【冬の京都】まだ知らない魅力が満載!冬ならではの“風物詩”に出会う

寒さと慌ただしさが一気にやってくる師走。神社やお寺、花街、街なかはそれまでの観光客にかわって地元の人でにぎわい、一年を締めくくる風物詩に日々出会える。

京都の年の瀬を古き慣習やハレの行事で体感

冬の京都
底冷えする寒さに尻込みするが、冬ならではの魅力に遭遇する京都。自然の移ろい、静寂の街、冬限定の美味を五感で楽しめ、観光では出会えない日常を知ることに。写真は茶屋様式の町家が風情を残す祗園新町

南座の正面に「吉例きちれいかおこうぎょう)」の「まねき」が上がると、いよいよ師走。顔見世は昔から京都の人にとってはハレの場であり、きものを新調してこの日を迎えるくらい、一年で一番の楽しみにしていたといわれる。今も、舞妓・芸妓さんがまとまって観劇する総見は艶(あで)やかで、待ちに待った特別な日にいっそうの華を添えてくれる。

12月に入ると、いくつかのお寺で「大根焚き」が行われる。「だいこん」とはいわず「だいこ」と発音し、この日に大根を食べると無病息災でいられるという言い伝えがある。大鍋でコトコトと炊いた大根はしっかり味がしみたべっ甲色。参拝者に振る舞われ、境内はその香りに包まれる。

13日の「事始め」は、一年の大切な節目。「事」は正月のことで、この日から正月迎えの準備に入る。一年お世話になった人たちのところに出向き、祇園では芸妓・舞妓さんが師匠やなじみのお茶屋さんにあいさつにまわり、顔見世と並ぶ、冬の風物詩とされている。また、北野天満宮ではお正月のお祝いもの、縁起物とされる「大福梅」の授与がスタートする。

冬至を迎えるころから一気に冷え込むようになり、21日の「終い弘法」、25日の「終い天神」は昔と変わらぬ歳末行事。気ぜわしい中で一年の節目を大事に受け継いできた京都の人たちの暮らしがかいま見られ、そこに息づく文化や美意識も伝わってくる。その楽しみ、感激は大晦日まで続く。

町衆や花街の一年の節目「事始め」

新年を迎える支度を始める日。京都の旧家、老舗、花街では、本家やなじみの得意先、お世話になった師匠やお茶屋の女将へのあいさつまわりをする風習が残っている。花街では行き来しながら芸妓・舞妓さんが「おめでとうさん」とあいさつを交わす様子が見られ、華やかな雰囲気を醸し出す。祇園甲部では鏡餅を持って京舞・井上流の井上八千代家元のもとへあいさつに行き、八千代師が一人ひとりに舞扇を手渡す光景は昔からの慣習。写真は宮川町の事始めの様子。

健康祈願の伝統行事「大根焚き」

健康祈願の 伝統行事「大根焚き」

起源は諸説あり、12月9日、10日に行われる了徳寺の大根焚(だいだき)は親鸞聖人の教えに感銘を受けた村人たちがお礼に大根でもてなしたのが始まりとされる。聖人を迎えたときは塩味で炊かれたが、現在はしょうゆで味つけをし、油揚げが入る。千本釈迦堂大報恩寺ではお釈迦さまが悟りを開かれた日とその前日の12月7日、8日に開催。この日に大根を食べると風邪にかからないという言い伝えがあり、境内は大変な人でにぎわう。

一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」

広大な境内を有する東寺の境内で毎月21日に開かれる「弘法さん」と呼ばれる縁日市「弘法市」は、京都名物のひとつ。毎回さまざまな露店が並んでにぎわい、年を締めくくる「終い弘法」

一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」

しめ縄飾りなどの正月用品や食品のお店なども出店し、松竹梅や葉牡丹などを並べる植木市も立つ。

一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」
一年で最もにぎわう縁日市「終い弘法」「終い天神」

「天神さん」の呼び名で親しまれる北野天満宮の「天神市」の「終い天神」は12月25日。こちらも年迎えのものを求める人でごったがえす。

北野天満宮の「大福梅」の授与

北野天満宮の「大福梅」の授与

学問の神さまとして知られる菅原道真公を祀(まつ)る「北野天満宮」。梅の名所としても知られ、境内神域で育った梅の実は採取、土用干しを経て奉書に包んで調製され、「大福梅」として12月13日の事始めより授与される。元旦の朝か、お祝いのお膳の初茶として飲むと邪気を祓(はら)い清め、健康に過ごせる新年の縁起物と京都の人の間で信仰されている。毎年、社務所前には長蛇の列ができ、なくなりしだい、終了する。

師走の一大興行、南座の「顔見世」

南座の「顔見世」

毎年11月、12月に行われる興行で、歌舞伎の年中行事のひとつ。興行主がこれから一年間舞台に立つ一座をそろえ、観客に役者の顔ぶれを見せる場として、江戸時代から始まったもの。南座では東西の役者がそろい、通常の公演に比べ、より豪華な雰囲気に包まれる。今でも着物姿で観劇する人が多く、各花街の芸妓さん、舞妓さんたちがそろって観劇する総見の日は圧巻の美しさ。舞台も観客席も心躍る、ハレのひと時を過ごせる。

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