「もちろん腱の柔軟性は、遺伝によるところもあります。しかし日々の診察で私たちが感じているのは、50歳を超えると半数以上の人はアキレス腱が硬くなっているということ。これは遺伝だけでは説明がつきません」(久道先生)。
「年齢を重ねるごとに、男女ともにアキレス腱は硬くなっていきますが、特に、50歳以降の女性にアキレス腱が硬い人が多いのは事実です。それは、ヒールの高い靴を履き続けた影響も大きいと考えています。ヒールの高い靴を履くと、つま先立ちのような状態になり、アキレス腱は縮んだ状態に。歩いてもつま先立ちの状態は変わらず、アキレス腱は縮んだままです。ヒールの靴ばかりを履き続けることで、アキレス腱は縮んだ状態があたりまえに。ヒールの靴を履いていないときですら、アキレス腱をのばさずに歩くクセがついてしまうのです」。
今でこそ、スニーカーなどペタンコ靴を履くのがあたりまえになっていますが、50歳前後の女性は、20代のころからパンプスに慣れ親しみ、おしゃれな女性ほどヒールの靴を履いてきたという事実が。かくいう小田も、40代まで7~10cmヒールの靴を履くのが日常でした。
「アキレス腱を伸縮させ、しっかり指先で蹴り出す歩き方ができるのは、4cmヒールまで。4cmを超えるとアキレス腱の伸縮がなくなるだけでなく、足の位置がつま先のほうにズレて、足指が靴先に押し付けられてしまい、足指や爪の変形にもつながります。もちろん、靴のデザインや素材などによっても差はあるのですが」(久道先生)。