更年期のせい?50代女性に多い「手指に力が入らない」原因を手の専門家が解説【50代の不調に克つ! 手指の関節が痛い編 #1】

最近、ジャムなどの瓶の蓋はおろか、ペットボトルの蓋を開けるのにも難儀している、アラフィー世代の美容ジャーナリスト・小田ユイコです。なぜ手指に力が入らないのか、専門の医師に取材したところ、驚くべき事実が判明。同じお悩みの方、必読!全4回に分けてお届けします。
お話を伺ったのは…
牛尾茂子先生

牛尾茂子先生

手外科医。形成外科医。日本手外科学会専門医。四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター勤務。更年期世代の女性に現れる多くの手の症状と向き合い、治療に取り組む。
取材したのは…
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
ペットボトルの蓋を開けようとしても、ビクともしないってことありませんか?何とか開けようと力入れると、親指のつけ根あたりに鈍痛が……。
ペットボトルの蓋を開けようとしても、ビクともしないってことありませんか? 何とか開けようと力入れると、親指のつけ根あたりに鈍痛が……。
美容ジャーナリストの小田ユイコです。「最近のペットボトルって、蓋が固すぎない?」と思ったこと、ありませんか? それは実は勘違い。ペットボトルの蓋が固くなったのではなく、開けるほうの私たちの指に異変が起きているのです!

「蓋、開かないな~」とボヤいていると、夫が「それって関節リウマチじゃない?」と。本当にそうなんでしょうか。これは取材に行かねば! と調べたところ、手の専門医が診療する「手外科」というジャンルがあることを発見。四谷メディカルキューブの手外科医、牛尾茂子先生に話をうかがってきました!

手指の炎症は女性ホルモンの減少が原因

牛尾先生、ジャムの瓶の蓋はおろか、ペットボトルを開けるのすら辛いのですが……。「ペットボトルの蓋をひねろうとすると、親指のつけ根に痛みを感じるのですよね。小田さんの年齢から考えても、それは『母指CM関節症(ぼしシーエムかんせつしょう)』です」。んんん?『母指CM関節症』? 初耳です。

「CM関節というのは、各指のつけ根の関節。親指のCM関節に炎症が起こるのが『母指CM関節症』です」(牛尾先生)なんと、そんな症状があったとは! 関節リウマチではないのですか?

「関節リウマチは、免疫疾患です。手指の関節が痛い場合、関節リウマチの可能性もありますが、更年期世代の女性の場合、まず女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの減少による手指の疾患を考慮すべき。『母指CM関節症』も、エストロゲン減少による疾患のひとつです」。

ここが母指CM関節。今まであまり意識していなかったけれど、確かにペットボトルの蓋を開けるとき、このあたりに鈍痛が……。
ここが母指CM関節。今まであまり意識していなかったけれど、確かにペットボトルの蓋を開けるとき、このあたりに鈍痛が……。
「関節には、滑膜(かつまく)という膜があり、その名の通り、関節の動きをスムーズにする潤滑油のような役割をしています。その滑膜には、受容体というエストロゲンを受け止める鍵穴の役割をするものがあり、鍵であるエストロゲンが受容体に結合することで、はじめてエストロゲンの作用を発揮。関節の働きがよくなります」(牛尾先生)

「ところが、更年期でエストロゲンの分泌が減ると、鍵穴に肝心の鍵がやって来ず、いわばサビついたような状態に。関節のすべりが悪くなり、炎症を起こしてしまうのです」。そんなサビついた関節に、蓋を開ける仕事をさせたら痛いのも当然ですね。それにしても、関節はたくさんあるのに、なぜ親指に症状がでるのでしょう?
「実はエストロゲン不足による手指の炎症は、親指以外の指に起こるケースも多々。ただ、親指は持つ、つまむなどの動作に必ず使い、ほかの指より酷使しているので、炎症が起こりやすいのです」(牛尾先生)。これまでは、甘やかしてはいけないと思い、開かない蓋も歯を食いしばって開けてきましたが……(笑)。

「痛いときはダメです! 炎症が進むと、関節の軟骨が摩耗。さらに進むと、関節がずれる亜脱臼状態に陥り、関節部分が変形してゴツゴツとした見た目に。痛みも強くなります。親指以外に手指の炎症が起こっている人も、不調に気づいていながら原因がわからないまま無理して悪化させてしまっている人が多いのです」。
手が痛いと、瓶の蓋を開けるのも、ちょっとしたストレス……。夫が瓶の蓋をきつく締めがちで、よく「馬鹿ヂカラで締めないで!」とケンカに(笑)
手が痛いと、瓶の蓋を開けるのも、ちょっとしたストレス……。夫が瓶の蓋をきつく締めがちで、よく「馬鹿ヂカラで締めないで!」とケンカに(笑)

手指の痛みや動かしにくさや変形はよくなる!予防できる!

そういえば、アラフィー世代の友人から「パソコンのタイプミスが増えた」とか、「ペンを持って文字を書くのが辛い」とか、「お箸が面倒でフォークばかり使うようになった」という声を頻繁に聴くように。指の変形に悩んでいる人もいます。これらも、エストロゲンが減少したことによる手指の炎症が原因?

「その可能性大です。次回#2では『母指CM関節症』以外の、更年期世代に多い手指の疾患についてご説明します。まずはご自分の手指に起こっていることに気づくことが大事です」(牛尾先生)。続く#3、#4ではこれら手指の不調の解決法も、牛尾先生がきっちりレクチャー。最近、手指に力が入らない、いろいろな作業がうまくいかず不器用になった気がするという人、あと3回も乞うご期待です!
次回は11月15日(月)公開予定。お楽しみに!
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