100年の恋も冷める「おなら」頻発現象!原因はコロナ禍を経てクセになった間食にあった!?【小田ユイコ×江田クリニック 院長 江田 証先生対談 #1】

コロナ禍3年のあいだに経験した、人生初の自粛生活。いろいろと心、体、肌に変化があったけれど、そのひとつが「おなら」が増えたこと(笑)。どちらかといえば胃腸の丈夫さには自信があったのに、なぜかおなかがパンパンに張ることが多く、日中も寝ているあいだも、おならが頻繁に。運動不足のせいと片づけていたけれど、コロナもあけて外出も増え、運動の機会が増えてもおならは変わらず。これはいったいどういうことなのか!? 今回、おならなどの話をうかがっていいものか、と恐縮しながらも、思い切ってカリスマ消化器専門医としてご活躍の江田 証先生に取材の申し込みを。すると、おならは50代の女性に起こりがちな、しかも健康意識の高い人に起こりがちな、ある腸の不調と大きな関係があることが判明! 腸活しているはずなのに、便秘や下痢がよくならない方も必読です。

「おなら」が増えたのは、コロナ禍でクセになった間食が原因

おならを我慢している女性
コロナ禍がきっかけで、ガスがたまりおなかがパンパンになる「ガス腹」の女性がにわかに急増。下腹がぽっこりし、人前でおならを我慢しなければならないシーンが増えるのには、コロナ禍が引き起こした食生活の変化にあった。

小田:コロナ禍を経て、おならの回数が増えたような気がするんです。おなかがパンパンに張っていると感じることも。コロナ中は、歩く時間が減り、家にいる時間が長いせい?と思っていましたが、コロナがあけてもその状態は続いていて。50代という年齢も関係しているのでしょうか?

江田先生:コロナ禍でおなかの変調を感じた人は約6割にものぼると言われています。運動不足もありますが、一番の原因は食生活。コロナの自粛中、家にいていつでも食べ物を口にできるため、お菓子をつまむなどの間食が増え、腸内環境が変わったことが理由のひとつと考えられます。

小田:ああ、耳が痛い(笑)。確かにコロナ禍で、1個くらいならいいかな?とクッキーやチョコレートを気分転換に食べるのが習慣に。今も続いています。ところで、おならってガスなんですよね? 

江田先生:胃から続く小腸の働きが弱り、本来なら小腸では増えないはずの細菌がコロニーを形成している可能性があります。小田さんがおっしゃる通り、おならはガス。食べたものを消化・吸収、分解する過程で腸内細菌が発酵し、水素ガスやメタンガス、硫化水素ガスを作り出すのです。大腸で発生したガスなら肛門から排出されやすいのですが、小腸は肛門から遠いでしょう? ガスが小腸にたまり、パンパンになるのです。

小田:え~っ! 大腸ではなく、小腸にガスが? 間食がひんぱんだと、なぜ小腸でガスが増えるんですか?

江田先生:小腸は、本来動きが激しい臓器。胃から食べ物が送られてくると、消化・吸収を行い、空腹のタイミングで強いぜん動運動を起こし、大腸へと送り出します。正常な小腸ではゴミが溜まったり、細菌がコロニーを形成したりはしません。これが小腸のハウスキーピング機能です。

ところが、間食ばかりしていると小腸の休み時間がなくなり、小腸のぜん動運動が緩慢に。ハウスキーピング機能が低下します。すると、本来少ないはずの小腸内の細菌が爆発的に増え、食べ物というエサが胃から送られてくると小腸で発酵。ガスが増えてしまうのです。この小腸で細菌が増え、過剰発酵を起こすことを「SIBO(シーボ)」(小腸内細菌増殖症)と呼びます。

小田:「SIBO」。名前だけは、どこかで聞いたことがあります。間食のせいで、小腸を働かせすぎていたんですね。

江田先生:間食以外にも、ストレスや加齢でも小腸のぜん動運動がダウン。社会生活や家族の世話で何かとストレスフルな50代の女性は、「SIBO」に陥りやすいのです。

よかれと思って行っている腸活が「おなら」を増やしている!?

小田:そもそも、おならって1日に何回出るのが普通ですか?

江田先生:健康な女性で1日7回くらい。1日に約2ℓのガスを出すと言われています。半分は飲み込んだ空気、半分は腸内で作り出されたガスです。おならの回数には個人差がありますが、外出先や人前でいつも我慢しているような方は、通常よりガスが多く、回数も多くなっているでしょう。

小田:私の場合、ちゃんと数えていないけれど、7回よりは多いし、確かに人前でグッと我慢していることもあります。SIBOによるガス発生以外に、おならが頻発する原因はありますか?

江田先生:「過敏性腸症候群」に陥っていると、小腸が水浸しになり、大腸のほうでは細菌が過剰な発酵が起こし、ガスが大量に発生。腸が風船のようにふくらんで、おなかがパンパンに張ってきます。

小田:「過敏性腸症候群」! 近年よく耳にする症状ですね。ストレスに見舞われやすい若い男性が、朝の電車内で急に便意をもよおし、駅のトイレで行列をなしているあの症状ですよね。50代の女性でも「過敏性腸症候群」に?

江田先生:はい。女性も最大で6人にひとりは患っていると言われています。男性は下痢型、女性は便秘型が多く見られ、下痢と便秘を交互に繰り返す方もいらっしゃいます。

小田:急にもよおす下痢だけではなく、便秘の場合もあるのですね。

江田:そうなんです。おならが何度も出るうえ、「下腹部だけぽっこり」「妊娠しているみたいにパンパン」といったおなかが張る症状が、特に食事のあとに強く出るようなら「過敏性腸症候群」や「SIBO」によるガス腹かもしれません。「過敏性腸症候群」の2/3には「SIBO」が合併していることがわかっています。

小田:どういう経緯で「過敏性腸症候群」に陥ってしまうのでしょうか。

江田先生:ウェブエクラをご覧の皆さんは、健康志向の高い女性ですよね。だとすると「FODMAP(フォドマップ)」が原因かもしれません。

小田:「FODMAP」? 初めて聞きました。

江田先生:小田さんは腸活ってしたことありますか?

小田:あります。というか、いつも心がけたいと思っています。乳酸菌飲料やヨーグルトを食べたり、キムチや納豆などの発酵食品、ゴボウなどの食物繊維はなるべく摂らなければと。

江田先生:コロナ禍でよく食べるようになった食材は?

小田:家にいる時間が増え、夫とふたりで3食料理するようになり、ネギ、タマネギ、ニンニクなどはよく使うようになりましたね。あと、朝はパン、ランチには手軽なうどんやパスタ、そうめん、ラーメンなど麺ものを。健康を意識してヨーグルトにハチミツを混ぜたり、以前はあまり食べなかったりんごやスイカなどのフルーツも食べるように。夜はお酒とともにブルーチーズ、カシューナッツをつまむのにハマりました。

江田先生:小田さんがコロナ禍でよく食べていたもの、すべてが見事に「高FODMAP食」です。おならが頻発するのは、高FODMAP食による「過敏性腸症候群」の悪化が原因でしょう。次回「FODMAP」について詳しく説明しますね。

小田:き、気になる!! 先生、よろしくお願いいたします。


「FODMAP」という言葉を初めて知った小田。健康のためによかれと思い続けてきた腸活や自炊の食材が、実は逆に腸の負担となり、おならの頻発へとつながっていたなんて!

次回#2では、「FODMAP」についてと、ガスがおなかにたまらない方法を江田 証先生に教わります。おならブーブー、おなかパンパン、下腹ぽっこりの皆さん、ぜひご一読ください!
100年の恋も冷める「おなら」頻発現象!原因はコロナ禍を経てクセになった間食にあった!?【小田ユイコ×江田クリニック 院長 江田 証先生対談 #1】_1_2
江田先生の著書『新しい腸の教科書 健康なカラダは、すべて腸から始まる』(池田書店)。「SIBO」や「過敏性腸症候群」、「FODMAP」について、詳しく解説されている。
江田 証先生

江田 証先生

江田クリニック院長。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会認定専門医。日本消化器内視鏡学会認定内視鏡専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバー。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表。英文誌の巻頭論文として掲載される。『新しい腸の教科書 健康なカラダは、すべて腸から始まる』(池田書店)、『パン・豆類・ヨーグルト・りんごをたべてはいけません 世界が認めたおなかの弱い人の食べ方・治し方』(さくら舎)ほか、著書多数。
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小田ユイコ

小田ユイコ

美容ジャーナリスト。出版社に勤務後、独立。『eclat』『MAQUIA』『LEE』『BAILA』などの女性誌や、WEBメディアで美容記事を執筆。「美しさは健康から」をモットーに、女性のカラダに関する取材を長年にわたり行う。1965年生まれ。
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