〈えっ、こんなことで?更年期からの骨折 Vol.1〉50代からの「ちょっとしたことで骨折」はなぜ起こる?【小田ユイコのいつもどこかが調子悪い#4】
50代の友人からちらほら届く「骨折しちゃいました」報告。聞けば、大けがの末の骨折ではなく、重いものを持ち上げた、咳をした、といった「ちょっとしたこと」で起こる骨折ばかり。ぎっくり腰と思っていたら、実は骨折だったというエピソードも。どうして急に骨が弱くなってしまうのか。骨折を防ぐ方法、骨を丈夫にする方法はある?産婦人科医で、女性のライフステージに合わせたヘルスケアに取り組む善方裕美先生にお話をうかがいました。
善方裕美先生
よしかた産婦人科院長。横浜市立大学産婦人科客員准教授。医学博士。日本産婦人科学会専門医、女性ヘルスケア専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、マンモグラフィ読影認定医。約30年にわたって多くの悩める更年期女性と向き合い、更年期障害についてカウンセリング、HRT(ホルモン補充療法)、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療をおこなう。著書に『女医が教える閉経の教科書』(秀和システム)、『だって更年期なんだも~ん治療編』(主婦の友社)ほか。
50代女性の「ちょっとしたことで骨折」は、骨の“作り替え”がうまくいかなくなるのが原因
これまでの人生で一度も骨折をしたことがない人にとって、女性は50代になると骨折しやすくなる傾向にあるとは知っていても、自分の身に起こるとは想像しにくいもの。骨折してみて初めて、自分の骨がもろくなっていたことに気づく人も多いそう。
50代の女性にとって、なるべくなら自分ごととは思いたくないジョーカー的ワード「骨粗しょう症」。道端でつまづく、重い荷物を持ちあげる、そんな「ちょっとしたことで」骨折してしまうほど、女性は50代になると骨がもろくなるのはなぜなのか。
「更年期になると、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減少します。エストロゲンが少なくなることによるカラダの変化はさまざまですが、骨への影響も大なんです」。と善方裕美先生。
女性ホルモンのバランスと密接に結びついた女性のライフステージをサポートし続けてきた善方先生は、特に更年期の「ちょっとしたことで骨折」に警鐘を鳴らしてきたといいます。
骨は常に「壊して作る」を繰り返している
硬い骨は、イメージ的にずっと変化がなさそうに思いがちだけど、実は新陳代謝を繰り返している=常に新しいものにつくりかえが進行している「臓器」なのだそう。
「骨が新しいものにつくりかえられることを『リモデリング』と呼びます。骨には破骨細胞と骨芽細胞が存在し、破骨細胞は古くなった骨を壊して『骨吸収』を行います。その壊された部分に骨芽細胞がくっつき、新しい骨を作る『骨形成』を行うのがリモデリング。
このリモデリングがうまくいかなくなるのが更年期以降。その原因は、破骨細胞の働きを制御するエストロゲンが減ってしまうため。エストロゲンが減ると破骨細胞が暴走してしまい、骨芽細胞が骨をつくるのが追い付かなくなってしまうのです」。
あなたは大丈夫?骨密度の低下には、個人差がある!
骨のリモデリングがうまくいかなくなった結果、起こるのが骨密度の低下。
「エストロゲンの減少にともない、50代の骨密度は多かれ少なかれ若いときにくらべて低下します。しかし、そのスカスカ度合いには個人差があり、つまづいて転ぶくらいのちょっとした衝撃で骨折してしまうほどに密度が低下するには、エストロゲンの減少以外にさまざまな原因が考えられます」。
スカスカ度合いを少しでも軽くしたい! 骨密度が低下してしまう原因って?
「今、日本女性の大きな問題になっているのが、ビタミンD不足。ビタミンDは骨をつくるためのカルシウムを吸収する要となる栄養素。ビタミンDが不足すると、頑張って小魚や乳製品を摂っても、排泄されてしまいます。
また、ビタミンDは『骨質』といって、骨のしなやかさにも関与している重要な栄養素です。
カンペキなUVカット、スリムなボディ。美意識が高い人ほど、骨がもろくなりやすい!?
ビタミンDは食事からも摂取できますが、それは必要量の10~20%。80~90%は日光(UVB)を浴びることで合成されます。ところが、美肌への意識の高い日本女性には日焼け止めや日傘をはじめとするUVカットが習慣化。完璧に日差しを防げば防ぐほど、骨がもろくなるという現象が、今起こっているのです」。
シミ、シワ、たるみの元凶である紫外線。肌のエイジングケアとして熱心に行っていたことが、骨の若さを奪っていたなんて!
「人生100年時代、骨も大事ですが、肌の若々しさも重要ですよね。足りないビタミンDはサプリメントで補うのも手です(第2回目でご紹介します)。
また、低体重も要注意。BMIが18.5未満になると、骨がスカスカになりやすいと心得て。骨のリモデリングは「加重負荷」がかかることでスイッチが入ります。体重が軽いと加重負荷がかかりにくく、リモデリングがうまく進まなくなるのです」。
おしゃれに関心が高く、服を素敵に着こなすためのボディメイクにも余念がない、という方は、痩せすぎには十分ご注意を。
「加重負荷がかからないという点では、運動不足も骨がスカスカになる大きな原因。また、タバコ、過度な飲酒も骨のリモデリングを阻害することは明らかです」。
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若々しい骨は、中身が密。「ちょっとしたことで骨折」を起こしにくい。
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骨粗しょう症になると、骨がスカスカに。「ちょっとしたことで骨折」を起こしやすい。
「ちょっとしたことで骨折」は連鎖する! 更年期以降は「1回目の骨折」を防ぐことが大事
地方自治体の健康診断には、骨密度を測る検査がないこともあり、知らず知らずのうちに進行してしまいがちな骨のスカスカ。
「困ったことに、1回『ちょっとしたことで骨折』をしてしまうと、2回目も起こりやすくなります。骨折したことでさまざまなシグナル(サイトカイン)が出てしまい、骨を壊す『骨吸収』のマーカーが上がってしまうのです。
「ちょっとしたことで骨折」のなかには、「いつのまにか骨折」とも呼ばれる自覚症状があまりない骨折も。
「圧迫骨折といって、腰椎に起こりやすい骨粗しょう症の典型的な骨折です。腰椎の骨の芯の部分、海綿骨がスカスカになり、尻もちくらいの衝撃で上下にぐしゃっとつぶれてしまう骨折です。痛みをともなっても、腰痛やぎっくり腰と勘違いしてしまうことも。外科的治療ができず、コルセットで支え、骨粗しょう症治療薬での治療となります。
この圧迫骨折も、腰椎の1か所を骨折すると、複数の箇所に拡大してしまいがち。最近背が縮んだなと思ったら、疑ってみる必要があります。
大事なのは、何も起こっていないうちに自分の骨密度を知り、しかるべき予防をすること。『1回目の骨折』を防ぐことがとても大事なのです。
更年期世代になったら骨密度検査は必須!
「更年期を迎えたみなさんにぜひ受けてほしいのが骨密度の検査。骨折したら整形外科を受診しますが、更年期を踏まえた骨密度の検査なら、婦人科、内科を受診。クリニック探しに迷ったら、女性ヘルスケア専門医のいるクリニックがおすすめです」。
善方先生も認定医である女性ヘルスケア専門医は、日本女性医学学会の認定資格。女性のライフステージ起こる心身の病態を、予防医学の観点から診断、治療してもらえます。女性ヘルスケア専門医のリストは、日本女性医学学会のホームページや、公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会のサイトから検索できます。
「骨密度検査には、超音波による検査(かかとの骨の骨密度を調べる)、MD法(手のひらのX線撮影で調べる)などもありますが、おすすめはデキサ(DXA)という検査法。レントゲンを応用した骨密度検査法で腰の骨、股関節のつけ根の骨を調べる検査です。約10分で終了する苦痛の少ない検査です」。
デキサ検査の結果はYAM(ヤム)値(20~40代の骨密度の平均値)との比較。YAM値を100%としたとき、自分の骨密度が80%以上なら正常、70~80%未満なら骨量減少、70%未満なら骨粗しょう症、と診断されます。デキサによる骨密度検査ができるクリニックは、『骨検』のサイトから検索できます。
よしかた産婦人科では、このデキサによる検査を実施しており、骨密度とともにTBS(海綿骨構造指標)という骨のしなやかさ、骨質の解析も行っています。
「鉄筋コンクリートに例えると、骨密度にあたるのがコンクリートで、骨質にあたるのが鉄筋。両方がしっかりしていてこそ強固な建物となるように、骨の強さも骨密度と骨質の両方が充実していることが重要です」。
骨は「体の免疫」にも大きく関わっている!
「実は近年、骨はカラダを支持して運動を可能にする運動器の一部というだけでなく、外界の環境変動やストレスを感知し、カラダ全体の免疫をコントロールするという、免疫系の臓器としての役割が大変注目されています。
このシステムは『オステオネットワーク』と呼ばれ、感染症などの免疫疾患と関連。骨芽細胞から分泌されるホルモンは脳や筋肉などに働き、記憶力や筋肉の増強も行っています」。
骨の一大事は、カラダ全体の一大事なんですね!
更年期世代で、まだ骨密度チェックを受けたことがない人は、ぜひ検査を。私、小田の場合、昨年超音波による骨密度検査は受けましたが、デキサ検査はしばらく受けていないので、近々受けに行こうと思います。
次回は、骨折を防ぐための予防法、「ちょっとしたことで骨折」してしまった場合の治療法についてお届けします。ぜひご覧ください。
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