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タレント・青木さやかさんが語る「がん」と向き合って気づいたこと
人生の途上で思いもかけなかった「がん」への罹患。その後の人生はどう変わったのか? 2017年に初期の肺腺癌と診断されたタレントの青木さやかさんに「がん」と向き合って気づいたことについて聞いた。
料理家・栗原友さんも「がんサバイバー」。罹患して人生はどう変わった?
乳房全摘と再建。抗がん剤に予防的手術。
決めたことの責任は自分でとり“自分ファースト”の生き方を貫きたい
――料理家、鮮魚卸売業・栗原 友さん
できたものは、しょうがない。危険は可能なかぎり取り除く
これまでの人生、大事なことは自分で決めてきた──栗原友さんの中には、確固たる自負がある。
「決断力は、人いちばいあると思います。小さいころのことはぜんぜん覚えていないけど、勝手に学校をやめてきちゃったりとか(笑)。もちろん間違えることもあるけれど、でも、今のところは大丈夫みたい」
キャスターとして活躍した栗原玲児氏と料理研究家の栗原はるみさんの長女として生まれ、服飾を学んだのちに留学。帰国後に料理の仕事を始めてからも、魚を扱うことに開眼し、現在は鮮魚卸や商品開発などを幅広く手がけ、その道のエキスパートとして独自の道を歩んでいる。
そんな栗原さんに乳がんが見つかったのは、40代半ば。休暇中、海辺で娘と遊んでいたとき、乳房に硬いしこりを自分で発見した。
「『ああ、これはそうかも』って。告知されてびっくりはしましたけど、できちゃったものはできちゃったんだから、ジタバタしてもしょうがないですよね。ただ、最初に診断したお医者さんはボールペンをいじりながらしゃべるような人で、『この人は、ないな』と思い、すぐにセカンドオピニオンをとりました。やっぱり尊敬の気持ちがもてるかたにお世話になりたいじゃないですか」
どうせなら、尊敬できる人に診てもらいたい。
情報を得るなら、ネットではなく信頼できる専門家から
さいわい、2度目の受診で信頼できる医師に出会えた栗原さん。遺伝子検査で乳がんと卵巣がんのリスクが高まるとされるBRCA1に変異があったため、両側乳房切除と卵巣・卵管の摘出は即座に決断したという。
「誰にも相談せず、その場で決めて『全部、やっちゃってください』とお願いしました。切らないで温存したいとか、卵巣をとると女性らしさがなくなるとか、気持ちとしてはわからないでもないけれど、自分はそれより命が助かるほうがいいなって……。乳腺と、遺伝子診断の先生、抗がん剤の先生、それに婦人科の先生と、どのかたも気が合う感じがしたので、このお医者さんたちがいうことならいいんじゃないかと思えたのも大きかったです。本当に、いい医療者との出会いは大事。手術を受ける1カ月間、娘は関西の親友に預けました。夫は夜中から出勤する仕事だし、引き受けるよといってくれるであろう母も、当時、末期がんの父の介護で消耗していた。友人が子供を通わせていた幼稚園が他県からの一時保育を受け入れてくれたのは、本当にありがたかったですね」
上手な気分転換と情報収集で抗がん剤治療をのりきる
リンパ節などへの転移はなかったものの、栗原さんのがんはホルモン治療やHER2と呼ばれるタンパク質に働きかける薬の効果が期待できないタイプ。乳房切除手術後の抗がん剤治療は必須だった。
「抗がん剤治療は、ただただ不快。焼肉屋で肉が出てくる寸前で味覚が消えたときは、『あー、来た』とがっかりしました。でも、味のわからないハラミを食べながら『舌がおいしいっていってる』と自分に言い聞かせて(笑)。食べられるものをなるべく食べて、あとは体調のサイクルに合わせて旅行に行くなど、上手に息抜きするようにはしていました」
乳房再建手術、卵巣・卵管手術へと続く長い道のり。その間には、やはり心の揺れを感じた時期もあった。
「抗がん剤治療を始める前、うっかりネットを検索して『髪が生えなくなるらしい』という情報を見てしまったんです。子供とも思うように遊べなくなるし、やっぱりやめたいと医師にいったら、脱毛について調べている看護師とぜひ話してほしいとか、子供のことを臨床心理士にも相談できますよとか……とにかく病院は手厚かったですね。話を聞くなら、ネットより専門家。私も妙に頭でっかちになってて、次の診療日までに『これってどういう副作用があるんですか』とか『これからどうなるんですか』とか、事細かに質問項目を立てて持っていきました」
不安でクヨクヨする時間はもったいない。
悔い改めるべきところが見つかったら、すぐに実行
その後、コロナ禍を縫って無事に2度の手術を終え、病後4年を無事に過ごした栗原さん。がんの治療は再発への不安との付き合いの始まりともいわれるが、「それ、ないんですよ」とあっさりいう。
「不安をもたないというか、もう無意識ですね。クヨクヨも、一瞬はするけど2〜3日で終わるかな。その時間がもったいないと思っちゃうほうなので。もちろん、自分を省みて変えなきゃいけない部分もありますけど、悔い改めたいと思ったら、すぐに実行します。自分で決めたことだったら、自分で責任とれますし」
いつかは海外で暮らしたい。夢に向かって時間を効率的に
短くてもいいから、濃く生きたい。これが、以前から抱いていた栗原さんのモットー。罹患後の今も、少しも揺らぎはないという。
「だから、病気がわかったときもあんまり慌てふためいたりしなかったのかもしれませんね。病気を経験して自分の中で変わったことはあまりないですが、やり残すことがないように、それを目ざしていこうと思う瞬間は増えた気がします。子供のためにというよりも、私はあくまで自分ファースト。子供が『ねえママ、ママママママー』って寄ってきても、ひとりで過ごしたいときは『今、ママはゲームがしたい』ってはっきりいいますから(笑)。かなえたい夢は、娘と一緒に海外で暮らしながら仕事をすること……かな。英会話、習ってるんですよ。朝7時5分に子供が家を出ると同時に、自転車で先生との待ち合わせ場所に行って、個人レッスン受けて。前は娘を送り出してからダラダラ家事したりテレビ見たりしてたのが、テキパキしちゃって『ちょっといいかも?』なんて」
「あなたにも可能性があるよ」。
遺伝性のがんだからこそ、娘にはことあるごとに話して伝えています
充実した生を、より太く、長く。そして、栗原さんからつながる命の行く末にも目くばりを忘れない。
「まだ遺伝子検査を受けられないけど、娘にはことあるごとにがんについて話して、『あなたにも可能性があるんだよ』と伝えています。自分が治療したときのデータや資料は全部ファイリングして、いつでも見せられるようにしていて。急に知ってびっくりさせるより、『そういえばお母さん、ずっといってたな』っていうほうが怖くないじゃないですか。主治医にも今から会わせていて、『何かあったら、この人たちが助けてくれるからね』っていっているんです」
栗原さんの「これまで」
’75 静岡県下田市に生まれる。服飾専門学校に進学し、ロンドンへ留学。
アパレル会社のPR、フリーライターなどを経て料理家に
’08 初の著書『ぜんぶ・おいしい 私が見つけた好きな味・家族の味』(講談社)を出版
’12 築地場外の水産会社に就職
’14 結婚、長女を出産
’17 夫と独立、起業
’19 左胸にしこりを自覚し受診、乳がんと診断される。
遺伝子検査をし、左右乳房全摘手術・化学療法を受ける。
肺がんの父を看取る
’20 卵巣・卵管を予防的に摘出・乳房再建手術。
以降、現在も経過観察中
栗原 友
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