【有元葉子さんのおもてなしレシピ】「魚介のカナッペ」&「ラムの香草ロースト」楽しく、気軽に集まる日もこの2皿で!

ひとり分ずつ何皿も出していた、古きおもてなしの時代にも、大皿や大鉢から取り分けるラフなスタイルを先駆けていた有元さん。「みんなで集まるときも、基本は2皿あれば十分」の言葉は福音! 色、素材、味のバランスなど、2皿で満ち足りる食卓の極意を学びます。
有元葉子さん

大皿やプレートで楽しくダイナミックな2皿を――有元葉子

室内に入ったとたんに、ふわ~っといい香りが立ち込めているものだから、「わあ、なんですか!」と早くも来客たちが色めき立つ。それに応えて有元さん、「庭に生えているローリエとレモンの葉っぱ、それにセージ。香りのいい葉ばかりを、お肉と一緒にローストしたんです。香りもごちそうのうちですよね」。

 こんなふうに、人を招くときに有元さんが用意するのは”おいしい料理”だけではない。音楽のように空間に漂う素敵な香りや、花もいらないほどの卓上の料理の美しさ、ダイナミックさ。料理で、五感のすべてに働きかけるような”仕掛け”をするのだ。

「自分ではあまり意識していないのだけれど。こうすると楽しいかな、こうするとみんなが驚くかしら、という気持ちがどこかにあるのは確か」

有元葉子さん

例えばこの日のひと皿目は、いろいろな魚介のカナッペ。マグロ、イクラ、サーモン、エビの赤、鯛やホタテの白、セルフィーユやバジルなどのハーブの緑。色鮮やかな具材が、軽くトーストして自家製マヨネーズを塗ったバゲットの上に美しく盛られている。

「具の組み合わせに決まりはなし。作り手が楽しんで盛ればいいんです。その楽しい気分が食卓にも表れるから、『どれから食べようかな』とみんながワクワクするんだと思う」

もうひと皿はラムの香草ローストと、サラダの盛り合わせ。カナッペの色や形の愛らしさに対して、こちらは焼けて枯れ草のようになった香草が添えられた、秋冬色のダークな料理。それが圧倒される大きさのプレートにドンと乗っている。

「前菜がお魚だから、主菜はお肉。カナッペがワンピースずつの世界なので、ラムは大きなかたまりで。こんなふうに料理の色や形、香ばしい、辛い、酸っぱいといった味わいの違い、生なのか火を通しているのか……といったことのバランスを考えて、2皿を用意するんです。そうすれば人が集まるときでも、2皿で十分に満足できる豊かな食卓になります」

 小皿であれこれ出すのもいいけれど、わいわいと楽しくおしゃべりしたいときは「大皿から取り分けるスタイルがいい。そのほうが肩が凝らなくて、みんながリラックスできます。ワインがすすみ、おのずと場が盛り上がる」。

 それにふだんは登場しない大きな皿に盛ること自体が非日的で、宴の華となる。

「”たっぷり”っていいですよね。大きなお皿にたっぷりと盛って、どうぞお好きなだけ召し上がれ、というのが私は好き。オーブンで焼いただけのラムのかたまり肉のようなワイルドなお料理は、そういうふうに盛りつけたほうがかっこいいです」

食器

 サイズ感だけでなく、器のデザインも重要。同じ料理でも、繊細な白い磁器でそろえれば、改まった様子になる。

「今回はイギリスの陶芸家の温かみのある陶器を。ピンクやブルーなど、取り分け皿にあえてバラバラの色を選び、カジュアルな雰囲気にしました。器やグラスも料理の一部。要はどんな食卓をつくりたいか、どんな宴にしたいか、イメージをもつことが大事なんです」

実は”盛るだけ”、”焼くだけ”。大事なのは楽しんで作ること。

いろいろな魚介のカナッペ

「お寿司屋さんみたいに、いろいろな魚介をそろえて、ハーブなどの薬味をいろいろ用意して。あとはスライスしたバゲットの上に好きな組み合わせで盛るだけ。これとこれは合うかな、と口に入れたときを想像して。こういうお料理は、自分が楽しんで作ればいいのです」

いろいろな魚介のカナッペ

"お刺身をのせるだけ、の美しいカナッペ。赤、白、緑。色とハーブで目も楽しいひと皿に“

材料(4人分)

バゲット …… 2本

※以下の魚介はすべて刺身用

 マグロ …… 1さく

 鯛 …… 1さく

 ホタテ …… 4個

 ゆでエビ …… 8尾

 イカ(アオリイカなど) …… 適量

 サーモン …… 4切れ

 イクラ …… 大さじ4

アンチョビの塩漬け(またはアンチョビのオイル漬け)…… 4枚ぐらい

キウイフルーツ …… 1個

ミニトマト …… 4個

ケイパー(塩漬け) …… 適量

ディル、チャイブ、バジル、セルフィーユ、

あさつき …… 各適量

〈手作りマヨネーズ/作りやすい分量〉

 卵 …… 1個

 ワインビネガー …… 大さじ1~1½

 塩 …… 小さじ1/2~2/3

 こしょう …… 適宜

 オリーブオイル …… 1カップ(目安)

オリーブオイル、粗塩、黒こしょう …… 各適量

作り方

❶バゲットは厚さ1cmぐらいにスライスして、軽くトーストする。

❷マヨネーズを作る。卵をミキサーに割り入れる。ワインビネガー、塩、こしょうを加えて撹拌(かくはん)する。ミキサーを回しながら、オリーブオイルを少しずつ加えていく。ミキサーが回りにくくなればOK。スイッチを止めて上下を混ぜ、再び撹拌して全体を混ぜ合わせる。

❸アンチョビの塩漬けは洗って塩を落とし、水につけて塩気を軽く抜く(あまり塩気を抜きすぎないほうがいい)。ペーパータオルで水気をおさえる。オイル漬けはそのまま使用する。

❹ケイパーの塩漬けは洗って塩を落とし、水につけて塩気を軽く抜き、ペーパータオルで水気をおさえる。

❺マグロは7~8mm角に切る。鯛はスライスする。ホタテは半分の厚みに切る。ハーブ類は洗って水気をきり、チャイブやあさつきは小口に切る。ミニトマトは半分に切る。キウイフルーツは皮をむき、横に4等分にスライスする。

❻バゲットにマヨネーズを薄く塗り、魚介とそのほかの具とハーブ類を好みの組み合わせでのせる(例えばa~fのように)。アンチョビをのせるもの以外は、軽く粗塩をふる。オリーブオイルを少量ずつたらす。

a:マグロ+ケイパー+あさつき

b:鯛+アンチョビ+チャイブ。黒こしょうをふる。

c:サーモン+イクラ+ケイパー+ディル+セルフィーユ

d:エビ+ミニトマト+バジル

e:ホタテ+キウイフルーツ。黒こしょうをふる。
f:イカ+アンチョビ+セルフィーユ

ラムの香草ロースト いちじくとルッコラのサラダ添え

「かたまり肉はみんなを幸せな気分にさせてくれるもの。豚肩ロースでもいいのだけれど、皆さんがあまり使わないラムで、しかも骨つきなら、それだけで特別感が増します。あるいは1本ずつのラムをたくさん盛り合わせても。豪快さは集まる日の食卓の大事な要素」

ラムの香草ロースト いちじくとルッコラの サラダ添え

"立ち込めるローリエとレモンの葉の香り!ラム肉を骨つきで焼く豪快さが宴を盛り上げる“

材料(4~6人分)

ラムラック(骨つきのかたまり肉)…… 1kgぐらい

※またはラムチョップを人数分

にんにくのすりおろし …… 4片分

塩 …… 適量

オリーブオイル …… たっぷり

ローリエ(枝つき)、レモンの葉(枝つき)、セージ …… 各適量

アリッサ …… 適量

〈いちじくとルッコラのサラダ〉

 黒いちじく …… 4~6個

 ルッコラ …… 2束

 オリーブオイル、こしょう、バルサミコ酢、ワインビネガー、塩…… 各適量

作り方

❶にんにくのすりおろし、塩をラム肉の全体にしっかりすり込んでおく。このまま冷蔵庫に入れてひと晩おいてもよい。

❷サラダのルッコラは根元を冷水につけて、シャキッとさせる。

❸オーブンに入れられるフライパンなどに①のラム肉を置き、オリーブオイルをたっぷりかける。220℃に予熱したオーブンの上段で25 ~ 30分ほど焼き、肉にほどよく火が通ったら、下段に移す。上段にローリエ、レモンの葉、セージをのせて、さらに10分ほど焼いて肉に香りを移す。


❹サラダを作る。黒いちじくはヘタを落とし、皮つきのままナイフで縦半分に切る。ルッコラの水気をきり、食べやすくちぎってボウルに入れ、オリーブオイル、こしょうであえる。いちじくを加えて軽くあえ、バルサミコ酢をたらし、味見をして、ワインビネガーと塩で味をととのえる。


❺器にラムをのせ、アリッサをたっぷり塗りつける。一緒に焼いたローリエ、レモンの枝葉、セージも添える。ローリエの枝などはごく短時間で焼けるので、1〜5分くらいで焼き具合を見て取り出す。

❻④のサラダを添える。肉を切り分け、サラダと一緒にいただく。

「集まる日も この2皿さえあれば。」

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本誌の人気連載「この2皿さえあれば。」の中から、特に”人を呼びたくなるレシピ”を厳選してご紹介。おもてなしだからといってむずかしいレシピではなく、シンプルだけれど、食材の組み合わせや盛りつけでとても素敵になる。有元料理の真髄がここに。A4版の大きな判型でアートブックをめくるように楽しめる、大人向け有元葉子レシピの決定版。好評のエッセーは今回も書き下ろし。「大事なのは、一緒に楽しい時間を過ごすこと。」──人生を美しく素敵に生きる、著者の想いがつまった一冊。

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