【感性を磨く、金沢旅】九谷焼の美と歴史に触れる「石川県九谷焼美術館」

日本が世界に誇る九谷焼。この類(たぐい)まれなる存在は、前田藩の支藩、大聖寺藩で花開いた。その繊細でありながらおおらかで、気品あるスタイルに触れて、器感度をアップしてほしい。

器をめぐる旅の第一歩は、九谷焼の聖地・加賀へ

石川県九谷焼美術館

緑豊かな公園内の美術館で光と風を感じ、古九谷を愛(め)でる
豪放で華麗。繊細で緻密。さまざまな顔を見せてくれる九谷焼は、360年余り前、九谷村(現在の加賀市)で大聖寺藩営の窯として始まった。それから約50年後、窯は突然途絶えたが、理由は謎。江戸後期に復興したが、初めの50年間に作られたものは「古九谷」と呼ばれ、その後の「九谷焼」と区別される。そんな物語も魅力となり、今も特別な存在として光を放ち続けている。

器をめぐる旅の始まりは美術館から。ここで歴史に触れ、先人が丹精こめた作品を鑑賞する。そんな体験を経て自分の好みを発見し、使いこなせるひと品を見つけられるかもしれない。「石川県九谷焼美術館」は、加賀市の中央図書館に隣接した「古九谷の杜親水公園」内にある。館内に木や土、石などの自然の素材をあしらい、展示室ごとに窓を設けてあるので、緑豊かな公園の中で作品を眺めているよう。自然の光の中で作品を見れば、作者の筆のタッチや色合い、質感……すべてが手にとるようにわかる。展示室は、九谷焼の歴史や手法などが体系的に説明されている。「古九谷」をはじめとする江戸期から現代作家の作品までが一堂に会する貴重な場所。本物に触れる旅はまずここから始めよう。

自然光の入る館内。飾られているのは、『鶴丸文大香炉』松山窯、江戸末期。古九谷の窯が断絶したあとに再興された、大聖寺藩御用達の窯。青を基調とする「青手」。

自然光の入る館内。飾られているのは、『鶴丸文大香炉』松山窯、江戸末期。古九谷の窯が断絶したあとに再興された、大聖寺藩御用達の窯。青を基調とする「青手」。

安藤忠雄の弟子・富田玲子による設計。

安藤忠雄の弟子・富田玲子による設計。1階に展示室、2階には茶房や茶室、ホールなどが

器の裏にも色彩があり、模様が施され、銘が入っているのが九谷焼の特徴。

器の裏にも色彩があり、模様が施され、銘が入っているのが九谷焼の特徴。作り手の遊び心あふれる、珍しい人物柄入り

『赤絵金彩龍図花瓶』竹内吟秋 明治期。

『赤絵金彩龍図花瓶』竹内吟秋 明治期。精緻な「赤絵・金襴手」

「青手」「色絵・五彩手」「赤絵・金襴手」。華麗なる九谷焼の美を求めて

『青手土坡牡丹図大平鉢』古九谷、江戸前期 

古九谷の「青手」の意匠は、躍動的かつ感覚的な構成で、絵画性も強く、「日本の油絵」とも称される。その特徴がよくわかる作品。『青手土坡牡丹図大平鉢』古九谷、江戸前期

『赤絵金彩群馬図水注』浅井一毫。

『赤絵金彩群馬図水注』浅井一毫。明治に入り、元大聖寺藩士の竹内吟秋、浅井一毫によって生み出された「赤絵・金襴手」

『色絵百花手唐人物図大平鉢』古九谷

九谷焼で色彩といえば一般に「五彩手」をさす。五彩とは、赤・緑・紫・紺青・黄。『色絵百花手唐人物図大平鉢』古九谷

『赤絵金彩鳳凰人物図鉦鉢』宮本屋窯

『赤絵金彩鳳凰人物図鉦鉢』宮本屋窯、江戸後期。赤絵細描を得意としていた窯の作品

『色絵梅に鶯図輪花中皿』3客 古九谷、江戸前期

『色絵梅に鶯図輪花中皿』3客 古九谷、江戸前期。「五彩手」の絵付けの特徴は、器の中央に山水、花鳥風月、人物等の一幅の絵画を描く

Data
石川県加賀市大聖寺地方町1の10の13
☎0761・72・7466
9:00〜17:00
定休日 月曜
http://www.kutani-mus.jp/ja/

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