人気韓国ドラマのセリフやタイトルに注目し、ドラマ鑑賞がもっと楽しくなる豆知識をご紹介。今回は『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』より、イマドキの働き方を表す新語を解説します。
『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』
新米弁護士カン・ヒョミンを演じるチョン・チェヨン(右)と、冷徹な上司、ユン・ソクフン役のイ・ジヌク(左)。
Netflixシリーズ「エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち」独占配信中
法曹界一家で育ったサラブレッドで猪突猛進な新人弁護士役は、ガールズグループ・I.O.I出身のチョン・チェヨン。冷たさの中に情熱と優しさを秘めるベテラン弁護士は、『イカゲーム』シーズン2&3、『ボイス~112の奇跡~』のイ・ジヌク。正義とは何か? 倫理観や価値観を問うストーリーが反響を呼んだリーガルドラマ。
あらすじ
正義感に燃える新米弁護士カン・ヒョミン(チョン・チェヨン)は、業界大手のユルリム法律事務所に入所する。妥協を許さない冷徹な上司ユン・ソクフン(イ・ジヌク)のもと、複雑な法曹界でさまざまな経験を積んでいく。
このフレーズに注目!
「워페벨 찾아 떠난 겁니다. 」(ウォペベルを求めて辞めていったのです)
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近年、韓国では、第12回で取り上げた『プロボノ: アナタの正義救います!』をはじめ、『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します~』『瑞草洞<ソチョドン>』など、元判事や現役弁護士が脚本を執筆する作品が増えています。
実際に法曹界に従事した経験から生み出される物語は、単なる勧善懲悪で終わることなく、裁判の裏側で繰り広げられる人間ドラマや身近な社会問題などを丁寧に描く社会派ヒューマンドラマとしての側面もあり、より共感し考えさせられる内容が反響を呼んでいます。
今回紹介する『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』も現役弁護士が脚本を手がけたリーガルドラマ。訴訟案件を一話で描き切る“一話完結型”で見やすく、新米弁護士が理想だけでは解決できない現実の壁に直面し葛藤しながら成長していく姿が見どころです。
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ロースクール主席で弁護士としての素質はあるけれど、面接に遅刻したり無断欠勤したりと社会人としては少々難ありな新米弁護士カン・ヒョミンを演じるのは、『組み立て式家族~僕らの恋の在処~』で血のつながらない3兄妹の末っ子役を演じ、『恋慕』、『ゴールデンスプーン』など現代劇から時代劇まで多彩なジャンルで活躍するチョン・チェヨン。
再始動が決定したI.O.I出身で演技ドルのイメージがある彼女ですが、演技歴はすでに10年以上。表現の幅を着実に広げていて、彼女の魅力であるフレッシュさを発揮しながら、少しずつ真の弁護士に近づいていくヒョミンの成長のグラデーションを繊細な演技で体現しています。
ちなみに、K-POP用語の「エンディング妖精」は彼女がきっかけで生まれたことをご存知ですか? I.O.Iを生み出したオーディション番組のグループ評価でチェヨンが少女時代の「Into the new world」を披露した際に、アウトロでカメラに抜かれた表情が美しすぎると大反響を呼んだことから「エンディング妖精」と呼ばれるように。そこから転じて、パフォーマンスの終わりに1人ずつ映し出されるアピールタイムのことを意味するようになりました。
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ストーリーに戻りましょう。
ヒョミンは希望通り訴訟チームに配属されますが、待ち構えていたのは面接でヒョミンのことを厳しく批判したユン・ソクフンでした。ソクフンは訴訟チームのチーム長で、抜群の勝訴率を誇る完璧主義者。冷たすぎるほどに冷静沈着で、感情に流されず理性を貫くタイプ。社会人としての基本的なマナーが備わっていないヒョミンのことを否定的な目で見ていましたが、ヒョミンの鋭い分析力と天才的な言語のセンスを高く評価し、適切なアドバイスを送りながら導いていきます。
鬼上司のように見えて、瞳の奥には熱い正義感を宿しているソクフン。そのギャップと貫禄を抑えた演技で表現するイ・ジヌクは、さすが芸歴20年以上のベテラン俳優といったところ。師弟関係だった2人が、次第に尊敬し信頼し合うようになる関係の変化にも注目です。
「ウォペベル」が働き方の新概念になる?
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訴訟の行方に加えて、ドラマではヒョミンとソクフンら弁護士たちが抱える個人的な悩みや、ユルリム法律事務所の内部事情も同時に描かれていきます。
今回のフレーズは、ユルリムに大きな人事異動が起こった第7話に登場。ユルリムの体制を立て直すために、新代表が報酬を年功序列から歩合制に変更すると宣言します。ユルリムでは、パートナー弁護士の業務を補助するアソシエイト弁護士たちが過酷すぎる労働によって次々と辞めていることが問題となっていたのです。
アソシエイト弁護士たちが昼夜問わず働いている一方で、高い報酬を受け取っているパートナー弁護士たちはカラオケやゴルフ三昧。彼らはベテランでありながら実力では依頼を獲得できないため、接待で人脈を作り、弁護士費用を下げて仕事を取るしかないのです。そのため、アソシエイト弁護士が成果を上げても正当な報酬を貰えないという悪循環が蔓延していたのでした。
ソクフンは、新制度に強く反発するパートナー弁護たちに対して、優秀なアソシエイト弁護士が辞めてしまうのは「仕事と報酬が合わないからだ」とビシっと言い切ります。
このシーン、日本語字幕では「仕事と報酬が合わないからでしょ」となっていますが、韓国語のセリフを直訳すると、ソクフンは「ワーク・ライフ・バランスを求めて辞めたのではありません。ワーク・ペイ・バランスを求めて辞めていったのです」と言っています。
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「ワーク・ライフ・バランス」は、仕事と私生活のバランスを取りながらどちらも充実させるという価値観として広く知られていますよね。そして、ソクフンが言った「ワーク・ペイ・バランス」は文字通り仕事と報酬のバランスのこと。成果を正当に評価し、それに見合った報酬を受け取ることができる働き方を意味します。
すべてを略すと言っても過言ではない略語文化の韓国では、ワーク・ライフ・バランスは「ウォラベル」、ワーク・ペイ・バランスは「ウォペベル」と言います。ドラマでは略語が使われていますので、ぜひ耳を澄まして聞き取ってみてください。
時代とともに仕事に対する価値観も変わり、やりがい搾取に批判の目が向けられるようになった昨今。視聴者からは「ウォペベルは初めて聞いた」という反応があったので本作が作った造語なのかもしれませんが、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら、成果が正しく評価されるワーク・ペイ・バランスを守ることも、これからの時代のスタンダードになっていきそうですね。
K-POPアイドル、俳優にインタビューを行うフリーランスライター。学生時代からライターとして活動、韓国在住経験もあり。
この連載では、韓国ドラマのセリフやタイトルに注目し、ドラマ鑑賞がもっと楽しくなる豆知識をご紹介。韓国語能力試験(TOPIK)の最上級である6級を取得したライター・轟友貴が、独自の視点でお届けします。
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