【50代の骨折】骨がもろくなる?手、足、助骨まで「小さな骨折」の原因は?対策方法は?
ちょっとした段差でつまずいて足の指を骨折したり、机にぶつけて手の指を骨折したりと「小さな骨折」をする50代が多数いることがアンケート調査により発覚!小さな骨折といえど、生活に支障が出るうえ、運動機能がどんどん衰える引き金になるから要注意。そこで、小さな骨折をしやすくなる原因とは?対策方法は?予防法は?整形外科医の先生に詳しくお聞きしました。
教えてくれたのは……
整形外科医 中村格子先生
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。医学博士。スポーツドクター。整形外科医としての診察のかたわら、健康で美しい体を保つためのエクササイズを提案し、メディアでも活躍。
『カラダのおくすり体操』 ワニブックス ¥1,300
骨折しない力、転ばない力など加齢で衰える7つの力を高める体操を紹介した中村先生の著書。
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①なんか最近、転ぶこと増えた? これって老化なの?
50代に多発中!小さな骨折
手、足、肋骨…読者にも意外と多かった!
なぜ、50代に小さな骨折が多発する?
アラフィー女性を対象にアンケート調査を行ったところ、小さな骨折の経験者が多数! まずは、そんなみんなのエピソードを公開。
アラフィー女性100人に骨折体験について聞きました!
Q.最近、転んでけがをしたことはある?
Q.最近、骨折したことはある?
Q.骨折した部位は?
風邪をひいて何日も咳が続いていたら、ある日、朝起きたときに肋骨にかなりの痛みを感じ、病院に行ったところ肋骨付近の小さな骨が折れてるといわれてビックリ。(自営業・51歳)
テニスをしているときテニスボールを素手でとろうとして指を曲げた状態でキャッチしてしまい、左手の小指を骨折しました。(自営業・47歳)
和室で正座をしていて別の場所へ移動しようとしたとき、完全に立ち上がっていないのに歩きかけてしまい、足の指先が畳に引っかかり骨折しました。(主婦・52歳)
夜中にトイレに行って寝室に戻ったとき、ベッドの角に足をぶつけて左足の小指を骨折。NHKのチコちゃんの番組で、“なぜ、足の小指をぶつけるの?”という疑問を取り上げていて、“人間は自分が思っているより1㎝外側を歩いているから”といっていて思わず苦笑い。(主婦・53歳)
入浴中に椅子に座ろうとしたときに、バランスをくずして浴槽の縁にわきを軽くぶつけて肋骨を骨折。痛みが1カ月も続き、笑っても、咳をしても痛かったです。(主婦・53歳)
家にある背の高い観葉植物が倒れてきてぶつかり、それだけで肋骨を骨折したことにショック。(自営業・54歳)
階段を上るとき、最近お気に入りのマキシ丈のスカートのすそを踏んでつまずいてしまい、思いっきり地面に手をついて指を骨折。(会社員・46歳)
家の階段を急いで下りようとしたとき、手すりの端に手の指をぶつけて骨にひびが…。(主婦・52歳)
宅配便が届いたときに愛犬が玄関に飛び出したので慌てて追いかけたらドアの端に足の小指をぶつけてしまい骨折。(講師・50歳)
中村先生のワンポイント解説
骨折には、“直達(ちょくたつ)”と“介達(かいたつ)”が。より老化を疑うべきは…
「骨折には直達と介達の2種類があります。直達は、足をぶつけて足を骨折するというように、力が直接加わった部位が折れるもので、これは若い人にもある骨折。一方、介達は、転んで手をついたのに肩を骨折したというように、力が加わった部分と離れた場所が折れるもので、老化で骨がもろくなって起こすのはこちら。介達骨折を起こしたら骨が老化している証拠です。また、咳で骨折するのは疲労骨折で、これも骨がもろくなっているサイン」
②バランス力、視力の低下など…50代の「小さな骨折」が増える5大原因とは?
体のさまざまな機能の衰えや骨がもろくなることが原因
50代に増える小さな骨折。その理由を整形外科医の中村格子先生にうかがった。
「加齢とともにさまざまな体の機能が落ちることが原因ですね。体を支えるための筋力は年齢を重ねるにつれて低下しますし、バランス力や反射神経、固有感覚、視力も衰えるので、転んだり、物にぶつかったりしやすくなります。それに加えてエクラ世代になると女性ホルモンが減少することで骨自体がもろくなるので、ちょっと転んだり、ぶつかったりしただけで今までより骨折しやすくなるのです。小さな骨折で多い部位は、足の指や手の指、手首、足首、肋骨など。骨折をするとほとんどの場合、その部位に強い痛みや腫れが生じます。小さな骨折でも手や足が骨折すると生活に大きな支障が出ますし、それを機に体力も落ちやすくなります。骨折していても自分ではわからないこともありますが、痛みがいつまでも治らなかったり、腫れがひどい場合は骨折を疑って早めに整形外科へ」
あなたの骨は大丈夫?「骨折しない力」チェックリスト
✓肉や魚、卵、野菜などをバランスよくとっていない
✓車での移動が多く、あまり歩かない
✓運動の習慣がない
✓最近、背が縮んできた
✓一日に30 分以上、外出をしない
✓タバコを吸う習慣がある
✓検診で骨密度が低いという結果が出た
✓ちょっとしたことで骨折をしたことがある
✓小・中学生のときにあまり運動をしていなかった
✓極端な食事制限によるダイエットをしたことがある
上の各項目で自分に当てはまるものをチェックし、ひとつでも当てはまったらあなたの「骨折しない力」は衰えている可能性大。半分以上当てはまったら、実年齢より骨の老化はかなりすすんでいると考えられる。
“小さな骨折”の5大原因
転ぶ回数が増えてきたら…“バランス力の低下”
「バランス力があればつまずいても体勢を保つことができて転ばないので、骨折も防げます。でもふだんバランス力を保つような動きをしていないと、この能力は低下します。入浴中にバランスをくずして骨折した読者のかたの例もこの能力の低下ですね」
すぐ座りたくなるのは危険信号!?“固有感覚の衰え”
「固有感覚とは重力に対して関節や筋肉などをどの位置や角度にもっていくとよいかを、瞬時に感知して脊髄(せきずい)に伝えるセンサーのようなものです。私たちが姿勢をよい位置に保てるのも、段差があったとき瞬時にそれに見合った高さに足を上げて乗り越えられるのも、この機能があるから。固有感覚のセンサーは体の各関節や足裏などに備わっていますが、運動不足だったり、平坦な道ばかりを歩くなど足裏への刺激が少ないと衰えていきます。自分では乗り越えられると思った段差に足をぶつけて骨折したという場合、固有感覚が衰えていると考えられます」
“筋肉枯れ”の放置はNO!“体を支える筋力の衰え”
「年齢を重ねると筋力は落ちていき、すると体を支えづらくなって転んだりよろけやすくなり骨折リスクがアップ。特に太ももの大腿四頭筋、おしりの大臀筋、股関節まわりの腸腰筋など下半身の筋肉が衰えると体を支えづらくなってしまいます」
物のせいにしてませんか?“視力の低下”
「骨折の隠れた原因が視力の低下。老化で視力が落ちているのに自覚がなく、夜に散歩をして足もとの段差を見誤って骨折するのは多いケース。部屋で床に置いてあるものを見落として足をぶつけて骨折するのも視力低下が関係している場合が」
骨形成より骨吸収の速度が上まわる!?“骨自体の脆弱化”
「骨は新たに作られる“骨形成”と、骨が壊される“骨吸収”を繰り返し、常に作り替えられています。女性ホルモンのエストロゲンにはこの骨の新陳代謝のバランスを保つ働きがありますが、更年期にエストロゲンの分泌が減るとバランスがくずれ、骨形成より骨吸収の速度が上まわり骨密度が低下。閉経後に骨粗しょう症になりやすいのはこのためです。骨に必要な栄養素が不足していたり、運動習慣がない人は骨がもろくなる速度がさらに速まります。自分の骨の状態は整形外科や内科、婦人科などで受けられる骨密度検査でわかるので受けておくのがおすすめ」
教えてくれたのは…
整形外科医 中村格子先生
Dr.KAKUKO スポーツクリニック院長。医学博士。スポーツドクター。整形外科医としての診療のかたわら、健康で美しい体を保つためのエクササイズを提案し、メディアでも活躍。
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中村格子 ワニブックス ¥1,300
骨折しない力、転ばない力など加齢で衰える7つの力を高める体操を紹介した中村先生の最新の著書。
③「こんなことで骨折!?」を防ぐ! “骨折しない力”を鍛える方法
ちょっとした段差でつまずいて足の指を骨折したり、机にぶつけて手の指を骨折したりと「小さな骨折」をするアラフィー女性が多数いることがアンケート調査により発覚! 「こんなことで骨折!?」を防ぐためには“骨折しない力”の強化が大切。アラフィー世代ならまだ間に合う、“転ばない力”を強化する方法をプロがお教え。
実は骨折しやすいのが家の中。骨折しない環境作りも大切
「小さな骨折を防ぐには、骨、筋肉、バランス力、固有感覚を鍛えて機能的な体を維持することが肝心。網棚に荷物を上げられない、テレビを座って見るのがつらく、横になって見るようになったなどの不具合は体が機能的に動いていないサインです」と中村先生。「また、骨折は実は“家の中”で起こるケースが多いので、骨折しない力をつけるとともに、家の中の環境作りも大切。床にあれこれ物が置いてあると足をぶつける原因になるので片づけて。お風呂の中も滑りやすいので注意が必要ですし、電球の取り替えなどをしようとして身近にあった不安定なものに乗り、転倒して骨折したケースも多いので、作業は安定性を確保して」
とはいえ、万が一、骨折してしまった場合の治療法も気になるところ。
「骨折の治療は、骨折した部分を固定して自然に骨が修復されるのを待つのが一般的で、治癒まで長くかかりましたが、近年登場して注目されているのが超音波骨折治療器です。骨折した部分に超音波を当てることで細胞を活性化して骨の再生を促すもので、治療期間が4割ほど短縮できます。どこの整形外科にもあるわけではないので、骨折した場合、クリニックに問い合わせてみましょう」
骨を鍛えるために…「重力刺激」と 「食事」と「日光浴」
「骨を丈夫にするために不可欠なのは重力刺激。重力刺激が加わると骨細胞が骨を作れという指令を出し、それで初めて骨は形成されます。ですからジャンプのような重力刺激を加える運動が効果的。ウォーキングでもOK。それとともに必要なのが骨を作る栄養素。カルシウムはもちろん、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンKなどを意識的にとって。肉や魚、野菜、乳製品、大豆製品などをバランスよくとることで補えます。ビタミンDは日光を浴びると体内で作られるので適度な日光浴も習慣に」
バランス力を上げるために…すき間時間に片足立ちを取り入れて
「バランス力はバランスをとる動きを意識的に取り入れることで鍛えられます。おすすめはいつでもどこでも簡単にできる片足立ち。信号待ち中などすき間時間に取り入れましょう。バランスボールに座ったり、最近人気の水上のボードの上でバランスを保つサップヨガなども◎」
筋肉を鍛えるために…下半身や体幹を鍛える筋トレを
「更年期を迎えるアラフィー世代は、疲れやすくなって運動をするのがおっくうになりがちですが、筋力は鍛えないとどんどん衰えるのでとにかく運動の習慣をつけて。下半身や体幹の筋肉を鍛えるトレーニングが“転ばない力”の強化に効果的なので実践を」
固有感覚を鍛えるために…足裏を刺激し、あえて段差を歩く
「段差を乗り越えるのにどれくらい足を上げればいいかといったことを瞬時に判断する固有感覚を鈍らせないためには、あえて段差のある場所を歩いたり、凹凸(おうとつ)のある山道を歩いたりして足裏を刺激するのが効果的。ちなみにまだ高齢にならないうちから家をバリアフリーにする人がいますが、そうすると段差を乗り越える機会が減り、固有感覚がどんどん衰えてしまい逆効果なのでおすすめしません。また、いつも同じ靴でなく、ハイヒールやフラットシューズ、スニーカーといろいろなタイプの靴を履くと、違う筋肉が使われて固有感覚の強化になります」
④骨、バランス力、筋力を強化! “骨折しない力”をつけるエクササイズ
ちょっとした段差でつまずいて足の指を骨折したり、机にぶつけて手の指を骨折したりと「小さな骨折」をするアラフィー女性が多数いることがアンケート調査により発覚! 整形外科医の中村格子先生が、骨折しない力をつけるエクササイズを伝授。
中村格子先生直伝!“骨折しない力”をつけるエクササイズ
中村先生がすすめる骨折しない力をつけるエクササイズはこちら。毎日がむずかしければ週3~4回でもいいのでコツコツと継続を。
骨そのものを強化“ジャンプ”
骨に効果的に重力刺激を加えられるジャンプは、骨そのものを丈夫にする効果大。慣れてきたら跳ぶ高さを上げたり、回数を増やしたりするとさらに効果アップ。
1.足を腰幅に開いて立ち、股関節と膝と足首を曲げて重心を下げる。
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2.肩をすくめて体を垂直に引き上げてジャンプ。次に1に戻る。このジャンプを10~30回。最初は軽く跳び、慣れてきたらなるべく高く跳ぼう。
運動習慣がなく、いきなりジャンプをするのがきつく感じる人は、つま先を床につけたまま股関節、膝、足首を曲げ伸ばしするかかと上げ下げでもOK。
バランス力&筋力アップ“プッシングランジ”
足を前後に開いて膝の曲げ伸ばしをするエクササイズ。バランス力が強化できるうえ、太ももの大腿四頭筋、おしりの大臀筋、股関節まわりの腸腰筋など下半身の筋肉を鍛えられる。
1.足を前後に大きく開いて立ち、両手を腰に当てる。足先はまっすぐ正面に向ける。
1.足を前後に大きく開いて立ち、両手を腰に当てる。足先はまっすぐ正面に向ける。
【ここがポイント】軸をまっすぐに意識しよう
膝を曲げたとき内側に入ってしまったり、骨盤が傾いてしまうのはNG。足先も膝も骨盤も、まっすぐ正面に向けた状態で行うこと。
バランス力&筋力アップ“片足T字立ち”
片足で立って体をTの字にしてふらつかないようにキープする、バランス力を鍛える効果が高いエクササイズ。大腿四頭筋、大臀筋、腸腰筋など下半身の筋肉を鍛える効果も。
1.脚を前後に開いて立ち、両手は肩の高さに上げて、まっすぐ横に伸ばす。足先はまっすぐ正面に向ける。
2.上体を倒して後ろ脚を伸ばし頭から脚を一直線にして5秒キープ。横から見ても前から見てもT字になるのが◎。左右の脚を入れ替えて同様に。
【ここがポイント】体が開かないように気をつけよう
体を倒したとき後ろ脚にもっていかれて骨盤が開いてしまうのはNG。骨盤は床と平行になるように保って。後ろ足の甲を下に向けるのがポイント。
ハードルが高いと感じた人は椅子を使っても
体が支えられずむずかしく感じる人は、最初は椅子の背に手をついて行ってみよう。これを続けて慣れてきたら椅子なしで行って。
取材・文/和田美穂 イラスト/カツヤマケイコ ※エクラ2019年7月号掲載
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