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【うらら句会へようこそ】エクラ読者の素敵な俳句から小林賞&山本賞を決定!
エクラ1月号で「俳句って楽しい!」という山本容子さんの声、「読者のみなさんも作ってみてください」という小林恭二宗匠のおすすめから立ち上がった〈うらら句会〉。集まった句は暮らしを見つめ、人生を思い、現在を愛する秀作&力作ばかり。どの句をどう読み、どう選ぶのか? ひとつひとつの句に秘められた思いを読み解きながら、おふたりが推す句は?
エクラ世代ならではの素敵な句ばかり!「うらら句会」佳作9選&予選通過作発表

小説家・俳人 小林恭二さん

銅版画家 山本容子さん
佳作9選
作る人の心に寄り添い、その人の今を思いやり、ひとつひとつの言葉を大切に。おふたりの感想を聞いていると、それぞれの句のよさがわかりやすく、鮮明に。こんなふうに詠めるなら、そして読めるなら、なるほど俳句って、おもしろい!
お題【花】
■ただ生きる我を讃えよ花吹雪(まゆゆ)
<講評>
ある意味、今回最も驚かされた句でした。「我を讃えよ」なんてまるで一神教の神みたいです。しかもそのたたえる理由が、私が「ただ生き」ているからだという。このみなぎる自信! まさに21世紀の女性の句です。「花吹雪」も効いています。
Yoko’s comment
これは断定的に言い切って迫力があり、なかなか詠めない句だと思います。「ただ生きる」という上の句と呼応して「花吹雪」が生きている。ほかの句とはひと味違う世界観ですね。

■花の帯逢わずにほどく二十四時(しのぶれど)
<講評>
主人公は花時に和服で出かけたのです。ひょっとしたらあの人に逢うことがあるかもしれないと思って。「逢引き」の「逢」の字を使ってますから普通の知り合いではありません。でも結局逢うことはなかった。残念なような、でもほっとしたような。
■花疲れ耳と翼を折りたたむ(瀬間陽子)
<講評>
主人公は花時に積極的に出歩いたんでしょう。でもだんだん疲れてきて耳と翼を折りたたんだのだという。耳を覆ったのはもう何も聞きたくないから、翼をたたんだのは恋をあきらめたからかもしれません。アンニュイな一句です。
お題【耳】
■仕事始めの耳飾り決まりけり(アマリリス)
<講評>
正月休みも終わって早くもまた仕事が始まってしまいました。多くの人はうんざりした顔なのでしょうが、主人公は気力いっぱい「さあ、またがんばるぞ」とばかりに気合の入ったイヤリングを選びました。仕事も私生活も充実した女性を思わせる一句です。
■耳たぶに吾子(あこ)の手春の昼下がり(紫桜)
<講評>
若いお母さんの句でしょうか。あるいは初孫を抱いているおばあさんの句でしょうか。抱いている子供がお母さんの髪を引っぱったり、鼻をいじったりするのはよく見る景です。この子は耳たぶに手をやりました。髪や鼻と違っていじられるほうも気持ちよく、全体に幸福感が漂っています。
■春隣耳のどこかに痩せる壺(緑式部)
<講評>
うらら句会の題に「耳」とあるのをみて、「そういえば耳のどこかに痩せるツボがあったわよねえ」と思い出したのでしょう。それをそのまま俳句にしました。私は一読大笑いでした。容子さんも気に入っていたようです。
Yoko’s comment
これ、隣にいる人たちの会話が、耳のツボの話だったのかしら。ユーモラスで軽やかで、とてもエクラらしい句。日常の中に素敵な時間を見つけていて、好感がもてました。

お題【春日傘】
■凛々と閉経のおと春日傘(瀬間陽子)
<講評>
一読、すごい句だと思いました。「閉経のおと」もすごいですが、これに対する形容に「凛々と」と置いたのが、並の感性ではありません。閉経を楽しんでいる気配すらあります。実際、春日傘を差した主人公はまさに勇気凛凛。女性の強さが見えた一句でした。
Yoko’s comment
閉経を詠む句というのは、なかなかできません。“勇ましい”とか“音が澄んでいる”ところに使われる「凜々と」をもってきて、人生の変わり目に立ち向かう潔さが伝わります。

■春日傘片手に重き今の恋(なずな)
<講評>
「片手に重き」が「春日傘」にも「今の恋」にもかかっています。それにしてもいったいどのような恋なのでしょう。幸せな恋というより、忍ぶ恋のように私には思われました。春日傘が効いて上品さも出ています。
■橋渡る三女雪子の春日傘(いくみの句)
<講評>
「三女雪子」はいわずと知れた谷崎潤一郎の名作『細雪』の登場人物です。うまいと思うのはこれに「橋渡る」と置いて構図をつくったところ。手練れのかたの作品とみました。雪子はいつも和装ですから、春日傘もさぞ映えることでしょう。
予選通過句
お題【花】
■初恋の人に会ふ日の花衣 (アマリリス)
■順繰りに赤子抱きをる花筵(みづ杞)
■花冷えや母のピアノの音で目覚めて (態猫)
■新調のスカートなびく花の昼 (大河内愛)
■いうれいも木乃伊も踊る花の下 (青山泉)
■あの人の思い出届く花だより (栗梅)
■ただ生きる我を讃えよ花吹雪 (まゆゆ)
■花びらをチュンと小鳥が持って行き (ショコラ)
■花の帯逢わずにほどく二十四時 (しのぶれど)
■花疲れ耳と翼を折りたたむ (瀬間陽子)
お題【耳】
■仕事始めの耳飾り決まりけり (アマリリス)
■馬の耳立てて風読む草萌ゆる (緑川りん花)
■石蕗(つわ)黄なり耳遠き母の弥勒の笑み (丸岡文子)
■耳朶の透きて春めく阿弥陀仏 (綿引まり子)
■春隣耳のどこかに痩せる壺 (緑式部)
■春の小火ほどに耳たぶ嚙んであげる (刈菜)
■明日遠足まとめて揚げるパンの耳 (じあん)
■耳裏は無防備そより風温む (加藤尚実)
■この耳を眼鏡とマスク取り合ひぬ (小田淳子)
■耳たぶに吾子の手春の昼下がり (紫桜)
お題【春日傘】
■離婚したての春日傘拡げたる (アマリリス)
■喧嘩して海をみてゐる春日傘 (みづ杞)
■病室へ手を振る少女春日傘 (江國優笑)
■橋渡る三女雪子の春日傘 (いくみの句)
■春日傘片手に重き今の恋 (なずな)
■「有難う」「ご免」「左様なら」春日傘 (村山半信)
■凛々と閉経のおと春日傘 (瀬間陽子)
■母むかえ来し亡き姉の春日傘 (林敏子)
■左手は繋いだままの春日傘 (小田桐妙女)
■春日傘閉じてここから神の庭 (しのぶれど)
エクラ世代ならではの大人の感性が生きている
山本 まず気になった句から。〈喧嘩して海を見てゐる春日傘〉。こういう句、大好き! 詠んだ当人はけんか中だから、それどころじゃなくなっていて、主役の日傘は投げ捨てられて、海の方向を向いているのね。
小林 なるほど、そう読みましたか。私は日傘を差している本人が海を見ていると解釈しました。読む人によって見えてくる絵が違ってくる、それもまた俳句のおもしろいところです(笑)。
山本 〈橋渡る三女雪子の春日傘〉これも好き。谷崎潤一郎の『細雪(ささめゆき)』で、結婚に踏み切れずにお姉さんたちにうとまれている雪子ちゃんよね。
小林 〈橋渡る〉としたところがうまいですね。構図が目に浮かびます。
山本 視点をずらしたり入れ替えてみたりすると、作りやすいですよね。例えば「春日傘」だったら『細雪』以外にもモネの名画とか映画『時代屋の女房』のワンシーンとか、連想するでしょう? あとは自分の記憶の中からそれにまつわる情景を思い出したり。私はその言葉を辞書やインターネットで調べてみることもあります。でもそれだけじゃつまらない、ちょっとは飛び跳ねたいから、いろいろ工夫するの。
小林 先輩からの具体的なアドバイス、役に立ちそうですね(笑)。

山本 〈仕事始めの耳飾り決まりけり〉〈耳たぶに吾子の手春の昼下がり〉、どれも情景が目に浮かびます。日常の切れ端に小さな幸せを上手に見つける、エクラ世代の余裕とか時間の過ごし方が感じられますよね。あと、閉経を句にしたものがありましたよね。
小林 〈凜々と閉経のおと春日傘〉ですね。これは私、男ですから、震え上がりました(笑)。しかも〈りんりんと〉ですからね。
山本 きれいで潔い言葉を、体が変わる、どうしてもまたがないといけない人生の大事な時期の心情に当てはめている。見事だと思います。
小林 〈ただ生きる我を讃えよ花吹雪〉も、すごい句だと思います。直球で、ちょっとプロは書けない(笑)。いったいどんなかたが詠んだんだか。
山本 私たち、作った人の名前も年齢も性別もわからないまま、句そのもので選んでいますものね。
小林 いろいろ想像できて、それも楽しいんですが(笑)。〈春の小火ほどに耳たぶ嚙んであげる〉なんて、エクラ世代ならでは、でしょう。〈花の帯逢わずにほどく二十四時〉も、誰と逢うご予定だったのか存じませんが(笑)。
山本 予選通過句の、これもいい句。〈耳裏は無防備そより風温(ぬる)む(加藤尚美)〉。耳の裏、という着眼点がおもしろい。
小林 〈石蕗(つわ)黄なり耳遠き母の弥勒の笑み(丸岡文子)〉も、たぶんさほど句を作ることに習熟なさっているかたではないかもしれないが、実感で詠まれたのかなと。感心しました。
山本 選ばれなかった句にもいっぱい、いい句がありました!
小林 まあ選にもれたかたも、これから作ってみようかというかたも、選ばれた句を参考にして、ちょっとまねしてみたりヒントにして、次回の句会に備えてください。以上、選考会でした!
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