ダラダラ&ずるずるしてしまう50代へ「やる気が出るスイッチ」の入れ方

休みの日は何もしたくない、明日でいいかと後回し…。そんなアラフィー世代に朗報! 脳の奥にある「やる気が出るスイッチ」の入れ方をを教えます。

 

教えてくれた方
篠原菊紀さん

篠原菊紀さん

諏訪東京理科大教授。専門は脳神経科学、応用健康科学。日常の場面での脳活動や脳トレなどに詳しく、著書に『「すぐにやる脳」に変わる37の習慣』(KADOKAWA)など。

アラフィ―世代の”やる気なし”あるある

休みの日は 一日中ゴロゴロ、 何もしたくない
休みの日は一日中ゴロゴロ、何もしたくない

篠原さんcomment

「体を動かすことがやる気のトリガーになるので、ダラダラを続けていると、やろうという気持ちにはいつまでもなりません」

やろうと思うそばから 「 明日でいっか」と後回し
やろうと思うそばから「明日でいっか」と後回し

篠原さんcomment

「『やることでいい結果が得られる』という予測が立たないと、やる気は発動しません」

美容やおしゃれ、 「どうせやっても」と やる前から 気持ちが萎える
美容やおしゃれ、「どうせやっても」とやる前から気持ちが萎える

篠原さんcomment

「脳は、気づいてくれたりほめてくれたりといったごほうびがないと、やる気が出ないのです」

晴れた日はいいけれど雨の日は どよーんとやる気がダウン
晴れた日はいいけれど雨の日はどよーんとやる気がダウン

篠原さんcomment
「雨の日のイヤな記憶が強く脳が楽しいことを予測できず、やる気が起きない状態。ほぼ毎回、調子が悪くなるのであれば気圧の変化が心身の調子に影響を及ぼす『気候病』の可能性もありそう」

友人たちのキラキラSNSを見ると急にやる気が冷める
友人たちのキラキラSNSを見ると急にやる気が冷める

篠原さんcomment

「他人のまぶしいリア充ぶりに、脳が『自分には無理』と判断した模様。ネガティブな感情は、やる気を引き起こしません」

何かを始めようと思っても結局3日坊主になってしまう
何かを始めようと思っても結局3日坊主になってしまう

篠原さんcomment

「やる気は“長続きしない”という性質が。やるべきことが多すぎたりハードルを上げすぎると、よけいに続けるのがむずかしくなります」

毎日の家事にやる気が出ない。作る料理もマンネリ化……
毎日の家事にやる気が出ない。作る料理もマンネリ化……

篠原さんcomment

「やる気に必要な脳のごほうびになる言葉がないからかも。『おいしい』『ありがとう』など、ひと言リアクションがあるだけで、モチベーションは上がるはずなんですけどね」

同窓会や昔の友人からの誘いもおっくうで断りたくなる
同窓会や昔の友人からの誘いもおっくうで断りたくなる

篠原さんcomment

「旧友と会うことが、楽しい・うれしいといった快感に結びついていないのでは? 快感がないと脳はやる気を起こしてくれません」

「やる気が出るスイッチ」ですぐやる人になる!

日々の中で面倒に感じるあれこれ、やる気が出るスイッチがどこかにあったらなぁ……と思っている人に朗報! 実は脳の奥には実際に「やる気が出るスイッチ」があるらしい。お金も時間もかけずに、今日から“すぐやる人”になれるかも!

行動と快感が結びつくとやる気が生まれる!

人間のやる気にかかわっているのは、脳の奥のほうにある「線条体」という部分。やる気の根幹とも呼べる場所であり、やる気がある状態というのは、線条体が活性化している様態のことをさす。

「『やらなきゃ』と頭ではわかっていながら行動が伴わない=やる気が出ないときの脳は、言語にかかわるブローカ野、ウェルニッケ野といった部分が活動しているにもかかわらず、やる気の中核である線条体が鎮まったままの状態。脳はこのアンビバレンツを認識しているため、やらなきゃいけないのに……と苦しくなってしまうのです」

「線条体は、体を動かすことに関係する大脳基底核の一部で、快楽と行動を結びつける働きがあります。皆さんが何か物事に対してやる気が漲(みなぎ)っているときというのは、それをすると楽しい、気持ちいい、またはいい結果になる、といった予測が立つ場合が多いのではないでしょうか? このようなとき、線条体では行動と快楽が結びつき、働きが活性化しているのです。線条体には、実際に快感を伴う行動をしているときのほか、その行動によってごほうび(快感)が得られると予測したときに最も活性化するという性質があり、この予測こそがやる気の正体です」

「線条体は、意思や思考などをつかさどる脳(高度な脳)とは離れた場所にあり、意思でやる気をコントロールすることはできない構造になっています。だから、やる気が出ないのは怠惰な性格のせいなんて、思わなくていいのです」

やる気の最強スイッチは脳の奥にあります

やる気モードのカギは「線条体」

やる気の最強スイッチは脳の奥にあります やる気モードのカギは「線条体」

快感を感じると放出されるドーパミンを線条体がキャッチしてやる気ONに!

大脳基底核は、生きるのに必要な働きを担う“原始的な脳”であり、大脳全体から見ると奥のほう(中心部)にある。何かいいことやうれしいこと、気持ちいいことがあると、大脳基底核の下のほう(黒質、腹側被蓋野、側坐核)から線条体に向かって走る太い神経束から、快楽物質のドーパミンが分泌される。線条体は(側坐核を含む)ドーパミンをキャッチして「この行動をしたことでいい気分になった」という情報として蓄えられる。それを繰り返すことで「行動と快感」の結びつきが強化されていき、何かをやろうと考えただけで「よし、やろう」とやる気のスイッチが入るように。つまり、脳を「いい気分」にしてあげることが重要!

やる気は意思ではコントロールできない!

やる気は意思ではコントロールできない!
歩いたり座ったり……日常的な動作や行動は「自分の意思でコントロールしている」と思いがちだがさにあらず。歩くという動作ひとつとっても、筋肉や関節の動かし方、脈拍や呼吸の調子など、やる気を含めて大部分は意思でコントロールすることはできない。

「やる気が出るスイッチ」の押し方

コントロールされてくれない「やる気」をどうやって喚起させる!? それには、外側=行動から脳に働きかけるのが正解。どれもちょっとしたことだけど、習慣づけることで自分で自分のやる気スイッチを入れられるように!

快感を疑似的に演出して「心地よさ」を作り出そう

意思ではどうこうできない「やる気」を呼び起こすには、脳の性質を上手に利用するのが得策。

「何か物事をやったときに『うまくいった』という成功体験は、快感を得られるという予測を作るもとになります。でも、人生うまくいくことばかりではありませんよね。むしろうまくいかないことのほうが多い。だから、実際の体験だけに頼らず、疑似的に気持ちよさを演出すればいいのです。線条体をはじめとした『報酬系・快楽系』と呼ばれる神経系は“だまされやすい”という特徴があります。掃除機をかけるために立ち上がったら『よく立ち上がった』と自分をほめる、仕事をひとつ片づけたら『いい感じ』と口に出すなど、ポジティブな言葉で快感を演出するのです。実際にそうでなくても、行動と快感を無理やり結びつけることを繰り返すうちに、『やろうかな』と思っただけで線条体が予測的に活発化し、やる気のスイッチが発動するようになっていきます。また、線条体は行動の開始・維持・コントロールにもかかわるので、行動をイメージしたり、実際に体を動かしはじめると活性化するという特徴も」

「ないところからやる気を出すことも、一度出たやる気を維持させることも、線条体を活性化させるという点では基本的には同じです。上手に脳をだまして、やる気を引き出してあげられるといいですね」(篠原さん)

やる気を起こす5つのスイッチ

ゼロからやる気を起こすときは、快感を喚起させる行動や言葉がけがポイント。やる気を起こすスイッチは、一度動きだせたら、もうこっちのもの!

1.気持ちがなくてもひとまず始めてみる

気持ちがなくてもひとまず始めてみる
「私たちの脳は、行動を始めると線条体が活性化し、脳のほかの部分とも連動して行動を維持させようとします。例えば、家事を5分だけやろう→5分たったからハイやめ、とはできないですよね。この“始めるとやめることがむずかしくなる”という性質を利用しましょう」

2.その行動を具体的にイメージしてみる

その行動を具体的にイメージしてみる

線条体は行動の開始、維持、コントロールにもかかわり、やるべき行動を具体的にイメージすることで活性化します。『ソファから立ち上がり』『玄関に行き』『シューズに足を入れて』……とひとつひとつの行動を、映像として細かく具体的にイメージするのがポイント」

3.関係ないことでも体を動かしてみる

関係ないことでも体を動かしてみる
「線条体は体を動かすだけでも活性化するため、例えばデスクの上をふく、軽く体操をするなど、一見目的とは無関係なことでも、ひとまず体を動かすのは有効。大事なのはこの予備動作で満足するのではなく、予備動作→やるべきことの流れを習慣化することです」

4.オノマトペを口に出してみる

オノマトペを口に出してみる
「『チャチャッと片づける』『スクッと立つ』など、行動につく擬声語や擬態語がオノマトペ。オノマトペをつけて行動を表現したときとそうでないときは、前者のほうが脳がより活性化するという実験データがあり、その結果線条体の働きが活発になると考えられます」

5.仕事が早い人のそばに行って5.

仕事が早い人のそばに行ってみる
「脳には、他者の行動を反映するミラーニューロンという神経があります。仕事を意欲的に手早くこなす人を見ているとミラーニューロンが活性化、同様のパフォーマンスを発揮できる可能性が。ミラーニューロンは対象を近くで見るほど活性化するため、デキる人のなるべく近くに行ってみて」

やる気を維持する5つのスイッチ

「できた!」のポジティブな記憶は、やる気のエネルギー源。脳を甘やかしてあげることが、次のやる気につながります。

1.欲張らずに目標設定を低くしてみる

欲張らずに目標設定を低くしてみる
「あれこれやろうとしてハードルを上げすぎると、コンプリートできなかったときにネガティブな感情が残ります。それよりも目標設定を低めに、タスクを細かく分けるほうが『終わった』『できた!』と自分をほめる回数が増え、やる気が維持しやすくなります」

2.集中力が切れる前に15分を区切りにしてみる

集中力が切れる前に15分を区切りにしてみる
「脳には、物事を始めたらやめにくくなる性質がありますが、集中して取り組めているのはせいぜい15分。集中力の低下に気がつかないまま続けても、パフォーマンスは下がるばかり。15分をひと区切りにしてリフレッシュするほうがいい結果が出て、それを快感と脳が認識します」

3.自分をほめたりごほうびをあげてみる

自分をほめたりごほうびをあげてみる
「行動をほめられるとうれしくなり、やる気になるのは誰しも経験があるはず。他者でなくても自分で自分をほめても同様の効果があります。好きな食べ物などごほうびをあげたり、言葉でほめるのもOK。その際は具体的に声に出してほめるのがより効果的です」

4.イヤなことや不安なことにあだ名をつけてみる

イヤなことや不安なことにあだ名をつけてみる
「やる気が起きない、不安がある、などのストレスは脳の働きを一時的に低下させ、いい結果が出ない原因にも。自分を悩ませたり苦しめるものにフタをするのではなく、あだ名などをつけて外に出す(=外在化)ことで脳の空き容量を増やせば、パフォーマンスが上がり、いい記憶として残ります」

5.終わりはポジティブな言葉で締めくくってみる

終わりはポジティブな言葉で締めくくってみる
「人間の記憶力は意外とあやふやで、途中のことは案外覚えていないもの。やるべきことが終わった最後に『はかどった』『気持ちよかった』などポジティブな言葉で締めくくると、その行動が快感を伴う記憶としてインプットされ、次のやる気を生み出しやすく」
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