毎月お届けしている連載「今月のおすすめ本」でこれまで紹介してきた本の中から、今回は「ミステリー小説」を厳選してご紹介。
『暗黒の瞬間』
人間の内なる闇をえぐり出すドイツ発の極上ミステリー
エリーザ・ホーフェン 浅井晶子/訳
東京創元社 ¥2,530
主人公は、30年以上のキャリアを誇るベルリンの弁護士。彼女に弁護士資格返上を決意させた事件が、9つの連作短編として描かれていく。無我夢中でページをめくりながら、現役裁判官でもある著者が突きつけてくる問いに心揺さぶられ続ける。正当防衛と殺人の境界はどこか。被害者による加害者への復讐は許されるのか。人肉食にいたるほどの欲望がなぜ生じたのか。人は誰でも一線を越えてしまうおそれがあるのか……。臨場感&説得力あふれる傑作が、デビュー作だなんて!
『テミスの不確かな法廷 再審の証人』
発達障害の裁判官が開く真実と心の扉
直島 翔
KADOKAWA ¥1,980
安堂清春は自閉スペクトラム症で注意欠如多動症。記憶力抜群な一方、人の気持ちがわからない。感覚過敏で、しばしば貧乏揺すりが止まらなくなる。そんな生きづらさを抱えながら、特例判事補として法廷に立つのだ。3つの連作短編からなる本書はシリーズ2作目だが、前作を未読でも、話題になったドラマでストーリーを知っていても魅了されてしまうはず。マイナスとされがちな発達障害の特性を生かし、警察や検事が見逃していた真実をあぶり出す主人公に喝采&感涙!
『百年の時効』
昭和、平成、令和……あきらめない刑事たちがアツい!
伏尾美紀
幻冬舎 ¥2,310
令和6年、ボロアパートの一室で見つかった変死体は、かつて天才と呼ばれた相場師。50年前に起き、迷宮入りしていた一家殺傷事件の容疑者でもあった……。地をはうような捜査を続けながら、道半ばで老い、病に倒れていく昭和の刑事たち。その執念と悔しさ、使命感と矜持が次世代の後輩へ、さらに令和の新人女性刑事へと引き継がれる。548ページと長いが、緊迫感が途切れることはない。読後、昭和元年からの100年を駆け足で旅したような、圧倒的感動に包まれる。
※エクラ掲載記事を元に、再編集したものです。価格は掲載時の価格です。
『暗黒の瞬間』photography:Hallel Miura text:Sayaka Hosogai ※エクラ2026年5月号掲載/『テミスの不確かな法廷 再審の証人』photography:Maho Kurakata text:Sayaka Hosogai ※エクラ2026年4月号掲載/『百年の時効』photography:Hallel Miura text:Sayaka Hosogai ※エクラ2025年12月号掲載