【50代からの「筋活」】教えてください、筋肉先生!50代からの「筋活」の勘どころ

セルフで筋活を始めるなら、けがなく、そして効率的に! 50代ならではの鍛えるべき場所、負荷について、筋肉の専門家、順天堂大学スポーツ運動科学部教授 谷本道哉さんが徹底解説。

教えてくれたのは

谷本道哉さん

谷本道哉さん

たにもと みちや●’72生まれ。大阪大学工学部卒。順天堂大学スポーツ運動科学部教授。専門は筋生理学、身体運動科学。NHK『みんなで筋肉体操』の筋肉指導で一躍人気に。

加齢でまず落ちていくのは体重を支える筋肉

なんだか筋肉が落ちたな、と感じることが増えるエクラ世代。一度落ちてしまったらあとは衰えていくだけ……とあきらめるのはまだ早い。「鍛えれば何歳からでも筋肉量を増やすことはできますよ」と谷本さん。

「筋肉量の平均値のピークは20代で、30歳を過ぎると徐々に減っていきます。そして、50歳を過ぎると減少が加速しますが、女性の場合は更年期も関係があります。女性ホルモンのエストロゲンには筋肉の合成を促す作用がありますが、更年期になるとエストロゲンがグンと減るからです。顔のたるみやフェイスラインのゆるみなどから筋肉量の低下を感じる人も多いかもしれませんが、加齢によって最も落ちやすい筋肉は、太ももの前側、おしり、ふくらはぎ、そして腕の裏側の4カ所。体重を支える大事な筋肉ほど落ちるようですが、これは年老いたら次の世代に道を譲るようにと、我々の体がプログラムされているからかもしれません。なお、腕の裏側は体を支える筋肉でないと思えそうですが、四足歩行のころは体重を支える筋肉でした。体重を支える=生きていくのに最も大事な筋肉です。何もしなければ減っていくだけですが、鍛えれば増えるとわかっているのですから、筋肉の衰えを感じたら『しっかり対策する時期に入りましたよ』という体からのサインだと受け止め、すぐに筋トレを始めましょう。うれしいことに、筋肉は鍛えはじめたその日から大きく強くなりはじめます。外から見て変化がわかるほどになるには2カ月程度はかかりますが、継続してがんばれば、確実に変化を感じられるはずです」

50代から、筋力量はガクッと減りはじめる!

50代から、筋力量は ガクッと減りはじめる!

体重を支える部分の筋肉から落ちはじめる!

体重を支える部分の筋肉から落ちはじめる!

下半身をまとめて強化!スクワットが最強なわけ

でもいざ筋トレを始めようと思っても、種類が多すぎてどれがいいかわからないし、忙しいからたくさんやるのは無理……。ということで、エクラ世代がやるべき「これ」という筋トレを厳選して教えてください!

「それなら、おしりと太ももの前側を同時に鍛えられるスクワットがいいでしょう。おしりを後ろにしっかり突き出して行うのがポイントです。場所もとらないし器具も必要ないので、まずはこれを習慣化してみるといいですね。筋肉の細胞(筋線維)は、収縮速度の大きな『速筋』と、大きな速度は出ないけれども持久力のある『遅筋』の2種類に分けられます(下図参照)。筋線維の色から前者は白筋、後者は赤筋と呼ばれ、白い筋肉はしっかり使うと太くなりやすく、赤い筋肉は白い筋肉に比べると太くなりづらいという性質が。大きな負担のかからない日常動作の中で使っているのは主に赤い筋肉であるため、ただ歩いたり立ったりしているだけでは、筋肉が顕著に大きくなることはありません。一方で、しっかり使うとよく増えるのが白い筋肉ですから、筋肉量を増やすなら白い筋肉をしっかり使えるような運動がいい。それには筋トレがよく、スクワットはその代表です。ただ、楽だなと感じる程度ではいくらやっても白い筋肉はさほど増えず、ある程度キツイと感じる負荷であることが大切。『筋肉は裏切らない』といいますが、これはしっかり負荷をかけた正しいやり方で行ってこそなんですね。自分だけでトレーニングをしていると、そして慣れてくるほど動きに『ごまかし』が入りがち。回数をこなすことを目標にしてしまって、深く沈み込まずにそこそこで止めてしまうかたが多い。専門のトレーナーなどをつけないセルフのトレーニングは『結果が出にくい』といわれるのはそのためでもありますが、逆にいうなら、ごまかさずにしっかりやれば結果はきちんとついてきます。筋肉は正直で、鍛えた部分に鍛えたようにつく。自分を甘やかさない、それがポイントです」

加齢で落ちやすい「速筋」は鍛えれば増える!

加齢で落ちやすい 「速筋」は鍛えれば増える!

泳ぎ続ける回遊魚のマグロは赤い筋肉、瞬発的に動くカレイは白い筋肉。多くはハマチのように赤と白の両方がある(哺乳類は赤と白が混在)。白い筋肉は加齢で落ちやすいが、鍛えると赤い筋肉より増えやすい性質がある

加齢で落ちやすい 「速筋」は鍛えれば増える!
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