エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、叙情詩の調べのような恋愛と人生の物語『愛の光』をご紹介。
大人の心にも深く余韻を残す、上質なドラマ『愛の光』
Netflixシリーズ「愛の光」独占配信中
恋愛によって人生が決まるのか。人生によって恋愛が変わるのか。いずれにせよ、人生と恋愛は切り離すことができないほど深い関わりがあるのは間違いなさそうではありますが……。そう、このドラマの2人のように。
例えば、’19年の『椿の花咲く頃』、’20年の『天気がよければ会いにゆきます』、’21年の『その年、私たちは』、’22年の『二十五、二十一』、’23年の『愛だと言って』、’24年の『ヒーローではないけれど』、’25年の『恋するムービー』などなど、韓国ドラマには心にじんじん効いてくるような恋愛ドラマが数多くあります。それらに共通して描かれるのは、単なる恋愛風景だけでなく、登場人物たちの事情というか、それぞれの生きてきた背景というか、つまりは人生というか、それらがきめ細かく描き込まれていること。だからなのか、見終わった後、深い余韻を引きずることも少なくなく。恋愛は人生を暗く落とす絶望にもなり得るし、反対に人生を明るく照らす光にもなったりするわけで、そんなことに一喜一憂しない穏やかな人生を歩みたいなとは思いつつも、やっぱりやめられない、止まらない。それが恋愛というものなのかもしれませんが。
演出のキム・ユンジン監督(『その年、私たちは』)の手腕はさすがの一言
さて、物語は主人公のヨン・テソ(パク・ジニョン/GOT7)とモ・ウナ(キム・ミンジュ/元IZ*ONE)が高校3年の夏に出会い恋に落ちて別れ、その10年後に再会、再び始まっていくロマンスを描いていくのですが、エクラ世代だったら誰もが恋しく思うような青春の物語が静かな目線で紡がれていくだけなのに、それぞれの背負っているものが重く切なく、何度も何度も胸がぎゅっと掴れるような痛みを感じずにはいられない展開なのであります。
ジニョン演じる主人公の男性テソは、高校3年の夏、突然、ソウルから祖父母が暮らすヨヌ里という田舎町に弟とともに移り住むことになります。祖父母の家は4人で暮らすには息が詰まりそうに小さくて、そのため大学進学を志すテソは、夏休みの間、転校したての高校の図書館で受験勉強をするのですが、そこで出会うのが、遅れを取り戻すために一人で勉強していたウナなのですね。
エアコンもないどこか懐かしさを覚える図書館での、たった2人の自主学習。最初はぎこちない2人が、少しずつそれぞれの存在を意識するようになっていくわけですが、素朴で美しい田舎町を背景に、そんな他愛ない高校生のある夏の風景をドラマは粛々と、でも鮮烈に映し出していきます。そうして見進めていくうちに、やがて、あ〜、テソは最近、両親を交通事故で亡くし、同乗していた弟はその大怪我により多分一生障害を負う身になるんだろうな、言葉少なめの朴訥な祖父母は限りなく優しいけれど、経済的には相当苦しいんだろうな、という事情が断片的に見えてくるのです。
演出を担当したのは『その年、私たちは』のキム・ユンジン監督。きらめくような青春の刹那を繊細に、かつ感情豊かに描き出す手腕はさすがで、説明を省いた物語は淡々と進みながらも、そのきらめきの眩しさと、その奥に秘められたまぶしい故の哀しさがどんどん心を占めていくとでもいいましょうか。
そして、もう一方のウナですが、彼女もまた高校生が背負うには重めな事情を抱えています。両親は6歳の時に離婚。大企業を辞めて縁もゆかりもないこの田舎町に越してきた父が自宅で始めたオーガニック料理の仕事を手伝いながら学校に通っています。実はウナの父はうつ病を患っていて、かつて自殺未遂を起こしたことがあるようなのです。故に不安でたまらないウナにとっては、父を見守ることが最優先。自分のことや将来なんて考える余裕もなく過ごしてきたのですね。そんなウナもテソと会話するうちに、漠然と自分が何をやりたいのか考え始めるようになるのですが。
ということで、図書館で偶然にも出会った2人は、心を通わせながら、夏が終わる頃には必然のように恋人同士になっていきます。そして、2人とも大学入試に見事合格。テソはソウルの超難関大学の理系学部に、ウナはソウルからは遠く離れた自宅から通える大学に。ところが、遠距離であることに不安を覚えるウナの予想通り、それからほどなく高校生の恋物語は終わりを告げるのです。
必然のように思えた2人はなぜ別れることになったのか。
それはドラマを見ていただくのが一番ではありますが、それぞれに家族の事情という重荷を背負いながら、やらなければならないことだけを考えていた真面目で心優しいテソと、テソと出会ったことでやりたいことを考えるようになった真面目で情熱的なウナのほんの少しのすれ違い。そう、いつだって人生は、ただ好きであることだけでは進んでいかないものなのですね、残念ながら。
とはいえ、ここで物語が終わるわけではありません。これは、まだまだ、ほんの序章。ということで、その10年後、2人がソウルで再会。ずっと止まったままだった2人の想いがまた動き出す……という寸法です。仕事、家族、そして、それぞれの日常。出会いや別れを繰り返しながら、小さな歓びや立ち上がれなくなるほどの苦しみや、さまざまな“こと”も“想い”も積み重ねてきた2人の人生。あまりにも違うそれらは、はたして再び溶け合うことができるのか。
アイドルグループ出身の2人の俳優の演技が秀逸!
主演のジニョン(左)とミンジュ(右) 写真/アフロ
叙情詩の調べのように進んでいくこの物語を色鮮やかに彩るのが、当然ながらテソとウナという2人の主人公でありますが、演じたジニョンとミンジュ(どちらもアイドルグループ出身!)のバランスが素晴らしく、大きな事件が起こるわけでもないのに、最初から最後まで目が離せないのでございますよ、これが。
以前にも書いたことがあるかと思いますが、ジニョンは清潔感と爽やかさあふれる好青年であるくせに、全身ずぶ濡れか!と思わずツッコミ入れたくなるくらいの湿り気を持っているんですね。そのジニョンが、というかテソですが、人が羨む大企業とか研究者とかのエリート人生には実は全く関心なく、なりたかったのは海辺を走る列車の運転手なんですよね。ほら、私なぞ、もうこれだけでもギュッと胸を掴まれちゃうわけですよ。挙句に、運転士の仕事を終えて、漢江の橋を渡りながら美しい夕日を眺め、帰途に着いたら趣味の木工で一人黙々と額縁を作るんですね。テソが愛する毎日の穏やかなルーティンなわけですよ。なんか、それが尊くて、癒されるのに、なぜか、切なくもあるというか。
一方のミンジュはといえば、この作品がドラマとしての初主演なのですが、美しい切れ長の眼差しに優しさと意志の強さがいい塩梅に同居しているようなビジュアルが印象的。ウナは青春のきらめきも危うさも明るさも哀しさもひっくるめて持っているのですが、そんなウナそのものって感じなのですね。だからこそ、かつてウナの世代を生きてきた私たちも深く共感を覚えるというか。
ということで、2人の物語をじんじん噛み締めながら最後まで見守ってほしいと思う次第ですが、そこには、テソの祖父母や障害を抱えながら明るく前向きに生きている弟、その面倒見のいい同僚の女の子、ウナの父親とその再婚相手となる義理のオンマ、近所の小さなスーパーのハルモニ(おばあさん)、他にもテソにずっと思いを寄せていた高校の後輩とか、ウナを仕事の面でもプライベートの面でも支えていた先輩などなど、いろんな登場人物がいろんな味わいを添えるのです。みんながみんな優しさと切なさであふれていて、そんな彼らの存在にもいっぱい泣かされるはず。いやあ、人生って辛いことはいっぱいあるけれど、しみじみといいものなのだなぁと。そう思える作品です。恋愛は人生と相対するものではなく、きっとそんな人生の一部として溶け込みながら共存していくものかもしれないなあと、見終わった後にいろんな余韻も残ります。
■Netflixシリーズ「愛の光」独占配信中
「韓流ドラマナビ」関連記事