ドイツの暖炉・まきストーブメーカー、ブルナー社のブランド「アイアンドッグ」。早坂さんが選んだのは、シリーズの中で人気の高いNº07(ナンバーセブン)。シンプルなラインと使いやすさ、燃焼効率の高さが魅力。全国11カ所にショールームがあるので、早坂さんのようにまず実際に体感してみるのがおすすめ。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_53
ⒸA-plus inc.
IRON DOG《アイアンドッグ》

「中目黒と八ヶ岳、両方のショールームを見にいき、八ヶ岳のアトリエで実際に火がついている様子を見て決めました。これから雪が積もり家にこもる時期なので楽しみです」

DATA
株式会社エープラス
長野県伊那市高遠町上山田86
☎0265・94・6121
www.aplusinc.jp
Instagram:@aplusincm

木工ヤマニ《モッコウヤマニ》

生活にまつわる木のものを夫婦で製作
早坂さんの希望によりドアノブや扉の取っ手などの製作を依頼。同じ長野県にあるということもポイントだったそう。スパイスミル、家具や建具などを製作している木工ヤマニ(内山翔平さん、未来さんご夫婦)。直営店はもたないので、建具や家具に関してはまずご相談を。

木工ヤマニ《モッコウヤマニ》
木工ヤマニ《モッコウヤマニ》

「ペッパーミルをギフトでいただき、手にフィットする使い心地がすばらしくて機能・デザイン性どちらも備えていることが魅力。製作いただいたドアノブなど見るたびうれしくなっています」

DATA
https://yamaniwoodworks802.wixsite.com/peppermill
mail:yamani.woodworks802@gmail.com

TAJIMI CUSTOM TILES《タジミカスタムタイルズ》

こだわりのあるオーダーメイドのタイルを職人が製作
日本一のタイル生産量を誇る岐阜県多治見市で、総合タイルメーカー・エクシィズが’20年にスタートしたタイルブランド。建築家やデザイナーによる、サイズ、形状、色、テクスチャーなど、こだわりあるオーダーメイドのタイルを、多治見エリアの腕のいい職人や工場とコラボレーションして製作。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_57
ⒸKenta Hasegawa

「ギャラリー(上)で実際に見たとき、まるで絵の具のようにどのタイルも少しずつ色が違い、ひと目惚れでした」。早坂さん宅のタイル(下)は、モルテノヴァのホワイト

TAJIMI CUSTOM TILES《タジミカスタムタイルズ》

DATA
TAJIMI CUSTOM TILES ギャラリー
岐阜県多治見市旭ヶ丘10の6の49
☎0572・20・0711
10:00〜17:00
定休日 土・日曜、祝日 ※事前予約制

渡邉季穂邸(uka代表・トップネイリスト )

■DATA

延べ床面積:約168.65㎡
築年数(居住年数):1年(1年)

築50年ほどの実家を庭や塀の一部を残し、建て替えた。それを機に東京の拠点である賃貸マンションを少しダウンサイジングし、コンパクトな暮らしに。夫と愛猫2匹と暮らす。設計施工はSame Picture Companyに依頼。

■PROFILE

uka代表・トップネイリスト 渡邉季穂

uka代表・トップネイリスト 渡邉季穂

トータルビューティーカンパニー[uka](https://uka.co.jp)代表としてサロン経営、サロンワークや媒体での創作、講師などと幅広く活躍。ネイルケア&技術の普及に努める。その技術・センスには定評があり、著名人や美容関係者から多くの支持を得、信頼も厚い。

実家の庭を眺めながらくつろぐ家

『エクラ』’23年7・8月合併号にて、のびやかで眺めのいい、東京の新しい住まいを紹介してくださった渡邉さん。そのときの「今度実家を建て替えるので、完成したら遊びにきてください」との言葉に、おうかがいすることに。窓から眺める景色が子供のころのままでホッとするという、思い出の庭を残した建て替えは、「なるほど! こういう素敵な実家の受け継ぎ方もあるのだ」と膝を打つ、エクラ世代のヒントにもなるはず。

実家の庭を眺めながらくつろぐ家

1階のLDK。「ピンタレストで気になるリビングのイメージ写真を集めていたら、床が一段下がった事例ばかりで」と渡邉さん。段差が椅子がわりにもなるコージーなリビングが完成。オーダーで作ったソファは、来客時のベッドにもなるよう奥行き1mとシングルベッドサイズの幅にし、縦に3人寝られるゆったりとした大きさに。ラグとサイドテーブルはHAYで購入した

ダイニングに座って庭を眺めるたびにホッとでき、心穏やかになる

ダイニングに座って庭を眺めるたびにホッとでき、心穏やかになる

リビングにはテレビではなくプロジェクターを設置。アラジン マルカのプロジェクターを置いた木製のベンチは、ザ・コンランショップで購入。みんなで映画やYouTubeを見るのも楽しみに。エアコンは壁の内側に設置してスッキリと

ソファ横の棚もオーダーで製作。

ソファ横の棚もオーダーで製作。ルイスポールセンの照明、NJP ミニテーブルランプや友人である河原シンスケ氏が描いた愛らしいパンダのアート、キャンドルなどを置き、モノトーンでシックにまとめたコーナー

無垢の欅材でできた、どっしりとしたアンティークのダイニングテーブルはパリに移住する友人から譲り受け、倉庫に眠っていたもの。

無垢の欅材でできた、どっしりとしたアンティークのダイニングテーブルはパリに移住する友人から譲り受け、倉庫に眠っていたもの。偶然にもこの家のキッチンのカウンターの幅とぴったりだったとか。チェアは店舗でも愛用するワイヤーチェア。床は大判タイル

現在の東京の住まいのキッチンが使いやすく、同じレイアウトにとリクエスト。

現在の東京の住まいのキッチンが使いやすく、同じレイアウトにとリクエスト。天板はコンクリートに石を混ぜて研ぎ出す“人研ぎ”という仕上げ。扉や棚は無垢のオーク材。コンロ横の壁はツール類をかけられるようにパンチングメタルにした

キッチンの上部の壁にはオープン棚を設置し、アスティエ ド ヴィラッドの花器やガラス器などをディスプレイ。

キッチンの上部の壁にはオープン棚を設置し、アスティエ ド ヴィラッドの花器やガラス器などをディスプレイ。

暖房としてペレットストーブを設置。

暖房としてペレットストーブを設置。「友人宅で薪ストーブを見て、いいなと思ったのですが、薪が大変かな?と躊躇していたところ、こちらを紹介してもらいました」。間伐材などの木の粉を固めた木質ペレットを燃やす暖房器具で、火力の調節もしやすく、これ1台で2階まで暖かくなるとか

泊まりがけで人が集まり楽しめるようプランニング

「小学6年生から高校卒業までここで家族と暮らしていました。5年前に父が亡くなってからは空き家となり、父の会社のOBたちが時折、風を入れたり庭木の手入れをしてくださっていたのですが、いつまでもご迷惑をかけるわけにはいかないなと思って。処分することも考えました。でも約30年前、妹が亡くなったときに父が植えた梅の木も切られてしまうのかと思ったら、やっぱり残したい、残さなきゃと思って」

’23年、神奈川県内にある築50年近い実家を建て替えた渡邉季穂さん。新たな拠点ができ、東京のマンションと行き来する生活がスタートした。実家は庭をそのまま残すために、家のアウトラインを踏襲するかたちで、建て替えた。設計は経営するukaの店舗デザインもお願いしている建築家に依頼。

「私の好みをわかってくれているので、家づくりはとても楽しかったですね。昔はよく、父がお弟子さんたちを呼んで、庭でバーベキューをしたんです。キッチンが中2階にあったので、食材や食器を運ぶのが大変で。私もここで友人や社員のみんなとバーベキューをしたかったので、ダイニングキッチンと庭がつながるようにプランニングしてもらいました。おかげでこの夏は、よくバーベキューをしましたね。皆さんサウナに入り、泊まってくれて」と渡邉さん。新たに始まった東京と実家との2拠点暮らしを、すっかり満喫しているよう。人が集まるときも夫とふたりのときも、渡邉さんが最も長く過ごすのがダイニングキッチンだという。

「ダイニングに座って眺める庭の景色は昔のまま。だから、ここに来ると心からホッとできるんです。残してよかったなと、しみじみ感じています」

大人数でも宿泊できるようスタンバイ。バーベキューとサウナでおもてなし

時間や気持ちの切り替えをうまくできるように

家を建てるにあたり、夫からリクエストされたのがドライサウナを作ること。水風呂もある本格的なものだ。

「海が近いので、週末になるとサーフィンをしてサウナに入り、すぐ隣にある寝室で眠るのが夫のルーティンに。『もうずっとこっちで暮らしたい!』といっているくらいです(笑)」

ワーカホリックだった渡邉さんも、この家に来たいからと、スケジュールを調整。プライベート時間も大切にし、少しずつだが時間の使い方を変えられるようになってきたという。

「東京にいると、たとえ仕事の予定のない週末でも『あそこでイベントをやっているな』とか『買い物に行こうかしら』と心がザワザワしてしまう。でも東京から離れてここに来てしまえば、やることは料理か掃除か、サウナに入るか映画やYouTubeを見るくらい。選択肢が少なくなるせいか、心穏やかに過ごせます。仕事のことも考えなくなるし、考えたとしても頭がクリアになるんです。東京では常に人と一緒に過ごしていて、それはそれでとても楽しいことなのだけれども、少し疲れることも。私の長年の課題であった、自分自身の時間の使い方や、これからの働き方を考えるためにも、このタイミングでこの家ができて、とてもよかったなと思っています」

新たな暮らしが、次のステージへのシフトチェンジを導いてくれたようだ。

テラスに面した心地のいい寝室。

テラスに面した心地のいい寝室。サウナで整ったらそのまま寝室に移動し、熟睡できる。ベッドにかけたブランケットはトゥモローランド ホームで購入したTEKLA。クッション類はザラホームやザ・コンランショップで購入

座り心地がよく、東京の家のリビングで長く愛用していた、ザ・コンランショップのレザーのアームチェアを寝室に。

座り心地がよく、東京の家のリビングで長く愛用していた、ザ・コンランショップのレザーのアームチェアを寝室に。ベッドはMUJIで、ナイトランプはザラホームで見つけた

寝室の横には自然光の入るゆったりとしたパウダールームが。

寝室の横には自然光の入るゆったりとしたパウダールームが。洗面ボウルを2つ設置し、夫婦それぞれスペースを分けて使用。壁の丸いタイルと丸い鏡がアクセントに。お気に入りのワッフル地のバスローブはHAY

夫の希望で実現したドライサウナと水風呂。

夫の希望で実現したドライサウナと水風呂。冷たさをキープするために水風呂横には製氷機を設置。サウナ後にテラスのチェアでくつろぐのも至福の時間。

サウナストーンに水をかけるロウリュが楽しめる本格的なドライサウナ。

サウナストーンに水をかけるロウリュが楽しめる本格的なドライサウナ。高めの温度が好みの夫は、完成後さらにベンチを上に足したそう。「私は高温の中、何もせずにじっとしているのが実は苦手で(笑)。友だちと一緒におしゃべりしながら入るのは楽しいですね」と渡邉さん

渡邉さんのお父さまがこの家にいるときに、いつも座っていたという思い出のソファ。

渡邉さんのお父さまがこの家にいるときに、いつも座っていたという思い出のソファ。イメージを伝えてオーダーで作ったカバーをかけ、蘇らせた。手前の本棚には家族の思い出の写真やグッズが並ぶ。来客時には寝室としても使用

こちらも来客用の寝室。

こちらも来客用の寝室。大人数にも対応できるよう、布団を用意している。やはりお父さまが愛用していたソファに、オーダーしたグレー生地のカバーをかけてシックな雰囲気に変え、窓辺に置いた

1階のバスルーム&パウダールーム。

1階のバスルーム&パウダールーム。いくつものタイルのショールームに出向き、選んだタイルは床・壁と色を変えて。洗面台はコンクリートに石を混ぜ、磨き上げて仕上げている

思い出の梅の木を残し、好きをつめ込んだ家に。「家づくりは楽しい時間でした」

エントランスホールの正面の壁には平澤まりこ作の手を描いた作品を飾った

エントランスホールの正面の壁には平澤まりこ作の手を描いた作品を飾った。「手招きしているようでもあり、私自身が手にまつわる仕事をしているのでご縁を感じて」。オーク材を用いた下駄箱は床から浮かせ、軽やかに

妹さんが亡くなったときにお父さまが植えた見事な梅の木

妹さんが亡くなったときにお父さまが植えた見事な梅の木(写真手前)をはじめ、庭の大きな木はすべて残し、以前の家とレイアウトを変えずに建て替えた。レンガを積んだ塀も昔のまま

気分転換も兼ねて大好きなインテリアショップめぐり。渡邉邸の家づくりアドレス

ZARA HOME《ザラホーム 二子玉川店》

シーズンごとにチェックして模様替えを
インテリアファブリック、家具、照明、ラグ、キッチングッズ、食器など、シーズンごとに気軽に取り入れられる価格帯のおしゃれなアイテムがそろう。ディスプレイを眺めるだけでも楽しく、インテリアのトレンドもキャッチできる。渡邉さんは、クッションカバーやベッドリネンなどのファブリック類や小さなテーブルランプなどを愛用。

ZARA HOME《ザラホーム 二子玉川店》
ZARA HOME《ザラホーム 二子玉川店》
ZARA HOME《ザラホーム 二子玉川店》

二子玉川ライズ内にあるショップは、広々として見やすく、コーナーごとにアイテムが美しくディスプレイされている。人気デザイナー、ヴィンセント ヴァン ダイセンが手がけるミニマルで上質な家具や小物、ファブリックシリーズも要チェック。また、ギフトにぴったりのベビーグッズや、センスのいいペットグッズもおすすめ

DATA
東京都世田谷区玉川1の14の1
二子玉川ライズ ショッピングセンター
0120・914・075
10:00〜20:00
無休
https://www.zarahome.com/jp

Orné de Feuilles《オルネ ド フォイユ 不動前店》

“大人かわいい”がそろう
かわいらしく思わず笑みがこぼれたり、キュンとしたり。そんなアイテムがそろうショップ。インテリアアイテム、食器、クッションなど国内外からセレクトされた暮らしにまつわるもの、また猫好きにはたまらない猫にまつわるグッズも展開。人気のアスティエ ド ヴィラッドの取り扱いも。渡邉さんは小花柄のシートクッションなどを愛用。

Orné de Feuilles《オルネ ド フォイユ 不動前店》
Orné de Feuilles《オルネ ド フォイユ 不動前店》
Orné de Feuilles《オルネ ド フォイユ 不動前店》

アスティエ ド ヴィラッドのラインナップも豊富。思わず家に連れて帰りたくなる大人かわいい動物アイテムは必見。クッションやオリジナルのファブリックアイテムなど、ほかではなかなか見つからない洗練されたデザインのアイテムもおすすめだ

DATA
東京都品川区西五反田5の21の19
☎070・4161・5283(営業中のみ)
11:00〜18:30
不定期営業(HP参照)
https://www.ornedefeuilles.com

TOMORROWLAND HOME《トゥモローランド ホーム》

ワクワクする暮らしを提案
’24年にスタートしたトゥモローランド ホームはトゥモローランドが創業以来ずっと大切にしてきた「暮らし」を提案。上質であること、心地よいこと、ワクワクすることをテーマに掲げ、テーブル・キッチンウエア、バス、インテリアアイテム、ベッドリネンやホームウエアなど暮らしに寄り添うホームコレクションを展開している。

TOMORROWLAND HOME《トゥモローランド ホーム》
TOMORROWLAND HOME《トゥモローランド ホーム》

渡邉さんはトゥモローランド ホームで手に入れたTEKLAのブランケットやファブリック類を愛用。暮らしが楽しくなるようなカラフルなキッチンリネンやベッドリネンなども。オンラインのほか、一部店舗で購入可

DATA
トゥモローランド 渋谷本店
東京都渋谷区渋谷1の23の16 1F・B1
☎03・5774・1711
11:30〜20:00
不定休
https://store.tomorrowland.co.jp/store/tomorrowland_home/

宮田喜代美邸(ホテルクアビオ オーナー )

DATA

延べ床面積:約120㎡
築年数(居住年数):24年(1年)

購入したマンションをリノベーション。前の持ち主が1LDKで使用していた間取りを取り払い、キッチン、ダイニング、オーディオルーム、寝室につくり替えた。

■PROFILE

ホテルクアビオ オーナー 宮田喜代美

ホテルクアビオ オーナー 宮田喜代美

自身の体の不調をファスティング(断食)とマクロビオティック食(玄米菜食)で克服した経験から、’09年、群馬・草津温泉に心身の健康を取り戻すリゾートホテル『ホテルクアビオ』を開業。下の階に母が住み、愛猫「きんちゃん」と生活している。

ひとり暮らしを快適にする最後のリノベ

現在は都内マンションと草津、伊豆の3つの拠点をもつ『ホテルクアビオ』オーナーの宮田喜代美さん。一念発起し、今後のライフスタイルに向き合った「人生で最後」という都内邸宅のリノベーションを敢行。新しいものと古いもの、和と洋のデザインとさまざまなスタイルが調和されながら、居心地のよさもあきらめない。ひとりの時間でもゆっくりと過ごせる、空間づくりのヒントが満載だった。

ひとり暮らしを快適にする最後のリノベ

クチーナと相談しながらつくったオープンキッチンはリノベーションでも力を入れた空間。コンロの部分は間仕切りを壁の向こう側に設置することですっきりとして見える。シックな色調が全体を落ち着いたトーンでまとめ上げた

ベランダに続く大きな窓があるオープンキッチンスペース。

ベランダに続く大きな窓があるオープンキッチンスペース。以前はステンレス製の角型だったものを、温かみのある大理石風の素材でカウンターの角を丸くオーダーし、人もつどいやすく。

カルテルのスツールはマットな質感のトープカラーをチョイス。

カルテルのスツールはマットな質感のトープカラーをチョイス。カウンター下の収納スペースと色を合わせることによって広々として見える

計算しつくされた収納計画でお気に入りのものは手放さず長く使う

計算しつくされた収納計画でお気に入りのものは手放さず長く使う

冷蔵庫横の空いたスペースは調味料やこまごまとした食品の収納棚に。冷蔵庫やスチームオーブンは「ふだんの生活スタイルに合っているから」という理由で日本製の電化製品を選んでいる。

間仕切りの壁の奥にあるコンロのスペース。

間仕切りの壁の奥にあるコンロのスペース。アーエーゲーで選んだIHを2口、ガスコンロを1口という組み合わせ。日々の管理が楽なのでIHもいいが、ガスコンロの強い火力で炒め物もしたいという希望をかなえた。塩とハチミツのコレクターを自称する宮田さんはコンロの横にさまざまな種類の塩を完備。

世界中で集めた食器は引き出しに収納。

世界中で集めた食器は引き出しに収納。夫とふたり暮らしのときに比べて出番は減ったという和食器もずらり

キッチンカウンターの下はワイングラスを収納できるシェルフに。

キッチンカウンターの下はワイングラスを収納できるシェルフに。グラスの高さに合わせて棚を作っているので、サイズごとに収納できる。大人数の来客にも対応できるコレクションの多さもさすが

サンクリドーでオーダーしたカーテンにもひと工夫が。

サンクリドーでオーダーしたカーテンにもひと工夫が。窓側はコットンに、部屋側はリネンカーテンという通常と逆の組み合わせで使用している。夏の日射しが強い日は2重で閉めることも

カーテンは窓ごとに異なるファブリックを使用。

カーテンは窓ごとに異なるファブリックを使用。ディテールを楽しむこともできるし、白のトーンで統一することで、まとまった印象にもなる。エンブロイダリーの美しいカーテンはロロ・ピアーナ製。

窓側のコットンカーテンを開けてリネンカーテンだけにすると、ほどよい光を取り込むことができる。

窓側のコットンカーテンを開けてリネンカーテンだけにすると、ほどよい光を取り込むことができる。夏の間は閉めっぱなしでも、ちょうどよい彩光具合だったのだそう。

母のいた実家から持ってきた植栽や、人からもらった植物などをキャンドルと一緒にディスプレイ。

母のいた実家から持ってきた植栽や、人からもらった植物などをキャンドルと一緒にディスプレイ。計算しすぎていない配置も粋。メタルのテーブルに乗せて、海外のホテルのような優雅さも感じさせる

これからの生活に最適な空間を考えぬいた

群馬県草津町で心身の健康を取り戻す『ホテルクアビオ』のオーナーを務める宮田喜代美さん。’00年に建てられた都内マンションに夫とふたりで入居したが、14年前に夫が他界。4年前に同敷地内で空き部屋が出たため、これまで住んでいた1階から居を移した。今後はひとりでも暮らしやすいようにと思いきってスケルトン状態まで戻してからリノベーションを計画。今年4月に入居がかなった。

「主人と一緒に住んでいるときは3LDKでしたが、ひとりだと部屋数は必要ないんです。今回は120平米のスペースを自分ひとりでムダなく使えるようにするというのがテーマでした」

リノベーションを担当したのは、乃村工藝社に勤める友人。越した部屋はもともと1LDKで仕切りもなかったため、オープンキッチンとダイニング、プライベートエリアと大きく3つのゾーンに分けた。

「今は母が同じマンションの下の階に住んでいるので、行き来する生活。前の部屋では使わないスペースもありましたが、こちらはひとりの生活スタイルに合わせた動線に。オープンキッチンはカスタムメイドで相談できるクチーナにお願いしました。昔は友人たちをたくさん呼んでホームパーティをしていましたが今はもっと少人数のことが多いです。キッチンカウンターにカルテルのスツールを置いて、お料理をしながらちょっとずつワインを飲んで、おしゃべりをしてという感じですね。夜が深まってきたらダイニングに移動したり、テレビや趣味のレコードを置いているプライベートスペースへ。照明にはこだわりがあります。乃村工藝社と相談し、3つのゾーンに対して4つずつのシーンを設定しました。プライベートスペースで映画を見るときは4のスイッチを押すと、ちょうどいい雰囲気になる、と簡単に選べます」

自然光がたっぷりと射し込む室内はシックなグレーやトープカラーを基調にブルーの家具をさし色として効かせている。前の住居で使っていた家具や実家にあった植物、アンティークの家具などをうまく配置したバランス感覚のよさもさすが。

「フランスの会社に勤めていたこともあるので、骨董市なども大好き。この部屋はとにかく収納も多いのでアンティークのグラスやカトラリーなども収まりました。ずっと使っているシェルフやたんすなどもダイニングとプライベートルームとの間仕切りの壁に置いたりと工夫しています。居心地のよさという点でいえば、カウンターキッチンの角を丸くオーダーしたり、ダイニングのテーブルも円形にしたり。アーチ状の間仕切り壁も入れています。角があるものにぶつかって怪我をしないようにとの安全面も考慮しましたが、空間を豊かに使える感じがしますよね」

ムダのない動線とパリシックなセンスが洗練された空間をつくり出した。

ヨーロッパで買い集めたファブリックやアートが生きる部屋

ダイニングとプライベートスペースを仕切る壁。

ダイニングとプライベートスペースを仕切る壁。ソファや椅子を壁側に配置したり、上部はアンティークグラスなどを見せる収納スペースとして活用。

プライベートスペースの壁面はすべて見せない収納に。

プライベートスペースの壁面はすべて見せない収納に。本や雑誌、こまごまとしたものはここに収まる。朝起きたらまず神棚の掃除をするという宮田さん。こだわった神棚のスペースもここに

プライベートスペース側から見た間仕切りの壁。

プライベートスペース側から見た間仕切りの壁。昔から使っていたたんすや勉強机などを壁面に配している。背をもたれても動かないリーン・ロゼのソファは来客の際はベッドに。ダイニングのソファやパンプキンチェアなどもフランスのリーン・ロゼのコレクションで統一した

玄関を入ってすぐの部屋との境をアーチ状の壁に。

玄関を入ってすぐの部屋との境をアーチ状の壁に。贅沢な空間使いに、自分だけの落ち着いたスペースに帰ってきた安らぎを感じさせる。あえて丸みを帯びたデザインを生活に加えることで優雅さも加えられる

ベッドルームはアイスグレーの壁とトープカラーの組み合わせ。

ベッドルームはアイスグレーの壁とトープカラーの組み合わせ。米国キングスダウン社と大塚家具が協業したマットレスを長年愛用。イタリア製のベッドカバーなど、ヨーロッパの上質なファブリックがアクセントになっている

アートと家具を心地よいバランスで取り入れる。宮田邸の家づくりアドレス

CUCINA《クチーナ 代官山ショールーム》

生活に彩りを加えるキッチンづくり
宮田さんも全幅の信頼をおくカスタムオーダーメイドのキッチンメーカー。素材や色などにこだわっており、デザイン性の高さに定評がある。扉のイメージや天板も種類豊富なので、こまやかに希望に応えてくれるのもうれしい。宮田さんがふだん使いやすいポイントを聞き取りながら、収納もたっぷりあるキッチンを提案してくれた。

シックな色使いもお手のもの。海外のホテルのようなおもむきに。

シックな色使いもお手のもの。海外のホテルのようなおもむきに。

宮田さんも時折訪れる代官山ショールーム。キッチンが生活の要になる空間でアイデアも浮かぶ。

宮田さんも時折訪れる代官山ショールーム。キッチンが生活の要になる空間でアイデアも浮かぶ。

さまざまな天板も多く扱い、品質も高いので、飽きがこず長く使える

さまざまな天板も多く扱い、品質も高いので、飽きがこず長く使える

DATA
東京都渋谷区鉢山町15の1

☎︎03・3496・1003
10:00~18:00
定休日 水曜、年末年始・GW・お盆
https://cucinastyle.jp/

ligne roset Tokyo《リーン・ロゼ東京》

最新のフレンチシックを体感できる
1860年にフランス・リヨン郊外、ブリオードでスタートしたインテリアブランド。約100名のデザイナーとコラボレーションすることでコンテンポラリーなデザインを生み出す。宮田さんは8人で使うことができるダイニングテーブルとブルーのソファなどを購入。お気に入りのデザイナーを見つける楽しさもあるのだそう。

ligne roset Tokyo《リーン・ロゼ東京》

ソファ以外にキャビネットやラグなども展開する

さし色になるソファも人気のアイテム。

さし色になるソファも人気のアイテム。

DATA
東京都港区六本木3の17の10六本木デュープレックスタワー1F
☎︎03・5549・9012
11:00~19:00
定休日 水・木曜
https://www.ligne-roset.jp/

Cinq Rideaux《サンクリドー世田谷ショールーム》

世界のファブリックで自分だけのカーテンを
海外ブランドを中心とした輸入カーテン、オーダーカーテン専門ショップ。宮田さんは以前の部屋で使っていた布でリメイクをオーダーしたことも。縫製工場をもち、職人たちがていねいに製作してくれる。部屋のムードに合わせた相談やアフターケアも万全。きちんとオーダーすれば、部屋の印象を格上げしてくれる大事な存在だ。

豊富な施工例をもち、実際の縫製サンプルを見ながら相談できるのも利点のひとつ。

豊富な施工例をもち、実際の縫製サンプルを見ながら相談できるのも利点のひとつ。部屋のムード全体のバランスや海外ブランドのデザインなど、自分のセンスで組み立てられる。

宮田さんも通う世田谷ショールームの外観。落ち着いた店内でじっくり選べる

宮田さんも通う世田谷ショールームの外観。落ち着いた店内でじっくり選べる

DATA
東京都世田谷区北沢5の1の15
☎︎03・3465・6488
10:30〜18:00
定休日 水曜、第1・3日曜
https://www.mobiria-nakajima.com/

行正り香さんの50代からの「リノベ考」

50代で住まいを見直す場合、とかく「老後を見据えて手すりをつけなきゃ」とか「バリアフリーに」などと考えがち。でも人生100年時代といわれるようになり、私たちが現時点で思う以上に、残りの人生は長くなりそう。もっとポジティブに「これからどう生きたいか?」を考え、理想に向けての住まいづくりをしてみては?

これからどう生きたいか?をまずは明確にする

50代で住まいを見直す、リノベーションをする場合、終(つい)のすみかとなるケースも多いと思います。「これからの残りの人生をどう生き、暮らしていきたいか?」まずは自分に問いかけてみることが大切です。食べることが好きで料理を存分に楽しみたい、家で映画をたくさん見たい……など。趣味や理想のライフスタイルが長く楽しめる空間づくりを目ざすのがおすすめ。そのためにどんなプランにすれば? さらにインテリアは?と考えます。今や雑誌やSNSで世界中のインテリアの写真を気軽に見ることができます。イメージをたくさんインプットしたら、その中から「これ!」と思う理想の一枚を見つけてみてください。そしてその写真をよく眺め、好きな理由を分解していきます。スタイルは? 配色は? 家具は?など。そうするとおのずと自分の理想のインテリアが見えてきます。リノベーションをしたいなら、本やネットで勉強し、ある程度知識を身につけておくことも必要。理想の暮らし方や好きなインテリアスタイルがはっきりしないまま業者に依頼してしまうのは、一番不幸な結果を招いてしまうことに。こうしたい!がなかなか明確にならないかたは、ハウスメーカーなどのパターンオーダーのリノベーションを選ぶことをおすすめします。ゼロから選び、決定していく作業は楽しい半面、ストレスも多く大変な作業でもありますから。

リノベーションしなくても理想が手に入るケースも

住まいを見直すとき、なにもリノベーションだけが解決策ではありません。何が不満で何を改善したいかを明確にしていくと、家具の配置を替えるだけで解決するなんてことも。後出のOさんのように、見晴らしのいい場所で暮らしたい、アイランド型のオープンキッチンで家族で料理をしたいという希望に対しては、まずは住み替え、さらに間取りの変更を伴うリノベーションが必要でした。でもそこまでしなくても、理想が実現するケースも多々。私がおすすめするのは、①照明を替える、②家具を替える、③リノベーションをする、という順番です。照明を替えるだけでも空間は見違えます。照明で上質な、心安らぐ空間を得られることも。さらに家具を替えれば印象もガラリと変わります。エクラ世代は結婚したときに購入した家具を長く使っているケースも多いのでは? 思いきって家具やラグを替えてみると、インテリアが大きく変わり、気分転換になります。さらなるうえで、子供が巣立ったので個室が必要なくなった、オープンキッチンにしたいなど、間取りの変更や設備機器の刷新を伴うリノベーションをするという選択肢があるということを頭に入れておいてください。リノベーションにかかる費用も物価の上昇とともに上昇してきています。理想の暮らしを実現するために、解決策はいろいろあるということをお忘れなく。大切なのは、老後に向けて……と守りに入らず、どう暮らしていきたいか?と前向きに自分と向き合ってみること。残りの人生を1秒でも長く、好きなものに囲まれ、好きなことを楽しむために、住まいを見直してみてはいかがでしょう。

料理家・インテリアデザイナー 行正り香さん

料理家・インテリアデザイナー 行正り香さん

40冊を超える料理レシピ本のほか、著書『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』がロングセラーに。北欧インテリアに造詣が深く、インテリアのコーディネートやリフォームプランナーとして多数の家づくりに携わる。近著に『人生を変えるリノベーション』(講談社)が。
より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_110

まずは押さえておきたい!フルリノベーションのステップ

フルリノベーションを検討しているなら、まずは全体の流れを簡単にインプットしておくことも大切だ。インテリアデザイナーの行正り香さんが手がけたO邸のリノベーション例を参考に解説する。

予算配分を考える

限りある予算の中でどこにお金をかけるか? リノベーションでは予算配分が重要な課題。行正さんは大きな面積を占め、部屋の印象を左右し、あとから替えるのが大変な壁や床にお金をかけることをおすすめしているそう。O邸の場合は壁や家具に予算をかけ、そのぶん、天井高はそのまま、建具や洗面台、下足入れは既存のものに色や加工を施して再利用。ユニットバスはリーズナブルなものを選び色でセンスよく見せるなどして、メリハリをつけた。

リサーチ(アイデアの収集)

コンセプトの明確化(変えたいことと予算)

デザイナー・施工会社選定(設計事務所、工務店など)

プラン相談(見積もりと契約)

プラン確定(設計と許可申請)

解体

電気(配線)工事

大工仕事(天井・壁・床の施工、塗装、造作家具設置等)

照明器具の設置

(完成と引き渡し)

絨毯/ラグ、家具などを設置
絵画などでデコレーション

※参考/『人生を変えるリノベーション』(講談社)

施工会社・業者を選ぶ

自分の好みが明確になったら、それを再現してくれそうなデザイナー、設計事務所などを3社くらいに絞ってみる。Oさんは、行正さんの自宅を理想とし、依頼したいと決まっていたため最初から1社に絞っていたそう。HPなどで設計事例をよく見て徹底的にリサーチし、可能なら実際に事例を見にいくことも。理想とするイメージは、必ず言葉とビジュアルで伝えること。自分の好みが定まらない場合は、ハウスメーカーなどに依頼しても。

施工会社・業者を選ぶ

行正さんが手がけたO邸は、3LDKから1LDK+ウォークインクロゼットの間取りにリノベーション。LDKが広く収納も多い空間になった

間取りとレイアウト

どんな暮らしをしたいか?は、間取りに大きく関係してくる。Oさんの場合は、皆で料理ができるアイランドキッチンが希望だったので、キッチンをオープンに。LDKをワンルームにして広さを確保した。行正さんはマンションなどの限られた空間の場合、より広く、明るくするにはどうしたら?と考え、暗くなりがちな玄関にも光を入れる工夫をするそう。年齢を重ねたらホテルのように、寝室も含めた大きなワンルームが使いやすいのでは?とも。

照明・家具の配置を考える

間取りを決めながら、照明や家電を置く位置、配線を決めていくことも大切と行正さん。ある程度家具が決まり、置く位置が決まるとおのずと照明の位置も決まり、配線が定まる。そうすると電気のコード類が表に出ることのない、美しい仕上がりになる。最後に家具や照明の位置を決めるから、配線が露出しがちになるのだ。O邸はまずダイニングテーブルを置く位置を決め、それを基準にダイニングの照明、キッチンの照明の位置を決めていった。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_112
撮影/川上輝明

素敵な印象に変えるなら!空間づくりの4つのポイント

リノベーションなどで空間をデザインするとき、インテリアデザイナーの行正り香さんが特に大切にしていることが4つある。せっかくなら、より美しく居心地のいい空間にしたいもの。この4つを意識するだけで、完成度の高い仕上がりになる。

《Point1》大きな面積からまず考える

洋服ならコートが目立つように室内でも大きな面積のものが当然目立つ。そこにお金をかけるのがおすすめ。特に大きな面性を占めるのが壁、天井、床だ。床はラグを敷いてしまうという手もあるが、壁、天井はあとから替えると大がかりになるし、毎日目にし、インテリアの印象を左右する大切なもの。とかく大きなものは後回しにしがち。でも日ごろから大きなもの、例えば家具ならテーブルやサイドボードから決めていく習慣をつけるといい。

《Point1》大きな面積からまず考える
写真提供/行正さん

行正さんが手がけたO邸のキッチン扉の色を決めるためのサンプル。なるべく大きなサンプルで、できれば原寸サイズに塗って色を決めている。

《Point2》キーカラー、サブカラーを決める

手持ちのアートや洋服、持ち物などを見直してみると、家主の好きな色、キーカラー、サブカラーとなる色が見えてくる。もちろん好きな色が明確な人はその色に。キーカラーが決まるとアイテム選びもスムーズに進み、その色を空間に繰り返し使うことでリズムや統一感が生まれる。キーカラーを基調にカラーパレットを作るのもおすすめ。市販のカラーチャートを見ると、反対色や同系色がわかるので、それを参考に配色を決めていくと失敗がない。

《Point3》曲線を取り入れる

行正さんがデザインの中に必ず取り入れるのが“曲線”だ。人間が心地いいと感じるものには必ず曲線が入っているが、家の中は空間も家具も、放っておくと直線だらけになってしまう。だから意図してデザインに曲線を取り入れることを心がけ、家具も曲線のあるものを選ぶようにしているそう。ただし、天井や壁を曲線で仕上げるためには職人さんの技術力も必要。そのぶんコストもかかるのでしっかりと計画し、取り入れることをおすすめする。

行正さん宅の天井にも曲線を取り入れている。漆喰(しっくい)で壁・天井を仕上げると曲線がつくりやすい。やりすぎは幼い印象になるのでバランスが大切。

行正さん宅の天井にも曲線を取り入れている。漆喰(しっくい)で壁・天井を仕上げると曲線がつくりやすい。やりすぎは幼い印象になるのでバランスが大切。

《Point4》フォーカルポイントを決める

フォーカルポイントとはその空間で一番最初に目に入る、目を引きつけるもの。できればアート、鏡や照明などでもいい。リビングの顔となるフォーカルポイントを失ったまま西洋化してきた日本では、リビングで一番目立つのが巨大なテレビ、つまりフォーカルポイントがテレビとなっている家が多いのが現実。フォーカルポイントをテレビにしないためには、デザインを工夫して隠す、移動可能なテレビにする、プロジェクターにするなどの手も。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_115
撮影/川上輝明

行正さんの自宅やスタジオのフォーカルポイントはアート。この部屋はアートのブルーを家具にも取り入れている

あとから変更はむずかしい!リノベ前に確定すべき5つのこと

リノベーションでは短期間に決めることが多い。とりあえず間取りを決めて、あとは完成後に……なんて思っていると残念な仕上がりに。間取りと並行して決めておくと、より美しい仕上がりになるのでぜひチェックして。

照明

行正さんがデザインするうえでこだわるのが照明。せっかく高価な家具を買っても照明で台なしになってしまうことも。照明で大切なのは設置する位置と器具選び。どこに配置し、ダウンライトにするかペンダントにするか、それをあらかじめ決めると仕上がりが美しい。また器具と電球との相性、LEDでもどのタイプを選ぶのかも大切。日ごろからホテルやレストランで心地いいと思う照明を観察してみて。

照明

アートの位置も事前に決め、上にはピンホールライトを選び、照明が当たるように。(上)行正さんのスタジオのキッチン。アイランド上にペンダントランプ、奥のコーナーにテーブルランプを。ペンダントは低めに吊るすのもポイント。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_117
撮影/川上輝明

行正さんのスタジオのキッチン。アイランド上にペンダントランプ、奥のコーナーにテーブルランプを。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_118
撮影/川上輝明

テーブルの位置が決まると照明の位置が決まる

家具

空間に統一感をもたせ、より美しい仕上がりを求めるなら家具も事前に決めておくべき。まずは目ざすインテリアスタイルを定め、それに沿って家具選びを。素材・色・質感をキーカラー、サブカラーと照合しながら決めていく。同時に家具をどこに配置するかも考えると家具が大きすぎるなどの失敗もなく、照明の位置もおのずと決まる。50代からはソファよりも上質なアームチェアがおすすめとも。

家電

せっかく美しい空間が完成したのに家電が見えていたり、配線が露出していたら興ざめ、と行正さん。家電を置く場所も事前に考え、なるべく隠し、配線もむき出しにならないようにしているそう。行正さんは電子レンジなどのキッチン家電は扉の中に隠し、中にコンセントを設置。冷蔵庫も収納扉と同じ扉にする、業者に色を塗ってもらうなど徹底することで、より完成度の高い美しい仕上がりになる。

冷蔵庫の扉を収納扉と同じ材にして仕上げた例。

冷蔵庫の扉を収納扉と同じ材にして仕上げた例。

洗濯乾燥機を洗面カウンター下に美しく収めた例。

洗濯乾燥機を洗面カウンター下に美しく収めた例。

行正さんが大切にしているのが壁の素材感。おすすめは調湿効果などもある自然素材の塗り壁。なかでもエレガントに仕上がる漆喰、スタッコ、土壁がおすすめだとか。自然素材は空気感が違い、光や照明が当たったときの表情や質感もいい。もちろん壁紙や水性ペンキも今は選択肢がとても多く、特に壁紙は施工費を抑えられるメリットも。できるだけ大きなサンプル、もしくは施工例でチェックすべき。

行正さんが好んで用いる塗り壁のうち写真はスタッコで、大理石のようになめらかで、少し光沢感があり、ニュアンスのある美しい表面に仕上がる

行正さんが好んで用いる塗り壁のうち写真はスタッコで、大理石のようになめらかで、少し光沢感があり、ニュアンスのある美しい表面に仕上がる

床は壁と並んで面積が大きく、空間の印象も施工費にも大きく影響する。フローリング、タイル、カーペットと選択肢はあるが、50代以降におすすめはカーペット。足ざわりが柔らかく、腰への負担が少ない。よりふかふか感を出すためには補助材を入れるといい。フローリングなら床暖房にも対応しやすい複合フローリングがおすすめ。床は張り替えず、良質なラグを敷くのも印象を変える手段だ。

行正さん宅LDKの床はカーペット敷き。

行正さん宅LDKの床はカーペット敷き。「畳のような色とデザイン、ふかふかの足ざわりが気に入って」選んだ。玄関はタイル張りに。カーペットのシミや汚れの掃除も、慣れてしまえば簡単だとか

行正り香さんデザインO邸

子供たちが独立し、それまで暮らした家をリノベーション……はよくある話。そこで改めて「残りの人生をどう暮らす?」と考え、理想の環境に住み替え&リノベーションをしたOさん。行正さんに相談し、スペースをダウンサイジングしつつ"好き"をギュッとつめ込んだ上質な空間が完成。毎朝目覚めるたびに感動するという、ワクワクする暮らしがスタートした。

■DATA

延べ床面積:約70㎡
築年数(居住年数):17年(2.5カ月)

大通り沿いで窓をあまり開けられなかったマンションから、同じ区内の見晴らしのいい高層マンションへ買い替え、リノベーション。息子は独立し、夫婦、娘の3人暮らし。

これからを見据えたダウンサイジングの暮らし

子供たちが独立し、それまで暮らした家をリノベーション……はよくある話。そこで改めて「残りの人生をどう暮らす?」と考え、理想の環境に住み替え&リノベーションをしたOさん。行正さんに相談し、スペースをダウンサイジングしつつ“好き”をギュッとつめ込んだ上質な空間が完成。毎朝目覚めるたびに感動するという、ワクワクする暮らしがスタートした。

窓面積が大きく、明るいリビングダイニング。

窓面積が大きく、明るいリビングダイニング。大理石天板のダイニングテーブルは行正さん宅でも使用しているポール・ケアホルムのPK54。ダイニングチェアはフリッツ・ハンセンのセブンチェア、ペンダントランプはルイスポールセンのPH アーティチョーク。壁には以前から少しずつ集めてきた山下充さんの絵画をかけた

Before

Before
写真提供/行正さん

リノベーション前のLDは約12.6畳ほど。

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_125
写真提供/行正さん

隣に約6.2畳の洋室とクロゼットが。壁を取り払い、クロゼットもなくしてひと部屋にし、広々としたワンルームのLDKに変更した。フローリングだった床はカーペット敷きに。カーペットはよりふかふか感を増すために下に補助材を入れているそう

後半の人生を楽しむために、行正さん主導で“好き”を具現化

後半の人生を楽しむために、行正さん主導で“好き”を具現化

キッチンは行正さんがデザインした造作。ダイニングテーブルの大理石の色を基準に、カウンタートップの色や壁、床のタイルの色を決めた。壁のタイルはアドヴァン。キッチンのペンダントランプはOさんが以前から所有していたルイスポールセンのPHグラスペンダントの限定品。壁前に置いた椅子は前の家でも使っていたもの。壁に飾ったロイヤルコペンハーゲンのイヤープレートも家族の思い出アイテム

ガスコンロ、オーブン、食洗機はリンナイ。

ガスコンロ、オーブン、食洗機はリンナイ。「おもてなしなど食器が多い家の食洗機は扉式がおすすめ」と行正さん。

引き出しは真鍮色の取っ手をつけ、軽やかに開閉できるソフトクロージングの金具を使用。天板はシーザーストーンに

引き出しは真鍮色の取っ手をつけ、軽やかに開閉できるソフトクロージングの金具を使用。天板はシーザーストーンに

「ゴミ箱は大きく作り、中で分類するほうが使いやすい」と行正さん。蓋上にはゴミ袋を置くスペースも。

「ゴミ箱は大きく作り、中で分類するほうが使いやすい」と行正さん。蓋上にはゴミ袋を置くスペースも。

アイランドカウンターの高さは、下に収納するものを決め、引き出しなどの高さを決めてから算出した

アイランドカウンターの高さは、下に収納するものを決め、引き出しなどの高さを決めてから算出した

LDはカーペット敷き、キッチンはタイル張り。照明の真鍮に合わせ、間に真鍮をはさんで美しく仕上げた。

LDはカーペット敷き、キッチンはタイル張り。照明の真鍮に合わせ、間に真鍮をはさんで美しく仕上げた。

収納は細かく。キッチン家電もすべて収納し、ガスコンロ横にはコーヒーメーカー用、隣にカップ類用の収納を設けた

収納は細かく。キッチン家電もすべて収納し、ガスコンロ横にはコーヒーメーカー用、隣にカップ類用の収納を設けた

Before

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_133
写真提供/行正さん

リフォーム前のキッチンは、マンションでよく見かけるセミクローズドキッチン。家族そろって料理をするには狭く、暗く、せっかくの眺望もキッチンからはあまり見えなかった。壁を取り払い、向きを変えてオープンキッチンへと大きく変更した

スペースはコンパクトに暮らしの質は格段にアップ

息子が独立し、娘も社会人になったのをきっかけに住まいを見直すことにしたOさん。以前より料理本のファンで、英語のイベントに参加するうちに手がけるインテリアにもすっかり魅了された行正さんに相談し、依頼することに。長年家族で暮らしたマンションは大通り沿いで窓からの景色もよくなかったという。行正さんから「ここを終のすみかにしたいですか」と聞かれ、「行正さん宅のように眺望がいいほうがいいですけど」と答えたとか。「それなら探しましょう」と背中を押され、マンションを買い替えてリノベーションをすることに。出会ったのは眺めがよく、窓の多いワイドスパンの、光がふんだんに入る高層マンション。84㎡から70㎡へとダウンサイジングすることになるが、夫婦ふたり暮らしには十分な広さだと判断した。

「家族そろって食べることが好きなので、行正さんのスタジオのようなアイランドキッチンにし、皆で飲みながら料理がしたいとリクエストしました。ほかにも集めてきたアートを飾りたい、ガラスブロックを使いたい、丸いダイニングテーブルにしたいとお伝えして」とOさん。行正さんはOさんが所有していたアートと飼っている文鳥の色から、キーカラーをグレーとローズピンクに設定。イメージボードを制作し、家づくりがスタートした。

家の隅々まで光が入る空間に。メリハリをつけてコストダウンも

廊下が広くなり、玄関まで明るくなって開放感も増した。壁の漆喰は白にピンクを混ぜて仕上げた

廊下が広くなり、玄関まで明るくなって開放感も増した。壁の漆喰は白にピンクを混ぜて仕上げた

Before

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_135
写真提供/行正さん

玄関を入り、少し進むと廊下の幅が狭くなっていた。そのせいもあって玄関やその横の部屋まで光が回らず、暗い印象に。廊下の幅を広くすることで玄関まで光が回り、廊下としてだけでなくエントランスホールのようなゆとりのある空間を目ざした

取っ手やドアノブは真鍮色につけ替えた。扉の色とデザイン、取っ手やドアノブが変わっただけで、こんなにも印象が変わるのに驚く

取っ手やドアノブは真鍮色につけ替えた。扉の色とデザイン、取っ手やドアノブが変わっただけで、こんなにも印象が変わるのに驚く

Before

より快適な暮らしへアップデート!50代からの「リノベ」&「住み替え」_1_137
写真提供/行正さん

リノベーション前の洗面カウンター。鏡やカウンタートップはそのまま再利用。収納部分の扉や手前のパウダールームの扉には、モールディングを施し、白くペイントして再利用した

リビングの壁面収納は右から夫用、テレビやAV機器、Wi-Fiルーターなど用、妻用と分けている。

リビングの壁面収納は右から夫用、テレビやAV機器、Wi-Fiルーターなど用、妻用と分けている。夫婦の収納部分には本や書類などが。奥行きを浅くし使いやすくした。

ガラスブロックの奥が寝室。ここに布団を敷いて寝ている

ガラスブロックの奥が寝室。ここに布団を敷いて寝ている

LDKとつながり、部屋の延長のように使えるよう、バルコニーにはウッドデッキを敷いた。

LDKとつながり、部屋の延長のように使えるよう、バルコニーにはウッドデッキを敷いた。テーブルとチェアを置き、天気のいい日にはお茶を飲んだり、お酒を飲んだりできる気持ちのいいスペース。

飼っている文鳥のグレーの羽とピンクのくちばしと、持っていたアートから、行正さんがこの家のキーカラーを提案した

飼っている文鳥のグレーの羽とピンクのくちばしと、持っていたアートから、行正さんがこの家のキーカラーを提案した

遮熱と遮光も兼ね、ロールスクリーンを設置。窓前に垂れ壁をつくり、隠せるように。

遮熱と遮光も兼ね、ロールスクリーンを設置。窓前に垂れ壁をつくり、隠せるように。

最後に選んだというサイドボードはローズウッド材を用いた北欧ヴィンテージ。アルネ・ヤコブセンによるポットチェアはローズピンクの張り地に。テーブルはプランナーコーヒーテーブル

最後に選んだというサイドボードはローズウッド材を用いた北欧ヴィンテージ。アルネ・ヤコブセンによるポットチェアはローズピンクの張り地に。テーブルはプランナーコーヒーテーブル

毎朝喜びを感じられる理想の暮らしがスタート

間取りは3LDKから1LDKに変更。見晴らしのいい窓に面した大きなLDKをつくり、そのぶん寝室はコンパクトに、収納はたっぷりと、とメリハリをつけた。キーカラーを基準に、キッチンの天板やタイルの色、チェアの張り地や家具の色を決め、空間全体が美しく調和するように。壁は漆喰塗り、床は足ざわりのいいカーペットを選び、照明にもこだわった。一方で玄関の下足入れや洗面所の収納扉、建具などはそのまま再利用し、モールディングをつけて色を塗り替えるなどしてコストダウンを。収納は持ち物を体積で計算し、きちんと収まるぶんの収納場所を確保するのが行正さん流だ。


「思い出のあるものは大切です。でも、ものが外に出たまま美しく暮らすのは至難の業。いかに捨てずにきちんと収納できるかを考えます」と行正さん。引っ越しの際にスムーズに作業できるよう、収納の地図まで描いてくれたのにはOさんも感激したそう。当初は独立するはずだった娘も「ここに住みたい」と設計途中から急遽3人で暮らすことに変更。“好き”を追求した終のすみかに住みはじめ、暮らしの質も気持ちも大きく変わったという。

「朝起きて窓を開け、新鮮な空気を吸うことがこんなにも気持ちがいいのだと知りました。料理をするのも楽しく、毎日家族で喜びを噛み締めています」

アートと家具を心地よいバランスで取り入れる。O邸の家づくりアドレス

FRITZ HANSEN TOKYO《フリッツ・ハンセン 東京》

一生ものの家具と出会える
ポール・ケアホルム、アルネ・ヤコブセンなど北欧を代表するデザイナーから、ハイメ・アジョンなどの現代の人気デザイナーまで、タイムレスなデザイン、卓越したクラフツマンシップによる上質な家具を提案するデンマークのブランド。エクラ世代がこの先の人生をともに過ごしたくなる、一生ものの家具と出会えるはず。

FRITZ HANSEN TOKYO《フリッツ・ハンセン 東京》
FRITZ HANSEN TOKYO《フリッツ・ハンセン 東京》

自然光の入る明るい店内には名作家具がずらり。Oさんが新居に購入したダイニングテーブル&チェア、アームチェアやコーヒーテーブルはこちらのもの。行正さんも数多くの家具を愛用している

DATA
東京都港区南青山2の27の14 1・2F
☎︎03・3400・3107
11:00〜19:00
不定休
https://www.fritzhansen.com/

Louis Poulsen Tokyo《ルイスポールセン東京ストア》

温かい光のロングセラーの照明ばかり
’23年に青山にオープンした、デンマークを代表する照明ブランド、ルイスポールセンの直営フラッグシップストア。自然光の入る広々とした店内で、北欧の名作照明が体感できる。人が心地よいと感じる光をかたちづくり、北欧の長い冬の夜を温かく照らし続けてきたロングセラーばかり。長く愛せる照明をお探しならぜひ訪れて。

Louis Poulsen Tokyo《ルイスポールセン東京ストア》
Louis Poulsen Tokyo《ルイスポールセン東京ストア》
photo by Kentaro Hanamura

個々のライフスタイルに合わせた照明のコーディネートをしてくれる。行正さんも大ファンで自宅やスタジオでアーティチョークやPHランプシリーズなどを愛用。Oさん宅のダイニングやキッチンの照明もこちらのもの

DATA
東京都港区北青山3の2の2 AYビル1・2F
☎03・5413・6166
11:00〜19:00
不定休(年末年始)
https://www.louispoulsen.com/

Luca Scandinavia《ルカスカンジナビア/デュクシアーナ銀座ショールーム》

上質な北欧ヴィンテージ家具をお探しなら
銀座にある北欧ヴィンテージ家具ファン垂涎(すいぜん)の店。20世紀デンマークの質の高い北欧ヴィンテージ家具、絵画、工芸の買い付けから販売までを行い、スウェーデンの高品質ベッドブランド「DUXIANA/デュクシアーナ」の日本総代理店も担う。ギャラリーのように家具や絵画や陶磁器などが美しく展示されている。

Luca Scandinavia《ルカスカンジナビア/デュクシアーナ銀座ショールーム》
Luca Scandinavia《ルカスカンジナビア/デュクシアーナ銀座ショールーム》

行正さんも長い年月をかけて、数々の北欧ヴィンテージの名作家具をこちらから入手したそう。店内ではデュクシアーナのベッドの展示も。見るからに上質な、美しく洗練されたデザインのベッドは眠り心地もとてもいいと評判だとか

DATA
東京都中央区銀座1の9の6 松岡第二銀緑館1F
☎03・3535・3235
12:00〜18:00
定休日 水曜
https://www.luca-inc.com

LUN/DeKoration《ルン デコレーション》

行正さんにインテリアデザインを依頼するなら
行正り香さんによるインテリアデザインおよび、アートや家具、照明の販売を行う『LUN/DeKoration』。LUNとはデンマーク語で「あたたかい」という意味。主にデンマークの照明、家具、絵画を通じて、心にぬくもりを届ける空間をコーディネートしている。HPでは行正さんもファンだという野崎義成氏の絵画などの販売も。

LUN/DeKoration《ルン デコレーション》
LUN/DeKoration《ルン デコレーション》

HPにはインテリアデザインを依頼する際にイメージがつかみやすいよう、行正さんが得意とする北欧スタイルをベースに、モダンノルディック、クラシックノルディック、ジャパニーズノルディックの各写真の掲載が

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    ロンドンで訪ねたのは、ライフスタイル・シーンをリードする親友ふたりの家。「デザイナーズギルド」で知られるトリシア・ギルド宅には、色と花、そしてアートが。一方、ファッションブランドのショールームとコンセプトストアを手がけるマリア・レモス宅は、落ち着いたトーンの中にハンドクラフトへのこだわりが感じられる。心地よさの追求を共通点に、互いの顧客でもあるふたりはアイデアをシェアしつづける。

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