相続、介護、免許返納etc…50代から考える「親との関係」

親が70代、80代になり、まだまだ元気でいるものの、会うたびに少しずつ衰えを実感している人も多いのでは? 長年介護問題と向き合ってきた専門家が親が元気なうちにできることや、知っておきたい情報についてお答えします。

【1】心を占める「母」のこと

たくさん愛され心配もかけた母には、ぜひ幸せな老後を送ってほしい。そう願いつつ、一方で母から解放されたいというモヤモヤした気持ちも。これからの母との向き合い方を考えていきます。

お話をうかがったのは…
精神科医 香山リカさん
立教大学現代心理学部映像身体学科教授。『さよなら、母娘ストレス』(新潮文庫)など著書多数。
臨床心理士 信田さよ子さん
原宿カウンセリングセンター所長。著書に『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』(春秋社)など。

Q 幸せかどうかが気にかかる身近な人は誰ですか?

A 1位 母 2位 両親 3位 子供

(チームJマダムと読者100人アンケートによる結果)

親子関係

「いつまでも元気でいてくれる気がするけれど」
ショッピングにグルメに観劇に。気が置けない母との外出は楽しいけれど、ふと気づくとささいな段差につまずいていたり、小走りについてこられなかったり。あれ、そんなトシ!?と思う瞬間。

ほかの人のように割り切れない それが娘と母との関係

「身近な人の中で、幸せに暮らしているかどうかが一番気になるのは誰?」。エクラ読者の1位は、「両親」「子供」を抑え、ズバリ「母」。
 最近は「毒母」などの言葉も流行(はや)っているが、エクラ世代の女性たちの、「母が気にかかる」というのは、毒母に困るというのではなく、“母にはいつも幸せでいてほしい”というプラス思考がほとんど。「母とは姉妹のように仲よし。これからもお出かけに誘いたい」(Kさん)、「母には感謝しかない。もし介護になったら実家に帰るつもり」(Fさん)など……。
 多くの人が少なからず母への感謝を口にし、いつまでも健康で幸せに暮らしてほしいと願っていた。

親の介護

「なんでも教えてくれた母もやっぱり、無理なんだな」
スマホで写真が撮れない、地図アプリの使い方がわからないと、すぐに私を呼び出す母。何度説明しても理解できないなら、なんでスマホ買ったの?とちょっとイラッ。昔は勉強でも料理でも、なんでも教えてくれたのに……。

親との関係
「やっぱり毎日笑顔でいてほしいのは、私の母」
"母のうれしそうな顔を見ると私もうれしい。母には幸せな老後を送ってほしいと思う。私もできるだけ協力するから"。それはエクラ世代の共通する願い。
 一方で、子供のころの母娘関係を問うと、「母からの期待が大きすぎて息が詰まった」(Fさん)や「すべて否定されて育った」(Tさん)など、心の奥に何やらモヤモヤも。そして、「今は離れて暮らしていい関係だけれど、いざ介護が始まり密接な関係に戻ったらどうなるか」(Wさん)と、これからの母娘関係に漠然とした不安を覚えるという声もやはり聞かれた。
 なぜ母のことになると、割り切れない思いがつきまとうのか? その理由がわかれば気持ちの整理もつき、母との向き合い方が見えてきそう。母娘関係に詳しい専門家が私たちの“母娘関係”を紐解くアドバイスをご紹介。

【2】母との関係は良好?

エクラ世代(50代)の母娘関係はおおむねとても良好。その背景には、母が生きた時代そのものがあるという!

50代からの親子関係

外でバリバリ働く夫にかわり、核家族の中で子育てに責任を負わされた結婚生活。同性の娘に自分の果たせなかった夢を託してくれたのだ。

戦後教育を受けた母世代 娘が社会で輝くのを応援!

母とショッピングをしたり、毎月ランチをしたり。気楽に会えない距離に住んでいたとしても、マメに電話やLINEで話したり。エクラ世代の娘と母は、なかなか良好な関係。それには理由があると、臨床心理士の信田さよ子さんはいう。
「アラフィー世代の母親というと、だいたい75歳くらいでしょうか。つまり、第二次世界大戦が終わってから小学校にあがった。男女同権や女性の自立をうたう戦後教育を最初に受けた女の子たちなのです。だから“女性も勉強が大切”“がんばれば社会で活躍できる”と考えており、娘の進学や就職に理解がある人が多い。エクラ世代側も、さまざまな局面で母親に応援してもらったという人が多いのでは」(信田さん)
 確かに、エクラ読者たちからは、「母はいつも私の味方」(Mさん)や「母に恩返ししたい」(Kさん)といった声がとても多い。

父親不在の家庭で母と娘がより密接な関係に

男女平等を教育されたとはいえ、母親世代が社会に出たころはまだまだ男社会。大学を出てもいい就職先は少なく、女は家庭に入って子育ての責任を負うのが当然の時代だった。
「父親不在などといわれていました。男性が仕事に没頭していた陰で、家庭では母親と子供は一心同体のような密接な関係に」(信田さん)
 そんな強固な母子関係の中で、母親の気持ちは同性の娘に向かった、と精神科医の香山リカさん。
「自立を目ざしながらも、社会に翻弄されて夢を果たせなかった母親世代。大学に行きたかった、バリバリ働いて社会で輝いていたかったという願望を、同性の娘に託すようになった部分があります」(香山さん)
 そうした母たちのおかげで、私たちはもしかしたら母も夢見ていた、進学や就職を後押ししてもらえたのだ。それをわかっているからこそ、母のこれまでの苦労をねぎらい、今度は母に幸せになってほしいと願うのかもしれない。

娘の心の声

『専業主婦の母がじれったい。もっと自由に生きて!』(Mさん・49歳)

50代からの親子関係

今年74歳になる母は、学校を出てすぐ結婚し、ずっと専業主婦。母が大好きな私にはとても幸運だったけれど、今になってもったいないなと思う。もっと自由に、自分だけの世界をもって生きてもいいのに、と。

先生のコメント

「母親の年代が子育てをしていたころは、男性が外で働き女性は専業主婦がモデルケースだった。女性も仕事をもち、自由になるお金を手にしていることも多い今とは、状況が違ったんですよね」(信田さん)。時代が変わったからといって、いきなり生き方の転換を求めるのは酷なのかも。「母親の人生を尊重し、適度な距離で見守って」(香山さん)

娘の心の声

『本家の嫁となり家族につくした母。感謝です!』(Tさん・50歳)

50代からの親子関係

本当は都会に出たかったけれどかなわず、本家の嫁となった母。愚痴ひとついわず家のため、家族のためにつくしてくれた。私たちは母のような女性たちの恩恵を受けて、今の自由を手にしたのだと思う。もうただ感謝しかない。

先生のコメント

「母親世代が結婚したのは、女性は嫁いだ先の人間になる、という観念がスタンダードだった時代。都会に出る夢があったのに、それをあきらめて本家に嫁いだという母親には、相当な忍耐と気持ちのコントロールが必要だったことでしょう。娘がそんな母親の生きざまを認めることは、精神的にほどよい距離感を生み、よいのでは」(香山さん)

【1】親の問題について考える

年老いた親、ひとりになった親、みんなどうしてる?

親が70代、80代になり、まだまだ元気でいるものの、会うたびに少しずつその衰えを実感している人も多いのではないだろうか。子育てからようやく解放されつつある今、周囲からは「介護保険」や「同居」「施設入居」といった声もちらほら聞こえてきて、「いつか」に備えなくてはと思う一方で「まだまだ」と先延ばしにしたい気持ちも。

そこで、エクラ世代では親のケアを実際にどのようにしているのか、日々のコミュニケーション方法や、将来、親の健康状態が悪化したときにどうしたいかをたずねる読者アンケートを実施。見えてきたのは、実際にはまだ介護問題には直面していない人が多いものの、離れて暮らす親についての漠然とした不安や悩み。読者のリアルな声を聞くとともに、親が元気なうちにできることや、知っておきたい情報をご紹介。
50代からの親子関係

「80代になった両親が今はふたりで支えあいながら過ごしていますが、状況の変化があったとき、私はひとりっ子なので、彼らにとって最善で快適な環境を整えられるのか……。」(主婦/50歳)

「主人は長男ですし、私はひとりっ子。正直、あと何年かしたら、今の私の生活はなくなるだろうなとは思っています。」(役所勤務/47歳) 「昨年父が亡くなり、ひとりになった母のことが心配。主人が転勤になりそうなので、その場合、母を見てあげられないかも……。」(プランナー/49 歳)

「ひとクセある父なので、万が一、母に何かあり、私が父の面倒を見ることになっても、うまくいかないかもしれないと不安です。」(ピアノ講師/49 歳)

「親は娘の私に面倒を見てもらいたいらしく、早く福岡で一緒に暮らすように常にいわれています。電話のたび、主人に福岡転勤になるように会社にいって!とも。」(主婦/51歳)

「私たち夫婦の両親はどちらも札幌在住なので、もし面倒を見ることになったら、横浜と札幌の往復を頻繁にするようになるかと思うと、飛行機代だけでも悩ましいです。」(スタイリスト/45 歳)

【2】親のこと、どう考えていますか?

70代、80代になって少しずつ衰えていくエクラ世代の親の実態と親に対する思いをアンケート調査。同居・別居の選択、お金のこと、親が元気なうちにできること、知っておきたい情報など、調査からわかったことをご紹介します。

Q1.ご両親と義父母の年齢は?

50代からの親子関係

親の年代の中心は70代から80代。実の親より義理の親の年代が高いのは、夫のほうが年上という人が多いからだろう。どちらも女性の存命率が高いのは、女性のほうが平均寿命が長い世相を反映。

Q2.親とは同居? それとも別居?
(※父母はどちらか一方の場合も含む)

50代からの親子関係

圧倒的に多いのが「別居」。また同居でも、二世帯住宅など住空間は分けている人が多い。別居と答えた人でも、遠方で暮らしている人、車で30分以内のところに住む人など、その距離はさまざま。

Q3.ご両親や義父母とは、どれくらいの頻度で連絡をとりあっていますか? また、その連絡方法は?

両親へは、毎日電話で連絡しています。(主婦/53歳)
実家の両親とは2、3週間に1度くらい。義父母は1カ月に1度くらいです。どちらも携帯メール、電話が主。子供たちの行事などの写真を添付してこちらの様子を知らせています。(主婦/48歳)
両親はLINEにて、必要なときのみ(1~2カ月に1度程度)、義父母は電話にて、1~2週間に1度程度。(コンサルタント/49 歳)
父が去年亡くなったので、母とは月いちで会っています。連絡はメールと電話です。義母とは、私は年に2回会って、年に2回くらい電話で連絡をとる程度です。夫は月に1〜2回実家に行ってます。(看護師/49歳)
父とは父の部屋を掃除したり、一緒に買い物に行ったりしていますので毎日話をします。義父母は毎年お正月に家にあいさつに行くぐらいでそのほかは連絡をとっていません。(主婦/51歳)

Q4.親の今後について家族で話しあったことはありますか?

50代からの親子関係

実家の両親とはときどき話しますが、「子供には迷惑をかけたくない」と終活してせっせと荷物を減らして準備したり、貯金を確認したりしているようで、感心するとともにせつなくもあり。義父母と私は話したことがありません。夫もまったく考えていないようです。(主婦/48歳)
介護についてはお金で解決できることだと思いますので、あまり話しあう必要はないと考えています。延命治療や告知についてなど、自分の最期(さいご) をどう迎えたいかについては、元気なうちに聞き取りをしています。(会社員/48歳)
実母からは、もし義父が亡くなって義母がひとりになったら、夫の妹に面倒を任せず、私が義母を引き取って面倒を見るようにといわれています。(主婦/52歳)
主人には「好きな人なら両親のことも好きになれるし、育ててくれた感謝の気持ちから介護もできる。でも好きじゃなくなってしまった人の両親は好きになれないし、面倒なんて絶対に見られないよ」と半分脅しみたいですが話しています。(役所勤務/47歳)
人には頼りたくないという両親に、どうしたら日々心地よくいてもらえるのか、とことんヒアリングをして、可能なこと、不可能なこと、きちんと話しあった。(自営業/51 歳)

50代からの親子関係

Q5.親がもらっている年金額や貯金額を知っていますか?

50代からの親子関係

親の年金額や貯金額を「知らない」と答えた人が半分以上。また「知っている」と答えた人でも、自分の親の経済状況はだいたい把握しているものの、夫の親については知らないと答えた人が多かった。

Q6.現在、ご両親、義父母の中で介護が必要なかたはいますか?

50代からの親子関係

まだ実際に親を介護している人は少ない。それだけに親の健康状態が悪化したときに、「同居か別居か」「仕事はどうするのか」「かかる費用」などについて不安を感じているという声が多く寄せられた。

Q7.親に介護が必要になったとき、どのように支えたいと思いますか?

福祉については、お金を使ってプロの手に任せるべきだと思っています。私自身も、子供に迷惑をかけることのないように、専門機関にゆだねるつもりで老後資金については考えています。(会社員/48歳)
誤解を恐れずにいうと、今は自分が親を支える自信がありません。そして、まだ先のことと思ってしまっているかも。(自営業/44 歳)
介護される人、する人の立場や性格は人それぞれだと思うので、意見がまとまるとスムーズに進みますが、意見が違うと、みんな、介護される人のことを考えるあまり、介護される人がかわいそうな状況になります。なるべく人の手を借りて、介護する人も追い込まれないような方法がいいと思います。(非常勤職員/50歳)
私の子供たちをそれはそれは愛してくれて、育児を可能なかぎり手伝ってくれたので、ぜひ私もその感謝をこめて、可能なかぎり親の希望に添い、ていねいに大事に世話して見送ってあげたいと思っています。子供たちの手が十分に離れていれば同居もしてあげたいです。(主婦/48歳)
母の介護のときは、父と協力して、できるかぎりのことを家でやりました。でも、父のときは私ひとりですし、体も母よりも大きいので、施設で見ていただいたほうがいいのかもと考えています。(フラワーデザイナー/47 歳)
私が実母を引き取る覚悟ではいますが、経済的には兄弟に援助してほしい。(自営業/45 歳)

50代からの親子関係

Q8.介護が必要な親がいるかたは、現在、どなたが主に介護していますか?また、費用はどうしていますか?

50代からの親子関係
50代からの親子関係

介護している人が「実父母、義父母のどちらか」という返答では、自分やきょうだいが一部をサポートしているケースも。また、「自分」と答えた人は実父母を介護している人が多く、「きょうだい」と答えた人の多くは、夫のきょうだいが義父母を介護している。

Q9.現在、親の介護をしているかたは、いざというときに困ったことや、事前に知っておきたかったことは何ですか?

介護保険って寝たきりや、相当体が不自由になってから利用するイメージでした。でもそうじゃないんですよね。介護保険の仕組み、詳細について学ぶタイミングがなく、いざとなって初めて知り、あたふたでした……。(自営業/48 歳)
介護プランはケアマネさんが立ててくれますが、家族の誰かがきちんと把握してないと自分たちに合った介護にはつながらないと感じました。(会社員/48歳)
行政ごとに受けられる介護サービスの仕組みが違うので、ほかの地域で別居していると、申し込みも手伝えず大変でした。(ピアノ講師/49歳)
認知症の義母を見ていた義父が入院し、義兄と主人と、親戚が順番に泊まったりして大変なことに。義母の介護認定を早くすればいいのに、この段階でも義父は身内以外に頼るのをいやがる。(会社員/55歳)
父が最初に入院したときの介護認定では要支援、その後、長期の入院で体力が衰え、介護認定の見直しで要介護4となりました。見直しができると知ったのが遅く、自宅介護になりサービスを受けるのが遅くなりました。(主婦/56歳)

【3】50代女性の親のリアル体験談①

人の数だけ事情がある中で、親のケアの仕方も人それぞれ。50代女性の親のリアル体験談をご紹介します。ケース1では、母から“好きなことをしたいから放っておいて”といれている娘さんのお話。

50代からの親子関係

case1
親の状況 実母が遠距離でひとり暮らし
主にケアしている人 ヘルパー
Mさん(事務職/ 51歳)
家族構成 夫とふたり暮らし(社会人の娘は別居)
親とは同居? 別居? 実母(76歳)別居、義母(77歳)別居

母から「好きなことをしたいから放っておいて」といわれています

父は3年前に亡くなり、母は遠方の雪国でひとり暮らし。雪かきなどもひとりでやらなくてはならず、近くに呼び寄せることも考えたのですが、親戚も近くにいるからまだ行きたくないというので、心配ながら本人の希望を優先していました。
 そんなとき、実家のそばに病院に隣接した新築の介護マンションが立ち、車で前を通るたびに気になっていました。ある日母と一緒にそこを訪れたところ、24時間セコム監視つきで食事つき、なにより比較的元気で若い人が多く、明るい雰囲気が気に入りました。「とりあえず冬の間だけでもお試しで暮らしてみない? いやなら戻ればいいし」と提案したところ母も気に入ってくれて、その冬には引っ越しました。入居に関する費用は母のお金から。「いらない」といわれますが、少しの仕送りをし、携帯代は私が負担しています。
 夫は長男で、私はひとりっ子。以前から「将来4人の父母を見ることになるね」と話していた主人は、私の母に対して実母のように接してくれ、感謝しています。一方、義母はまだ元気ですが、主人の妹が近くに住んでくれているので助かっています。義母も母のことを気にして「あなたはそちらを見てあげてね」といってくれるので、ありがたいです。
 母からは「同居よりも、近くの介護施設。ひとりで食事が作れなくなるまで好きなことをしたいから放っておいて」といわれています。私も金銭的に許されるのであれば今後もそうしたいと思っていますが、認知症の入口にいるとヘルパーさんから指摘され、今後進行したら、新しく介護施設を探すか、こちらに呼び寄せるか、悩むところです。

【4】50代女性の親のリアル体験談②

人の数だけ事情がある中で、親のケアの仕方も人それぞれ。エクラ世代の親のリアル体験談をご紹介します。ケース2は、母が倒れたことをきっかけに疎遠だった三姉妹が一致団結するお話。

50代からの親子関係

case2
親の状況 実父母が次姉と二世帯住宅
主にケアしている人 姉ふたり
S.Tさん(パート/ 51歳)
家族構成 再婚の夫とふたり暮らし
親とは同居? 別居? 実父(85歳)・実母(82歳)は次姉夫婦と同居、義母(83歳)別居

疎遠だった家族が一致団結。私は贈り物や言葉を定期的に届ける役です

私は三姉妹の末娘ですが、実家の後継者問題で姉妹親子関係が悪化し、修復不可能な状態が20年続いていました。二世帯住宅に住みながら、両親とは犬猿の仲で交流がほぼなかった次姉夫婦、跡を継がなかった負い目で両親に会うのも遠慮していた長姉、そして私自身も離婚問題で実家から足が遠のいていました。
 そんな崩壊寸前だった家族に転機が。長期入院中だった父を看病していた母が通院先で倒れ、緊急搬送されたのです。「親なんかいなくなっても平気」と豪語していた次姉がおろおろし、頼った先が長姉でした。専業主婦だった長姉は認知症の義父を看み取とっていましたので、こういうときの判断が的確で行動も早い。「跡を継がなかったので私が」と両親の看病を買って出て、午前は父を、午後は母をと力量を発揮してくれました。次姉は彼女がいなければ仕事を続けられなかったと思います。
 実は次姉の夫である義兄は家業の後押しをすべく両親と養子縁組をしているため、実質的には私たちは4人きょうだいです。金銭的なことは跡継ぎである次姉が担ってくれ、私は長姉には「やっぱり長女、一番頼りになる」と、次姉には「義兄さんのおかげで助かっている」と、定期的に感謝の贈り物や言葉を届ける役です。次姉も長姉の存在の大きさを認め、家族が一致団結することで一気に関係が改善しました。
 母が倒れるまで、両親は「このままでは死んでも死にきれない」と思っていたと思います。残された時間を心穏やかに過ごし、最期を迎えられることを最大の幸せと感じているように私たちには見えますし、そうであってほしいと思っています。

【5】50代女性の親のリアル体験談③

ケース3では、認知症の義母のケアに家族と話し合い、「時には冷静さ、クールさも必要と痛感しています」という結論に。

50代からの親子関係

case3
親の状況 義父母が同じ市内に居住
主にケアしている人 義母と同居の義父
Y.Kさん(パート事務/48 歳)
家族構成 夫と息子ふたりの4人暮らし
親とは同居? 別居? 義父(79歳)・義母(79歳)別居、実母(77歳)別居

時には冷静さ、クールさも必要と痛感しています

5、6年前から義母に認知症の症状が現れてきていたのですが、義父はなかなかそれを認めようとしませんでした。4年前に義母の妹の助言もあって義父は彼女と一緒に市役所の介護課に行き、介護支援事業所のリストをもらってケアマネジャーさんを紹介してもらいました。
 義母は要介護3と認定され、うちから車で30分のところに住んでいるので、最初は私もなるべく行って食事や買い物を手伝おうと張り切っていたのですが、義父はプライドが高く、素直に頼んでこないので、今は頼まれたときだけ行くようにしています。家族のヘルプには、時には冷静さ、クールさも必要だと思います。
 義父は自宅で仕事をしていたため、私たち夫婦はデイサービスを利用したほうがいいのではないかといったのですが、「家族がいるのにそういうところに行かせるのはかわいそう。彼女はそういうところが好きではないと思う」という意見でした。私自身は、義母はずっと仕事をしていた社交的な人なので、家にいるより社会とのつながりがあったほうがいいと思ったのですが……。結局ケアマネジャーさんの助言でデイサービスに通うまでに1年くらいかかりました。今はデイサービスに週4回通い、とても規則正しく安定した日々を過ごしているようです。その間は義父も仕事に集中できるようになったので、結果的にはよかったと思っています。
 義母をどう見るかについては家族とずいぶん話しあいましたが、それぞれ立場や性格が違うので、義母によかれと思う部分がくい違ってしまう場面もありました。介護する人が追い込まれず、介護される人が振り回されないためにも、なるべく第三者の視点をもつ人の手を借りたケア方法を選択するほうがいいと、今は実感しています。

【6】50代女性の親のリアル体験談④

人の数だけ事情がある中で、親のケアの仕方も人それぞれ。ケース4では、実母の面倒を見る娘さんのお話。

50代からの親子関係

case4
親の状況 実母が近くでひとり暮らし
主にケアしている人 自分、姉
坂牛惠理子さん(鍼灸マッサージ師/ 56歳)
家族構成 夫とふたり暮らし
親とは同居? 別居? 実母(84歳)別居、義父(90歳)・義母(81歳)別居

実の娘だからこその会話と距離感をとにかく心がけています

母は3年前に足首を骨折したのをきっかけに、今までのような日常生活を送るのがむずかしくな
りました。同時に、出歩いたり人に会うことも少なくなり、物忘れもするなど、体以外にも変化が……。
 骨折が完治するまでの2カ月間は私が実家に泊まり込んで、家事全般を担当しました。フルタイムで働いている姉は介護の専門職についているため、手すりを取りつけたり電動ベッドをレンタルしたときの手続きや、デイサービスでのリハビリなどを手際よく手配してくれ、役割分担しながら姉妹ふたりで母をサポートしてきました。
 私はそれまでほとんど実家には行かず、電話もたまにしかしない娘でしたが、実家のひと部屋を治療室にリフォームし、週3、4回は実家に行き、母の世話とともに鍼灸治療の仕事をしています。母の世話だけのために実家に行くと思うとストレスになりますが、仕事も兼ねているので続いているのだと思います。
 自分たちの生活もあり、私も姉も母と同居することはむずかしいと思っています。母がひとりでトイレに行けなくなったときは、どこかの施設にお世話になるしかないのですが、それまではできるだけ今の家で過ごしてもらうべく、母には時間がかかってもできることはやってもらうよう心がけています。やってほしそうな顔をするときには、「鬼娘なので、温かく見守らせていただきます」といって手伝いません。「同窓会に着ていくのはどっちの服がいい?」と母にも答えられるような質問をして、とにかく会話をしようと心がけています。教えてあげたいという親の気持ちは変わりませんから、実の娘ならではの作戦なのかもしれませんね。

【7】50代女性の親のリアル体験談⑤

年老いた親、ひとりになった親etc...人の数だけ事情があり、親のケアの仕方も人それぞれ。みんなはどうしているのか、読者の声をご紹介。case5では、訪問看護に来てくれた同世代の女性に救われた女性のお話。

50代からの親子関係

case5
親の状況 実父母が二世帯住宅で同居
主にケアしている人 自分
丸山美智(仮名・主婦/56歳)
家族構成 夫と次女との3人暮らし(長女は結婚)
親とは同居? 別居? 実父(85歳)・実母(81歳)同居、義父(88歳)・義母(85歳)別居

同じ境遇の人のアドバイスがこれほど心強いとは

介護は突然くるといいますが、わが家もそうでした。まず母に脊柱管狭窄症の症状が現れ、デイサービスに通いはじめました。続いて昨年9月に父が骨折し、入退院を重ねたあげく、ほぼ寝たきりの状態で自宅介護になりました。
 わが家は実父母との二世帯住宅。近くに弟夫婦もいるのですが、たまに様子を見にくるだけです。私ひとりでふたりを見なくてはならないと思い込み、ケアについて何も知らなかったので必死でした。疲れ果てていたある日、ふとブログで弱音を吐いたところ、介護経験豊富なかたから「ひとりでがんばることはない」とコメントいただき、さまざまなアドバイスをいただきました。自分で抱え込みすぎていたんですね。おかげでケアマネジャーの存在を知り、訪問看護やリハビリを受けるようになりました。そんな私の姿を間近に見ているせいか、娘も介護食の本を探してくれたり、短時間の買い物に付き合ってくれたりしています。
 最近は、訪問看護に来てくださる同世代の女性にいろいろと相談に乗ってもらっています。担当のケアマネさんは若い男性のため、私としては同世代の女性のほうが話しやすいのです。心許せるケアマネさんにしたほうがいいのではという彼女の助言もあり、ケアマネさんを替えるかどうか、今考えているところです。
 この間に義母も入院したのですが、私は父のことでいっぱいで、行くことができませんでした。同居に巻き込んでしまった主人には申しわけないですが、幸い義兄夫婦と義姉が見てくれ、私の事情も知っているので「気にしないで」といってくれるのが、本当にありがたいです。

【8】50代女性の親のリアル体験談⑥

ケース6では、両親に「ありがとう」を伝える大切さを学んだある女性のお話。

50代からの親子関係

case6
親の状況 実父母が同じ市内に居住
主にケアしている人 自分、実父と同居の実母
S.Cさん(美容セラピスト/48歳)
家族構成 夫と娘の3人暮らし+犬
親とは同居? 別居? 実父(75歳)・実母(72歳)別居、義父(79歳)・義母(77歳)別居

お礼をいうばかりの両親にたまには「ありがとう」を伝えることも大切ですね

父の大腸がんが判明したのが1年前。ステージ4でした。父の介護は主に母が担いましたが、私も病院への付き添いや送り迎えをするため、時間の融通がきくような仕事スタイルに変えました。
 最初は受診のたびに同席して、私が主治医に質問し、あとからネット検索するなどして両親に説明するようにしていました。そうすることで、不安が少しでも解消できると思っていたのですが、実際は違ったようです。病気に関してはどんな些細(ささい)なことであっても、医療関係者の口から発されたものでなくては両親の耳に届かない、それがわかるまで長い時間がかかりました。そこで、介護保険を申請し、専門家から両親に伝えてもらおうと思いました。申請後自宅で認定審査をしてもらい、1カ月半程度で出た結果は「要介護1」。今は訪問看護、通所リハビリ、介護用品のレンタルを利用しています。
 専門家が話すことによって両親の耳にも情報が入るようになりましたが、その際に父の性格や思いを伝える家族の存在も大事だと思います。ケアマネさんには「介護リハビリと大きく送迎車に書いていない施設をすすめていただけますか」「リハビリではなくシニアフィットネスといい換えていただけると」と伝えて、両親をうまく誘導してもらっています。
 先日、久々に父が家族みんなにごちそうしてくれる機会があり、「お父さんのおかげ、おいしかった」といったら、父はとてもうれしそうでした。そういえば、両親は最近お礼をいうばかりでいわれることがなかったのだなと気づきました。サポートするばかりでなく、今後は時には親に甘えて「ありがとう」と伝える機会もつくりたいと思っています。

【1】相続について考える

教えてくれたのは・・・
上級相続診断士 一橋香織さん

上級相続診断士 一橋香織さん

笑顔相続サロン代表。アフィリエイティッドファイナンシャルプランナー、終活カウンセラー上級、家族信託コーディネーター。これまで2000件もの相続問題を解決し、著書も多数。     

親子、きょうだいで今すぐ取り組みたい 相続トラブルを避けるための4ステップ

身近な問題である「相続」だけど、実は、なんの対策も講じていない人も少なくないよう。「法律に沿って行えばスムーズにいくはず」「たいした財産がないから大丈夫」と思っているなら、要注意。2000件以上の相続と対峙してきた上級相続診断士の一橋香織さんが、相続トラブルを防ぐための事前準備をお教えします。

Case1. 財産と、親の気持ちの棚卸しをする

50代からの親子関係
争族は、どんな家庭にも起こりうる問題。だとしたら、トラブルを避けるべく準備しておく必要がありそう。
「『まだ親が元気だから』と先送りにしている人が多いようですが、相続の話題は、親が元気なうちでないとできないもの。親が、病気になったり体が弱ってきたりすると、気が引けて口に出せなくなるだろうと思います。病状によっては、それどころではなくなる場合もありますしね」と、一橋さん。
ましてや、認知症の兆候が表れてしまったら、相続について、正しい情報や判断が得られない可能性もある。
「実際、高齢の親に財産を確認したところ、正確に把握しておらず、親戚に『祖父から継いだ山があったはず』と指摘されて、山林を所有していたことが判明したことがありました。こういったケース、実はとても多いんですよ。登記簿謄本が手元にあったり、固定資産税の通知が毎年きていたりすれば、遺された家族が確認できますが、なかには、評価額が低いなどの理由で固定資産税がかかっていない土地もありますからね。また、本人がふだん利用しておらず、存在すら忘れてしまった銀行口座も少なくありません」
 本人が亡くなっても、家族が届け出ないかぎり、銀行側が知る術はない。その口座は休眠口座となり、故人の預金が家族に渡る可能性は低いのだとか。「財産を調べるのと同時に、誰が法定相続人になるかを確認しましょう。そのうえで、親がどうしたいと思っているのか、気持ちの棚卸しをすること。法定相続人がひとりなら迷うことはないでしょうが、複数いる場合は誰に何を遺すのかも想定を。それが公平でない場合は、相続人みんなが納得できるように対策をとらなければなりません。また、親の老後をどうするかも、相続にかかわる問題なので、あわせて考えておきたいですね。特定の子供が面倒を見るなら、それを考慮した財産分けがベターですし、介護施設を利用するつもりなら、その費用を除いた金額で、財産分けをする必要があります」
50代からの親子関係
50代からの親子関係

Case2.家族で情報を共有する

50代からの親子関係

「財産と気持ちの棚卸しができたら、次は、家族みんなで具体的な話し合いを。親の意向に子供たちが従うとはかぎりませんし、相続税が発生しそうなのに、それに充てる現金がないことに直面するかもしれません。家族で話し合うことで、こうした〝わが家の問題点〞が見えてくるだろうと思います」(一橋さん)
 心がけたいのは、親と娘、親と息子のように個別にではなく、相続人がそろったところで話し合うこと。「親も年をとると気弱になり、子供それぞれに〝おいしいこと〞をいう場合もあります。親が亡くなったあとで、『私はこう聞いていた』『いや、オレにはこういっていた』などと、もめることもあれば、『どうして自分にはいってくれなかったんだ』『本当にそういったの?』と、怒りや疑念を抱く子供がいるかもしれません。その結果、きょうだい間に争いが生じる事例は多々あります。関係者みんなが共通認識できる場をもつことが大切です」

Case3. 必要に応じて専門家にアドバイスを求める

50代からの親子関係

話し合いで問題点が見えてきたら、必要に応じて専門家を入れ、対策を練るのが得策。相続の専門家には、一橋さんのような相続診断士のほか、税理士や弁護士、司法書士などがいる。特に不動産をもっている場合、プロにアドバイスしてもらうのがおすすめだそう。
「土地は、用途によって評価方法が異なるうえに、立地形状が評価額に影響することもあるなど、けっこう複雑。ですから、正しい評価額を導き出したいのなら、相続に精通したプロにゆだねるのが安心です。また、相続税が発生する場合、どのように原資を捻出すればいいか、節税したいなら、どんな方法があるのかもアドバイスしてもらえますから」(一橋さん)
 弁護士は、家族がもめた際の〝仲介役〞という役割も担ってくれる。客観的な立場で、それぞれの意向と事情を聞きとり、妥協点を見つけ、解決策を導き出す。専門知識をもった第三者が介入すれば、大きなトラブルに発展するのを避けられることも。
「最近は、もめる前に相談にいらっしゃる家庭も増えています。初めから専門家が入ることで、家族が冷静に話し合えることもありますしね」

Case4. 定期的に家族でコミュニケーションをとる

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相続についての骨子が決まったら、それで一件落着というわけではない。「人の気持ちは変わりますし、事情も、財産の内容だって変わるかもしれません。なので、定期的に、家族で話し合う場をもってほしいですね。お盆やお正月など家族みんなが顔を合わせたときに、『あのときはこう決めたけれど、その後、気持ちに変化はない?』など、声をかけるだけでもOKです」
 数多くの相続問題を扱ってきた一橋さんがたどりついた〝争族を避ける最大の秘訣〞は、「家族が十分なコミュニケーションをとること」。
「家族で、昔話をするだけでも構わないのです。他愛のない話をしているうちに、『あのころはお姉ちゃんに頼っていたな』とか、『かわいい妹だったな』など、当時の気持ちが思い出され、お互いに抱いていたしこりが解消されたという事例も、これまでたくさん目にしてきました。人間とは不思議なもので、たとえ一度は距離が開いてしまっても、どちらかが歩み寄れば、もう一方も近づこうとするんですよね。コミュニケーションをとることこそが、家族の絆を深め、円満な相続につながるのだと思います」

【2】気になる相続のあれこれQ&A

身近な問題である「相続」だけど、実は、なんの対策も講じていない人も少なくないよう。「親にどう切り出したらいいか」「遺言書は必要?」といった疑問や悩みから、税制改正の内容に相続税対策まで、気になる相続のあれこれに専門家が一気にお答えします。

Q.親に相続の話を上手に 切り出すにはどうすればいい?

A.まずは感謝の気持ちを表し、その後、家族みんなで終活ノートを作成

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相続の話をしたとたん、「死ぬのを待っているのか!」などと、気分を害する親も少なくないだろう。
「いきなり自分たちの〝相続する権利〞を主張するのはNG。まずは、自分を生み、育ててくれたことへの感謝や敬意を表すべきです。それから、『お父さんやお母さんが幸せに暮らすために、家族みんなで今後のことを話し合いたい』と。そうすれば、親も聞く耳をもってくれるのでは?」(一橋さん)
 今後について話し合う際、活用したいのが「終活(エンディング)ノート」。
「終活ノートとは、遺される家族に伝えておきたい情報をまとめたもの。エクラ世代なら、分が親より先に亡くなることだってあるかもしれません。なので、自分が先に作成し、『私も何
があるかわからないから、突然亡くなったときにみんなが困らないように書いてみたの』と親に見せるのも一案。家族みんなが作っておくといいですよ」
 記載するのは財産やお葬式・お墓の希望にとどまらず、家族の思い出や現在の交友関係、好きな音楽に趣味といった〝家族に伝えたいこと〞を。
「『家は長男に相続させたい』といった希望があるなら、その理由も記して。思いや背景がわかれば、ほかの相続人も受け入れてくれるかもしれません」

Q.税制改正で相続税を払う人が 増えているようだけど

A.首都圏に不動産をもっている場合は可能性大です

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「平成27年以降、相続税の基礎控除額は、上のように『3000万円+(600万円×法定相続人の数)』に引き下げられました。この結果、相続税を納めなければならない人が増え、評価額が高い都心に土地をもっている人の場合、相続人の約半数が相続税を払うことになるといわれているほどです」と、一橋さんは指摘。
 例えば、相続人が子供ふたりで、相続財産の評価額が7000万円の場合。基礎控除額の4200万円を引いた2800万円が課税対象額となる。相続税の計算においては、子供たちが法定相続分どおり相続したものとして、課税対象額を2分の1ずつに分ける。相続税の税率は、課税対象額が1000万円超3000万円以下なら、15%で控除額は50万円なので、『2800万円×½×15%‒50万円=160万円』に。相続税の総額は『160万×2=320万』となり、これを各相続人が取得した財産の金額に応じて按分して負担する。ちなみに、税率は取得金額によって異なり、1000万円以下だと10%(控除額なし)、3000万円超5000万円以下は20%(控除額200万円)と、増えていき、最高税率は55%!
「相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告をし、納税しなくてはなりません。現金による一括納付が原則なので、多額の相続税が予想される場合、早めに対策をとるのが得策です」

Q.相続より贈与のほうが 節税できるって本当?

A.親の年齢や財産の額などケースバイケースです

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「ひとり当たり年間110万円まで非課税になる『贈与』は、相続税対策として有効です。ただし、そもそも相続税がかからない家庭には不要。早々と贈与したために、老後資金が不足するという事態にもなりかねません。また、贈与者が贈与を始めてから3年以内に亡くなった場合は、相続人に対する贈与財産は相続財産に加算されるので、相続財産の規模と親の年齢などを考慮することも大切」(一橋さん)
 家族間で行われる贈与であっても、贈与する側とされる側の合意は必須。子供名義の口座に振り込むなら、通帳や印鑑、キャッシュカードは子供に渡しておくこと。でないと、子供の名前を利用した〝名義預金〞と見なされ、相続税の対象になる場合も。
「贈与を確実に成立させたいなら、贈与内容と日付を書き、贈与する側とされる側が署名・捺印した、贈与契約書をつくっておくと安心ですよ」

Q.遺言書ってやっぱり用意するべき?

A.トラブルを避けるために、ぜひ用意しましょう

50代からの親子関係
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遺言書が重要だとはわかっていても、親に作成を促すのは気が引ける。「死を連想させますから、当然だと思います。けれど、遺言書は遺書ではなく、自分の財産をどうしたいかという意思を、誰もが納得する形で示せる唯一のツール。遺言書がないと、基本的には法定相続分どおりになり、相続人たちがそれを不服とすれば、争族に発展しかねません。親が元気なうちに、『家族がもめるのは悲しいから』と、作成をお願いしておきたいですね。一度作成しても、気が変われば、作り直すことはできるのですから」(一橋さん)
 遺言書には左の3種類があり、おすすめなのは公正証書遺言。公証人が関与するため、偽造などを疑われる心配がない。遺言書の有無は、公証役場に問い合わせればわかるが、生前、家族に「公正証書遺言を作成している」と告げておくと、より確実だ。
「遺言書は、相続人が口座からお金を下ろしたり、不動産の名義書き換えをする際に提示する書類としても使われます。手続きをスムーズにするためにも作成をおすすめします」

Q.相続税を抑えるには、 どうすればいい?

A.生命保険や小規模宅地等の特例を活用して

「生前贈与以外に有効なのが、生命保険。法定相続人が受け取る生命保険には非課税枠があり、ひとりにつき500万円までは相続税がかかりません。しかも、相続税の基礎控除額とは別。例えば、母の遺産が現預金5000万円で、相続人が子供ふたりの場合、基礎控除額の4200万円を超えるので相続税が発生します。そこで、生命保険を、子供それぞれを受取人にし、500万円ずつ加入。一時払いにし、今ある現預金から保険料の約1000万円を捻出すば、相続税の課税価格は4000万円になり、基礎控除額の範囲内に」(一橋さん)
 なお、生命保険は受取人固有の財産なので、ほかの相続人と分ける必要はなし。また、相続税が発生しそうな場合、納税資金準備として、生命保険を活用するのも一案だ。
「不動産を所有しているなら、『小規模宅地等の特例』にも注目を。配偶者や同居の親族、持ち家のない別居親族で一定の要件を満たす者が、自宅の土地を相続する際、最大330㎡まで、評価額が20%に減額されます。また、事務所や店舗、アパート、駐車場といった土地についても、事業継承する親族に対して、土地の評価額が減額されます」

【1】 年老いた親を動かす「魔法の言葉」 って?

よかれと思っていったことで、親が機嫌を損ねたり、心を閉ざしたり。それは、親にかける“言葉”が間違っているからかも!? アラフィー女性100名に「親にいいづらいこと」をアンケートして回答の多かった「家の片づけ」や「通院のすすめ」の話題を中心に、親の心を開く“魔法の言葉”を専門家がお教えします。

教えてくれたのは…

日本老年医学会専門医 榎本睦郎先生
榎本内科クリニック院長。東京医科大学を卒業後、一貫して高齢者医療に従事。『笑って付き合う認知症』(新潮社)などの著書がある。

『老いた親へのイラッとする気持ちがスーッと消える本』榎本睦郎 永岡書店 ¥1,100
高齢者ならではの心理や行動を紐解きつつ、上手に付き合う秘訣を伝授。シチュエーション別のおすすめ言葉がけも参考に!

ダメな言葉:家の片づけ

「昔はきれい好きだったのに。こんなにちらかっていたらみっともないから片づけて」

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ダメな言葉:通院のすすめ

「認知症かもしれないんだから、放っておいたら大変なことになるわよ」

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親がその気になるようなポジティブな言葉を選んで

「親にいいづらいこと」で、特に目立ったのが、家の片づけ&記憶力の低下。親の老いを実感するだけに、子供としては、「ナゼこんなことに!?」という残念な気持ちが先に立ち、厳しい言葉をぶつけがち。けれど、ダメ出ししても改善するわけではない。親にその気になってもらえるように、「片づけたほうが安全」「治療すれば大丈夫」と、前向きないい方をするのがカギ。特に「認知症」は、高齢者を不安にさせるので、「もの忘れ」のようなライトな言葉にいい換えを。

年老いた親とうまくいくコミュニケーション術

いいづらいことを口にしても、関係が悪化することなく、むしろ絆が深まる。そのポイントは、私たちが、“高齢になった親”を理解するか否か。まずは、高齢者ならではの心理や行動を学ぶことからスタート!

Q.親子のコミュニケーションで問題点や悩みはある?

50代からの親子関係
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親子各100名、親世代の平均年齢78.0歳、子世代53.3歳が回答。子供が悩んでいる一方、親は問題視していない。このギャップこそがトラブルの要因!?

心得4カ条

1.主語は「自分」でなく「親」に

2.ダメ出しはせず、メリットを提示

3.どんな言葉も、笑顔で口にする

4.一度ではなく、何度も告げる覚悟で

親を追い詰めたり、不安にさせるような言葉は避けて

親への助言や提言を機に、関係が悪化。それは、「親子間に、老化に対する認識のギャップがあるため」と、高齢者の言動に詳しい榎本睦郎先生。

「老いては子に従えということわざがありますが、現代の高齢者は若々しく、元気ですからね。彼らの辞書に、その言葉はないのです(笑)。そもそも親にとって、いくつになっても子供は子供。わが子に上から目線で意見されたり、高圧的ないい方をされては、機嫌を損ねるのも当然かもしれません」

一方子供は、老いた親の変化にとまどい、いらだってしまいがち。結果、「昔はできたのに」と、親を責めたり、「こうすべき」と、従わせようとしたり。

「いずれも親への愛情ゆえの行為だとは思いますが、それがアダになる場合も。同じ土俵に立つのではなく、少し引いて、クールなスタンスで接したほうがうまくいきます。第一、年をとれば、できないことが増えるのはあたりまえ。子供はそれを認識し、おおらかな気持ちで親と対峙してほしいですね」

親の心に寄り添い、共感することも必須。言葉をかけるなら、「私が大変だから〜して」といった“自分軸”ではなく、「お母さんが楽になるから〜したら?」など、親を主体にすること。

「また、ダメ出ししても改善するわけではありません。それよりメリットを提示したほうが、親が受け入れてくれる可能性は高まります。『〜しないと大変なことになる』ではなく、『〜すれば大丈夫』のような前向きな言葉遣いを心がけることも大切です」

こうしたポイントを押さえつつ、身体機能の衰えを理解して対策を。

「高齢者は、目の前の人を敵か味方かに二分する傾向があります。なので、親に言葉をかけるときは、常に笑顔で。笑いかければ、親は、『この人は味方だ』と思い、心を開いてくれるだろうと思います。それから、年をとると、記憶力が衰えるため、いわれたことを覚えていないケースが多々あります。つまり、どんな“魔法の言葉”であっても、一度いえばOKではないということ。親が動いてくれるまで、根気よく、繰り返し伝えましょう」

【2】親を動かす「魔法の言葉」<病気・介護編>

高齢の親に対する子供の悩み・心配の上位は病気や介護関連。しかし、親にとっては自分の老いを突きつけられる話題なだけに、トラブルも発生しがち。どう伝えたらよいか、専門家がアドバイス。

50代からの親子関係
50代からの親子関係

「親は、『自分は若い』と本当に思っているんですよ。それに加え、デイサービスにいいイメージを抱いていないのでしょう。まずは、最近のデイサービスは多種多様で、運動や芸術活動など、さまざまな体験ができる楽しい場所なのだと説明し、悪い印象の払拭を。そのうえで、親が気に入りそうなところを見つけ、上記のように誘っては?」。社交的な親なら、「新しい友人ができる」というのも効果的。

50代からの親子関係
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「『私たちは、面倒を見られないから』とか、『ひとりで暮らすのは限界』といったネガティブな言葉は厳禁。それよりも、介護施設の快適さや利便性を説いたほうが、親は受け入れやすいはず。実際、介護施設に入居して栄養バランスがよくなったり、生活環境が改善したりすることで、健康になる高齢者は多いですよ。そうした事例をあげ、ポジティブなイメージをもってもらうのも一案です」

50代からの親子関係

親世代の心に響くのは、「健康や若々しさを保てる」という言葉。「『服用しないと大変なことになる』『悪化しても知らないわよ』などと脅すのではなく、『元気でいられる』とか『もの忘れがすすまない』など、親にとってのメリットを提示すること。病院に行くことも同様に、『早期発見できれば、手術せずにすむかも』『早めに治療すれば、今の元気が保てる』と、親がいかに得するかを説くのが大切です」。

50代からの親子関係
50代からの親子関係

「ヘルパーの依頼を考えているということは、親が日常生活で困っていることがあるからだと思います。それをピンポイントで取り上げ、『高いところの掃除は大変だから、手伝ってもらえば楽よ』『洗濯物を干すのがしんどそうだけど、それをお願いしたら?』など、具体的にすすめてみましょう。『いろいろやってくれるから、助かるはず』といった漠然とした説明では、親はピンときません」

【3】親を動かす「魔法の言葉」<日常生活編>

「運転免許を返上してほしい」「ひとり暮らしは心配だから同居してほしい」など、子供が抱える親への日常生活のあれこれの希望を、専門家がピックアップしてアドバイス。先生いわく、高齢者ならではの心情を知って言葉をかければ、成功する可能性は大!

50代からの親子関係

「補聴器は、ハウリングや小さな雑音を拾ってしまうことがあるなど、不快な思いをする場合もあります。まずは、子供がそれを理解すること。そのうえで、『使いこなせるようになるまで時間がかかるかもしれないけれど、お父さんとのおしゃべりを楽しみたいから』などと、前向きな理由で提案してはいかがでしょう」。特に、かわいい孫にいわれたら、すんなり受け入れてくれる確率はアップ!

50代からの親子関係
50代からの親子関係

「交通の便がいい都会と、車が必須の地方とでは状況は違うので、むずかしい問題ですね。ただ、免許証を自主返納すれば、公共交通機関の利用券をくれるなど、特典を用意している自治体もあります。そうしたメリットを調べ、親に教えてあげては?」。免許証を身分証明書がわりにしている親には、自主返納した人に交付される運転経歴証明書があり、公的な本人確認書類になることを伝えるのも有効。

50代からの親子関係
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リハビリパンツを拒む理由は、自尊心や恥ずかしさから。「それを解きほぐすべく、『使うのがあたりまえ』『私もそうするつもり』と、明るく持ちかけて。使えば便利さが実感できるからか、その後は自発的に利用する高齢者は多いですよ」。尿漏れや頻尿は、年をとれば誰にでも起こりうるもの。「また、漏らしたの!?」「洗濯が大変だからオムツをして!」と、親を追い込むことはしないように。
50代からの親子関係

「親は気がすすまないのに、子供の都合で呼び寄せるのは考えもの。『心配だから同居を』とか、『近所に引っ越しを』というのは、子供主体の発想です。それに、ひとり暮らしだと家事を行うことになるので、脳の老化予防になります。なので、ここは子供が考え方を変えて。時々様子を見にいくなどサポートしたり、ヘルパーの助けを借りるなどして、親のひとり暮らしを応援してほしいですね」

【4】親を動かす「魔法の言葉」<終活編>

死を連想させるエンディングノートやお墓、遺産がらみは、特にデリケートな問題。終活・相続の第一人者である一橋さんが、親にうまく伝える“魔法の言葉”をアドバイス!

教えてくれたのは…

上級相続診断士 一橋香織さん
笑顔相続サロン代表。これまで2000件以上の終活・相続問題を解決。メディアでも活躍し、『終活・相続の便利帳』(エイ出版社)など著書多数。

50代からの親子関係
50代からの親子関係

「どの場合にも共通するのは、自分の考えを押しつけないこと。特にエンディングノートは、『早く死んでくれといわれているみたい』と受け取る親もいるので、配慮が必要。『私もやっているから、一緒にどう?』と、外堀から埋めるのがおすすめです。『書いてくれないと困る』と追い込むのではなく、『書いてくれたらうれしい』『お父さんとお母さんのことを知りたい』という謙虚な姿勢で臨んで」

50代からの親子関係

これも、親にとっては死を連想させるテーマ。「ストレートに切り出すよりも、『私は子供が女の子だけだから樹木葬にしようかと考えているの、お父さんはやっぱり先祖代々のお墓がいい?』『遠いから、なかなかお墓参りに行かれないのが気になっている』など、さりげなく話題にし、親の意向を聞いてみて。『お墓を守るのは私たちなんだから、ちゃんと考えてよ』と、高圧的な態度は逆効果です」。

50代からの親子関係
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「『テレビでデジタル遺品を取り上げていたけれど、ネット証券などは口座があるかどうかもわからなくて大変みたい』『友だちの家は財産調査して、ずいぶん時間やお金がかかったそうよ』など、身近な話題として切り出すのがベター。両親が存命なら、『私に教えなくてもいいから、お母さんには伝えてね』でもOK」。相続の話は、「育ててくれてありがとう」など、感謝の言葉を述べてからが○。

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この話題も、親によっては「心配してくれている」というよりは「厄介者扱いされている」と受け取る危険性が。「そう感じさせない配慮が必須。『私が心配してのことだと、わかっているはず』と思い込まず、きちんと伝えること。親から明快な答えがなくても、『そうやって、肝心なことをいわないんだから』と突き放したりしないで、親の希望や意向を知りたいという姿勢で、根気よく話し合いを」。

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