さっそく、毎日のように食べていたタマネギやニンニクをやめ、朝のパンをごはんに変えたところ、ウソのようにおなかのハリが解消。寝ているあいだも寝返りのたびに出ていたおなら(夫が証言 笑)も出なくなり、人前でおならをグッとこらえることもなくなりました。下腹も心もちすっきりして、スカートやパンツの着こなしも変わったような。
おなかの不調は慢性的になり、放置しがち。ぜひ「傾腸」して、自分にとって「本当の腸活」を行い、快適な腸内環境を取り戻しましょう!
小田:江田先生、小田の「おなら」頻発のもうひとつの原因「FODMAP(フォドマップ)」って何ですか?
江田先生:「FODMAP」は腸内で急速な発酵を起こす糖質を表す頭文字を組み合わせた医学用語。
F……fermentable=発酵性の
O……oligosaccharides=オリゴ糖
ガラクトオリゴ糖(レンズ豆やひよこ豆などの豆類に含まれる)
フルクタン(小麦やタマネギなどに含まれる)
D……disaccharides=二糖類
ラクトース(牛乳、ヨーグルトに含まれる)
M……monosaccharides=単糖類
フルクトース(果糖。果実、ハチミツなどに含まれる)
A……and
P……polyols=ポリオール
ポリオール、ソルビトール、キシリトールなど
(マッシュルーム、カリフラワー、果実類に含まれる)
これらの糖質を含む食品は、おなかの調子がいい人にとっては悪さを働かないのですが、おなかの調子が悪い人(「過敏性腸症候群」や「SIBO」の人)にとっては「敵」に。腸の運動が過敏になり、ガスが増えてしまうのです。
小田:わー、私が好んで食べているものばかり。タマネギやハチミツ、くだもの、マッシュルームは、コロナ禍で自炊の頻度が増え食べる回数が増えていました。まさか、これらが腸に負担をかけていたなんて。
江田先生:「FODMAP」が引き起こす過敏性腸症候群は、下痢、便秘、おなら、腹痛などの症状があるにもかかわらず、大腸内視鏡などの検査をしても異常とは診断されません。定期的に健康診断をしている人でも、見過ごされてしまうのです。
小田:自分が「過敏性腸症候群」に陥っているかどうかを見極める方法はありますか?
江田先生:おなかの痛みや不快感が、過去3ヵ月で、1ヵ月に3日以上繰り返し起こった人の中で、下記の項目にふたつ以上当てはまる人は、「過敏性腸症候群」かもしれません。
①おなかの痛みや不快感があるときに排便をすると、おなかの痛みや不快感がやわらぐ。
②おなかが痛かったり不快感があるとき、便の回数が増えたり減ったりする。
③おなかが痛かったり不快感があるとき、便が硬くなったり、柔らかくなったりと変化する。
※「ローマ基準3」による診断基準。改訂された「ローマ4」では腹痛がなければいくらガスなどの腹部不快感があっても過敏性腸症候群とはいえないことになり、実臨床にそぐわない面がある。
小田:あ~、私3つすべてに当てはまります。自分がまさか「過敏性腸症候群」だとは気づきませんでした。おならはその症状だったんですね。
江田先生:「FODMAP」を知らずに、腸活にいい、健康にいい、と思って意識的に多く食べているものが「過敏性腸症候群」を引き起こしているケースは実に多いのです。特に健康長寿を目指している人、内側からの美しさを志す人など意識の高い方々がわずらいがちです。この「FODMAP」に対する耐性には個人差があり、一般人の4割は果糖不耐症で、日本人の7割は乳糖不耐症です。
高「FODMAP」食と言えば、たとえばアスパラガス、豆類(大豆、さやえんどう、ひよこ豆、レンズ豆)、納豆、ゴーヤ、ネギ、タマネギ、ニンニク、ニラ、カリフラワー、ゴボウ、セロリ、キムチなど。
小田:え〜! 納豆やゴーヤ、ゴボウやセロリなどは、腸活の代表食材じゃないですか。
江田先生:ほかにも、ハチミツ、オリゴ糖、牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、ミルクチョコレート、プロセスチーズ、ブルーチーズ、クリームチーズ。
小田:ヨーグルトのハチミツがけ、よく食べてます。腸活のつもりで。ブルーチーズは晩酌でよくつまむ大好きなおつまみ。
江田先生:フルーツならりんご、スイカ、あんず、桃、梨、グレープフルーツ、アボガド、柿など。ナッツなら、カシューナッツ、ピスタチオなど。
小田:そういえば、スイカをたくさん食べるとおならが頻発していたような……。カシューナッツも大好きで、ミックスナッツの中でもこればかり食べてしまいます。
江田先生:そもそも大麦、小麦、ライ麦などは「高FODMAP食」ですので、パン、パスタ、うどん、そうめん、クスクス、ラーメンなどは、小麦に含まれる「FODMAP」であるフルクタンに耐性のないおなかの弱い人にとって「過敏性腸症候群」の症状を悪化させるトリガーに。
これらの「高FODMAP食」は、オーストラリアのモナッシュ大学で発見されたもので、多くの「過敏性腸症候群」の方が「低FODMAP食」に切り替えることで、おなかの調子を改善しています。詳しくは私の著書『新しい腸の教科書』をご覧いただけますと幸いです。
小田:すっかり食べることが習慣になっていた食材ばかりなので、これから何を食べればいいのか途方にくれましたが、ご著書を読むと、おなかが弱い人でも食べてOKの「低FODMAP」な食材はたくさん!
たとえば米や玄米やそば、ナス、トマト、ホウレンソウ。チーズならカマンベールチーズやモッツァレラチーズ、果物ならバナナ、いちご、キウイなどはOKなんですね! あ、お肉や魚、バターやマヨネーズも「低FODMAP」と知ると、ちょっとホッとします。ナッツもアーモンドやヘーゼルナッツ、くるみならいいんですね。。
「高FODMAP食」を減らし、「低FODMAP食」に切り替えるということでよいのでしょうか。
江田先生:はい、多くの方はそれでおならや腹痛、おなかのハリなどが改善していきます。健康意識が高い方は、腸活にまじめなあまり「高FODMAP食」をよかれと思って毎食のように食べているので、完全に断たなくても減らしただけでずいぶん変わるはずです。
また、パンに含まれるフルクタンはガスのもとになりやすいので、パンを米に変えるだけでもガスが楽になる人もいます。ガスをもっとも発生させない食べ物は、米なのです。
健康にいいからと何か特定の食材を続けて食べるのではなく、いろいろな食材をまんべんなく食べるという意識も大切。1日3食でメニューの違う「小鉢5個」を食べると、いろいろな食材を摂れますよ。
「高FODMAP食」の中でも、おなかの調子を悪くする度合いには個人差があります。誤解しないでほしいのは、すべての「高FODMAP」食を食べてはいけないわけではないことです。フルクタン(パン)が食べられなくても、ガラクトオリゴ糖(豆)は食べられる人はたくさんいます。大切なのは、「傾腸」の精神。「傾聴」という言葉がありますが、今日食べたものがおなかにとって合っていたのか、合っていなかったのか、腸の声をよく聞いてあげてくださいね。
小田:わかりました。もっと「腸の声」に耳を傾けようと思います! ところで「高FODMAP食」を食べると、おなかの中で何が起こるのですか?
江田先生:「高FODMAP食」に含まれる4つの糖は、小腸で吸収されにくい糖です。これらの食材を食べすぎると、小腸に留まり、糖の濃度が高くなります。すると、小腸はこれを薄めようとして大量の水を引き込み、小腸内が水浸しに。刺激を受けて、過敏な状態になり、ゴロゴロしたり、下痢になったりします。
さらには小腸で吸収されなかった「高FODMAP食」の糖は、大腸へ。いつも絞りかすしかやってこない大腸にとって、吸収されないままの糖はおいしすぎるファストフード。腸内細菌はこれを食べまくって、異常に発酵します。その副産物として大量のガスが。これがおなら頻発の原因です。
小田:私のおならは、大腸の腸内細菌が飽食三昧した結果だったのですね(笑)。
小田:これから「低FODMAP食」を心がけていこうと思いますが、外食などでは完全に絶つのは難しそう。ガスがおなかにたまってしまったとき、すみやかに排出する方法はありますか?
江田先生:腸は曲がり角がいっぱいの臓器。ガスがたまりやすいのは、その曲がり角です。おすすめは「ひねりの運動」。カラダをひねることによって、曲がり角のガスが押し出されます。ゴルフやテニス、ヨガなど、ひねりが入るスポーツはいいですね。また、床に寝て、体をひねったり、ゴロゴロと転がるのもおすすめです。
小田:ラジオ体操はどうですか? けっこうひねりのポーズが組み込まれていますが。
江田先生:いいと思います! 女性の「過敏性腸症候群」は便秘型が多いので、スクワットや骨盤底筋体操など下半身の筋トレも効きますよ。下半身の筋肉を鍛えると便が排出されやすくなり、それにともなってガスも出ます。
小田:パンパンの「ガス腹」は放置しないほうがいい?
江田先生:はい。ガスが溜まると大腸に圧がかかって「憩室」という袋状のくぼみが大腸内に発生。炎症が起きたり、出血を起こすことがあります。
小田:おならのガマンは禁物ですね。人知れず、カラダをひねって、ガス抜きします。
江田先生:50歳は健康寿命の曲がり角。「80歳の壁」を超え、認知症を患わず、健康長寿でいられる人は、なにより腸が健やかで便秘が少ないことがわかっています。腸に不調を感じたら、腸活の常識を疑ってみることも必要なのです。
江田 証先生
江田クリニック院長。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会認定専門医。日本消化器内視鏡学会認定内視鏡専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバー。消化器系がんに関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表。英文誌の巻頭論文として掲載される。『新しい腸の教科書 健康なカラダは、すべて腸から始まる』(池田書店)、『パン・豆類・ヨーグルト・りんごをたべてはいけません 世界が認めたおなかの弱い人の食べ方・治し方』(さくら舎)ほか、著書多数。
クリニック公式サイト
コロナ禍3年のあいだに経験した、人生初の自粛生活。いろいろと心、体、肌に変化があったけれど、そのひとつが「おなら」が増えたこと(笑)。どちらかといえば胃腸の丈夫さには自信があったのに、なぜかおなかがパンパンに張ることが多く、日中も寝ているあいだも、おならが頻繁に。運動不足のせいと片づけていたけれど、コロナもあけて外出も増え、運動の機会が増えてもおならは変わらず。これはいったいどういうことなのか!? 今回、おならなどの話をうかがっていいものか、と恐縮しながらも、思い切ってカリスマ消化器専門医としてご活躍の江田 証先生に取材の申し込みを。すると、おならは50代の女性に起こりがちな、しかも健康意識の高い人に起こりがちな、ある腸の不調と大きな関係があることが判明! 腸活しているはずなのに、便秘や下痢がよくならない方も必読です。
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