スマホを至近距離で見続けることで起こる「スマホ斜視」が今、問題に!【50代の不調に克つ! 夕方になると目がかすむ編#3】

休日、スパークリングワイン片手にソファでゴロゴロしながら、スマホで連続ドラマをズーッと見続けるのが、小田にとっての至福のとき(笑)。そんなとき近視の小田は、たいてい遠近両用メガネははずし、裸眼でスマホを近づけて見ています。これが今、巷で問題になっている「スマホ斜視」の引き金に。ものが「2重に見える」ようになった人、もしかしたら「スマホ斜視」かもしれません。
梶田雅義先生

梶田雅義先生

梶田眼科 院長。眼科専門医。医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。同眼科教室入局。1993年から2年間、カリフォルニア大学バークレー校の研究員に。2003年、梶田眼科開院。日本眼光学学会理事、日本コンタクトレンズ学会理事、日本眼鏡学会評議員。著書に『人生が変わるメガネ選び』(幻冬舎)が。
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
「小田さんはスマホを長時間見るとき、かなり目を近づけて見ていませんか? 夕方老眼とは関係ありませんが、子供や若者だけでなく、50代にもスマホを近づけて見る人が多いので、ぜひお話しておきたくて。スマホを至近距離で長時間見るのはとても危険です」(梶田先生)。ドキリ。ドラマなどを一気見するとき、確かに至近距離に。ディティールや字幕を追ううちに、遠近両用のメガネやコンタクトを外してしまい、距離にして15cmくらいで見ています。私の休日のダラダラとしたライフスタイルを見透かされたよう(笑)。

なぜ至近距離でスマホを見るのが危険なのですか?「それは『スマホ斜視』に陥る可能性があるからです」。スマホ斜視? 初めて聞きました。

老眼になった大人に「スマホ斜視」が増えている!

「『スマホ斜視』は今、社会的に問題にもなっているんですよ。スマホ斜視には、内斜視と外斜視があります。眼球の向きは、外眼筋という眼球の上下左右にくっついている筋肉でこのトロールしています。スマホ内斜視とは、スマホをかなり近づけて見ることで寄り目になり、そのまま外眼筋が凝り固まった状態。少し離れたものを見たとき、黒目の位置が正面へと戻るはずなのに眼球が動かず、二重に見えてしまいます。動画やゲームなどに集中するあまりこのような事態に」(梶田先生)。

「一方、スマホ外斜視は、スマホを片目で見ることで起こります。本来、ものを見るときは両目で焦点を合わせますが、至近距離でスマホを見ているうちに片目で見るようになったケースです。見ていないほうの目は、外側のあらぬ方向に泳いだ状態。この見方を長時間続けると外眼筋が凝り固まり、少し離れたものを見たときも黒目の位置が正面に戻らず、外側へと泳いだままに。スマホを見ていたほうの片目だけで見るようになります」
スマホを至近距離で見続けることで起こる「スマホ斜視」が今、問題に!【50代の不調に克つ! 夕方になると目がかすむ編#3】_1_4
眼球の上下左右にくっつき、眼球の向きをコントロールする外眼筋。スマホを至近距離で長時間見続けることで、外眼筋が凝り固まりスマホ斜視に。
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スマホを至近距離で見ると、寄り目に。眼球の向きをコントロールする筋肉がこのまま凝り固まると、正面を見てももとに戻らなくなり、スマホ内斜視に。
スマホを至近距離で見続けることで起こる「スマホ斜視」が今、問題に!【50代の不調に克つ! 夕方になると目がかすむ編#3】_1_6
スマホを近づけて見るあまりに「片目だけで見る」ようになり、もう一方の目は外側へ泳いだ状態に。この状態が続くと、離れたものを見ても泳いだ眼球を正面に向けることができず、片目だけで見てしまう。これがスマホ外斜視。
「このスマホ斜視、子供や若者に増えて社会問題になっているのですが、実は案外多いのが老眼になった大人。老眼になって遠近両用の眼鏡やコンタクトを使うようになった人が、スマホを長時間見るうちに眼鏡やコンタクトを外し、裸眼で見ることで起こります。遠近両用の眼鏡やコンタクトは、手もとでも20~40cmの距離でピントが合うようになっています。ドラマなどに熱中してスマホを近づけると見づらくなりますから、眼鏡やコンタクトを外してしまいます。特に、もともと近視の人は、近くのものは見えるのではずしてしまいがち。すると、スマホ内斜視やスマホ外斜視に陥りやすくなるのです」(梶田先生)。

確かに私はもともと近視。裸眼なら眼を近寄せさえすれば見えることが、ちょっと自慢だったのですが……。「それこそが命取り。少しの時間ならかまわないのですが、長時間続けるのを習慣化してしまうと、スマホ斜視になる可能性が高まります」。

「また、眼鏡やコンタクトレンズが苦手で、老眼になっても装着を避けている人も要注意です。そのような人は老眼が進行しやすく、スマホ斜視にもなりやすいからです。こちらはもともと遠くがよく見え、視力に自信がある人に多いケースです」。50歳になったら、快適な視力を得るためには、いずれにしても矯正が必須ということ?「今はなんとかしのげていても、70歳、80歳になったら必ず視力の矯正は必要になります。そのときになって初めて眼鏡やコンタクトレンズを使おうとしても、なかなか難しい。70歳になって初めて自転車に乗るのが難しいのと同じです」。

スマホを見るとき、遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズを外すべからず

「スマホ内斜視の場合、ものが二重に見えるという自覚症状があるので、比較的発見が早く改善する人が多いです。事実、このコロナ禍で、『スマホをずっと見ていたらものが二重に見えるようになりました』と訴える患者さんが増えました」(梶田先生)。

「一方スマホ外斜視の場合、二重に見えるという自覚症状がないので発見が遅れ、改善が難しくなるケースが多く、注意が必要です。本人も片目だけで見ている自覚はありません。『人から片目が泳いでいる』と指摘されて、はじめて気づくことが多いのです。実際には両目で見ていないことで、生活に支障をきたしているはずなのですが……。50代くらいのかたが駅の階段で転落すると、足腰の衰えを指摘されますよね。でも、実際はスマホ斜視で遠近感がなくなり、階段を踏み外しているケースも多いと思います」。

怖いですね。大人がスマホ斜視を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。「スマホを長時間見るときは、手もとが見やすい遠近両用の眼鏡またはコンタクトを『装着して』、20cm以上離して見ること。これがもっとも大事です」

「もともと近視の人は、眼鏡やコンタクトを外すと、どんどんスマホを近づけてしまうからです。かつて、スマホがない頃には、近視の人に眼鏡を外して本を読んでいいと指導していました。でもスマホは本よりずっとサイズが小さく、状況が違います。今では近視の子どもたちにも、勉強やゲームをするとき、眼鏡をかけるように指導しています」

外眼筋の凝りをほぐし、常に「両目で見る」

「また、スマホを長時間見続けたあとは、眼球を動かして凝り固まった外眼筋をほぐしましょう。腕を伸ばして人さし指を立てて動かし、その指先を両目で追います。最初、急性内斜視で二重に見えていても、次第にピントが合ってきます。時間がたっても二重に見えたままの場合は、眼科を受診しましょう」(梶田先生)。

斜視になってしまった場合、どのような治療をするのですか?「斜視の状態でも両目でピントが合うよう、プリズムレンズの眼鏡を処方します。光の方向を調整することで、目が内側や外側を向いていてもひとつの像を結ぶようにするのです。また眼球をコントロールしている外眼筋を強めたり弱めたりして、正面を向かせる手術法もあります」。
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スマホを見続けたあとは、眼球を動かし外眼筋をストレッチ。腕を伸ばして人さし指を立て、指先を両目で見る。人差し指の位置を左右に動かし、指先を両目で追って。
今回は、大人にも増えた「スマホ斜視」についてお送りしました。「夕方老眼」からは話がそれましたが、梶田先生にお話しいただいて本当によかった! 知らなければ、私も「スマホ斜視」に陥る可能性大でした。

「夕方老眼」と「スマホ斜視」は、眼で起こっている症状こそ違えども、原因はスマホを中心としたIT頼りの生活スタイルにありました。これからwithコロナがどれだけ続くかは不透明ですが、眼への負担が減らないことは間違いありません。

梶田先生に教えていただいた「瞳ストレッチ」(#1)、遠近両用の眼鏡やコンタクトレンズとの付き合い方(#2)、外眼筋をほぐして両目で見る(今回)を実践し、快適な視界をキープしたいです!

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