50代 寝ている間に足がつる原因と劇的に治る話題の漢方薬とは?【小田ユイコ×小池統合医療クリニック院長 小池弘人先生対談 #1】

同世代の友人からちらほら聞こえてくる「夜中に足がつって、熟睡できない」という声。また足が頻繁につるため、スポーツや旅行を思う存分楽しめないという声も。「足がつる=こむら返り」はなぜ起こるの?50代になってつりやすくなる原因は?統合医療で体の不調の根本を見つめる医師、小池弘人先生に話をうかがいました。
小池弘人先生

小池弘人先生

小池統合医療クリニック院長。群馬大学医学部非常勤講師。医学博士。日本統合医療学会理事、総合内科専門医。群馬大学医学部卒業。2003年、統合医療の世界的権威であるアンドリュー・ワイル博士率いるアリゾナ大学統合医療プログラムのアソシエイトフェローに。2007年に小池統合医療クリニックを開設。漢方、鍼灸を取り入れ、西洋医学と東洋医学の両面から治療にあたる。著書に『医者と薬を遠ざける「ふくらはぎ習慣』」(SB新書)ほか。
小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEB媒体で美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
夜中、夫のただならぬうめき声で目を覚ますと、となりのベッドで足がつって悶絶している夫の姿が。毎晩ではないもののたびたび起こり、夫もつらいが、私も寝不足に……。また、私の場合、最近始めたテニスで長時間プレーすると、足がつりそうに。そもそもこむら返りはどうして起こるの? 年齢とともに起こりやすくなるものなのでしょうか。
寝ている間に足がつった女性

足がつる原因は、冷えや大量の発汗、お酒の飲みすぎによる電解質不足

小田:夫や友人が、就寝中のこむら返りに悩んでいるのですが、なぜ寝ているあいだに足がつるのですか?

小池先生:足がつる時間は、だいたい同じ時間ではないですか? 就寝からしばらくすると、足の筋肉は完全にゆるみます。起きているあいだはただ立ったり座ったりしているだけでもふくらはぎの筋肉は緊張、つまり使われている状態。完全にゆるむのは寝ているあいだだけなのです。筋肉は使っていないので冷えやすい状態に。足先から心臓に血液が戻る静脈の流れが悪くなるとふくらはぎの筋肉が過剰収縮を起こし、ひきつりやすくなるのです。

小田:確かに夫の場合、こむら返りが起こるのは、決まって就寝から2時間ほどたった夜中の1時頃です。

小池先生:足がつる日は、お酒をたくさん飲んだり、急に運動をたっぷりした日なのでは? お酒を飲むと、利尿作用で脱水症状に陥りがち。するとミネラルが体の外に出て行ってしまい、血液に電解質異常が起こります。電解質とは血液中にあるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルのこと。これら電解質は、体温調節や筋肉の収縮に関わっていて、常に一定量必要なんです。また、ふだんから運動をしていれば別なのですが、急にたくさん運動すると筋肉が疲労し、筋線維が断裂。すると、けいれんが起こりやすくなるのです。

小田:お酒の中でも特に、ビールはキンキンに冷えているので、体の冷えにもつながり、血流ダウンを招いてこむら返りにつながりやすいそうです。

小池先生:そこに加えて、熱帯夜だったりすると汗をかいてミネラル不足になり、さらにはエアコンをきかせているのに足に布団がかかっておらず冷えると、足がつる条件がそろってしまいます。夏は十分に注意する必要があります。

小田:更年期と足がつることとは関係がありますか?

小池先生:女性ホルモンのバランスとの関係もあるでしょう。妊娠中、こむら返りを起こす人が多いのは確かですし、足に静脈瘤がある人にこむら返りが多いことも、ふだんの治療から感じています。相対的にお酒が好きでよく飲んでいる更年期、更年期以降の女性に、足がつる人が多いのは事実です。

キンキンに冷えたビール
夏は汗をかいてミネラル不足になる上、キンキンのビールを飲みすぎて冷えを招き、足がつりやすい状況に。

小田:夜中に足がつるのと、運動中に足がつるのとでは、原因が違うのでしょうか?

小池先生:汗をかいて脱水症状になりミネラルが奪われたときや、筋肉を酷使し疲労でけいれんを起こしやすくなるという点では、夜中に足がつるのと同じです。ただし、夜中に足がつると睡眠の妨げになるのでつらいですね。運動中のこむら返りは、つりそうだなと予感した時点でつま先を引っぱって足首の前側を曲げたり、アキレス腱伸ばしの要領でふくらはぎをのばせば、ある程度の症状はおさまります。しかし夜中のこむら返りは、ふくらはぎをのばしてもなかなかよくならないし、痛すぎてのばすことすら辛いことも多々。数秒から数分、けいれんが過ぎ去るのを待たなければなりません。

劇的に治る!「芍薬甘草湯」は足のつりに即効性がある漢方薬

小田:漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を飲むとけいれん、痛みが劇的におさまるようですね。こむら返りを繰り返す友人は「魔法の68番(ツムラの芍薬甘草湯の番号)」と呼んで常備していますが、飲み続けて大丈夫なものでしょうか?

小池先生芍薬甘草湯は筋肉のけいれんを押さえる特効薬としてよく知られた漢方薬です。足がつったときに飲めば、数分で激痛が引くほどの即効性があるので、足がつりそうな日は、枕元に水とともにおいておくとよいでしょう。芍薬甘草湯には予防効果もあり、スポーツをする前や、足が疲れた日の就寝前など、こむら返りが起こりそうなときに事前に服用すれば、ある程度は発作を抑えられることも。

ただし、長期間にわたって服用しつづけると、偽性アルドステロン症という副作用を引き起こすこともあると小池先生。

小池先生:偽性アルドステロン症になると、血圧が上昇したり、カリウムが減ったりして、手足の力が抜ける、手足がこわばる、高血圧、むくみ、頭痛などの症状が現れます。芍薬甘草湯はあくまで一時的な対処療法で、根本的な解決法ではありません。飲み続けるうちに以前ほど効かなくなったからと、自己判断で服用量を増やすなどするのはもってのほか。医師の診断のもと、適切に服用しなければなりません。

芍薬甘草湯に含まれる甘草
芍薬甘草湯に含まれる甘草=グリチルリチン酸には、ナトリウムを体内に溜め込みカリウムを体外に出すアルデステロンと似た働きが。間違った大量摂取により血圧上昇、カリウム減少を起こす。
夫が夜中にこむら返りで悶絶する姿を見たくない小田としては、一時的な対処療法ではなく、根本的なケア法が知りたい! 次回#2では、こむら返りを予防し、そもそもつりにくい足へと導く方法を小池先生に教えていただきます。同じお悩みの方、お楽しみに!


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