今や圧倒的存在感と演技力で、この国の映画、ドラマ界を牽引する俳優となった柳楽優弥さん。その彼が新たに挑んだのが、日本映画史に刻まれ、伝説といわれる作品『RYUJI 竜二』。都会の片隅で懸命に生きるヤクザの生きざまを、彼はどうとらえ、演じたのかを聞いた。
ジャケット¥176,000/スタジオ ニコルソン 青山(スタジオ ニコルソン) その他/スタイリスト私物
「この映画は作られるべくして、新たに作られる運命をもった、意味のある作品だったと思うんです」
そう語る柳楽優弥さん。かつて俳優・金子正次(故人)の脚本、初主演で公開された『竜二』。新宿・歌舞伎町を舞台にひとりのヤクザの生きざまを描いて大きな話題となり、“伝説”となった名作である。その作品が43年ぶりにリメイクされ、柳楽さん主演で蘇った。
「最初、オファーをいただいたときは、オリジナルも見ていましたし、伝説といわれる作品を受けることに正直ドキドキでした。果たして自分に務まるだろうかと」
その怖れが徐々にほぐれていったのが、コロナ禍をはさんでの7年の年月だったという。
「監督とミーティングをし、時には台本についてもお話をさせていただきました。ライトなノリのリメイクでは、なかなか思いをこめられませんし、僕はどんな作品であっても、しっかりと情熱をもって向き合いたくて。あの7年という年月のおかげで、自分の中に築き上げられていったものがあった。竜二という人間への理解も深まっていきました」
かつてのヤクザ映画は、抗争ものが主流だったが、本作は人の心模様をていねいに描き出している。
「竜二は人の気持ちをまず大切にする男です。テクノロジーとか合理性とかが優位に立つ現代に、不器用だねと思われつつも、情を貫き通す。もがきながら本気で生きている。その人間くささが僕にはすごく刺さった。愛とか絆とか古くさく感じるかもしれないけど、やっぱり何千年も変わらない、人の心の奥にあるものだと思っています」
世の中の底辺で糊口を凌(しの)ぐ。“ここ”でしか生きられぬ運命を背負った人々の、なんとせつないことだろう。ラストシーンは、どうにも心を揺さぶられる。
「観てくださるかたに、少しでも寄り添えるものがあればいいな、と」
ジャケット¥176,000/スタジオ ニコルソン 青山(スタジオ ニコルソン) その他/スタイリスト私物
14歳での鮮烈なデビュー。だが、葛藤する日々もあったそうだ。
「主人公として作品に携わらせてもらう中で、自分はまだまだ経験値が低いし、主演として牽引していく力もないと感じていて。ですから20代は自分の演技を探すために、さまざまな役に挑戦させていただきました。でもどこか頑(かたく)なで怖がりだったから、演技でちょっと気になるところがあっても、その不安を誰かに打ち明けることを躊躇していたんです。30歳過ぎてからかな、それではダメだ、引っかかることは素直に話そうと。そこから変わってきました」
本作の現場では、うれしい瞬間も多かったようだ。「ひとつひとつていねいに取り組める現場で、ゆったり皆と向き合えました。ふとした瞬間にその人を信用するきっかけができたり。作品に対して主演の自分がもつべき責任というものもしっかり自覚しました」と話す。
全身全霊をかけて役に取り組むことで知られる。ゆえにどう見ても、その役柄にしか見えないすさまじさである。ひと息つく時間はあるのかと問うと「プライベートですか……、あ、16年続けている武道で、この間、黒帯になったんです!」と、ひどくうれしそうに笑った。何かを見透かすような鋭い視線が、急に愛らしくゆるむ落差もこの人の魅力だ。
「あと、本が好きになりました。最近では『論語と算盤』と『「空気」の研究』がおもしろかった。多角的に興味をもつ大切さにようやく気づきました。知行合一というのかな、もっと成長したいですね」
インタビューの中で「成長したい」という言葉が何度か出ていた。人生に対する真剣さがみてとれる。「生涯、俳優であり続けます」という彼の深化に興味はつきない。
Information
Ⓒ 2026「RYUJI」製作委員会
『RYUJI 竜二』
直(萩原利久)とひろし(JUNON/BE:FIRST)、舎弟ふたりを守りながら、裏社会に生きる竜二。まり子(川栄李奈)との結婚、父となったことを機に足を洗い、穏やかな暮らしを手に入れたかに見えたが……。出演は三宅健、伊藤英明ほか。監督は水田伸生。10/30より全国公開。
やぎら ゆうや●’90年、東京都生まれ。’04年『誰も知らない』(是枝裕和監督)で、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞受賞。代表作に、映画『夏目アラタの結婚』、テレビドラマ『ライオンの隠れ家』、Disney+ドラマ『ガンニバル』シリーズ、Netflixシリーズ『九条の大罪』ほか。また『映画 九条の大罪』が’27年1月8日公開予定。
撮影/山根悠太郎(TRON) ヘア&メイク/勇見勝彦(THYMON Inc.) スタイリスト/池田尚輝 取材・原文/水田静子 ※エクラ2026年11月号掲載