【うらら句会へようこそ】エクラ読者の素敵な俳句から小林賞&山本賞を決定!

エクラ1月号で「俳句って楽しい!」という山本容子さんの声、「読者のみなさんも作ってみてください」という小林恭二宗匠のおすすめから立ち上がった〈うらら句会〉。集まった句は暮らしを見つめ、人生を思い、現在を愛する秀作&力作ばかり。どの句をどう読み、どう選ぶのか? ひとつひとつの句に秘められた思いを読み解きながら、おふたりが推す句は?
選者はこの二人
小説家・俳人 小林恭二さん

小説家・俳人 小林恭二さん

’57年兵庫県生まれ。’98年『カブキの日』で三島由紀夫賞受賞。小説、評論、エッセー等著書多数。専修大学文学部教授。山本容子さんの俳句の「宗匠」(先生)でもある。
銅版画家 山本容子さん

銅版画家 山本容子さん

’52年埼玉県生まれ。都会的で洒脱な線描と色彩で、独自の版画の世界を確立。本の装丁からパブリック・アートまで幅広く手がける。俳名は「山猫」。近著に『山猫画句帖』。

読者投稿の力作から、特賞を決定。小林賞&山本賞発表!

うらら句会への読者のかたがたからの応募俳句総数は284句。激戦を勝ちぬいた栄えある特賞を、小林恭二さんの講評と山本容子さんの銅版画を添えて発表します。受賞したおふたりには、エクラ1月号特別付録「山猫ごよみ」掲載の山本容子さんの銅版画を進呈!

【小林賞】

春の小火(ぼや)ほどに耳たぶ嚙(か)んであげる

(刈菜)

Yoko’s comment

講評/小林恭二

「耳たぶ嚙(か)んであげる」といっている相手はおそらく恋人でしょう。句のキモはそのエロチックな行為の程度を「春の小や)ほどに」といっているところです。小火は火事と違って消し止められる程度の火災を指します。つまり主人公は本格的な火事ほどに耳たぶを噛むのではなく、「ちょっと気が向いたから耳たぶ噛んであげたけど、本気じゃないからね」といってるのです。このあたりのあんばいが逆に色っぽい感じです。

Yoko’s comment

春の明るい日射しの中に「小火」をもってくるのが本当にお上手。そこまでのつもりじゃないけど誘っているような、エロチックな景色が浮かびます。これも大好きな句です。

【山本賞】

喧嘩して海を見てゐる春日傘

(みづ杞)

【うらら句会へようこそ】エクラ読者の素敵な俳句から小林賞&山本賞を決定!_1_4

講評/小林恭二

けんかしたばかりの人が海を見ています。家でけんかして飛び出してきたか、あるいはすぐ横にけんかをした人がいるかで解釈が変わりますが、いずれにせよ、主人公は気持ちの高ぶりを収めるように春の海を眺めています。春日傘を差す後ろ姿からは、心の内はわかりませんが、穏やかな春の日と潮の音があれば、ほどなく心は平穏に戻るでしょう。心が不安定になりがちな春のひとコマですが、風景はとてもキュートです。

Yoko’s comment

「春日傘」という題に「喧嘩」をもってくる意外性が好きだし、 浮かぶ情景がまるで、フランス映画のワンシーンみたい。 私も自分でこれ、詠みたいくらいです!

小林恭二×山本容子 俳句ってやっぱり楽しい!

経験者も初心者も心に届く句が多かった

山本 応募してくださった句は私、全部目を通しましたけど、楽しかった。

小林 そう、おもしろかったですね! 私は経験上、句を見れば、ああ、この人は俳句を作り慣れている人だな、とか、初心者だな、とか、なんとなくわかるんです。今回、非常によくできた、コントロールのいい球もたくさんありました。それが全体のレベルを上げていて頼もしいんですが、なかには初心者が無心に投げた、まるで火の玉ストレートみたいな句もあって(笑)。


山本 本当、バラエティ豊かでした。句会というものは日本全国たくさんありますけど、投句のほとんどが女性というのは珍しいかもしれません。ほかにもあるのかしら? 知りたいわ。

小林 そうですね。どうなんでしょう。特に今回は離婚とか更年期とか、人生の実感をさらっと詠んでいる句も。ふだんの句会では目にすることが少ないので、びっくりしたりドキドキしたり(笑)。うらら句会、恐るべし、です。


山本 思ったの。手だ)れだからいい句を作るとは、かぎらないものだなって。

小林 そう、うまいへただけじゃない。そういう意味でいうと今回、読み手の心に届いてくる句が多かったと思います。思いがほとばしりすぎて少し残念な句もありましたが。


山本 私も始めたころは、形にならなかったり、人に読み取ってもらえなかったり、思いが深すぎて失敗することがあったので、よくわかります。


小林 それはそれでおもしろかったのですが、今回は、一応形になっているものを選ぶつもりです。

山本 お題は「花」と「春日傘」と。

小林 「耳」ですね。私はよくこの、「耳」というお題を出すんです。身体性もあるし、まつわる熟語も多いし、いろいろな発想ができるから。


山本 ちょっとエロチックなイメージもあるしね。でも「耳」は季語じゃないから、作る人は自分で季語を入れるべき、ということですね?

小林 なければないで、無季というジャンルがあるんですが。季語が入っているほうが圧倒的にいいです。季語っていうのは、入るとおいしいだしが出るんですよ(笑)。今まで数多くの名句に使われている言葉なので、季語にまつわる美意識とか記憶が我々の頭の中にインデックスのように入っている。季語があるだけで、イメージがふくらんでくれるんです。


山本 でもこの中から選ぶの、大変!


小林 これから11句を選出するわけですが、応募してくださったかた全員にいいます。入った人は、大喜びしてください。選者がいうのも口幅ったいですが、全体のレベルが高いので、この中に入るのはたいしたものです。私はこの中に入る自信、ありません。

山本 ほんと、私もないわ。


小林 で、入らなかった人は、そんなに悔しがらなくてもよろしい!


山本 そう? こっちがよくて、なんで私のがダメなの?って、ここで大いに怒るべきだと私は思う。今後もこの大人の女性の遊び場、うらら句会は続けていきたいから、その悔しさをバネにまた挑戦してほしいの。

小林 ふむふむ、確かに。じゃ、選考を始めましょう!

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